- はじめに
- 第1章 「視覚支援」の基礎基本
- 1 「視覚支援」を始める前にTEACCHと構造化を学ぶ
- 2 視覚支援の基本となる「構造化」には3種類ある
- 3 あなたも私も、毎日、視覚的に支援されている
- 4 視覚支援をやる、やらない、は支援者の自由ではない
- 第2章 教室の中の「視覚支援」実例
- 5 子供たちが、わかる、できる、伝えられる、ようにする
- 6 教室を「視覚支援的リフォーム」する
- 7 物理的構造化―まず、この3視点で混乱を避ける
- 8 サボっている? いや、「何をやる場所かわかっていないだけかも?」と疑ってみる
- 9 「やりすぎ」と「やりっぱなし」はどちらも「やりがち」だ
- 10 時間の構造化―あの子はなぜ給食の時間にパニックを起こすのか?にせまる
- 11 時間の構造化―まず、定番ツールで「見通し」が持てる支援を行う
- 12 「スケジュール」があれば1人でも行動できる!
- 13 自分で納得してスケジュールの変更ができる!
- 14 教師の手助けしすぎが子供の「できる」を邪魔している
- 15 視覚支援をしたら空を飛べるようになるわけじゃない
- 16 活動の構造化で「わかる」から「できる」へ導く
- 17 一人一人に合わせた「ワーク・システム」を作る
- 18 手順表があれば1人で作業ができる!
- 19 先生、それ半分にしてみたら?―作業量の調節を大事にする
- 20 コミュニケーションの基本「伝えられる」ための支援を行う
- 21 「伝えられる」ための視覚支援―「AAC」を知る
- 22 「嫌だ」という気持ちを伝えられることが大切である
- 23 失敗を恐れずに「まずは視覚的に伝える」ことが大切である
- 24 氷山モデルの実践的活用―「自分の気持ち」の自己理解は難しい
- 25 視覚支援で子供を主役にする
- 26 伝えてもらうのは好きなことからにする
- 27 今の力ですぐにできるVOCAを使う
- 28 携帯ホワイトボードで「書くコミュニケーション」をクセにする
- 29 選択性緘黙の子とメモ帳でおしゃべりする
- 30 視覚支援とコミュニケーション支援のためのシンボルライブラリー「ドロップス」を活用する
- 第3章 教室の外にあふれる「視覚支援」
- 31 視覚支援はずっと続けないといけないのか?という質問に答える
- 32 「卒業後、視覚支援はしてもらえない」は間違っている
- 33 教師には、視覚支援を広める義務がある
- 34 卒業後も使えるように家庭と連携する
- 35 視覚支援の未来を想像してみよう
- おわりに
- 参考文献
はじめに
ここ数年、視覚支援の基本的な考え方や具体的な実践方法について講義してほしい、と研修会に招いていただく機会が増えました。改めて視覚支援に注目が集まっているのかなと思うと同時に、主催者や参加者の方々の悩みも見えてきました。研修会というものの共通の課題かもしれませんが、わざわざ時間とお金をかけて参加してくれるのは、すでに視覚支援の大切さを知っている方がほとんどです。研修会の真のターゲットである、そうでない支援者は、そもそも研修会に参加しません。私たちは視覚支援について学ぶだけでなく、視覚支援を誤解し否定的なことを言う人に、その有効性を正しく説明できるようにならなければならないのだと思います。この本は、そんな視覚支援を当たり前の支援にしていこうとする仲間(今ページを開いているあなたもきっとそうでしょう)や、それによって確実に救われるはずの子供たちのために書きました。
視覚支援の考え方や背景について学べる書籍はすでに多数ありますが、実際の現場にどう導入していくか、具体的な事例を通して解説した本は少ないように思います。これまで私はドロップレット・プロジェクトとして、様々な視覚支援教材を開発・提供してきましたが、その活用事例を詳しく解説した本は書いたことがありませんでした。そこで本書では、視覚支援の基本的な種類や考え方だけでなく、導入と活用のポイントについて、一般論ではなく自分が関わってきたリアルな実践から整理してみました。実際の子供の困難は千差万別ですが、支援の共通点をできるだけシンプルに分類し、構成を工夫したつもりです。視覚支援を始めてみようという方はもちろん、より積極的に広めていこうという方にも役立つ内容になっていればと願っています。視覚支援の効果はすでに明らかなのに、なぜか支援に取り入れようとしない人たちがいます。そういう人ほど支援がうまくいかない理由を子供のせいにしがちです。しかし子供のせいにしている間は、支援は絶対にうまくいきません。「学び手は常に正しい」のです。まず環境を変えること、関わり方を変えること。それがあって初めて子供も変わります。視覚支援はそのための最強のツールの1つです。ぜひ、あなたの支援の武器に加えてください。
著者 /青木 高光
実践に取り入れていきたいと思う箇所がいくつもありました。