- まえがき
- 1 「アシスティブ・テクノロジー」とは(その2)
- 1 アシスティブ・テクノロジーとは
- 2 アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーションとは
- 3 アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーションの方法
- (1) 同時処理型シート/ (2) 継次処理型シート
- 4 アシスティブ・テクノロジー・コンシダレーションの活用
- 2 さまざまなシンボルとMOCA
- (Manga Output Communication Aid)
- 1 シンボルの利用
- 2 外国製シンボル
- 3 マンガ文化
- 4 シンボル=わかりやすさ
- 5 マンガ風シンボルあれこれ
- 6 MOCAのはじまり
- 7 MOCAの特徴
- (1) マンガ風表現/ (2) 漢字を添える/ (3) 日本的表現/ (4) 相対表現/ (5) 異なる表現の統合/ (6) ほのぼの感/ (7) 他のシンボルにないもの
- 8 シンボルの限界
- 9 MOCAのこれから
- 3 おすすめ「ちょいテク」支援グッズ実践例
- 1 自閉症支援と「ちょいテク」の接点
- 2 自閉症児の時間認知・プランニングの支援
- 3 自閉症教育とICT活用(MOCAシンボルの活用)
- 4 自閉症教育でのVOCAの活用
- 5 教室で「ちょいテク・コミュニケーション」
- 6 PICとJIS絵記号のはなしーシンボルを活用するために
- 7 100均&ホームセンター教材 自閉症教育編1 構造化関連グッズ
- 8 100均&ホームセンター教材 自閉症教育編2 教材・教具関連グッズ
- 9 100均&ホームセンター教材 自閉症教育編3 コミュニケーショングッズ
- 10 安いコミュニケーション・エイド SHOVOCA(ショボカ)でいっぱいおはなししよう
- 11 VOCAのシンボルをどう選ぶか
- 12 スーパートーカーのスーパーな活用法
- 13 コミュニケーションエイドソフトウェア,PICOT(Pictorial Communication Tool:ピコット)
- 14 VOCAを取り入れた授業二例
- 15 日本語VOCAの近未来 高性能VOCA試作品「T・S」を使って
- 16 儀式的行事における視覚支援をPower Pointで簡素化
- 17 Power Pointを使って教材を作ろう!
- 18 Power Pointを使った,「てにをは」(助詞)や「つなぎことば」」(接続詞,接続助詞)の学習教材
- 19 Power Pointのマクロを活用した教材
- 20 携帯ゲーム機PSPの活用―VOCAやWeb教材提示機として活用―
- 21 時間概念の視覚支援の工夫(アナログ技から自作ソフトまで)
- 22 Flash自作教材と授業づくり お金が使えるようになるために
- 23 携帯音楽プレーヤー,携帯ゲーム機をコミュニケーションツールとして活用しよう―iPod・PSPの教育的活用の具体例―
- 24 木工作業学習における「ちょいテク」
- 25 職業専門教育とコンピュータ
- 26 ことばの指導とICTの活用
- 27 支援会議などの会話記録を分析して,チーム作りに生かす
- 28 小規模養護学校にできること―開校から2年・珠洲分校と教育相談―
- 29 学校までのナビゲーション作り―Flash Maker3を使ったすぐできる教材作り―
- 30 わが子にあった代替マウス「かおマウス」―お父さんのハイテク―
- 31 調理実習レシピを活用した助詞の学習
まえがき
本書は特殊教育現場のよい実践を「アシスティブ・テクノロジー(Assistive Technology)」という観点からまとめたものです。前書『特別支援教育のための「ちょいテク」支援グッズ36―アシスティブテクノロジー・小ネタ集―』の続編にあたります。
「アシスティブ・テクノロジー」とは,簡単に言うと,世の中にある様々な機器や道具を障害のある子どもの支援に使おうというものです。
機器といっても,コンピュータのようなたいそうな機器だけをさすのではありません。
財布から上手に選んでお金を出せない子どもには箱形に開く小銭入れを使えばいいかもしれません。何をするかすぐ忘れてしまう子どもにはポスト・イット(R)を貼って,終わったらはずすようにするといいかもしれません。すぐに歯磨きを終えてしまう子どもにはタイマーを使って磨く時間を示すと長く磨けるかもしれません。上肢に不自由があり整った字を書くことができない子どもにはワープロを使うといいかもしれません。
「あれっ,これって一般の大人や子どもも使ってるじゃないの」と思われたかもしれませんね。そうです。世の中にある様々なものは全ての人の生活や学習を支援してくれる機器・道具(デバイス)でもあるのです。その中で,特に障害のある人の学習や生活を支援するものを「アシスティブ・テクノロジー・デバイス」と呼んでいます。ですから,身近な道具もおもちゃも,その目的で使えば立派な「アシスティブ・テクノロジー・デバイス」です。
本書では「ちょいテク」「小ネタ集」という語を加えてきました。「ちょいテク」は「ちょいと使えるテクノロジー(ちょいテク)」という意味です。本書は「簡単でちょっと笑えるアイディア(小ネタ)」という観点から編集しています。
コンピュータを使った手間のかかる「正統派」の教材製作・実践も掲載していますが,使う人は難しいことは考えなくても大丈夫です。おもしろいと思われたものは,どんどんまねしていただけたら幸いです。
第1章では「アシスティブ・テクノロジー」について解説しました。前書では「アシスティブ・テクノロジーとは何か」を解説しましたので,本書では一歩踏み込んで「子どもに適したアシスティブ・テクノロジー利用計画を策定するにはどうしたらよいか」について書かせていただきました。
第2章では佐原先生が,様々なコミュニケーション・シンボルについて解説しています。絵心経から漫画シンボル「MOCA」までのお話は,日頃大変おもしろく聞かせていただいていました。本書を作るにあたって,ぜひとも書いていただくようにお願いしました。
第3章は前書に引き続き,全国の様々な実践を紹介しています。今回は知的障害や自閉症に対応した実践を多く載せるように努力しました。まじめな中に,ほほえんでしまう,「小ネタ」をたくさん収録できたと思います。
今回は付録のCD-ROMをつけました。佐原先生が描いたMOCAシンボル約1000個を収録できたのは今回の目玉でもあります。MOCAシンボルは佐原先生が著作権をお持ちですが,学校で使用するにはフリーとされていますので,どんどん使って下さってけっこうです。
この他,好評をいただいた神佐先生のFlash教材なども収録しています。
よい実践はどんどん応用していただけたら幸いです。そして,そのアイディアの元となった実践者に「こうした方がうまくいったよ」と報告していただけたら幸いです。また,ぜひ雑誌『特別支援教育の実践情報』にご投稿いただけたらと思います。よい実践はみんなで育てていくことが大切だと思います。
最後にこの場をお借りして感謝を述べさせていただきたいと思います。
前書『特別支援教育のための「ちょいテク」支援グッズ36―アシスティブテクノロジー・小ネタ集―』をご支持下さった皆様,ありがとうございました。皆様のご支持があったおかげで,続編を出させていただきました。
何事もちゃらんぽらんな私に愛想をつかさず,いっしょにご執筆下さった皆様,明治図書の三橋様,及川様,ありがとうございました。皆様のおかげで,よい実践集ができたと思います。
私の「ホーム」である滋賀大学教育学部附属特別支援学校の同僚の皆様,ありがとうございました。自由で活力のある学校で仕事ができてほんとうに嬉しく思います。よい同僚に恵まれたことも,本書の背景となっています。
/大杉 成喜
(滋賀大学教育学部附属特別支援学校)
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