- はじめに
- T 市毛式ではどのように鍛えようとしているのか
- 1 市毛式作文の指導法
- 2 市毛式作文指導をすると作文が楽に書ける
- 3 「何を書いていいかわからない」という状態
- 4 形式を教えることの意義
- 5 形式から内容へ
- 6 市毛式作文指導が鍛える力
- 7 書く順序の必然性
- U 市毛式による授業
- 1 口頭作文と並行させながら鍛える〈低学年〉
- (1) 入門期の指導のポイント
- (2) 市毛式作文指導における指導案
- (3) 授業の実際
- 【コメント】文章の構成をイメージ化させる「お魚作文」
- 2 作文メモで鍛える〈中学年〉
- (1) 指導案
- (2) 授業の実際
- 【コメント】〈分類地図〉との組み合わせは効果的である
- 3「対比的に書こう」で鍛える〈高学年〉
- (1) 指導案
- (2) 授業の実際
- 【コメント】書けない子への配慮のなされた授業
- V 山田式読書感想文指導ではどのように鍛えようとしているのか
- 1 山田式読書感想文指導法とはどのようなものか
- 2 山田式読書感想文指導法ではどのように鍛えようとしてるのか
- W 山田式による授業
- 1 生活科の活動体験で鍛える〈低学年〉
- (1) 指導案
- (2) 授業の実際
- 【コメント】生活科の学習との組み合わせが効果的である
- 2 山田式の読書メモで鍛える〈中学年〉
- (1) 指導案
- (2) 授業の実際
- 【コメント】読書感想文のイメージを変える
- 3 変容の意識化で「読み」を鍛える〈高学年〉
- (1) 指導案
- (2) 授業の実際
- 【コメント】ワークにはさまざまな配慮がなされている
はじめに
学校で子どもが書いている作文(ノートを除く)の大部分は生活作文である。生活作文の指導法の開発には数限りない教師のエネルギーが注がれてきた。その指導法の一つの結実を生活綴り方にみることができる。生活綴り方は日本の教師が開発した優れた指導法である。
指導法の開発に膨大なエネルギーを使いながらも、「作文技術をどのように指導するか」についてはごく一部の教師の問題意識にしかならなかった。作文技術が本格的に授業実践の課題として自覚され、議論され、実践されたのは、一九九〇年代に入ってからである。
しかし、欧米の作文教育は作文技術の教育であった。作文授業改革シリーズ1から4では、アメリカにおける作文技術教育を紹介した。作文授業改革シリーズ5では、日本における試みを紹介する。
生活作文の技術をわかりやすく、だれでもできるように示したのが市毛勝雄氏である。市毛氏の試みによって生活作文の技術的な側面に光があてられ、生活作文における作文技術の指導ができるようになった。
生活作文と同じ位に、どこの学校でも書かせている作文に読書感想文がある。
読書感想文の指導技術は、マニアと呼べる教師の私物化であった。それくらいに、読書感想文の指導法は不明であった。何をどのように指導したらよいかがわからなかったのである。
このような状況を打破したのが、山田加代子氏である。
氏の指導法は、きわめて明快である。かつ、大方の教師の読書感想文に対する考え方をコペルニクス的に転換したのである。
第一に、読書感想文は感想を書くのではなく、考えを書くのだということ。
第二に、主題について書く必要はかならずしもないということ。
第三に、本に書かれていることに対応する生活経験を比べて考えたことが書くべき内容だということ。
文章の書き方は、類比・対比を基本として書くと書きやすい。なぜか、考えた順序になっているからである。
山田式読書感想文指導が発表された時の反響の大きさの理由がわかろうというものである。
市毛式生活作文の技術と山田式読書感想文の技術は、現在の作文指導にとっておおいなる意義があることを確信している。
一九九四年四月 新潟言語技術の会 /大森 修
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