- はじめに
- 第1章 数学授業にかかせない指導スキルのポイント
- 1 数学授業にかかせない指導スキルとは
- 2 10の視点からの指導スキルのポイント
- 第2章 数学授業の指導スキル60
- 教材研究・指導計画
- 1 日々の授業構想と授業改善のスキル
- 2 指導のねらいを明確にして単元指導計画をデザインするスキル
- 3 授業をつなぐ単元構想のスキル
- 4 補充的な学習を取り入れた指導計画作成のスキル
- 5 教科書の題材を工夫する教材研究のスキル
- 6 ねらいに沿った教具開発のスキル
- 7 教科等横断的な教材開発のスキル
- 8 家庭学習の課題を設定するスキル
- 発問
- 9 生徒の思考を揺さぶる発問のスキル
- 10 問題の核心に迫る発問のスキル
- 11 解決の方法を引き出す発問のスキル
- 12 判断(推論)した理由を引き出す発問のスキル
- 13 既習内容と関係付けることを促す発問のスキル
- 14 具体例を考え説明することを促す発問のスキル
- 課題提示
- 15 驚きや疑問を生み出す課題提示のスキル
- 16 数学の事象から新たな問題を見いだす課題提示のスキル
- 17 日常の事象から問題を見いだす課題提示のスキル
- 18 既習を生かし考えを深める課題提示のスキル
- 19 ICTを有効活用した課題提示のスキル
- 板書・ノート指導
- 20 生徒の考えを比較し関連付ける板書のスキル
- 21 1時間の思考過程がわかる板書のスキル
- 22 振り返りに生きるノート指導のスキル
- 23 生徒の記述を授業に生かすノート活用のスキル
- 24 学びに向かう力を高めるノート点検のスキル
- 問題解決の授業
- 25 生徒の意欲的な取組を促すスキル
- 26 生徒とのやり取りからめあてを引き出すスキル
- 27 多様に考えることを促すスキル
- 28 ねらいに応じた活動を選択するスキル
- 29 ねらいの達成に向けた机間指導のスキル
- 30 話し手と聴き手が双方向になる発表指導のスキル
- 31 多様な考えを生かしてまとめるスキル
- 32 内容の理解を深める振り返りを促すスキル
- 33 次の学びにつなげる振り返りを促すスキル
- 数学的活動
- 34 数学の事象から問題を見いだす場面を設定するスキル
- 35 日常生活や社会の事象から問題を見いだす場面を設定するスキル
- 36 問題解決に向けて構想し,見通しを立てる場面を設定するスキル
- 37 統合的・発展的に捉える場面を設定するスキル
- 38 問題解決の過程を振り返り様々な事象に生かす場面を設定するスキル
- 39 数学的活動の楽しさや数学のよさを実感できる場面を設定するスキル
- 個別最適な学び
- 40 動き出せない生徒の学びを支えるスキル
- 41 学習が進んでいる生徒の学びを支えるスキル
- 42 自らのよさの自覚を促すスキル
- 43 学習の調整を促すスキル
- 44 個に応じた指導に生かすICT端末活用のスキル
- 45 指導改善に生かすICT端末活用のスキル
- 特別支援
- 46 文章題の苦手な生徒を支援するスキル
- 47 計算の苦手な生徒を支援するスキル
- 48 図形問題が苦手な生徒を支援するスキル
- 49 表出が苦手な生徒を支援するスキル
- 協働的な学び
- 50 生徒同士の関わり合いを促すスキル
- 51 生徒同士の話合い活動を支えるスキル
- 52 生徒の考えを広げ深めるようなグループ活動を生み出すスキル
- 53 探究的な活動を仕組むスキル
- 54 共同作業に生かすICT端末活用のスキル
- 55 学習過程の共有に生かすICT端末活用のスキル
- 学習評価
- 56 適切な評価の観点と時機を見定めるスキル
- 57 評価規準作成のスキル
- 58 知識の概念的な理解を見取るスキル
- 59 思考力,判断力,表現力等を見取るスキル
- 60 主体的に学習に取り組む態度を見取るスキル
はじめに
中学校数学科では,数学的な見方・考え方を働かせた数学的活動を通して数学的に考える資質・能力を育成することを目指しています。目前の生徒が今後の学校生活において数学を活用する場面は,数学科の授業内にとどまらないでしょう。
また,生徒が学校を卒業し,近い将来において直面すると予想される様々な問題は,教科ごとに現れるわけではないでしょう。より複雑な問題と向き合ったとき,あきらめず前に進むことができるために,生徒が各教科等で鍛えられた「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにしたいものです。特に,直面した問題に対し,数学を活用して解決しようとしたとき,数学的な見方・考え方を働かせて取り組み,身に付けた資質・能力を発揮することができるように生徒を育てたいですね。
それでは,授業において数学的な見方・考え方を働かせた活動を実現するには,どんなアイデアが必要でしょうか。
また,数学的活動を通した授業を充実するためには,どんな仕掛けが必要でしょうか。
実は,これらのアイデアや仕掛けは数学の教科特性による部分があることに間違いはないのですが,根底を貫く考え方は学級経営や他の教科等の指導の在り方と大きく異なるわけではありません。教科等に関わらず,「見方・考え方」を自在に働かせることができるようになるためには,問題発見・解決の過程を多く経験することが大切です。
よりよく問題解決するためには問題解決に対する動機をもち,問題に深く関わってよく理解し,解決に向けて構想を立て,見通しをもって進めながらも解決過程で時に立ち止まって振り返るなど粘り強く取り組むことも必要となるでしょう。また,いったん結果が出たところで終わりとするのではなく,さらに統合的・発展的に考察したり,活用したりすることで,新たな問題を発見するような創造的な活動につながっていくでしょう。
このような経験を生徒に積ませていくためには,育成したい生徒像をしっかりとイメージするとともに,適切な教育理念に裏付けられた柔軟性や発展性のある指導技術が必要だと考えます。指導の在り方にこれといった決まりきった形はありません。中学校学習指導要領の解説(数学編)に数学的な問題発見・解決の過程が示されたことからも,与えられた問題から出発して結果を示すことで終わりとする授業だけではなく,場面や結果から新たな問題を見いだす授業,既習をつなげて統合・発展させていく授業など,多様な授業態様の必要性も高まってきています。これら授業の在り方の多様性を意識しつつ,目の前の生徒の実態に合わせて授業を構成し,実践するためには,基礎となる指導技術と,指導に対する考え方が不可欠です。
そこで本書では,授業づくり,授業実践のための基礎的な指導技術とその考え方を,指導スキルという形で紹介し,それらのポイントと,授業実践における具体的な方法を示すこととしました。これらを基に,多くの先生方が柔軟性,発展性のある指導技術を身に付け,生徒の未来を培うための授業実践につながることを期待しています。
2022年4月 /水谷 尚人
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