- 刊行によせて
- はじめに
- 第1章 志水式「○つけ法」の理論と実践
- 愛知教育大学教職大学院教授 /志水 廣
- 1. 「○つけ法」で変わった子どもの姿を見て―親として
- 2. 子どもの気持ちに応える志水式「○つけ法」
- (1) 「愛」の現れ
- (2) 「○つけ法」をする前提
- 3. 志水式「○つけ法」とは何か
- (1) 「○つけ法」の具体例
- 4. 「○つけ法」の基本方針
- (1) 全員に○をあげる
- (2) わかる・できる喜びを与える
- (3) 部分肯定から始める
- (4) 9割の子どもが見通しをもった時点で回るようにするとよい
- 5. 志水式「○つけ法」は,出前方式
- (1) なぜ,出前方式なのか
- (2) 従来の机間指導でよいのではないか
- (3) 教師の意識調査より
- 6. 志水式「○つけ法」の実際的方法
- (1) 「○つけ法」のポイント
- (2) スピード
- (3) 正確さ
- (4) 声かけ
- (5) まずは,適用題から始める
- 7. 「○つけ法」のよさ
- (1) 教師にとってのよさ
- (2) 子どもにとってのよさ
- (3) 再び,教師にとってのよさ
- 第2章 「○つけ法」との出会いと実践
- 1. 石崎小学校の4年間のあゆみ
- (1) 4年間のあゆみ
- (2) 研修の成果―学力20%アップ
- (3) 本校の研修
- 2. 「○つけ法」との出会い:〜2005. 6
- (1) 「どうせできねーもん」
- (2) 志水廣先生への「無謀な? アタック」
- (3) 成果の出ない「少人数指導の実践や教員加配による算数の指導」からの脱却
- (4) 子どもたちの自己決定による,習熟の程度に応じた少人数指導班編制の実践
- 3. 「○つけ法」の実践
- (1) やる気を引き出す「○つけ法」ために
- (2) この項の見方
- 第3章 変わってきた子どもたちと教師
- 1. 1年目:2005. 7〜2006. 3
- (1) 「先生,もう終わりなの?」
- (2) 「私に合ってると思う」
- (3) 「○つけ法」を行う際のポイント
- (4) 「いざ,愛知へ」
- (5) 欠かせない両輪―『児童理解』と『学習指導』@
- 2. 2年目:2006. 4〜2007. 3
- (1) L字型だけ9割正解
- (2) 時間とエネルギーは子どものために〜質が変わった校内研修〜
- (3) 「児童たちのよいところを語り合おう」〜職員室でも部分肯定〜
- 3. 3年目:2007. 4〜2008. 3
- (1) 欠かせない両輪―『児童理解』と『学習指導』A
- (2) 再会 蜂須賀先生と子どもたちの授業「あの子が笑っている!」
- 4. ○をもらった学校 4年目:2008. 4〜
- (1) 思わず感涙の入学式
- (2) 「○つけ法」は生徒指導にも結びつく
- 5. 学校が変わった,教師が変わった
- (1) 保健室から見た本校の4年間
- (2) 職員室の立場から
- 〔特別寄稿〕
- 変わっていく学校・児童・教師 /木村 敬
- 私の見た石崎小学校の4年間 /蜂須賀 渉
- 私が関わった石崎小学校の4年間 /吉田 昭久
刊行によせて
「どうせできねーもん」,こんな言葉を子どもがつぶやいた。そんなことがあるだろうか。これが現実にあったのだ。そして,見事に脱出した。この本は,石崎小学校の教職員の汗と涙の記録である。確か2年前に行われた授業力アップセミナー志水塾茨城大会のレセプションのときのことである。石崎小学校の先生方と水戸で懇談した。「志水先生,『○つけ法』で子どもたちが変わったんですよ。保護者も評価してくれたんですよ」と話してくださった。しかも,学力テストの点数にも表れたという。
石崎小学校は,教師が変わることで,子どもが変わっていく姿を具現化した。「どうせできねーもん」という言葉から「やればできるかも」という意識に変わった。簡単に教師が変わったとか子どもが変わったとか言うが,実際にはなかなか難しいことである。全国の小学校・中学校を訪問してその難しさを体感してきた。
子どもを変えた突破口が「○つけ法」だったという。石崎小学校の先生方は,茨城から愛知教育大学公開講座や愛知県豊橋市,静岡県伊豆市での志水塾に積極的に参加して,「○つけ法」を学ばれた。多くの先生がわざわざ愛知県まで来られている。こういう熱心さ,精神エネルギーが子どもたちを変える基盤となっている。また,石崎小学校を学校訪問して実際に指導したのは,本学准教授の蜂須賀渉氏である。蜂須賀氏の健闘ぶりも評価したい。
さて,この本は,これまでの志水の本とは異なる。これまでの私の本は指導法について書いたものがメインだった。ところが,本書は大きなドラマになっている。どちらかというと,拙著『「愛」で育てる算数数学の授業』(明治図書)の実践編というべきだろう。教育の「愛」は厳しいもので,「知」と「心」の外化を求め,そして正しくキャッチ&リスポンスしていくことである。このキャッチ&リスポンスを希望をもって実践して,「愛」を降り注いだ結果,子どもがよりよく変容した。この精神的な支えとして茨城大学教授の吉田昭久氏の功績も大きい。吉田先生と志水の考えは一致する部分も多い。
石崎小学校の先生方と懇談していて受けた感銘を,ぜひ全国の皆さんに伝えたいという思いがよぎった。そこで,このドラマをぜひ単行本にしてはどうかと提案した。そうは言っても完成までに2年の月日を費やしていることからもわかるように,いくつかのハードルがあった。最終的には,石崎小学校の校長先生の了解のもと渡辺浩直先生からの努力でプロット案ができ,また明治図書の石塚嘉典氏や木山麻衣子氏の承諾を得て,単行本化する運びとなった。そして,2年の月日を経て,ようやく原稿の形となってできあがってきた。かなりまとまった本になったと思う。石崎小学校の皆様,ご苦労様でした。
この本は,単なるドラマでは終わらずに,一体どうやれば教師が変わるのかについて具体的に書かれている。ありがたいことである。ぜひ参考にしてほしい。
時代は閉塞感が漂っている。未来をになう子どもたちには明るく元気に学んでほしい。時代を切り開く生きる力をもってほしい。切に願うこの頃である。
本書が,一筋の光を見いだしてくれると信じている。
再度,石崎小学校の教職員の皆様,子どもたち,保護者の皆様に感謝いたします。ありがとうございました。
平成22年2月吉日 愛知教育大学教職大学院教授 /志水 廣
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- 明治図書
- どの子もわかる授業を実践するために、教師が身に着けるべき最初の授業テクニック。この方法を実践するようになって最初に変わったのが子供たちの反応。〇が欲しいとみんな思っているし、〇がもらいたくて一生懸命取り組む。勉強が面白い!と思わせることのできる指導法。ただし、本書にもあるように部分肯定を見極める目や声掛けが重要となるため一朝一夕では身に着けることができない奥の深い指導法。2024/5/27emma