- まえがき
- T “法”教材で社会を読み解く [理論編]
- 第1章 なぜ,社会科としての“法”教材なのか /戸田 善治
- 1 法曹改革と法教育に関する研究
- 2 法教育に関する先行研究
- 3 千葉大学グループによる研究成果
- 4 社会科としての“法”教材開発研究
- 5 法の社会認識的機能に着目した“法”の教材化
- 6 社会科としての“法”教材開発の実際
- 第2章 なぜ,今,“法”教材に着目するのか
- ──法曹界から教育界への提言 /藤井 俊夫
- 1 裁判員制度をめぐる課題
- 2 法教育のあり方
- 3 「法を教える」と「“法”で教える」
- 4 法を学ぶことの意味
- U 社会科としての“法”教材とはどのようなものか [実践編]
- 第1章 “法”を通して私たちの社会生活に迫る
- 第1節 スーパーやコンビニでは欲しい商品が何でもそろっている?
- ──食品衛生法(3年) /向井 浩二 ,解説 /竹内 裕一
- 第2節 “法”が私たちの生活をしばる
- ──国家総動員法(6年) /向井 浩二,解説 /戸田 善治
- 第2章 “法”を通して社会の変化に迫る
- 第1節 鎌倉幕府が滅んだ理由は何?
- ──御成敗式目と永仁の徳政令(6年) /梅津 清治,解説 /戸田 善治
- 第2節 近代化って何?
- ──条約改正(6年) /大澤 昌宏,解説 /戸田 善治
- 第3章 “法”を通してこれからの社会を考える
- 第1節 私たちの食生活は本当に安全?
- ──牛肉偽装表示とトレーサビリティ制度(5年) /梅津 清治,解説 /竹内 裕一
- 第2節 “法”は私たちの生活を守ってくれる?
- ──農薬とこれからの食料生産(5年) /井上 久,解説 /田中 健夫
- 第3節 “法”はあったほうがいいの,ないほうがいいの?
- ──危険運転致死罪(6年) /井上 久,解説 /田中 健夫
- V “法”教材の活用で社会科はどのように変わるか [展望編]
- 第1章 小学校において“法”教材を取り扱う視点 /竹内 裕一
- 1 小学校における法教育の難しさ
- 2 法教育実践の類型と問題点
- 3 法教育実践を構想する視点
- 4 獲得されるべき法的資質
- 5 まとめに代えて
- 第2章 法化社会としての現代社会と社会科 /田中 健夫
- 1 はじめに
- 2 法化社会における社会科教育の目標
- 3 法化社会としての現代社会
- 4 社会状況・社会問題理解の手段としての法教材
- W 開発した“法”教材と法教育文献紹介 [資料編]
- 第1章 “法”教材プラス10事例 /後藤 知憲
- 第2章 法教育の動向および参考文献 /三浦 朋子
- 1 はじめに
- 2 法教育とは
- 3 各省庁・団体の取り組み
- 4 裁判員制度に関する文献および関連資料
- 5 教材作成に役立つ文献
- 6 おわりに
まえがき
もうすぐ2007年が終わろうとしている。テレビでは年末の風物詩が毎日のように取り上げられている。12月12日の「漢字の日」に,日本漢字能力検定協会が全国公募した今年の世相を表す漢字一字が京都の清水寺で発表された。全国から約9万人が応募してきたが,今年の漢字は「偽」(ギ・いつわる・にせ)であった。
主催者である日本漢字能力検定協会は,「偽」を選んだ理由を以下のように示している。
1.相次ぐ食品偽装問題
2.政界に多くの偽り
3.老舗にも偽装が発覚
4.他にも多くの業界に「偽装」が目立った年
http://www.kanken.or.jp/kanji/kanji2007/kanji.html
第2位が「食」(ショク・くう・たべる),第3位が「嘘」(キョ・ふく・うそ),第4位が「疑」(ギ・うたがう),第5位が「謝」(シャ・あやまる)であった。応募者の多くが今年の世相を同じようにとらえていることがわかる。ちなみに,2006年は「命」,2005年は「愛」であった。この両年には皇室に慶事があったこともあり,世相と漢字は良くも悪くも両方の意味でとらえられる。しかし,今年の「偽」では救いようがない。しかも,この「偽」は一般市民によるものではなく,政治家,専門職,有名企業や老舗など,本来であれば市民から「信」を寄せられるべき存在によるものである。今年は「ブラックボックス」があけられ,その中に「偽」が残っていたということであろう。 社会科教育界に限定して今年の漢字を考えるならば,「(学)力」となろう。「(学)力」が問題となるのは毎年のことであるが,今年は文部科学省やOECDによる「学力」調査の結果から,「(学)力」の向上が例年以上に叫ばれた年であった。その中心はいわゆる「PISA型学力」,特に「PISA型読解力」であった。
社会科という教科は論者によって様々に定義されている。それらの定義は批判・対立する部分はあるが,「社会がわかる」ことを目指している点では共通していよう。「社会がわかる」とは子どもにとって,あるいは市民にとって「ブラックボックス」とされてしまっている社会をわかる力,「ブラックボックス」を読み解いていく力を育成することではなかろうか。
2008年春には,新庁舎が完成した文部科学省から新学習指導要領が公表される予定である。新学習指導要領の概要はすでに公表されている。今年を振り返り,それに,「ブラックボックス」を読み解いていく力を付け加えていくことの重要性を再認識する次第である。
本書は千葉大学教育学部・附属学校園連携研究の一環として行われてきた研究成果をまとめたものである。本研究の出発点は千葉大学法経学部の嶋津格教授との共同研究であった。また,明石要一前教育学部長,田村孝現教育学部長には我々の研究を様々な面で支えていただいた。さらに,元附属小学校長であった山崎良雄教育学部教授,岩垣攝教育学部教授,そして金本正武現附属小学校長には,研究授業等でご協力をいただいた。
最後に,本書の出版に際し,明治図書出版の樋口雅子編集長には甚大なご支援とご理解をいただいた。記して感謝申し上げる。
2007年12月24日 千葉大学教育学部 /戸田 善治
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- 明治図書