- まえがき
- 第T章 「思考力・判断力・表現力」をつける社会科授業づくり
- [1] 社会科でこそ育成する「思考力・判断力・表現力」
- §1 新学習指導要領と「思考力・判断力・表現力」
- §2 社会科で育成する「思考力・判断力・表現力」
- §3 「思考力・判断力・表現力」を育成するための4つの活動
- [2] 「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科授業
- §1 「思考力・判断力・表現力」をつける授業のあり方
- §2 新学習指導要領「社会」における「思考力・判断力・表現力」
- §3 「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科授業の視点
- §4 「思考力・判断力・表現力」をつける中学校社会科授業開発の工夫
- 第U章 「思考力・判断力・表現力」をつける地理授業デザイン
- [1] 「資料から必要な情報を集めて読み取る」授業づくり
- 授業モデル「グラフに親しもう」
- [2] 「社会的事象の意味・意義を解釈する」授業づくり
- 授業モデル「EUの結成とアジア」
- [3] 「事象の特色や事象間の関連を説明する」授業づくり
- 授業モデル「環境問題の背景―酸性雨を例に―」
- [4] 「自分の考えを論述する」授業づくり
- 授業モデル「米を通じた日本理解」
- 第V章 「思考力・判断力・表現力」をつける歴史授業デザイン
- [1] 「資料から必要な情報を集めて読み取る」授業づくり
- 授業モデル「わがまちの江戸時代の産業〜その時,草津の歴史は動いた!〜」
- [2] 「社会的事象の意味・意義を解釈する」授業づくり
- 授業モデル「開国前後の幕府の力を判定しよう」
- [3] 「事象の特色や事象間の関連を説明する」授業づくり
- 授業モデル「奈良時代の人々のくらし」
- [4] 「自分の考えを論述する」授業づくり
- 授業モデル「連合国軍の占領と諸改革」
- 第W章 「思考力・判断力・表現力」をつける公民授業デザイン
- [1] 「資料から必要な情報を集めて読み取る」授業づくり
- 授業モデル「放置自転車から現代社会を見てみよう」
- [2] 「社会的事象の意味・意義を解釈する」授業づくり
- 授業モデル「ソレイユを経済しよう!〜大商業施設乱立期に,ソレイユが生き残るための作戦をさぐれ!〜」
- [3] 「事象の特色や事象間の関連を説明する」授業づくり
- 授業モデル「国民生活と政府の役割」
- [4] 「自分の考えを論述する」授業づくり
- 授業モデル「消費生活と経済のしくみ」
- 第X章 「思考力・判断力・表現力」をつける授業評価の開発
- [1] 中学校社会科授業評価のデザイン
- §1 社会科授業評価とは
- §2 社会科授業評価をデザインする
- §3 社会科授業の評定をデザインする
- [2] 評価方法・評価問題の工夫
- §1 「思考力・判断力・表現力」の評価の課題
- §2 子どもの社会の見方・考え方の成長
- §3 単元「社会的問題の調査・発表をしよう」
- §4 子どもの学びの実際
まえがき
平成20年3月28日に新しい中学校学習指導要領が告示されたが,これからの授業改革を求める改訂のポイントとなるキーワードは,「思考力・判断力・表現力」の育成であろう。それは,社会的事象や問題を単に知る・わかるだけでなく,その背景を熟考し,それに対する自分なりの意見や考えを持ち,それを表現しながら社会への参加・参画を考えていく力である。
このような改訂の背後にあるのが,改正学校教育法第30条第2項の次の規定であろう。「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない。」
では,社会科教師は,これをどう受けとめ,実践していくことが必要となるのであろうか。換言すれば,「社会科だからこそ育成することが求められる,『思考力・判断力・表現力』とはどのような力なのか」「その育成のためにはどのような授業設計を行うことが求められるのか」「具体的にはどのような単元レベルの授業デザインが必要となるのか」,これらの問いに答えていくことが求められる。
このような問題意識から企画された本書の第T章では,「思考力・判断力・表現力」の概念規定と,その育成のための授業方法を提案していきたい。第U〜W章では,「資料から必要な情報を集めて読み取る」「社会的事象の意味・意義を解釈する」「事象の特色や事象間の関連を説明する」「自分の考えを論述する」という,「思考力・判断力・表現力」を育成するための4つの主要な学習活動に着目して,地理的分野,歴史的分野,公民的分野の単元レベルの授業デザインを行いたい。そして第X章では,「思考力・判断力・表現力」に関する新たな評価方法の開発を試みたい。
本書が,全国各地の社会科教師に活用され,「平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」授業づくりの参考文献の一つとなることを期待したい。
最後に,本書出版の機会を与えて頂いた明治図書ならびにきめ細かい助言をいただいた及川誠氏に心からのお礼を申し上げたい。
平成21年2月 /小原 友行
地歴公すべての授業プランが一冊に詰まっており、授業開発の参考書として最近頻繁に手にしている。
先日、授業開発に悩む教育実習生に本書を貸与したところ、実習生はこの本を早速購入した。
授業プランナーの授業に対する「想い」が強烈に伝わってくるため、大いに刺激を受ける。プランそれぞれのの切り口が明快であり、評価の観点も整理されているため、すぐに授業で活用できることも魅力だ。
若手教員を主対象に想定して書かれているようだが、今後求められる「新しい社会科授業」を創造するうえで、ある程度経験を積んだ教員にも示唆を与えうる書籍だと感じた。何よりも編者である小原氏の「デザインセンス」にほれぼれする一冊である。