- まえがき
- T 地理
- 中学
- 音教材を取り入れた中学・高校の地理授業実践 /山口 幸男・西木 敏夫・八田 二三一
- 1 地理教育と音教材
- 2 地理教育におけるサウンドスケープ教材、音教材の意義
- 3 サウンドスケープを取り入れた中学校地理授業の実践
- 4 音教材を取り入れた高校地理の授業実践
- 5 まとめ
- 物語性と当事者性の高い社会科地理学習
- ―文脈のある授業展開を心がけた「小京都」の実践より― /伊藤 裕康・安藤 孝泰
- 1 はじめに
- 2 「小京都」を学ぶ「意味」―「物語る」ことで「創られた伝統」―
- 3 「小京都」の計画と実践
- 4 実践を終えて―実践の考察及び社会科授業として優れている点と社会科授業力の開発に寄与する点―
- 高校
- 人間活動への興味と共感を喚起する地形学習
- ―簡易な実験と自作の写真教材を活用して― /森 眞一郎・永田 成文
- 1 本授業実践の視角
- 2 授業の計画と実践
- 3 本授業実践についての考察
- U 歴史
- 中学
- 異文化の受容と変容を学ぶ文化史学習
- ―南蛮文化を事例として― /高橋 健司・森川 禎彦
- 1 はじめに―本実践研究の目的―
- 2 授業の計画―授業化の視点と教材開発―
- 3 授業の実践
- 4 本実践についての考察
- 各時代の特色を大きくとらえさせる学習指導の実際
- ―中学校歴史的分野「中世の時代調査」の実践― /中尾 敏朗・大石 久美子・山口県中学校社会科教育研究会
- 1 はじめに
- 2 歴史的分野の学習改善のための「時代調査」とその意義
- 3 「中世の時代調査」の学習展開
- 4 16次(中世の特色の特定と方法面の検討)の実践例
- 5 指導実践「中世の時代調査」のもつ意義
- 6 むすび
- めざせ豪商! 大江戸ビジネスプラン選手権
- ―状況論的学習観によるワークショップ型授業の試み― /江間 史明・関東 朋之・松島 久美
- 1 はじめに―ワークショップ型授業と状況論的学習観―
- 2 「めざせ豪商! 大江戸ビジネスプラン選手権」の授業構想
- 3 授業の実際
- 4 授業の考察
- 5 おわりに―社会科授業力の開発にむけて―
- 構造図を活用した「第一次世界大戦とアジア・日本」の授業 /今野 日出晴・悦内 誠二
- 1 はじめに
- 2 授業の計画と実践
- 3 授業実践の成果と課題
- 「日韓の現代と過去を取り結ぶ」教材開発研究
- ―近現代の日本と世界― /釜田 聡・鈴木 克典
- 1 はじめに
- 2 授業の計画と実践
- 3 本実践研究についての考察
- 自省的歴史認識に基づく花岡事件の授業
- ―地域の平和希求活動を重視した歴史教育実践の構築― /外池 智・井門 正美・佐藤 洋介・鎌田 公寿
- 1 本実践研究の目的
- 2 授業構築の経緯と授業の特色
- 3 授業の実際
- 4 花岡事件を題材とした授業実践の発展的継承を求めて
- 高校
- 「創られた伝統」とナショナルアイデンティティ
- ―高等学校 世界史B「世界史への扉(主題学習)」における実践― /二井 正浩・宮本 英征
- 1 はじめに
- 2 「創られた伝統とナショナルアイデンティティ」の授業化
- 3 「創られた伝統とナショナルアイデンティティ」の実践
- 4 「創られた伝統とナショナルアイデンティティ」の実践結果例
- 5 おわりに
- V 公民
- 中学
- 「経済についての見方や考え方」を育成するための中学校社会科経済単元の構想と学習指導
- ―「経済リテラシー」の定義をもとにして― /山本 友和・猪又 力
- 1 はじめに―「経済についての見方や考え方」と「経済リテラシー」―
- 2 実践授業の構想とその観点
- 3 指導計画と学習指導の実際
- 4 本実践研究の考察
- リーガルマインドを育てる法教育実践
- ―「カイワレ裁判」(行政裁判)を通して― /千葉大学教育学部・附属連携研究社会科部会
- 1 研究の経緯と本実践のねらい
- 2 事例事件及び裁判の概要
- 3 法的争点の整理と教材化の視点
- 4 授業の構成と実際
- 5 本実践を通して培われた法的思考力
- 6 本実践を通して生徒たちが学んだこと―結論の不十分さを自覚するということ―
- 地域がかかえる課題を素材とした提案型学習のあり方
- ―地方自治を題材に― /谷田部 玲生・小山 茂喜
- 1 はじめに
- 2 単元展開案
- 3 授業力の開発と優れた実践という観点から
- 人権保障と公共の福祉を問い直す社会科授業
- ―小単元「ハンセン病問題について考える」の開発を通して― /桑原 敏典・佐藤 育美
- 1 はじめに
- 2 教材開発の方法
- 3 指導計画と実践の成果
- 4 おわりに
- 地域ミニコミ誌づくりを通した社会参加学習
- ―「新聞社をつくろう」の取り組み― /木下 百合子・中 善則
- 1 はじめに
- 2 授業の計画と実践
- 3 本実践についての考察
- 「ワイマール憲法の成立と崩壊」を通して「社会権」を学ぶ意義
- ―再生刺激法による学習者の思考を基に― /石本 貞衡・川ア 誠司・上園 悦史
- 1 はじめに
- 2 授業の計画と実践
- 3 本実践についての考察
- 高校
- 公民的資質としてのエンパワーメント育成授業の試み
- ―ネパールと日本の子どもとの描画活動の展開を通して― /吉岡 大輔・三浦 軍三・黒須 伸之
- 1 研究の視座
- 2 エンパワーメントと描画技法
- 3 ネパールの人々の描画活動とエンパワーメント
- 4 単元プランと授業
- 5 学習者のエンパワーメント形成―学習者の描画活動におけるエンパワーメント要素の多様な変質―
- 6 むすびにかえて
- 現代日中関係を考える社会科授業開発研究
- ―対中国政府開発援助(ODA)問題からのアプローチ― /児玉 康弘・宮薗 衛・田中 一裕
- 1 はじめに
- 2 授業の計画と実践
- 3 本実践についての考察
- 4 社会科授業力の開発
まえがき
小中学校の新しい教育課程が告示された。「ゆとり教育」の克服とかPISA型学力といったキャッチフレーズのもとに作られたものではあるが、どことなく目玉がない改訂である。「総合的な学習の時間」が削減され、小学校に外国語活動が導入されるほかは、言語活動の重視や理数教育の重視などに専ら目が向いており、社会科などにはそれほど多くの関心が集まってはいない。
PISA調査の「読解力」のランキングが落ちたということから、あたかも国語など言語に関する指導だけに問題があるかのごとく、その重視が叫ばれてはいるが、果たしてそれを鵜呑みにしていいのか。そこには大きな誤解が潜んでいる。PISA調査による「読解力」なるものは、@自分の目標を達成し、知識や可能性を発展させ、社会に参加するために、A書かれたテキスト(written texts)の内容を理解し、活用し、考える能力のことである。決して、従来わが国の国語教育で言われてきた「読解力」のことではない。問題を見ればわかるように、むしろ社会科教育や総合的な学習の時間で育てられるべき能力と言っても過言ではない。今回の改訂では「生きる力」の重視はそのままで、実際には基礎学力重視の路線が敷かれたのであるが、国内外の状況を見ると、社会科教育の果たす役割は一段と強まっていると言ってよい。
国際社会における日本の地位は学力だけではなく、経済力・政治力などあらゆる分野で凋落現象が起こっているし、国内的に見れば、親子関係などの家庭の崩壊、地域の教育力の喪失、格差社会による若者たちの生きがいの消失減少など、わが国の直面する課題は枚挙にいとまがない。このような時代であるからこそ、「社会科」教育にかけるものが大きいはずなのだが、国民の意識も教育関係者の意識も低い状況が続いている。
戦後生まれた「社会科」もすでに還暦を超える歳月を経たことになる。その間、高等学校の「社会科」解体などのいくつかの節々を経て今日に至っているが、その根幹を支えているのは授業実践である。社会科の授業が興味あるものになっており、社会的にも認められていかなければ、教育そのものも変わってはいかない。
日本社会科教育学会には幸いにも、小・中・高等学校の優れた実践者が集っている。学校現場に席を置く会員たちは多くの場合、研究者と連携して実践研究を進めている。他方、大学等に席を置く研究者も実践者とのコラボレーションのもとに研究を進めている。研究者と実践者が協同して教材開発を行い、授業研究を行うといったシステムは、わが国独特のものであり、アジア地域だけでなく、欧米でも注目を集めてきている。
二〇〇六年度に私が会長に就任したときの基本方針として、会員の実践研究を世に問い、わが国の社会科教育の発展に寄与することの重要さを示し、今回の出版の運びになった。山口幸男委員長を中心に出版企画特別委員会の尽力によって『社会科授業力の開発』小学校編・中高等学校編の2冊の本を上梓できたことはこの上ない喜びである。本書がわが国の社会科教育の発展に寄与できることを祈念している。本企画を快くお引き受けいただき、出版の労をとっていただいた明治図書の樋口雅子編集部長には格別の感謝を申し上げたい。
二〇〇八年三月三十一日 日本社会科教育学会 会長 /谷川 彰英
生徒が関心を持って臨む授業、そして成果をもたらす授業などなど・・・
イメージばかりが頭を駆け巡っていましたが、この本を読み、宝物のような実践を学ばせていただくことにより、具体的に考えられるようになってきました。
考え方をしっかりと学び、実際の指導案作りに役立てていきたいと思っています。