- 『折り紙で数学』の刊行に寄せて
- はじめに
- 折り図記号/ 参考文献
- @ 折り鶴その変身の秘密
- 1 折るとは
- 2 鶴の折り方を考えよう
- 3 多角形の折り鶴
- 4 折り鶴変化
- A 連 鶴
- 〜仲良し鶴から百鶴へ〜
- 1 連鶴の構造
- 2 百鶴のしくみ
- 3 百鶴の折り方
- B ルート長方形を折ろう
- 1 √2 長方形の折り方
- 2 √3 長方形の折り方
- 3 黄金長方形を折ろう!
- 4 黄金長方形の折り方
- C 正多角形を折る
- 1 正3角形
- 2 正6角形
- 3 正方形から8角形・正16角形を作る
- 4 正6角形から円に近づける
- D 3角形・4角形の秘密
- 〜しきつめて遊ぼう〜
- 1 3角形の種類はいくつあるの?
- 2 3角形の折り方
- 3 いろいろな形や模様を作って遊ぼう
- 4 3角形をしきつめよう
- 5 3角形を組み合わせてできる形
- 6 研究課題
- E 正多面体を折る
- 1 風船折りで正多面体を折る
- 2 封筒で正多面体を作る
- 3 正多面体の不思議とは
- F 立体の切断
- 1 立体の切断
- 2 正4面体の切断
- G 折り紙を折って面積を半分にしてみよう
- コラム1 生徒作品「鶴ものがたり絵本」
- H 魔法の板・タングラムで遊ぼう!
- 1 魔法の板を作ろう
- 2 形の変身パズル
- 3 「エコタングラム」を作ろう
- 4 7つのピースを使って図形を作ろう
- 5 いろいろなものを作ろう
- I 折り紙を折って切るとどんな形?
- 1 正8角形,正方形
- 2 正6角形,正3角形
- 3 正5角形
- 4 紋章切り
- J 容積最大の箱作り
- 1 底が正方形
- 2 底が長方形
- 3 底がひし形
- 4 底が正3角形
- K 折り紙で折る正多角柱の箱
- 1 1枚で折る多角柱の箱
- 2 封筒で作る正多角柱の箱
- 3 6枚を組み合わせて作る正6角柱の箱
- コラム2 「千羽鶴折形」一番古い折り紙の本
- コラム3 お茶の水 おりがみ会館
- コラム4 遊園地で数学「角切八面体」
- コラム5 紙の博物館
- 付録 折り紙のルーツで試そう
- あとがき
『折り紙で数学』の刊行に寄せて
折り紙は,手先の器用な日本人に向いている,伝統的な芸術であり娯楽でもあります。私は「鶴」の折り方を誰に習ったのか,今では全く思い出せませんが,これが折れるだけで,外国でちょっとばかり尊敬をかちえたこともありました。また,折り紙には古典的な作品だけでなく,現代に創作された芸術的な作品もたくさんあります。
今では折り紙の伝承は薄れてきているようですが,それでも子どもをひきつける魅力は失われていません。算数・数学が苦手だという子でも,正方形の紙を折っていくだけで,ある瞬間に,予想もつかなかった形がぱっと立ち現れる驚きは,確実に味わうことができるでしょう。折り方に慣れていくと,さらに感動的な体験を味わえることも,折り紙のおもしろいところです。
「抽象的でわかりにくい」とされる算数・数学に,具体的なイメージを持ち込むためには,折り紙はとてもよい武器になるでしょう。図形的な問題だけでなく,分数とか無理数の世界も,紙を折ることによって「眼で見られる」のです。逆に折り紙の世界を理論的に整理し,基本をみきわめて体系化するには,数学的なセンスが必要でしょう。折り紙と数学とは,2重の赤い糸で結ばれているように思います。本書では,その「2重の赤い糸」を心得ている著者たちによって,読者はただ楽しみを求めているだけで,しだいに見晴らしのきく高みへと誘われていく仕掛けができています。これまでたくさん出ている折り紙の入門書とはひと味もふた味も違った,たいへんな労作です。
大人の世界では,深く考えたりせずに,簡単に判断を下す習慣が広まりつつあるようです。JR西日本の転覆脱線事故でも何人かの人々がたしかめもせず「大したことはないだろう」と判断してしまったのは,その現れです。しかし,今のような見通しの利かない時代こそ,「深く考える力」が大切なのです。多くの子どもたちが,本書で折り紙に親しみながら,計算練習では得られない「考える楽しさ」と「わかる喜び」を体験してくれるといいのだが,と思います。それは未来の日本を支える,大きな力になるに相違ありません。
2005年7月 大妻女子大学教授 数学教育協議会委員長 /野ア 昭弘
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- 明治図書