- はじめに
- 第T章 21世紀の学校教育を創り出そう!
- 1 考え方をシフトする
- (1)自らの本質的な目的が必要な時代へ
- (2)新しい視点・観点が必要な時代へ
- (3)新しい“あり方”が必要な時代へ
- (4)新しいアプローチが必要な時代へ
- 2 これからのリーダーシップスタイル
- 3 「学び方」という体験を作る
- 4 「新しい価値創造のための場」としての学校
- 5 学校力と教師力,なぜまとめてアップなのか?
- (1)選び選ばれる時代
- (2)学校力って何?
- (3)教師力って何?
- (4)教師力と学校力をまとめてアップする理由は?
- 第U章 学校現場から観えたこと,感じたこと
- 1 すでに学校は素晴らしい!
- (1)ココロザシ総数とエネルギー総数
- (2)先生はやはり熱い!
- (3)情報の質と量
- (4)自己研鑚の文化
- (5)温度が2,3度上がる瞬間
- 2 学校現場を一歩ヨコから見てみると
- (1)プライドとベンチマーク
- (2)自分のことはいつも後
- (3)落し処と予定調和を乗り越える
- (4)ベクトルがすり合っていない個人商店
- (5)チームか? グループか?
- (6)インフォームドコンセント(それは伝わっているか?)
- (7)学校行事は?
- (8)教職員満足という言葉は,居心地が悪い
- 第V章 ダイナミック変革への第一歩
- 1 求められる3つの力
- (1)感じる力〜スタイルをつくる
- (2)つなげる力〜アプローチをする
- (3)学習する力(振り返る力)〜プロセスを学ぶ
- COLUMN
- 2 感じる,つなげる,学習するために対話をする
- (1)「質問」を活用する
- (2)「言葉に出すこと」を活用する
- (3)ラーニングエンジン
- 3 感じる,つなげる,学習するための道具
- (1)コーチング
- (2)アクションラーニング
- (3)リンキンボム
- 第W章 ダイナミック変革の実際
- 〜愛知県小牧市立応時中学校の場合〜
- 1 学校を内側から変革する!
- (1)組織マネジメント
- @運命的な出会い
- A具体的場面
- (2)学年マネジメント
- @チームとしての学年づくり
- A学年部会に取り入れたこと
- Bコミットメントの重要性
- C学級をオープンにする
- Dコーチングを受けて
- (3)授業マネジメント
- @「どんな作品を作ればいい点が取れるの」(美術科)
- A「質問中心のセッションよりスピーチ活動の活性化」(国語科)
- (4)部活動マネジメント
- @部活動への思い
- A理想とのギャップ
- Bチーム風土の刷新
- C気付きと展望
- (5)研究発表会マネジメント
- @「全員が意見を発表する」授業を目指して
- A研究推進委員会における変化
- B研究全体会において
- 2 校長インタビュー
- 第X章 やってみよう! ダイナミック変革への実践
- 1 教師のやる気を引き出す管理職のためのコーチング
- (1)管理職に求められるもの
- (2)コーチングを始める前のセッティング
- (3)キッカケを作り出す言葉がけの事例――そのポイント
- (4)教師の気付き促すテクニック
- (5)会話に流されないためのテクニック
- (6)違いを作り出すために伝えるテクニック
- (7)会議を効果的に進めるためのテクニック
- 2 ドリル:「教師力」と「学校力」をまとめてアップする10の実践
- SCHOOL INNOVATION1 それなら,熱いチームを創るべし!
- SCHOOL INNOVATION2 それなら,使命や価値を心して考え抜くべし!
- SCHOOL INNOVATION3 それなら管理職はラブコールを日課とすべし!
- SCHOOL INNOVATION4 それなら,ラーニングエンジンを搭載すべし!
- SCHOOL INNOVATION5 それなら日々,シンプルにマネジメントするべし!
- SCHOOL INNOVATION6 それなら,環境をがっつり整備すべし!
- SCHOOL INNOVATION7 それなら,学校は伝説を意図的に創るべし!
- SCHOOL INNOVATION8 それなら,教職員満足度を高めるべし!
- SCHOOL INNOVATION9 それなら,地域や社会とバッチリつながるべし!
- SCHOOL INNOVATION10 それなら,「教師力」「学校力」はまとめてアップさせるべし!
- 第Y章 現役教師500人に聞きました!
- アンケート1 子どもが卒業したらどんな大人になってほしい?
- アンケート2 学校全体として改善していること,工夫していることは?
- アンケート3 学校の課題は?
- アンケート4 もし何の制限もなかったら,日本の教育,あなたの学校を変革させるアイデアは?
- アンケート5 何の制限もない場合自分の夢は?
- アンケート6 教師として伝えたいメッセージは?
- アンケート7 欲しているサポートは何か?
- アンケート8 先生自身は輝いているか?
- 第Z章 成熟社会の一人の大人としての課題
- 1 等身大の価値観を見つめ直す時代
- 2 まずイノベーションの当事者になると決めよう!
- 3 どうする? 子どもの安全!
- 4 学校任せ,ご都合主義を乗り越える
- 5 軸を持つ
- 6 「幸せな働き方」を実践する人
- おわりに
はじめに
「【教師力と学校力をまとめてアップさせるための超実践本!】というタイトルはいかがですか??」少し,私は自信なさげに尋ねてみた。
「え? 教師力と学校力どちらもまとめて……ですか?」「教師力はいいけど学校力はちょっと大変ですよねぇ。」「学校力という事は管理職の方が対象になるわけですか?」「両方できればそりゃ素晴らしいですけどねぇ。」「教師力だけとか,子どもに対するコーチングスキルだけに絞りませんか?」
2005年春,この本のタイトルについての学校関係者,出版関係者の方のご意見には,やはりこんなお声が多かった。どうやら,欲張りすぎな印象を受けとられるようである。
そして,2006年春,ちょっと不評のタイトルを引きづったままもう決定しなければいけない時期が迫っていた。そこで苦し紛れに思いついた。「そうだ,みなさんの知恵をお借りしよう!」
私どもイノベーションアソシエイツ株式会社の一同や,出版関係者だけでなく,お読みいただきたいと思う皆様方へ,本のタイトルについての率直なフィードバックをいただくことをお願いした。幸いな事に快くお引き受けいただき,皆様の温かなハートとお知恵をお借りすることができた。学校管理職,教職員などの教育現場の皆様,教育委員会の皆様,産業界の経営者やビジネスマン,知人の建築家やお医者様,起業家,クリエイティブの専門家,保護者の皆様等である。
そして本書のタイトルは,2006年春,結局このようになった。
『「教師力×学校力」ダイナミック変革への実践本』である。
私どもは,企業を対象に「個人力と組織力をまとめてアップするための組織マネジメント」の手法を提供したり,また教育現場でも「学校変革」の支援をさせていただいたりしている。これまでの著作の影響もあり,講演やセミナーでは,とりわけ「教師力向上」や「管理職研修」といった個人力にフォーカスしたテーマの依頼が多い。
ところが,教育現場でのコンサルティングやセミナーの現場で,教師や管理職から引き出される,課題の根っこには,いつも,個人力だけではなく組織力に関する問題ばかりが複雑に絡み合い,横たわっているのが現状だ。
そのような現場の状況を外部から見ると「教師力」と「学校力」を部分的に対処療法するのではなく,一瞬複雑そうに見えても,教師力と学校力の関係性を活かし合い両方まとめて対応していく事こそが現実的且つ効果的であると実感している。
なぜなら「教師力」と「学校力」はつながっているからである。
さて,実は他にもつながっていることはいろいろある。学力と生きる力もつながってる。未来と過去もつながっているし,子どもと社会はつながっている。学級マネジメントは学校経営の一部でもあり,その学校と保護者,地域社会は日本の国づくりにもつながっている。各々が,相互に関係し相互に影響し合う存在である。しかもそれは皆足し算でなく,掛け算なのである。
巷では,こんな声を聞く。
「学校が荒れている。公教育の存在を問う。教師が力不足だ。今の子どもは手に負えない。これまでの誤った教育の結果である。保護者の勝手な価値観にはあきれ果てる。顔のない地域社会,関わり薄いコミュニティー。日本の社会が悪い。政府政策が悪い。世の中二極化だから仕方ない。あぁ,昔はよかった。」なかなか辛らつである。
しかし,本当にそうであろうか? すべて同意できるであろうか?
よく自分の目で,見たのであろうか? 自ら関わったのであろうか?
学校現場を見ると,この数年の積み重ねた努力が形となってきており,全国の学校変革は大きなうねりを見せていると感じられる。政府による構造の転換への働きかけもあり,教育に関わるさまざまな組織のあり方も変化した。しかしなんといっても一番の理由は,学校現場の管理職,教職員の毎日の熱い奮闘,頑張りである。
立ち止まって足元を見ると,私たちは共有地に住み,皆,より豊かで幸せな世界を創るため,課題解決に対するそれぞれの役割と責任を負う当事者でもあり,未来を創る創造者である。大きく捉えれば,協働して暮らす「チーム」といえる。
そう! 学校は社会の基本機能を作り出すチームの重要な一員である。そしてまた,地域社会や家庭も同様に同じチームのメンバーである。
そして今,学校だけでなく,地域社会,家庭は,それぞれ,試行錯誤を繰り返しそして成長している真っ最中である。今新たに原点に帰りそのアイデンティティーを自ら問うている。
しかし,それぞれ皆,当然ながら完全ではなく,欠点や不備があり,時に失敗もする。だからこそ,相互に対話し,補完し合い,時に見守り,強みを活かし合う関係構築が大切だ。
教育現場では「地域社会に信頼される学校を目指す」という言葉を耳にする。それには,公教育の価値や夢のそもそもの軸を見つめなおし,学校全体で共有し,満点でない不備のある事も含め,学校自身の頑張りも社会全体に理解を求めてゆくべきである。そして,勇気を持って,地域社会や家庭にポジティブにリクエストしていくことだ。
「関わり高め合う」そのプロセスを必要としているのは,子どもだけではない。私たち一人一人の大人こそに最も必要であるのだ。それぞれのアイデンティティーをと誇りを持ち,自信を持って関わり巻き込んでいく事で,それぞれがつながり,地域や社会に変化をもたらす。そして,そんなあり方や私たち大人の本気の背中を見て,社会の宝である子どもは育ち,成長するのである。
さて,本書の中には,現在も進行中の学校変革事例を掲載している。現実の学校変革は,決してマニュアルのようにはいかず,また,ダイナミック変革するためのマジックを披露するようにはいかない。ただそこには,教育現場の皆さん自身が,一つの熱いチームとなったチャレンジがある。
夢と危機感を共有する事で,リーダーシップが芽を吹き,困難な壁にも立ち向かう(イノベーションの当事者になる)勇気が生まれゆく。そこからは,既に心の持つ教育への想い,真の人間性をはぐくむ愛と汗,時に迷いながらも逃げずにまっすぐ一歩ずつ歩いてゆく活き活きとした姿を想像する事ができるであろう。また,そこから子どもたちの表情が垣間見えたら嬉しく思うのである。
私どもも,社会のチームに一員として,何かしらお役に立つことができればと思い,執筆させていただいた次第である。
まず,知ってもらう事,つなぐ事で社会の基本機能を作り続ける学校現場のお役に立つことができれば光栄である。
2006年7月 著 者
見直せるいいチャンスを与えてくれた。今の教育界を変えていくのは
一人ひとりの意識改革が必要だと思った。少しでも多くの方がこの本を手にされることを願う。