- はじめに
- 第T部 材料編
- T章 季節のうた
- 1 しょうがつてええもんだ
- 2 しょうがついいな
- 3 とんとんとん
- 4 ななくさなずな
- 5 どんどやきは
- 6 おまっつぁま
- 7 さぎちょう
- 8 なるかならんか
- 9 なろがならねが
- 10 ツングラ,マングラ
- 11 ゆきこんこんよ
- 12 かたゆきかんこ
- 13 ひなさまこさま
- 14 ほ,ほ,ほたるこい
- 15 こむいじょ
- 16 たなばたさんが
- 17 とうだほしゃ
- 18 ぼんのちょうちん
- 19 こおろぎころころ
- 20 おえべすさんのこんりょう
- 21 ピーピーぐさ
- U章 遊ばせ遊び
- [A 顔遊び]
- 【顔・頭】
- 1 アンコ,ジョージョー
- 2 メン,メン,スー,スー
- 3 トノサマ,オチャクザ
- 4 ココハトウチャン
- 5 イケノハタ モーテ
- 6 オオヤマ,コヤマ
- 7 むかえの おさんどん
- 8 つつきましょう
- 9 ハナチャン
- 10 オデコサンヲマイテ
- 【頭・耳たぼ】
- 11 コーブロ
- 12 ボウズ
- 13 さよなら
- 14 ひっとり,ふったり
- 15 メン,メン,タマグラ
- 16 デキモン,カチ,カチ
- 17 ベンケ,カンケ
- [B 手を使った遊び]
- 【子どもの手で,顔・頭にさわる】
- 18 おちょず
- 19 サンダンノ
- 20 シッタラ
- 21 こっちのたんぽ
- 22 チョチ,チョチ
- 23 かんてきわって
- 24 オッタコ
- 【指・手のひら】
- 25 ここは,てっくび
- 26 オヤユビネムレ
- 27 コゾー,ネロ
- 28 チョッ,チョッ,チョッ
- 29 トウキュウト
- 30 イッスンボウシ
- 31 まがんこ
- 32 2階へあがらしてや?
- 33 イッチク,タッチク,タエモンサン
- 【手の甲をつまんでふる】
- 34 ジー,ジー,バー
- 35 こめついたら
- 【両手をもってふる】
- 36 このこどこのこ
- 37 あぁひや,こひや
- 38 かご,かご
- 39 キッコ,バッコ
- 40 こんやのねずみ
- 41 チュチュコッコ
- 42 ドドッコヤガイン
- [C.足・ひざの遊び]
- 【足の指】
- 43 いちり
- 44 この豚ちびすけ
- 【足の甲にのせる】
- 45 カッテコ,カッテコ
- 46 マツコオドレバ
- 47 アシ,アシ,アヒル
- 48 つんなんごう
- 【足ぶらんこ】
- 49 タマゲタ
- 50 ギッコン,バッコン
- 【ひざのせ】
- 51 馬はとしとし
- 52 ばくさん,ばくさん
- 53 どんぶかっか
- 54 しろきやの
- 55 オスワリヤス
- 【馬のり】
- 56 うまやうまや
- 57 おんまさんの,おけいこ
- 【舟こぎ】
- 58 ぎっこ,ばっこ,ひけば
- 59 オフネガ
- 60 ギッコン,バッコン
- 61 もみすりおかた
- 【背中にしょって歩く】
- 62 ぜんぜがのんの
- 【その他の体の部分を使った遊ばせ遊び】
- 63 いちめどー
- 64 せっくんぼ
- V章 3〜4人で遊ぶ
- [A 互いの手の甲をつまむ]
- 1 いちばちとまった
- 2 つめこなんじょ
- 3 いたちごっこ
- [B 何かを数えて遊ぶ]
- 4 ひっとり,ふったり
- 5 イッチク,タッチク
- 6 うしぬぱん,それそれ
- 7 せんべ,せんべ
- 8 オエビス,ダイコク
- 9 いっちくたっちく
- [C 人持ち遊びのいろいろ]
- 10 たけんこがはえた
- 11 こりゃどこの
- 12 このこどこのこ
- 13 たなばたさんが
- 14 このこぁきかんこ
- [D その他の遊び]
- 15 おはぎがおよめに
- 16 たんす,ながもち
- 17 さっきないたからすは
- W章 2歳児クラスの遊び
- 1 ぎっちょ
- 2 こめついたら
- 3 コメ,コメ
- 4 タマゲタ
- 5 カク,カク
- 6 にぎり
- 7 ととけっこー
- 8 モグラモックリショ
- 9 さよなら
- 10 チュチュコッコ
- 11 いまないたからすが
- 12 さるのこしかけ
- 13 コーブロ
- 14 ももや
- 15 うえから,したから
- 16 いっぴきちゅう
- 17 もぐらどんの
- 18 ゆきはいっしょう
- 19 オカゴギチ,ギチ
- 20 オサラニタマゴニ
- 21 ナコウカ,トボウカ
- 22 カッテコ
- 23 せっくんぼ
- X章 ことばのユーモア
- 1 ドンチャンドンチャン
- 2 ひふみつ
- 3 いっちょここんぼこ
- 4 ほずけ,ほずけ
- 5 ほろろ,ほろろ
- 6 いっぽい,ちょいちょい
- 7 まいごのまいごの
- 8 いちべえさん,いもきって
- 9 いそろばんちゃ
- [ごろあわせ]
- =あ=
- 1 あかいとりことり
- 2 赤いふくろに
- 3 あんよなげだす
- 4 いっぷくたっぷく
- 5 うめぼしや
- 6 お月さんお月さん
- 7 オクヤマニ
- 8 おなかがすいてた
- 9 おぼうさんだいだいだい
- 10 おやがめの上にこがめ
- 11 おじろおじろ
- 12 おやすみ あかちゃん
- =か=
- 13 からすこ口あけろ
- 14 こうやの水は
- 15 からすとすずめは
- 16 こけこうのめんどりは
- 17 ころりやころりや
- 18 こんこん小山の小兎は
- =さ=
- 19 しんこう寺じょうとく寺
- 20 正月はくーるくる
- 21 正月三日に
- =た=
- 22 たんぽぽたんぽぽ
- 23 ちいちゃな風は
- 24 ちょうちょちょうちょ
- 25 とんきりじゃみすけさん
- =な=
- 26 泣く子は山のきじの子
- 27 にわか雨だ
- 28 ねむの木ねむの木
- =は=
- 29 ばんけばんけ
- 30 ふなのこは川に
- 31 ほれほれ雨が
- =ま=
- 32 (心のやさしいあひるたち)
- 33 昔 まっこう
- 34 めめぞが 三匹
- =や=
- 35 やすべーじじーは
- [2歳後期 ごろあわせと並んでしてあげるミニ文学]
- 36 お母さんが おかしづくり
- 37 女の子とスカート
- 38 くまさんのおでかけ
- 39 タオルとおぶう
- 40 何をみたの?
- 41 だだっこさん
- 42 ねずみが おかゆをたいた
- 43 ミルクをのむと
- 44 みんなでぐるぐる
- 45 やまとのやまとの
- 第U部 伝承編
- 1 わらべうたと育児の学校〜遠野 /露木 大子
- 2 親子わらべうた“あひるくらぶ” /村上 珠美
- 3 遊びの講座“まめっちょ” /小林 衛己子
はじめに
今回の『いっしょにあそぼうわらべうた0,1,2歳児クラス編』では,1対1でする遊ばせ遊びを実践の中心におきました。それ以外の歌やわらべうたも乳児保育の中で,適宜に,創意をこらして使うことができますが,しかし,過去30年におよぶ広汎な実践の中で,1対1でする遊ばせ遊びが,他のどんな方法論にも増して,大人と子どもの対等で深い人間関係作りに果たす役割がたしかなものとなったからです。
アメリカの心理学者ニューソン夫妻は『おもちゃと遊具の心理学』(黎明書房 1981年)という本の第2章を「おもちゃとしての人の役割・ひざとゆりかごの遊び」の紹介に当てています。その中で遊ばせ遊びは,生まれたときから赤ちゃんの社会性に向けて働きかける大人の活動である,といい,一言で母子間の愛の儀式であるとさえ言っています。
もしあなたが遊ばせ遊びを知らなくても,バーとか,コチョコチョをしたり,ベロベロとか,ブーとかあやし言葉を使ってあなたの赤ちゃんへの愛情を表現することができるし,だれでもしていることでしょう。それも子どもに多大の喜びを与えます。
「殿様お着座2人のご家来 おんどりめんどり 急いでご入来 チンチョッパー チンチョッパー チンチョッパー チン」という顔遊びを例にとるならば,ただチンチョッパーとか言ってあごをくすぐってあやすだけと,このような唱えどと全体を唱えつつ,ひたいから順にさわる。“儀式つき”の遊びをするのとでは全く違うのです。“儀式”は,大人の人生においてもそうであるように,赤ちゃんがくすぐりによって得られる“自分の喜び”を吟味する機会を与えてくれます。
そこには,してあげる大人としてもらう子どもとの間に,特別な体験を生み出し,多くの学者(ニューソンのような心理学者,ローレンツのような動物学者,日本では小林登氏のような医者等々)が気づいているように,赤ちゃんの動物的で本能的な感情を社会化・人間化に向けて磨きます。
第一部『材料編』では,五つの部類分けを試みました。
第T章 季節のうたは,殆どが短くてやさしいわらべたですから,とくにおすすめする遊び方を記しませんでした。みなさん自身の創造性を生かして実践の中で役立てて下さい。
第U章 遊ばせ遊びは,上に述べたように乳児保育のさまざまな場面をさまざまな意味と深さでみたす主役です。
第V章には,手の甲の重ね遊びと,物(又は子どもの頭や手足)かぞえと人持ち遊びという三つの伝承的な形を集めました。三つとも,遊ばせ遊びとは違った形で大人が入って(昔は大きい子が入って)子どもを遊ばせるものです。
第W章に紹介する遊び方は,2歳児クラス専用のものです。より小さい子どもたちとすることはできません。
第X章には,聞いているだけでも笑えてくるような歌を集めました。このような歌を口ずさみ,楽しむ中でみなさん方のユーモア感覚も育つことでしょう。
早口言葉などと同じように発音の練習,よりよく日本語を言う練習になります。教科書がなかったころ,大人たちが遊びながら子どもに与えた日本語のレッスンです。
ここで二つ,みなさんと約束しておきたいことがあります。一つは,あなたの保育室で子どもの食事または授乳が始ったら,同じへやの中で,たとえ離れていて見えなかったりしても,歌をうたうことは避けて下さい。食べたり飲んだりするときに使われる口,舌などの諸器官は,話したりうたったりするときにも使われ,しかも同じ器官が逆の方向に運動するからです。
まだ神経の髄鞘化が進んでいない乳児では(完成には生後2か年が必要。『新訂・乳児の保育・幼児の保育』第2部2.3.4.参照),摂食行動もまだ練習中で不安定であることも考慮し,食事と歌が同時進行にならないようにしましょう。食事の前に子どもに歌をうたわせることも大変まちがっています。これは,だ液の生成という生活リズムによって起こる体の働きを混乱させるからです。
もう一つには,顔遊びや手遊びなどを子どもにしてあげたら,必ず子どもが“お返し”をしてくれることを要求しましょう。「あなたもして…」といって顔や手を出せば,子どもはどんなに小さくても,同じことをあなたの手や顔にしようとします。もちろん,歌や言葉は私たちが言います。子どもの手をとって“正しく”やらせようとすることはまちがっていますし,まだ手先が不器用な乳児にやれるはずもありません。それでもやったつもりになれることが子どもの能動性を高めます。
遊ばせ遊びの中には,わらべうたにも増して理解しにくい言葉や状況が含まれているかもしれません。個々に説明できるような言葉はできるだけ解説したつもりです。子どもにとってこのことは少しも困ったことではありません。大人が分かっていればそれは子どもにも伝わるのですし,子どもは個々の言葉から入るのではなく,遊び,リズム,ごろの面白さなどをひっくるめて体でうけとめ,“分からない部分”をも,より楽しもうとくり返しせがむのです。
遊ばせ遊びを知れば知るほど,その中に日本の民族や生活,考え方や感じ方について多くの情報が含まれていることが分かってきます。一つ一つの遊ばせ遊びの奥がいかに深いかということ。と同時に,遊ばせ遊びやわらべうた,ごろあわせなども,より大きい世界の一端にすぎないことも分かってきます。その世界とは,いうまでもなく日本民族の伝承そのものであり,その世界から私たちが汲もうとするメッセージは,私たち自身のゆりかごを発見し,愛することです。
みなさんが乳児保母として発達心理学や心理学を勉強し,科学的法則性にそった育児や遊びを組織し,提供することのいちばん大切な意味は,自分を愛せる子どもを育てることにあると思います。
自分を愛せる子ども(あるいはそういう子どもの人格は)情緒的に安定し、円満で自分でないものや、自分とは違うものをしりぞけないで、一緒にやっていこうとする意欲の強い子どもになります。日本の子どもも、いろいろな国の子どもと保育園や幼稚園や学校で一緒に育つ時代になってきました。国際化の時代に最も大切なことは、私たち子育てをする大人が安定した日本人としての同一性(アイディンティティー)をもつことです。日本人としての自分を愛することなしに、他民族、異文化の家族や子どもたちと同じように自然に受け入れることはできません。
ただわらべうたをするだけのものでなく、日本の小さい子どもにかかる伝承の世界を知り、感じていただくためにこの本の第二部を露木大子さんにかいていただきました。
あなたが少しでも多くの遊ばせ遊びを知り、子どもに喜びを与えると共に、あなた自身、あなたのゆりかごを発見し、愛する旅にのぼってほしいと思います。そして、正しい育児と共にすばらしい伝承を1人でも多くの親ごさんに伝えてほしいと希います。
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- 明治図書
- とても見やすく、わかりやすいです。2017/11/1150代・幼保勤務