- はじめに
- T 算数の授業総論編
- ◆初級◆
- 1 やさしさのある算数の授業を!
- 2 子どもを算数好きにさせたい
- 3 算数指導の原則
- 4 算数のよさの2段階
- 5 授業力とは何か
- 6 授業の設計の技術
- 7 対話的説明型授業過程
- ◆中級◆
- 8 授業づくりマニュアル
- 9 問題解決型の授業過程
- 10 1時間の問題解決型マニュアル
- 11 問題解決型授業のモデル
- 12 教えることと考えさせること
- 13 1を聞いて10を生み出す力
- U 教科書の扱い方
- ◆初級◆
- 14 算数の教科書の特質
- 15 教科書の役割は
- 16 教科書の使い方のパターン
- V 教材研究について
- ◆初級◆
- 17 教材研究の方法
- 18 教科書研究の実例:ミニ指導案
- 19 学習問題とは何か
- ◆中級◆
- 20 学習問題開発の方法
- ◆初級◆
- 21 問題と課題の違い
- W 「わかる」説明
- ◆初級◆
- 22 子どもが「わかる」説明
- 23 説明の具体的方法
- 24 意味づける説明を考えよう
- 25 説明型授業の誤解
- X 「わかる」・「考える」について
- ◆初級◆
- 26 「考える」「気づく」発問づくり
- 27 「わかる」とは
- ◆中級◆
- 28 「わかる」ためには,問いの発生が必要
- ◆初級◆
- 29 既習事項を生かした指導
- ◆中級◆
- 30 いつも「どうして?」と問うと困ることがある
- ◆初級◆
- 31 見通しをつけるために
- ◆中級◆
- 32 見通しは個人がもつことだ
- ◆初級◆
- 33 ヒントの出し方
- ◆中級◆
- 34 ヒント包含法
- ◆初級◆
- 35 算数的活動
- 36 子どもがわかる板書
- 37 ワークシートの活用
- Y 多様性に応じた指導
- ◆中級◆
- 38 個を生かす指導
- 39 多様性を追い求める前に
- 40 多様性を生かした授業
- 41 発表はドラマチックに演出したい
- Z 「できる」ために
- ◆初級◆
- 42 子どもが「できる」指導
- 43 「できる」から「身につく」まで
- 44 声に出して計算してみよう
- 45 「できる」までの練習
- 46 志水式音読計算練習法
- [ 机間指導と◯つけ法
- ◆初級◆
- 47 机間指導のねらい
- ◆中級◆
- 48 ◯つけ法で机間指導しよう
- 49 ◯つけ法のよさ
- 50 ◯つけ法の実際的方法
- \ つまずきについて
- ◆初級◆
- 51 つまずきに対応する(1)
- ◆中級◆
- 52 つまずきに対応する(2) 授業編
- 53 つまずきを生かす指導
- ] 授業の進め方
- ◆初級◆
- 54 一斉授業で子どもの反応をつかみながら展開する
- 55 まとめの仕方
- 56 家庭学習のさせ方
- ]T 評価について
- ◆初級◆
- 57 評価についての考え方
- 58 授業中の評価について
- 59 授業後の評価:ペーパーテストについて
- ]U 子どもとのキャッチ&リスポンス
- ◆中級◆
- 60 切り返しの方法
- 61 意味づけ復唱法
- 62 復唱法の実際
- 63 子どもの言葉を生かす授業
- ◆上級◆
- 64 「ずれ」を生かす指導
- ◆初級◆
- 65 話す力をつけるために:二人対話法
- ]V ノートについて
- ◆初級◆
- 66 ノートの機能
- 67 ノート指導のコツ
- 68 ノートはこんなふうに
- ]W 学習形態について
- ◆初級◆
- 69 学習指導の形態:一斉学習と個別学習
- 70 TTのあり方
- 71 グループ別指導
- ]X 個に応じた指導
- ◆初級◆
- 72 少人数指導
- 73 習熟度別指導
- 74 発展的な学習
- 75 補充的な学習
- ]Y 算数の教具
- ◆初級◆
- 76 算数教具の扱い方
- 77 算数セットの活用
- 78 掛図の使い方
- ]Z 学習指導案作り
- ◆初級◆
- 79 学習指導案作り
- ][ 算数用具,用語・記号など
- ◆初級◆
- 80 数字のよみ方
- 81 数字や記号の書き方
- 82 はかりの使い方
- 83 器具の使い方
- 84 巻き尺の使い方
- 85 時計の使い方
- 86 算数に関わりのある用語・記号 学習指導要領編
- ◆中級◆
- 87 算数に関わりのある用語・記号 算数の教科書編
- 志水の単行本
- 引用・参考文献
はじめに
算数力とは,算数の授業で子どもが構成した「知」のことを言います。この「知」は知識・知恵とともに,知識を生み出す力及び活用する力のことです。それらは,「わかる」「できる」「身につく」ことで構成されると考えます。これらの算数力を身につけるためには,しっかりとした算数の授業を構築することです。この本では,算数力をつけるために書きました。
久しぶりの単著です。算数教育の志水流のノウハウを書きました。力をこめて書きました。私はこれまで算数教育に携わってきました。いつも思ってきたことは,算数の授業はどうやればよいのかということです。つまり,指導法の明確化です。これは,なかなか手ごわいのです。
例えば,次のような議論があります。説明型授業は本当に良くないのか? 問題解決型授業は良いのか? 実は,どちらも必要なのです。子どもは説明の下手な教師に出会うとたまりません。算数は新しい概念の場合,教えざるをえないことがあるのです。たし算を知らない子どもにとっては,ある時点からは教師から教えてもらうことが必要なのです。また,算数の概念形成には自分の力で「考えて」獲得することも必要です。既習事項をもとに類推して創っていくことです。だから,平成17年10月の中央教育審議会の答申にもあるように「教えて考えさせる教育を基本として,自ら学び自ら考えて行動する力を育成すること」が求められるのです。書名を「教え方ガイドブック」としたのもこれを意図してのことです。
この本では,これまで指導法として見過ごされてきたことをきちんと取り上げました。かなりの分野をカバーできました。したがって,算数授業事典として気楽に使ってほしいのです。
志水流の実践理論と指導方法は,必要に迫られて研究してきて生まれたものです。◯つけ法も復唱法も自ら学ぶ問題解決型授業に迫るためです。流行の言葉で言えば学びの共同体を目指しています。単なる技術だと思うのは誤解です。子どもの内なる知を引き出して構成するための授業論の一環として出てきました。長年かかってやっと多くの志水式ノウハウが誕生しました。このノウハウがどれだけの多くの教師や子どもの助けになってきたことでしょう。それらのノウハウを現時点でまとめておくことが必要と感じました。
この本では,20代の教師から50代のベテランにまで広範囲に読者を想定し,算数教育のイロハニ……を書きました。一応,内容のレベルを想定して,初級と中級に分類しました。どこから読んでもかまいません。わかるところから読んでみて下さい。また,これらのノウハウをできることから始めて下さい。きっと,算数の授業が改善され,その結果として子どもに算数力がつくと信じています。
原稿の執筆は平成17年3月に開始しましたが,途中10ヶ月ほど多忙で筆が止まりました。その後,気を取り直して再開し,18年の4月にようやく脱稿しました。この間,励ましていただいた明治図書の樋口雅子部長にお礼申し上げます。また,長野県教育委員会からの内地留学生の横田茂樹先生(平成17年度),柳沢友孝先生(平成18年度)には編集にご協力いただきました。志水研究室のゼミ生も算数用語について手伝ってくれました。ありがとうございました。
今,教師力,授業力の向上がきびしく問われています。そのために少しでもお役に立つように書きました。この本を事典として日々の授業に活用されることを願っております。私の願いは,全員の子どもが「わかる」「できる」「楽しい」の同時達成です。その結果,教師も子どもも楽しい算数の授業が実現されることを祈っております。
平成18年4月7日 愛知教育大学 /志水 廣
特に
・ミニ指導案の書き方
・教師が説明することと、子どもに考えさせることの区別の仕方
が大変勉強になりました。
算数科の授業だけでなく、授業論一般を考えるのにも最適の本だと思います。