- 序文 /有田 和正
- はじめに ――「国語の学力を見える学力に」
- T 今、なぜ「応用・発展教材」か
- 1 「学習内容が三割削減された」指導要領〜その意図は?〜
- 2 「学習指導要領は最低基準!?」
- 3 「応用・発展教材」の可能性・必要性
- U 教科書教材と応用・発展教材で確かな「国語学力」をつける
- 1 「教科書教材」「応用・発展教材」でつける学力とは?
- 2 国語の授業でつけさせるべき「国語学力」・それを保証する国語科学習
- V 応用・発展教材でこんな学力を保証する
- 1 「挑戦する」機会を保証する応用・発展教材
- ――ワンステップ上の内容に挑戦する――
- 2 「活用する・駆使する力」をつける応用・発展教材
- ――教科書教材で学んだことを活用する・駆使する――
- 3 「さらに追究する力」をつける応用・発展教材
- ――教科書教材で学んだことを、さらに追究する――
- 4 「習熟・定着」を保証する応用・発展教材
- ――教科書で学んだことが、さらに習熟・定着する――
- W 応用・発展教材の実践例
- 一 手紙やはがきを出そう(三年生以上)
- ――書くこと(さらに追究する/挑戦する)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 実際
- (1) 保護者にはがきを書く/ (2) 年間を通してはがきや手紙を書く計画を立てる/ (3) 手紙やはがきのルールを知る/ (4) 手紙の書き方を練習する
- 二 「わたしと小鳥とすずと」(金子みすゞ)の暗唱指導(三年生)
- ――言語事項(挑戦する)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 実際
- (1) 教材詩を黒板に書き、一度ノートに書かせる/ (2) 教材詩を追い読みさせる/ (3) 板書した詩を下から消していく/ (4) 全部消して一斉に読ませる
- 三 名文・詩文の暗唱年間計画と指導(全学年)
- ――言語事項(挑戦する)――
- 1 指導のポイント
- 2 指導の流れ
- 3 実際
- 四 文図をもとに話す力・書く力をつける(三年生以上)
- ――話すこと(活用・駆使)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 授業
- (1) 準備/ (2) 教材についての開発
- 4 実際
- (1) 「文図」を示す/ (2) 「文図」のよさを知らせ、「文図」を使ってスピーチの内容を考えさせる/ (3) 「文図」を使って、作文を書かせる
- 五 発言する力を高めよう(四年生以上)
- ――話すこと(活用・駆使)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 授業
- (1) 準備/ (2) 教材についての解説
- 4 実際
- (1) 解釈内容の判断を迫る「発問・指示」をする/ (2) 判断させる/ (3) 証拠になる文や言葉を指摘させる/ (4) 証拠になる文や言葉の意味づけをさせる/ (5) 発言形式のモデルを示す/ (6) 子どもたちの発言内容/ (7) 相手を納得させる、言葉を根拠にした「発言形式のモデル」/ (8) 「どの判断が正しいのか」という検討/ (9) 発言技能を高め、発言を活発にさせる働きかけ
- 5 ワークシート
- 六 「目に見えてくる作文」を書こう(中学年)
- ――書くこと(習熟・定着)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 授業
- (1) 準備/ (2) 教材についての解説
- 4 実際
- (1) 「思い浮かべ方」の練習をする1/ (2) 「思い浮かべ方」の練習をする2/ (3) 「思い浮かべ方」のれんしゅうをする3/ (4) 「動物園の中のこと」について想像作文を書く
- 七 国語辞典 早引きの習熟を図る(三年生以上)
- ――言語事項(習熟・定着)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 実際
- (1) 閉じた国語辞典から、あ行・か行……わ行を開く/ (2) あ行だけにしぼり、「あ」「い」「う」「え」「お」の最初のページを開く/ (3) (略)/ (4) わ行にある言葉を探す/ (5) 行を指定して言葉を探す
- 八 書き出しの名人になろう(四年生以上)
- ――書くこと(応用・発展/活用・駆使)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 授業
- (1) 準備/ (2) 教材についての解説
- 4 実際
- (1) 工夫のある書き出しの「よさ」に気づかせる/ (2) 「工夫のある書き出しのパターン」を知識としてまとめる/ (3) 「工夫のある書き出し文」を図書室から探す/ (4) 調べたことを交流する
- 九 変化のある繰り返しで聞き方を発展させる(二年生以上)
- ――聞くだけから、聞いてメモをとる――話す・聞くこと(応用・発展)――
- 1 授業のポイント
- 2 授業の流れ
- 3 授業
- 4 メモのとり方を活用して技能を高める
- 解説 /有田 和正
- おわりに
序文
二〇〇二年四月より,新しい学習指導要領が実施され、これまでにない「超薄い教科書」で学習することになり,学力低下が心配されている。折りしも、二〇〇二年一月〜二月に実施された学力テストの結果が公表され、「おおむね良好」と発表された(二〇〇二年一二月)。わたしは、「はてな?」と思った。
これは、事前に設定していた正答率を上回る教科が多かったからだという。しかし、目標設定値を低く設定すれば「良好」ということになるではないか。詳しくみると前回より結果がよかった問題は全体の四分の一にすぎず,逆に悪かったのはその倍近い。やはり,学力は低下しているとみた方が適当のようだ。
文部科学省は学力低下を予想したのか、二〇〇二年四月から実施された学習指導要領を、「教える内容の最低基準」であるとした。これまでずっと到達目標ないし標準としてきたことをあらためたのである。
学習指導要領が「最低基準」となったということは、これを具体化した教科書も当然最低基準ということになった。この最低基準をクリアした子どもには「発展学習」を行うことになり、学習指導要領を超える授業を認めたのである。これは画期的なことではあるが、学校現場に大きな混乱と不安を与えた。
二〇〇二年八月二二日、文部科学省は、教科書の範囲を超えた「発展学習」や、基礎をじっくり学ぶ「補充学習」の参考となる教師用指導事例集の小学校版を公表した(算数だけ)。
なお、次回の教科書検定では、発展的な内容の記載を容認するという。すべて学力低下への配慮である。
このような動きをみるにつけ、文部科学省の事例集に頼るより、自分たちで作った方がよいのではないかと考えた。
つまり、「教材・授業開発研究所」の授業の一つとして『新教科書を補う発展教材の開発 国語・社会・算数・理科』を、研究所の支部や研究サークルで出版したいと考え、各支部やサークルに呼びかけた。多くの支部やサークルが積極的に応じてくれた。
教科も希望をつのった。算数・理科の希望が多いだろうと予想していたところ、発展教材の開発が比較的むずかしいといわれる国語と社会を多くの支部・サークルが希望してくれ、驚いた。やはり、すごく意欲的な教師たちだと思った。
各支部・サークルは、地域性やメンバーの特技・特色を生かした、実にユニークな教材を開発してくれ、とてもうれしく、力強く思った。
サークルメンバーは、よく考え、よく理解し、よく知恵を出し合い、新しいものを創り出してくれた。「これが発展教材だ」という決まったものがあるわけではない。だから、多様なものが出てくるのが当然であるし、その方が望ましい。
研究所の支部は北海道から沖縄まで全国にある。準備のできたところから順次出版していくことにしている。今回の出版物は、全国の教師に大きな刺激を与えるものと期待している。
今後は、基礎をじっくり学ぶ「補充教材」の開発も構想し、その準備をしているところである。
今回の一連の出版は、明治図書編集長の江部満氏のお力添えによるところが大きい。記してお礼を申し上げたい。本当にありがとうございました。
二〇〇三年一月二日
教材・授業開発研究所代表 /有田 和正
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- 明治図書