- はじめに
- PART1 ワーキングメモリの基礎知識
- 1 ワーキングメモリとは何か
- 2 ワーキングメモリのモデルとアセスメント
- 3 ワーキングメモリの発達
- 4 ワーキングメモリの理論に基づいた子供の発達支援
- 5 読み書きの困難の原因と対策
- 6 算数の困難の原因と対策
- ワークシートの使い方
- PART2 ワーキングメモリに配慮した「読み」「書き」「算数」教材集
- 読みの困難 解説
- 音韻意識の発達
- 読み1 しりとりを しよう
- 読み2 きまった 文字で はじまる ことばを さがそう
- 読み3 きまった 文字で おわる ことばを さがそう
- 読み4 きまった 文字が あてはまる ことばを さがそう
- 読み5 小さい 「や」のある ことばを さがそう
- 読み6 小さい 「ゆ」のある ことばを さがそう
- 読み7 小さい 「よ」のある ことばを さがそう
- 読み8 小さい 「つ」のある ことばを さがそう
- 意味のまとまりに分節化 かな文字の読み
- 読み9 どうぶつの ことばを さがそう
- 読み10 たべもの・のみものの ことばを さがそう
- 読み11 のりもの・文ぼうぐの ことばを さがそう
- 読み12 正しい ことばを えらぼう @
- 読み13 正しい ことばを えらぼう A
- 読み14 正しい ことばを えらぼう B
- 読み15 文を 正しく わけよう @
- 読み16 文を 正しく わけよう A
- 読み17 文を 正しく わけよう B
- 読み18 文を 正しく わけよう C
- 読み19 文を 正しく わけよう D
- 読み20 文を 正しく わけよう E
- 読み21 文を 正しく わけよう F
- 読み22 まちがいを 見つけよう @ <は・わ/を・お/へ・え>
- 読み23 まちがいを 見つけよう A <は・わ/を・お/へ・え>
- 読み24 まちがいを 見つけよう B <てにをは>
- 読み25 まちがいを 見つけよう C <てにをは>
- 読み26 まちがいを 見つけよう D <ことば>
- 読み27 まちがいを 見つけよう E <ことば>
- コラム 音韻認識と文字の学習
- 語彙習得の困難 解説
- 言葉を覚える
- 語彙1 こくごの きょうかしょを うつして ことばを さがそう
- 語彙2 わからない ことばを せつめいしよう
- 語彙3 わからない ことばの もんだいを つくろう
- 語彙4 わからない ことばの いみを えに かこう
- 語彙5 わからない ことばの おはなしを つくろう
- コラム 言葉の学習:「聞いて覚える」から「読んで覚える」へ
- 読解の困難 解説
- 文章の理解 状況モデルの構成
- 読解1 こくごの きょうかしょを うつそう
- 読解2 わからない ことばと かん字を せつめいしよう
- 読解3 文しょうの ないようを まとめよう @
- 読解4 文しょうの ないようを まとめよう A <ものがたり>
- 読解5 文しょうの ないようを まとめよう B <せつめい文>
- 読解6 しめす ことばと しめされる ことばを 見つけよう
- 読解7 文しょうの じょうきょうの えを かこう <ものがたり>
- 読解8 文しょうを ひょうに まとめよう @ <ものがたり>
- 読解9 文しょうを ひょうに まとめよう A <せつめい文>
- 読解10 文しょうを ひょうに まとめよう B <せつめい文>
- 書きの困難 解説
- 書きの基礎のトレーニング
- 書き1 おなじ せんを おなじ いちに かこう @
- 書き2 おなじ せんを おなじ いちに かこう A
- 書き3 おなじ せんを おなじ いちに かこう B <見本を 見ない>
- 書き4 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう @
- 書き5 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう A
- 書き6 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう B
- 書き7 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう C
- 書き8 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう D
- 書き9 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう E
- 書き10 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう F
- 書き11 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう G
- 書き12 せんを じゅんばんに ひいて かたちを つくろう H <見本を 見ない>
- 書き13 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう @
- 書き14 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう A
- 書き15 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう B
- 書き16 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう C
- 書き17 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう D
- 書き18 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう E
- 書き19 せんを じゅんばんに ひいて かん字を かこう F <見本を 見ない>
- 漢字の書き方を考える
- 書き20 きょうかしょから しらない かん字を ぬき出して かき よもう
- 書き21 かん字の よみの もんだいを つくろう
- 書き22 かん字の かきの もんだいを つくろう
- 書き23 かん字の おぼえかたを かんがえよう
- 書き24 かん字の おぼえかたを えに かこう
- 作文
- 書き25 2つの ことばで 文を つくろう
- 書き26 3つの ことばで 文を つくろう
- 書き27 ことばに つづけて 文を つくろう @
- 書き28 ことばに つづけて 文を つくろう A
- 書き29 日きを つくろう @ <きょうの 日き>
- 書き30 日きを つくろう A <日よう日の 日き>
- 算数の困難 解説
- 計算の基礎
- 算数1 かぞえよう @
- 算数2 かぞえよう A
- 算数3 かぞえよう B
- 算数4 かぞえよう C
- 算数5 かぞえよう D
- 算数6 かぞえよう E
- 算数7 かずの かんけいについて かんがえよう @
- 算数8 かずの かんけいについて かんがえよう A
- 算数9 かずを くらべよう @
- 算数10 かずを くらべよう A
- 算数11 かずを くらべよう B
- 算数12 かずを くらべよう C
- 算数13 かずを せんの 上に いちづけよう @
- 算数14 かずを せんの 上に いちづけよう A
- 算数15 かずを せんの 上に いちづけよう B
- 数の操作
- 算数16 くわえよう @
- 算数17 くわえよう A
- 算数18 くわえよう B
- 算数19 くわえよう C
- 算数20 くわえよう D
- 算数21 くわえよう E
- 算数22 2つに わけよう @
- 算数23 2つに わけよう A
- 算数24 2つに わけよう B
- 算数25 2つに わけよう C
- おわりに
はじめに
「ワーキングメモリ」という言葉は、現在、教育や福祉の現場で活動されている方々に広く知られるようになってきています。それは、子供たちの発達を測定するために一般的に使われる知能テスト(WISC)にワーキングメモリの課題が導入されたからです。ワーキングメモリが人間の知能の重要な一部として認識されるようになりました。
また、「発達障害」と呼ばれる子供の多くが、ワーキングメモリに問題を抱えていることもわかっています。こうしたことから、筋肉のように、ワーキングメモリをトレーニングして鍛えれば、ワーキングメモリの働きが「ひ弱」な「発達障害」の子供の「問題」も解決するのではないかという素朴な疑問が生じました。そこで、世界中の研究者が、知能テストで使われるような記憶の課題を用いたトレーニングを子供たちに短期的、集中的に行いました。まだ、はっきりとした結論は出ていませんが、多くの結果は、あまり芳しいものではありませんでした。それは、例えば、将棋のトレーニングを子供に行うと、少なくとも将棋はうまくなりますが、国語や算数のテストの成績がよくなるわけではないということと同じことです。
一方で、加齢に伴い、ワーキングメモリが発達するのは、確かなことです。小学校1年生と6年生が同じワーキングメモリのテストを行うと、6年生の方が高い得点を取ることができます。つまり、6年生の方が多くの情報を覚えながら、考えることができます。1年生より6年生が多くの情報を覚えながら、考えることができる理由は、はっきりとはわかっていませんが、少なくとも、小学校での学習を反映していることは確かです。
学習して身につけられるものは、知識やスキルです。ワーキングメモリの発達を支えている最も大きなものは、知識やスキルの増加です。PART1で説明しますが、脳は、左脳と右脳に分かれており、それぞれ取り扱う情報が異なっています。左脳では、言葉や数などの音声情報を取り扱います。右脳では、位置や形などの視空間情報を取り扱います。小学校入学以降、国語などの教科で学習した言葉や数などの音声情報の知識は、言語性ワーキングメモリの働きを助け、算数、理科、社会などで学習した位置や形などの視空間情報の知識は、視空間性ワーキングメモリの働きを助けると考えられています。本書では、ワーキングメモリそのものをトレーニングするわけではなく、ワーキングメモリがうまく働かず、国語や算数の知識の習得が遅れるというネガティブな循環に陥っている子供に対して、国語や算数に関わる知識の習得を助け、それによってワーキングメモリの働きを促すというポジティブな循環に向かうことを目指しています。即効性は期待できませんが、学力の向上の確実な一歩になるはずです。
2022年8月 /湯澤 正通
実践的な内容で明日からすぐに使えます。