新保育所保育指針の展開
保育の真髄を伝える

新保育所保育指針の展開保育の真髄を伝える

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今回“告示化”された新保育所保育指針から、8つのキーワードを取り出し、指針に結びつくポイントとともに事例を盛り込んだ新しい形の解説書。保育経験者には専門性をより深めるために、保育士を目指す人には「子ども中心の保育」を学ぶためのバイブルとしてオススメです。


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ISBN:
978-4-18-837921-9
ジャンル:
学習指導要領・教育課程幼児教育
刊行:
対象:
幼児・保育
仕様:
A5判 224頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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保育の真髄を伝える 〜子どもを中心におく保育〜
T章 保育の根幹を知ろう
キーワード1 連続性――解説・結びつく保育指針とポイント
1-1 生活と発達の連続性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
1-2 子育ての伝承の連続性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
1-3 評価の連続性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
キーワード2 相互性――解説・結びつく保育指針とポイント
2-1 養護と教育の一体性と相互性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
2-2 生活や遊びを通しての総合的な保育と相互性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
キーワード3 関係性――解説・結びつく保育指針とポイント
3-1 子どもと大人との関係性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
3-2 子どもと子どもとの関係性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
3-3 保護者と保育者との関係性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
3-4 保育所と専門機関,幼稚園,小学校などとの関係性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
U章 子どもの最善の利益を考慮しよう
キーワード4 生命・命――解説・結びつく保育指針とポイント
4-1 子どもの生存権――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
4-2 養護(生命の保持と情緒の安定)――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
4-3 子どもの人権――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
4-4 子どもの食――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
キーワード5 生活――解説・結びつく保育指針とポイント
5-1 最もふさわしい生活の場――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
5-2 基本的生活習慣――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
5-3 乳児の生活――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
5-4 生きる力の基礎を培う――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
キーワード6 環境――解説・結びつく保育指針とポイント
6-1 環境を通して行う保育――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
6-2 5領域の「環境」――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
6-3 人との関わりを育てる環境――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
6-4 地域にひらかれた環境――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
V章 保育士としての自覚を持とう
キーワード7 専門性――解説・結びつく保育指針とポイント
7-1 発達援助の専門性――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
7-2 専門機関との連携――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
7-3 研修・自己研鑽――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
キーワード8 ミッション――解説・結びつく保育指針とポイント
8-1 子どもの最善の利益の考慮――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
8-2 保育所の社会的責任――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
8-3 保護者・関係者との連携――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
8-4 保護者支援――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
8-5 自己評価,第三者評価――解説・事例・結びつく保育指針とポイント
付録
1 保育所保育指針
2 保育所保育指針等の施行等について
3 保育所における質の向上のためのアクションプログラム
4 保育所保育指針の施行に際しての留意事項について

保育の真髄を伝える〜子どもを中心におく保育〜

 新しい保育所保育指針が公布され,2009(平成21)年4月から施行されることとなりました。指針改定の当初から,改定の第一の特徴で必ずあげられる“告示化”ということに対する疑義や今後への影響が様々に論じられてきました。そしてその議論は今も続いています。

 本書を編集するに当たって,次の視点は非常に重要なことでした。つまり,指針が告示化されることによって,遵守すべき最低基準として位置付けられた意味を,それによって拘束され規制されるものとしてではなく,最低基準をむしろ向上させる創意や工夫が一層拡がる契機として受け止め,活用する方向です。

 指針の告示化により,個々の保育所の創意,個性,独自性が制限され,均一化,画一化されるという懸念や疑問は,最低基準を最高基準として受け止めることから生じている傾向が比較的多くみられます。児童福祉法第45条は,その第1項で,「……最低基準は,児童の身体的,精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければならない。」と定めた上で,さらに第3項で,「児童福祉施設の設置者は,児童福祉施設の設備及び運営についての水準の向上を図ることに努めるものとする。」と,その水準以上の量的質的向上を義務づけているのです。これを受けて,児童福祉施設最低基準は,まず第3条で,都道府県知事は,児童福祉審議会等の意見を聴き,「その監督に属する児童福祉施設に対し,最低基準を超えて,その設備及び運営を向上させるように勧告することができる。」とし,さらに第4条で,「児童福祉施設は,最低基準を超えて,常に,その設備及び運営を向上させなければならない。」と定めています。

 今日の社会や家庭の状況を踏まえ,以上のことをあらためて深く認識すると,わが国の児童福祉施設の中でも格段に数多く,地域に深く根ざして活動している保育所が,地域における保育及び子育て支援をすすめる役割・機能を発揮する上で,さらに保育の質の向上に努めることが如何に重要なことかが理解できます。そして,指針の告示化は,規制や拘束が強まるということよりも,むしろ最低基準を超える保育の質を真に高めることのできる機会を拡げる契機となると受け止めることができます。保育そして保護者支援の質の向上は,新指針が最も重視する方向性といっても過言ではありません。


 さて,保育の専門性や質の向上は,何のために求められているのでしょうか。つまり,保育所保育は何のためにあるのでしょうか。そして子どもにとって保育とは何なのでしょうか。本書を編集するに当たって,私たち3名の著者は,編纂の意図を語り合いました。多くの保育所保育指針の解説書が,「告示」の内容や「保育所保育指針解説書」の解説版という性格を有しています。本書ではこの枠組みにこだわらず,子どもにとって意義のある保育とは何かを,指針の構成や内容を踏まえて,あらためて検討してみました。

 保育は,親・保護者のためにあるのではなく,まして保育所のためにあるのではなく,子ども自身のためにある。まずこのことが,出発点となりました。そこを基軸にしてみていくと,親・保護者の子ども観,子育て観,保育者の子ども観・保育観が如何に重要なものであるかがあらためて浮かび上がってきます。新指針をこの視点から見ていくと,保育者がどのように保育をすすめようとするかという観点を一歩退かせ,個性ある一人一人の子どもの育ちをどう受け止め,そこに関わっているかという観点で,指針をとらえていくことができます。

 例えば,「第1章 総則」―2の1には,「保育所は,……入所する子どもの最善の利益を考慮し,その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」と書かれています。総則3の1のアには,「子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に,その生活時間の大半を過ごす場である。このため,保育所の保育は,子どもが現在を最も良く生き,望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために,次の目標を目指して行わなければならない。」とし,六つの重要な目標を掲げています。また「第6章 保護者に対する支援」―「1 保育所における保護者に対する支援の基本」では,「1 子どもの最善の利益を考慮し,子どもの福祉を重視すること。」,「2 保護者とともに,子どもの成長の喜びを共有すること。」と書かれています。

 このように,この観点で指針の各章各節をみていくと,それぞれ順を追って独立してとらえることができる一方で,いずれの章も,一つの目標や方向性を目指していることがわかります。その目指しているものは何かを探っていき,私たちはそれを“保育の真髄”と名づけることとしました。

 子どもを中心におき,深い子ども観と子育て観に基づく保育という営みの真髄を伝えている保育所保育指針の解説,これを私たちは本書の特徴としています。

 保育の真髄を伝えてくれている指針の内容,この内容すべてを概観した時,以下のように三つの層に分けてそれをとらえることができます。まず第一の層として,あらゆる保育の営みの根幹にある「連続性」「相互性」「関係性」としてまとめることができます(T章 保育の根幹を知ろう)。第二の層として,子どもの最善の利益を図る営みの根幹にある「生命・命」「生活」「環境」としてまとめることができます(U章 子どもの最善の利益を考慮しよう)。第三の層として,これらの営みを支える保育者や保育所の機能・役割の根幹にある「専門性」「ミッション」としてまとめることができます(V章 保育士としての自覚を持とう)。

(図省略)

 本書は,とくに保育所において経験を積んでおられる方々には,子ども主体の保育や保護者支援という観点からあらためてその専門性を探り深めていく上で何らかのお役に立ち得ることを望んでいます。まだ十分な経験を積んでおられない方々やこれから保育士になりたいと志しておられる方々には,『保育所保育指針解説書』をともに紐解きながら,子どもを中心においた保育を学び取る上で是非参考にしていただくことを望みます。本書は,必ずしも保育所や幼稚園に限らず,家庭的保育や在宅保育など様々な保育の営みに深く関わっておられる方や保育士養成に関わっておられる方々にとっても,保育の真髄を探り学び取っていく上で,参考にしていただければ幸甚です。


   著者代表 /網野 武博

著者紹介

網野 武博(あみの たけひろ)著書を検索»

東京家政大学家政学部児童学科 教授

増田 まゆみ(ますだ まゆみ)著書を検索»

目白大学人間学部子ども学科 教授

天野 珠路(あまの たまじ)著書を検索»

厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課 保育指導専門官

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書

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