- はじめに
- 復唱法って,なあに?
- 復唱の場面/復唱しないと……/復唱法で発言のよさを広め,新たな気付きを生む/子どもの発言が間違っているとき/子どもに復唱させる
- CR一覧表
- 第1章 意味付け復唱法の理論
- ▲第1節▲ 意味付け復唱法の理論的背景
- 1 まずは,キャッチ&リスポンス能力から
- (1) 2つのきっかけ
- (2) 子どもの発言の素晴らしさ
- (3) うまく切り返せない理由
- (4) CR研究の経過と研究結果
- 2 CR研究の主な成果
- 3 意味付け復唱法の提案
- (1) 意味付け復唱法とは何か
- (2) なぜ,意味付け復唱法を提案するのか
- 4 復唱法の具体的な方法
- (1) 教師がする復唱
- (2) 子どもにさせる復唱
- (3) 両方の混合型
- 5 意味付け復唱法の効果
- ▲第2節▲ 復唱法の実践的方法論
- はじめに 子どもの言葉で授業を創る復唱法
- 1 丸ごと復唱しよう(丸ごと復唱法)
- 2 短く区切って復唱しよう(短区切り復唱法)
- 3 キーワードを復唱しよう(キーワード復唱法)
- 4 間違いも復唱しよう
- 5 復唱して切り返そう
- (1) WHAT(どういうこと?)で切り返す
- (2) HOW(どうやってやったの?)で切り返す
- (3) WHERE(どこにあるの?)で切り返す
- (4) WHY(なぜ?)で切り返す
- (5) その他の切り返し
- 6 復唱法活用の判断
- コラム 復唱法についての質問
- ▲第3節▲ 復唱法で授業を進めるためのレディネス
- はじめに
- 1 学級のレベルと復唱法
- (1) レベル0の学級とは
- (2) レベル1:授業中の子どもたちに表情が出る学級に
- (3) レベル2:つぶやきが生まれる学級に
- (4) レベル3:復唱法実践レベルへ
- 2 子どもに応じた復唱
- (1) 理解に時間がかかる子に応じた復唱
- (2) 理解度の高い子に応じた復唱
- 3 教材に応じた復唱
- ▲第4節▲ 復唱法の理論(Q&A編)
- 復唱しない授業/子どもの言葉で授業を創る/復唱の場面/教師が行う復唱/子どもにさせる復唱/復唱法の留意点
- コラム 無条件の自己一致
- コラム 復唱法の誤解
- 第2章 学年別復唱法のモデル実践とアイデア
- [第1学年]
- 〈事例1〉「たしざん」
- 丸ごと復唱法でいろいろな表現を引き出す
- 〈事例2〉「いろいろなかたち」
- WHAT で切り返す
- 〈事例3〉「100までの数」
- 動作化させて「ずれ」を修正する
- [第2学年]
- 〈事例4〉「1000までの数」
- WHERE の切り返しで発言の視覚化を図る
- 〈事例5〉「10000までの数」
- 子どもの発言を予想しておく
- 〈事例6〉「たし算とひき算のひっ算 (1)」
- 子どもの言葉のよさに共感する
- [第3学年]
- 〈事例7〉「2けたをかけるかけ算の筆算」
- 肯定・賞賛の言葉がけをする
- 〈事例8〉「かくれた数はいくつ (1)」
- 子どもが理解するための時間を保障する
- [第4学年]
- 〈事例9〉「折れ線グラフ」
- 間違いを復唱する
- 〈事例10〉「調べ方と整理のしかた」
- 子どもの手の動きをよく見る
- [第5学年]
- 〈事例11〉「円」
- 算数的活動に基づいた発言を復唱する
- 〈事例12〉「面積」
- キーワードを強調して復唱する
- [第6学年]
- 〈事例13〉「体積」
- 発言を動作化させる
- 〈事例14〉「分数のたし算とひき算」
- 子どもの言葉を板書する
- 〈事例15〉「平均」
- 復唱法で子どもの発言をつなげる
- コラム 復唱法の効果/なぜ,子どもの発言に付け足してしまうのか
- 第3章 復唱法で教師が変わる・子どもが変わる・学級が変わる
- 〈教師が変わる@〉 子どもの言葉の豊かさに気付く教師に変わる
- 子どもたちが自ら学ぶための場を創る復唱法/子どもの言葉の中にある真理/子どもの言葉を受容し,紡いでいく営みを
- 〈教師が変わるA〉 子どもの思いを大切にできる教師に変わる
- 本物の復唱法を求めて/脱「お仕置き復唱法」/脱「つまみ食い復唱法」/子どもたちの思いを大切にする教師
- 〈教師が変わるB〉 子どもの発言のよさを見つけようとする教師に変わる
- 教師の「ものさし」と子どもの「ものさし」/だからこそまず教師が復唱/「なるほど!」「その通り!」を口癖に
- 〈教師が変わるC〉 「ずれ」が見えて修正できる教師に変わる
- 見えない「ずれ」が見えてくる/子どもの言いたがっていることに耳を傾 けよう
- 〈子どもが変わる@〉 友だちの発言をよく聞こうとする子どもに変わる
- 分かった子にとっての復唱/友だちの発言のよさを問う/さまざまな視点からの復唱で理解を深めていく/算数日記による振り返りから
- 〈子どもが変わるA〉 友だちの発言から学ぼうとする子どもに変わる
- 友だちの発言をつなげるために/音声言語は消えるもの/復唱している間の時間/発言を大切にする姿は教師の復唱から
- 〈子どもが変わるB〉 自分の考えを自分の言葉で発言できる子どもに変わる
- 全員に発言させたい/友だちの発言を復唱させることから/発言したい子を見つける/つないで
- 〈学級が変わる@〉 安心して話せる雰囲気の学級に変わる
- 復唱法は肯定的に受け止めることから/子どもの不安をやわらげる
- 〈学級が変わるA〉 全員が授業に参加できる学級に変わる
- 正しく声に出して出力する力/連絡ノートで外化の練習/変わってきた学級の雰囲気
- コラム お仕置き復唱法からの脱却/復唱法が短所になる場合
- 第4章 復唱法を修得しよう
- ▲第1節▲ 復唱法トレーニングガイド
- 1 2人でトレーニング
- (1) 丸ごと復唱基礎トレーニング
- (2) 短区切り復唱基礎トレーニング
- (3) 間違いの復唱基礎トレーニング
- ※復唱法基礎トレーニングシート
- 2 グループでトレーニング
- (1) 授業シナリオトレーニング
- (2) 授業シミュレーショントレーニング
- (3) 復唱トレーニング自己チェック表
- ※復唱法授業シナリオトレーニングシート
- ▲第2節▲ 校内研修で楽しく復唱法実習
- 1 校内研修で復唱法レッスン!
- 2 復唱法実技研修の流れ
- (1) 復唱場面の確認
- (2) 教師役・子ども役を交代してロールプレイ
- 《シミュレーション授業指導案》
- 3 研修会の様子
- (1) シミュレーション授業の記録
- (2) 復唱法のポイントの話し合い
- (3) 子ども役として
- 4 復唱法実技研修を終えた感想(研修会後のアンケートより)
- ▲第3節▲ 志水塾でトレーニング
- 1 授業力アップセミナー志水塾の歩み
- 2 復唱法講座の概要
- 3 参加者の声
- ▲第4節▲ 復唱法Q&A
- コラム カウンセリング・マインドと〇つけ法・復唱法
- おわりに
はじめに
筆者は,前任校の筑波大学附属小から現在に至るまで,算数科の授業法について研究してきた。筆者の問題意識は,どうすれば問題解決型授業が現場に根づくかということであった。また,教師にとって,そして子どもにとってハッピーな授業とはどんなものかということであった。その結果,到達したのが,机間指導での志水式〇つけ法であり,授業のコミュニケーションにおける意味付け復唱法であり,より問題解決型授業にするためのヒント包含導入法であった。この3点セットで問題解決型授業の基盤が整うのである。
これらの方法を実践すると,確実に教室の授業が変わる。これは,1300人以上にアドバイスしてきたことから言えることだ。〇つけ法と意味付け復唱法は志水理論の中でも特徴的なもので,これらを実践している教師たちが集まってできたのが授業力アップセミナー志水塾(研修会)である。この本も志水塾の仲間や多くの顧問学校の仲間に支えられてできたものである。
読者のみなさんは安心して欲しい。〇つけ法も復唱法もごくごく簡単で単純な方法である。だから,誰でも取り組むことができるのである。しかも,持続可能な方法である。〇つけ法も復唱法も実践していくと,教材研究をしなければならないことに気が付いてくる。つまり,教師への動機付けともなっている。復唱法は,基本的に子どもの言葉を復唱して授業のねらいへ帰着させようとするものである。教師の説明ではない。子どもの言葉で授業を構成するのである。これは,教室という文化を子どもたちが相互に形づくるものだという私の信念に基づいている。
復唱するだけで授業が創れるなんて信じられない,という方もいるが,素晴らしい授業の多くは教師や子どもの復唱によって授業が創造されているのである。
あなたはいつまで子どもの発言を捨てるのか。子どもの発言は宝物である。まさに数理を示す「言葉の力」が存在する。教師も子どもも,教室の中で飛び交う「言葉」を大事にすることで,コミュニケーションが促進される。復唱法はとても魅力ある方法である。ぜひ復唱法に挑戦してみて欲しい。
この本を企画したのは,平成17年1月である。それから最終原稿が整うまで1年と4か月を要している。それだけ,音声言語の手法である復唱法を文章化することはかなりの労苦を伴った。主な編集は井出誠一先生(長野県岡谷市立岡谷小学校)が行った。でき上がった原稿を志水塾のスタッフが何度も校正をした。最後に志水が2回,やり直しの指示を出した。こうしてやっと生まれたのがこの本である。この本にかかわった執筆者の皆さん,特に井出先生,本当にご苦労様でした。また,明治図書の石塚嘉典氏には辛抱強く原稿のでき上がりを待っていただいた。厚く感謝申し上げます。
平成18年8月 愛知教育大学 /志水 廣
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- 明治図書