- まえがき
- T 特別支援プラン,特別支援プログラムの作成と実践事例
- 1 教育的ニーズを個別目標という形で具体化する
- 教育的ニーズの把握/ 目標相互の関係
- 2 特別支援プラン,特別支援プログラムについて
- 特別支援プラン/ 特別支援プログラム
- 3 ニーズ教育実現へのチャレンジ事例
- 特別支援プランの作成
- 〈事例1〉Cさん(中学部3年)に対する実践の1つから
- 特別支援プログラムの実践
- 〈事例2〉C君(高等部1年)の実践から
- 〈事例3〉D君(小学部2年)の「おわり」と「つづき」
- 〈事例4〉E君(高等部2年)の「ぼくたちの花だんをつくろう」
- 〈事例5〉C君(小学部1年)の「“活動の始まりと終わりが分かる”実践」
- 〈事例6〉H君(中学部2年)の「かいものをしよう」10までの数理解をもとにした3桁の値段の金銭処理
- 共通テーマによる集団学習
- 〈事例7〉共通テーマ「野球をしよう」(中学部)の実践
- 〈事例8〉共通テーマ「おはなし あそびを しよう」の実践
- 〈事例9〉共通テーマ「今の生活と卒業後の生活のいろいろ」(高等部)の実践
- 〈事例10〉ハートフルタイムの実践から(余暇活動の充実を目指して)
- 〈事例11〉O君の在校時の姿から(移行支援計画の必要性)
- プログラム実践の評価
- 〈事例12〉M君(中学部3年)の2ndプログラム実践を通して
- 〈事例13〉2つの評価の役割とその手だてについて
- 〈事例14〉草津生き生き体験におけるB君(中学部1年)のケース
- U 特別支援プラン・特別支援プログラムの活用と評価
- 1 書類作成の目的
- 個別の教育的ニーズから指導内容を導き出すために/ 書類を効率的に活用するために/ 管理・運営のために
- 2 活用の仕方
- フォームの変遷/ 特別支援プランの活用/ 特別支援プログラムの活用
- 3 評価の手だて
- 評価の対象/ 評価の目的と計画/ 評価の役割と方法〜多面的な評価〜/ 保護者による評価/ 評価の実際/ 評価における成果と課題
- 4 インフォームド・コンセントの実践
- インフォームド・コンセントの実践に伴う課題/ その改善案/ システム化
- 5 個別移行支援計画と特別支援プランとの関連
- 移行支援について/ 個別移行支援計画と中長期的な目標との関係
- 6 教育課程を不断に見直すために
- 日々の実践を教育課程の見直しにつなげること/ 不断に見直すための視点/ 今後の課題
- V ニーズ教育のシステム化
- ─―個別カリキュラムの具体案――
- 1 現行の教育課程のとらえ方
- 知的障害養護学校における教育課程の構造/ 教育的ニーズを位置づける上で有効な二重構造/ 教育内容を意識する上での問題点/ 改善に向けて
- 2 個別カリキュラム
- 教育的ニーズの位置/ 教育課程の編成/ 指導計画
- 3 個別カリキュラムの構造―教育的ニーズにこたえるために―
- 新たな教育内容の分類―4 支援―/ 「指導の形態」の再編―5つの時間(個人)―/ キュービック・カリキュラム案/ 「5つの時間(個人)」に社会の要請を取り込む/ 個別カリキュラムの評価,改善/ 個別カリキュラムを編成するためのシステム案
- 4 個別カリキュラムの具体化
- 個別の教育的ニーズの把握/ 特別支援プランの作成/ 特別支援プログラムの作成/ プログラム実践細案の作成/ 授業案の作成/ 書類を組み合わせて授業の計画案を構成する(プログラムの実践)
- ―――資料編―――
- 資料1 ニーズ教育を考える上で
- 1 子どもたちの自立・社会参加を支える
- 子どもたちの自立・社会参加をどのようにとらえるか/ 自立・社会参加に向けて支援すること/ 「生きてはたらく力」
- 2 生きてはたらく力を高め,広げる学習活動の様相
- スパイラルに展開する学習活動/ もう1つの「繰り返し」/ 基礎・基本事項の獲得と特性を伸ばすことのバランス/ 目標相互の関連
- 3 学習活動における新たな形態を創造するために
- 学習指導タイプABCD/ 集団化の軸/ 学習指導タイプの選択と決定/ 学習指導場面/ 学習活動の新たな形態
- 資料2 我が国の個別指導計画の変遷
- 1 知的障害教育学習指導要領の変遷と指導計画の位置づけ
- 特殊教育初めての学習指導要領/ 養護学校初めての学習指導要領/ 知的障害教育の学習指導要領/ 知的障害教育の学習指導要領解説における“指導計画”の変遷/ 知的障害教育の学習指導要領及び解説における“指導計画”の整理
- 2 アメリカの個別教育計画と日本の個別の指導計画
- アメリカの個別教育計画/ 日本の個別の指導計画の限界と問題点/ 以前から行われてきた個に応じた教育/ 個に応じた教育を第一義とした教育課程
- 資料3 私たちのニーズ教育の歩み
- 1 「ニーズ教育」にかかわる考え方の種まきと芽生え
- 「ニーズ教育」にかかわる考え方の種まき/ 「ニーズ教育」にかかわる考え方の芽生え
- 2 第T期「ニーズ教育」=「ひとりひとりの実態に応じた指導」への取り組み(昭和54〜59年)
- 実態把握/ 個別指導計画の作成/ 個別指導計画から学校としての指導計画へ=調整/ 「ひとりひとりの実態に応じた指導」を発展させて
- 3 第U期「ニーズ教育」を支える取り組み
- 小・中・高の一貫性を図る教育課程づくり(昭和60〜平成元年度)/ 「指導の形態」別の個別指導計画の充実(平成2〜9年度)
- 4 第V期「ニーズ教育」取り組みへの序章(平成10〜12年度)
- 主な用語解説
- 文献
- 終わりに
まえがき
障害のある子ども一人一人の特性に合った適切な教育を……このことは障害児教育の歴史と同じくらい長い年月にわたって言われてきました。実際,視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病弱などの分野においては,いわゆる単一障害の子どもの場合,個の特性や教育内容が明らかであることから,一人一人の特性に合った方法で教育実践が展開されてきたと考えられます。しかし,知的障害の分野においては,個々の子どもの特性が異なっていることは他の障害分野と同様に明らかであり,しかも個の特性に応じた教育の重要性が教育関係者や保護者から繰り返し指摘されてきたにもかかわらず,実際には,教育内容・方法が必ずしも明らかでなく,「学級集団や学習集団などでの“集団学習における個への配慮”+多少の個別指導」という水準を超えることはほとんどなかったように見受けられます。
近年,海外から個別教育計画が紹介され,一部の知的障害養護学校でも導入が試みられています。また,現行の学習指導要領においては,自立活動について個別の指導計画を作成することが求められており,知的障害養護学校でもすでにそれが作成されています。しかし,従来の知的障害養護学校の教育課程における指導の形態や授業実践の骨格と“個の特性に応じた教育”との間には,様々な隘路があるように思われます。
本校は,平成12年度より3年間,岩手大学教育学部附属養護学校、宇都宮大学教育学部附属養護学校,東京学芸大学教育学部附属養護学校の3校とともに「個別の教育的ニーズにこたえる教育課程と授業の実践」を研究開発課題として,文部省(現 文部科学省)の研究開発学校の指定研究に取り組んできました(本校のみ平成15年度も延長)。特に平成13年度以降は,一人一人の子どもの教育的ニーズを保護者とともに探るところから学校における全ての学習活動を構築し,また,必要に応じて改めていくためのシステムはどのようにあるべきか,という大きな課題に正面から取り組みました。そして,小学部・中学部・高等部に在籍する全ての児童生徒について,個別の教育的ニーズの把握から特別支援プラン(個別目標)・特別支援プログラム(個別教育課程)を作成し,学習活動の計画化,授業実践,評価へと進む一連の教育システムを,机上ではなく教育実践の中で開発してきました。全校の児童生徒・教職員・保護者,そして教育学部障害児教育講座をはじめとする学部教員の協力によるこのような試みは,我が国で初めてのものだと思います。
本書を刊行する目的は,開発された教育システムを世に問い,一人一人の子どもの教育的ニーズから学校教育を創造するといううねりを少しでも大きくすることにあります。もちろん,このシステムは完成したものではなく,現在もいわばバージョン・アップの最中にあります。また,本校の教育実践には施設・設備面の制約,教員の人数・力量面の制約をはじめとして様々な制約があり,学習活動の内容が一人一人の教育的ニーズをどの程度満たしているか,という点からの吟味が厳しく行われるべきであると考えています。
本書の第T章では,特別支援プラン,特別支援プログラムの作成について概略を説明し,それに続いて14の実践事例を紹介しました。第U章では,特別支援プラン,特別支援プログラムに使われる書類の詳しい説明と活用方法,評価などを,第V章では個別の教育課程から授業実践に至るシステムの詳細を述べました。資料編では,特別支援プラン,特別支援プログラムの背景にある考え方や歴史的経緯などに触れました。また,巻末には主な用語について簡単な説明を添えました。
読者の方々には,本校の実践研究についてご理解いただくとともに,忌憚のないご質問・ご意見・ご批判をお聞かせ願いたく思っております。
2003年7月 群馬大学教育学部附属養護学校長 /松田 直
-
- 明治図書
- ぜひ読んでみたいです!自身のスキルアップに役立てたいと思います。2024/1/30