- まえがき
- 第T章 教師も子どもも元気が出る授業改革
- 算数授業論の常識を疑え! 〜すぐに役立つ15か条〜
- 形式から離れて自由な授業を創造しよう
- 第1条 算数の授業で集団での見通しをやめよ
- 第2条 ヒントカードは用意しても1種類だ
- 第3条 学習のめあては必要ない
- 第4条 教科書をもっと活用せよ
- 第5条 ヒント包含法での問題の導入を考えてみよ
- 第6条 子どもに問いを発生させる場面を用意しろ
- 第7条 机間指導を大切にせよ
- 第8条 子どもが解決した瞬間を共感せよ
- 第9条 板書に子どもの言葉をのせろ
- 第10条 ○つけ法をせよ
- 第11条 子どもが納得する場面を用意しろ
- 第12条 問題解決は1サイクルとは限らない
- 第13条 多様な考え方の取り上げは4つぐらいまでがよい
- 第14条 研究授業であっても適用題を入れること
- 第15条 いい授業かどうかの評価は,最後の子どもの表情で分かる
- 最後に
- 第U章 分かる・できる算数授業づくりのコツ 20
- @ プラス思考で算数指導にあたろう
- 明るく元気な教師のプラス思考/ プラス思考の効果と根拠/ 算数授業でのプラス思考の場面/ 教師は明るい方がよい
- A 子どもの立場から算数のよさを見直す
- 子どもをプラス思考にするために
- B 算数のよさの2段階理論
- あなたの小学校の頃を思い出そう/ 2段階で考えれば調和がとれる/ 問題が解けるということ/ 算数のよさのモデル図/ 第二段階へのよさへ行くためには/ 第二段階でのポイント
- C 子どもは分かれば感動する
- 子どもが感動する場面/ この指導場面から得られた知見
- D 教材のスモールステップをつかもう
- 教材のスモールステップをつかむこと/ スモールステップの例/ スモールステップの意義/ 相互指名は算数では危険!/ スモールステップを意識した実践校
- E 説明をうまくなろう
- 指導の基本は分からせる説明である/ 「分かる」説明のための基盤/ 説明の具体的方法(1):全体的把握と部分的把握/ 説明の具体的方法(2):順序を考えて話すこと/ 説明の具体的方法(3):対比すること/ 説明の具体的方法(4):五感に通じること
- F 問題提示はヒント包含法でしよう
- 問題提示の視点/ 問題提示には解決のヒントを含ませる
- G 子どもに「見通し」の力をつけよう
- 見通しをたてる手がかりを与えよう/ 困っている子どもに対して/ 見通しをつけさせる発問例/ 問題提示の台紙/ 既習事項を整理しておくこと
- H 机間指導は3回回り,声かけをしよう
- 「できる」ようにするための指導のコツ:机間指導は3回せよ/ 机間指導では共感の声かけをしよう
- I ○つけ法で子どもの意欲を高めよう
- 「○つけ法」をしよう/ 座席の配置/ 机間指導の回り方/ ○つけ法の留意点
- J 自ら解決する場面を奪っていませんか 〜性急な集団での見通しは集団カンニング〜
- 「解ける」ための視点 〜解決の場を与えること
- K 「わけ」を引き出すコツを習得しよう
- 「わけ」が分かる指導を大切にしよう/ 「わけ」を発表させるコツ
- L 算数のよさにこだわると子どもは算数をいやになる
- 算数のよさはすぐに分かるという妄想/ 算数のよさを問うだめな例/ 積み上げ方式で乗り越えよう
- M 練り上げ型算数指導を誤解すると力かつかない
- おおいなる誤解/ 練り上げ型授業の一般例/ この授業に対するコメント/ では,どうすればいいか/ 私が考える正しい練り上げ型多様性での授業構成
- N 図をかく技能を定着させるための練習法
- 技能の定着の時間をとろう/ 作図技能の効果的な練習方法
- O リズム変換で「できる」ようにする
- 授業の流れを意識的に変えよう/ 列ごと指名法/ 個の評価と指導/ 黒板から念頭へ
- P ぐっと押さえる「まとめ」定着法 〜適用場面拡張法〜
- 活用場面によるまとめ
- Q プロ教師のまとめ方
- 紙をはる「まとめ」は子どもを大切にしない方法/ どうしても紙をはりたい教師へ/ 理想は子どもと共にまとめを考える/ まとめには,結果としての知識とそれに至る考え方をまとめよう
- R 説明型授業から問題解決型授業への転換
- 2つの示範授業から/ 説明型授業は悪いか/ 問題解決型授業は良いか/ 説明型授業と問題解決型授業/ 私の現職教育の指導:レベルに応じて/ 問題解決型授業への転換例とその理由
- S 説明型から問題解決型への転換法の実際 〜落合康子先生の方法に学ぶ〜
- 問題解決型になるための具体的方法/ 落合康子先生のお手紙から
- 第V章 授業の実際から学ぶ分かる・できるコツ
- @ 私が感動した算数研究授業から学ぶ 〜都築民子先生の授業より〜
- 算数のよさが子どもから出てくる授業 −1年「8+3」の授業−
- はじめに/ ごく普通の小学校教師の授業から/ 授業の流れ/ 羽根小学校の現職教育/ 「良かった探し」アンケートの集計から
- A 私の示範授業から学ぶ
- 4年「1をこえる分数」に見る,分かる・できる授業のコツ
- はじめに/ 分数の意味についての復習:3/1mの復習/ 3/2mの復習/ 4/3m,5/2mの復習/ 単位分数がいくつ分/ 本時の課題/ できた分数の発表/ 1を越える分数の存在の確認/ 概念の適用(1)/ 概念の適用(2)/ 単純適用
まえがき
仕事がら全国の先生や子どもと会う。授業を通して会う。
研究指定校の準備研究会,発表会,現職教育の会,そして,私の示範授業で会う。それらを通して感じることは,ほとんどの教師はよく頑張っているということ,また,子どもも先生の応援を受けて学習に真剣に取り組んでいるということである。そんな姿を見て嬉しくなる。
教師も子どもも授業に対して真剣である。
だからこそ,日本の教育水準の高さを維持できるのだと思う。まず,この事実に対して素直に感謝したい。ご苦労様といいたい。
ただ,ときに真剣なだけに授業が空回りしていることがある。その結果教師も子どもも苦しそうに悩んでいる。なぜ,もっと分かるようにできないのか,もっと子どもの考えをほめないのか,もっとできるようにしないのかと思ってしまうことがある。
「授業というのは,教師も子どもも楽しくなければいけない」
これが私の信条である。
いい授業は,教師も子どもも楽しそうにしている。その楽しさのもとをたどっていくと,やはり,子どもたちが自ら考えて「分かる」「できる」ことが保障されている授業である。そして,子どもに「分かる」「できる」ことの自信をつけている授業である。それがとりも直さず生きる力なのだ。誤解してはならないのは,「楽しい」から「分かる」「できる」のではなく,「分かる」「できる」から子どもは「楽しい」のだ。どんなに時代が変化しようとも教育の変わらない原理である。
また,教師の楽しさや喜びとは何か。教師自身も算数の教材研究から新しい数理の目が開かれること,また.授業の中での子どもたちの発想によって目が開かれること,そして,子どもたちが「分かる」「できる」ようになることである。
でも,現実はそれらの達成には難しいことが多い。
では,具体的にどうやれば,子どもが「分かる」「できる」状態になるのか。算数の授業で何かいい手がないか。私はそのような授業のコツ,つまり授業の決め手がないかとずっと考えてきた。それは教師にとってのコツであり,単純で継続可能で効果のあるものの探究であった。
そういう目で見ていくと,確かにコツはあるのである。いや,コツを見つけ出したといってもいい。多くの授業を見る機会を得て,実際に現場で行われている授業のコツを見つけ,また実際にやってもらって効果のあるコツを考えてきた。もちろん私自身の過去の授業経験や現在の示範授業の経験からもコツを探し出してきた。だから,自信を持ってここに提案できる。
しかし,この本に書かれたコツを見てびっくりする方もいるだろう。従来の算数教育の常識とは異なる部分があるからだ。問題はその後だ。「常識と異なる」から捨てるのか,「いや待てよ,いいことがあるかもしれない」と素直に実践するかだ。
それは,読者の判断にゆだねたい。ただ,私が言えることは,これらのコツに従って顧問校にアドバイスし,成功してきたという事実だけである.ただし,これが全てであるという傲慢な気持ちはない。あくまでも,授業を成功させる一つのコツであると申し上げたい。
この本は,愛知県豊田市立高嶺小学校をはじめ,多くの小学校の先生方との出会いを通してできたものである。これらの方々に感謝申し上げたい。
ともあれ,この本の中で,多くの本物のコツを示すことができた。ぜひ,これらを実践してみて,教師も子どもも算数を楽しんで,ワクワク・ドキドキ・イキイキとして「元気がでる」学校生活を送ってほしい。
平成9年夏 /志水 廣
-
- 明治図書