- はじめに
- Part1 自分をChange! 英語教師に役立つコーチングの基礎・基本
- 1 コーチングの語源
- 2 未来志向のコーチングと関連用語の違い
- 3 コーチングフロー
- 4 教師自身に関するコーチング
- 5 コミュニケーションスキルとしてのコーチング
- 6 自分を変えるパーソナルパワー
- 7 生徒への対応を見直そう
- 8 パーソナルスペースとパラダイムシフト
- Part2 生徒をChange! 心に届く場面別コーチング・マネジメント
- Scene1 ペアワークをしない生徒がいる
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント コミットメント(Commitment)
- Scene2 全体的におしゃべりが多く落ち着かない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント アイスブレイク(Ice Break)
- Scene3 生徒が授業中「英語がイヤだ,嫌いだ」と繰り返す―その1―
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 先入観に捉われない
- Scene4 生徒が授業中「英語がイヤだ,嫌いだ」と繰り返す―その2―
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 質問・傾聴・承認
- Scene5 授業に遅刻してくる生徒がいる
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント アドラー心理学
- Scene6 出来る子と出来ない子の差があり,授業がうまくいかない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 質問の種類
- Scene7 グループにすると無駄が多くなる(時間がかかる)
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 生徒の自己受容,他者信頼,社会貢献感
- Scene8 英作文指導がうまくいかない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント フィードバック(feedback)
- Scene9 生徒がなかなか宿題をやってこない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント コーチングの手順
- Scene10 英単語をなかなか覚えてくれない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 学習性無力感
- Scene11 生徒のやる気がなかなか出ない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 能動的リスニング
- Scene12 生徒同士が助けあい教えあう授業にならない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント ティーチングとコーチング
- Scene13 いったんは盛り上がるが,すぐ元に戻る
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 遊び Betterなコーチング例(テイク2)
- Scene14 指示すると一時的に変化するが長続きしない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント ABC理論
- Scene15 教師と生徒とのパートナーシップを築けない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント ビジョン提示力
- Scene16 教師が褒めても生徒があまりうれしそうではない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 褒めるより勇気づける
- Scene17 積極的に授業に取り組まない
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 中流意識をくすぐる
- Scene18 生徒の声が小さい
- 悪いコーチング例 Betterなコーチング例 コーチング・ポイント 恐れ(Fear)
- Part3 英語授業をChange! コーチングを活用した活動アイディア
- 1 押さえておきたい! 生徒を動かす法則
- 2 コーチングを活用した活動アイディア
- Activity1 総当たりインタビュー
- コラム iPod,iPad,iPhoneで出来るわくわく授業
- Activity2 消しゴムリレー―私がしたいこと(I want to ~.)―
- Activity3 2人で答える英語クイズ―英語に自信がなくてもOK―
- Activity4 ヒーローインタビュー
- Activity5 あいこじゃんけん―曜日や単語の復習―
- Activity6 若返り音読―すぐに使えるユニークな音読法―
- Activity7 先生が子どものころ―過去,過去進行形の導入―
- Activity8 部屋の四隅
- Activity9 感情移入スキット
- Activity10 英語deお願いします!
- Activity11 Give me the truth―真実を探せ!―
- Activity12 どこへ行くの?何しに?―不定詞の副詞的用法―
- Activity13 The fish in a fish bowl―友達の英会話を観察しよう―
- Activity14 4C’s(Color, Cuisine, Country to visit, Closet Dream)
- Activity15 サインをもらっちゃおう―ただのサインじゃつまらない!―
- Activity16 Kings and Queens―意外な人が自分になるゲーム―
- Activity17 ID Guessing Game―お互いのことを知ろう―
- Activity18 捜して,あわせて,4コマ漫画―英文をじっくり読もう―
- Activity19 英語スピーチほめほめ大作戦!―あたたかい言葉をかけよう―
- Activity20 20のわたし―英語で自分を語ろう―
はじめに
この本はビジネスの世界では当たり前になっている,コーチングの世界を覗いてみたいと思われるコーチング初心者の英語教師に向けて書いたものです。近年,日本の教師にもコーチングが知られ,実践に活かされている方にも多く会うことができるようになりました。
学校現場は常に問題に立ち向かい続けています。荒れや,モンスターペアレント,いじめに生徒指導と大変なことも多いです。事務処理も半端な量ではありません。仕事の大変さから,私の周りにも辞めていったり,休職をしたりする教師が何人もいました。荒れた学校では多い時には月に3回も,教師が離任式もなく学校を離れていくようなこともあります。世の中では,つい「指導の仕方が悪い」とか,「子どもの心がつかめなかった」と,辞めていく教師側のみに責任があると捉えられてしまう傾向にありますが,一生懸命子どもたちと向きあって,真剣に学校の荒れに立ち向かったからこそ,自分の心が疲れていくことに気がつかなかったのではないかとも思います。
いま,この本を手に取った先生の中には「学校,学級,授業をなんとかしたい」とわらにもすがるような気持ちの方もいるでしょう。困っている学校の同僚を助けたい一心で手に取っていただいた方もいるでしょう。そんな先生方に少しでも解決に近づくアイディアをと思い,執筆しました。
『最後の授業』という本を書き,癌でなくなったカーネギーメロン大学の教授,ランディ・パウシュはこう言っています。
Brick wall are there for a reason. Randy Pausch
(人生に壁があるのは,それを本気で乗り越えようと思っているかを確かめるためにある。)
また,有名なブランド,シャネルの創業者,ココ・シャネルはこう言っています。
Don’t spend time beating on a wall, hoping to transform it into a door. Coco Chanel
(壁をたたくのに時間を費やさないで,ドアを取りつけることを考えましょう。)
こんな,英語の格言をちょっと口にすると,我々英語教師はなんだか,やる気になります。英語が分かる喜び,たった26文字であらゆることが伝えられる,不思議な言語が奏でる英語のリズムが,英語好きの我々に,心地良い感覚や感動を与えてくれます。英語を学ぶことで,自分の中にあるpowerをより使うことができそうな気がしてきます。
いま,「授業がうまく成立しない」ということは,我々の成長を促すチャンスかもしれませんし,よくなる前兆かもしれません。壁をたたいてばかりいないで,新しいドアを取りつけてみませんか? そして,英語教師みんなで,一緒に子どもたちのやる気を引き出す英語授業をつくっていきましょう。たとえ,英語の力として生徒に活かされなくても,我々が真剣に取り組んだ姿勢は,生徒たちの心に何らかの希望の種を植えることになると思います。
私は,仕事が大変なとき,教員生活の中で先輩や同僚の励ましが,一番役立ちました。コーチングを学ぶきっかけになったのも同僚の先生からの励ましがあったからなのです。ですから,先輩や同僚への感謝の気持ちをPay it forward.(*1)するために教室,生徒,自分自身に変化をおこすための“仕組み”をここに提案したいと思います。
本書は3部構成になっています。
Part1「自分をChange!英語教師に役立つコーチングの基礎・基本」では,コーチングとは何か,そして,具体的なコーチングのプロセスについて簡潔に紹介していきます。日々変化する生徒たちや教育課題の中で,コーチングのプロセスを理解することで,より効果的なコーチングが可能になります。
Part2「生徒をChange!心に届く場面別コーチング・マネジメント」では,英語教師が日々の授業で直面する事例ごとのコーチング・ポイントを紹介しています。どのような原則のもとで,どのようなスキルを駆使し,生徒との間でどんな関係を築いていけばいいのかを考えていきましょう。
Part3「英語授業をChange!コーチングを活用した活動アイディア」では,実践的な授業のヒントを紹介しています。ここで紹介したアクティビティーは,構成的グループエンカウンターやPA,アイスブレイクなどを参考に,英語授業で使える形にしました。もちろん,英語授業以外の学級活動や特別活動にも役立ちます。この本を通じて,授業だけでなく教師自身の可能性もより大きく広がっていけばいいなと思います。
一口にコーチングと言ってもいろいろな手法があります。コーチングを初めて知る人の多くは日本式の部活動のコーチをイメージしているかもしれません。しかし,コーチングはコーチがじっと相手に尽くして,コーチングを受けた側だけが伸びていく,他人のためだけのテクニックではありません。コーチングは,コーチングを受ける側はもちろんコーチングを行う側も大きな人間的成長を遂げていくことができる,Win×Winの関係にあるものなのです。
厳しい状況下にある学校,その中で働く教師にとって,コーチングは新しい発想とアイディアを与えてくれることでしょう。ただし欧米のビジネス社会では当たり前になっているコーチングも,日本の学校にそのままの形で使おうとすると違和感を覚えることもあるかと思います。本書はコーチングを日本の英語教師が,実際に中学生と向きあう場面に厳選して紹介しました。では行きましょう! Here we go!
2012年11月 /日野 奈津子
(*1) 人から受けた厚意をその相手に対してでなく他の誰かに違う形で先送りして,善意を広げていくこと
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- 明治図書
- 本を手に入れて一気に読みました。なっちゃん先生が達セミの講座で言っていたことを本を読みながら思い返しました。本を読んだ後すぐに、達セミ2013年新春のなっちゃん先生の講座をDVDで観ました。本の内容はとても読みやすく、著者が一番伝えようとしていることを捉えることができた気がします。2013/3/25ようへい