- まえがき
- 1章 PISA調査の結果から見えること
- §1 PISA調査の結果をどう受けとめるか
- 1 PISA調査及び教育課程実施状況調査から見えること
- 2 調査結果を受けとめるポイント
- 3 調査結果から見えてくること
- §2 「PISAの学力調査」の概要と学習指導の課題
- §3 読解力を支えるノート指導&ワークシートの可能性と課題
- 1 ノート指導&ワークシートの基本的な考え方
- 2 PISA型読解力の育成とノート指導・ワークシートの可能性
- §4 思考・判断力,表現力を育成するノート指導やワークシート活用の視点
- 2章 読解力を培うノートの活用事例
- ◆§1 思考力・判断力を培うノートの活用事例
- @ ノートの活用法
- A 主に論理的な思考力・判断力を求める教材を使用して
- ◆§2 表現力を培うノートの活用事例
- @ 主に読み比べ教材を使用して
- A 主に読み比べ教材を使用して
- 3章 読解力を培うワークシートの活用事例
- ◆§1 思考力・判断力を培うワークシートの活用事例
- @ 主に読み比べ教材を使用して 情報を活用しよう
- A 主に論理的な思考力・判断力を求める教材を使用して
- B 読み比べ教材を使用して
- C 古人の心情を想像して読む 「おくのほそ道」を読んで修学旅行を10倍楽しもう
- ◆§2 表現力を培うワークシートの活用事例
- @ 主に論理的な思考力・判断力を求める教材を使用して読書を楽しもう〜読書紹介パンフレットを作ろう〜
まえがき
現在,矢継ぎ早に教育改革に係る提案がなされている。「教育再生会議」や中央教育審議会,国の種々の審議会等から教育システムの改変から具体的な教科指導,家庭教育などへの提言に教育現場は,翻弄されているかのような状況を呈している。はたして,このようなことで,日本の教育は真によくなるのであろうかと,いささかの懸念も覚えるのである。
こうした状況にあって,日々,児童生徒と向き合い,子どもたちに生きる力を育成する責務を有する教師にとって踏まえるべきことは,いたずらにこうした改革の動きに振り回されまいという覚悟をもつことであろう。この4月に40年ぶりで実施された「学力調査」についても,平均点や順位等に一喜一憂する愚は避けたいものである。
ここ数年の「PS」ショックと称される国際学力調査の結果への対応についても同様である。義務教育終了段階における日本の生徒の「読解力」の低下が喧伝され,それを契機に国においても「国語力の向上プログラム」や教科を越えた「読解力向上」の取り組みが全国的に展開されていることは周知の通りである。この調査結果の受けとめ方についても,マスコミ等が報じるような「8位から14位へ」という結果の数値を興味本位に言い立てても仕方のないことである。大切なことは,立ち止まって「PS調査」における学力の一つとしての「読解力」とは何か,どのような力が求められているのか,そうした学力を教科の指導の中でどのようにしたら児童生徒に身につけさせることができるのかを学校として,また個々の教師がしっかりとらえ,日常の教室での授業の改善に役立てていくことであろう。
「PS調査」で主に求められたのは,文章や種々のグラフ・表などの情報をもとに思考・判断できる力であり,自分の考えを自分の言葉で論理的に表現できる力である。したがって,読解力とはいえ,最終的には情報等を活用できる力としての,思考・判断力並びに表現力が問われたのである。
肝心なのは,こうした思考・判断力についても表現力についても,これまでも我が国の国語科教育で重視してきたことである。ちなみに,「PS調査」で話題になったテキストとして図表やグラフ等が重用されたことについても,昭和58年に実施された「教育課程実施状況調査」で中学校全学年で出題されていることである。また,平成6年に実施された「中学校教育課程実施状況調査」では,「書くこと」の領域はもとより,「話すこと・聞くこと」や「読むこと」の問題において,設問の半数を自分の考えを自分の言葉で書き表せる形式にして思考・判断力並びに表現力をみる試みを行っているのである。
問われるのは,日々の国語教室でこのような思考・判断力並びに表現力の育成がどのようになされているかということである。付言すれば,思考・判断力や表現力を鍛え高める絶好の機会であるノートに書かせたりワークシートを活用したりして自分の考えを広げ深める指導をどのように行っているかということである。
本書は,思考・判断力や表現力の育成に直接資する国語科の本来的なノート指導やワークシートの活用の在り方と具体的な指導方法について提案したものである。国語の授業づくりの改善の一助となれば幸いである。
平成19年7月 編者 /相澤 秀夫
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- 明治図書