- はじめに
- 第T章 最低基準と発展学習の関係
- 1 文部科学省が述べる最低基準と発展学習
- 2 混沌とした発展学習論から抜け出すために
- 3 理科の学力,興味の維持を目的とした発展学習を
- 第U章 本書で提案する発展学習,そのねらいと分類
- 1 ねらいからの分類
- 2 授業形態からの分類
- 3 ネタで勝負の発展学習
- 第V章 発展学習実践事例集
- 3年生編
- A 「昆虫を育てよう」で基礎基本を呼び戻す発展学習
- 1 昆虫の体を調べよう
- 2 実際の展開
- B 「音ともの」で基礎基本を呼び戻す発展学習
- 1 「音ともの」について学習しよう
- 2 音の学習 ワークシート
- C 学びの技術を養う「植物のつくりと育ち方」の発展学習
- 1 観察カードを書こう
- 2 他の植物と比べてみよう
- D 学びの技術を養う「じしゃくともの」の発展学習
- 1 科学的事実の追究態度を養う
- 2 極の性質を追究する
- E ネタで勝負の発展学習
- 1 ペーパークラフトでモンシロチョウを作ろう
- 2 色を塗って図鑑を作ろう
- 3 ペーパークラフトでバッタやヤゴを作ろう
- 4 トラップを作ろう
- 5 ペーパークラフトで昆虫採集をしよう
- 6 ペーパークラフトで花を作ろう
- 7 ペーパークラフト アゲハチョウの作り方
- 4年生編
- A 「月の満ち欠け」で基礎基本を呼び戻す発展学習
- 1 月の満ち欠けを学習しよう
- 2 月の満ち欠けのワークシート
- 3 月の満ち欠けの説明
- B 「水のゆくえ」で基礎基本を呼び戻す発展学習
- 1 水の循環を学習しよう
- C 学びの技術を養う「ディベート」の発展学習
- 1 これが理科ディベート用サービスシート
- 2 ディベートで実験を活用する力をつける
- 3 1対1ディベートを体験する
- 4 ボックス図を教える
- 5 理科ディベートをグループで行う
- 6 子どもたちが考えた立論・反対尋問
- D コース選択による「水のゆくえの証明実験」の発展学習
- 1 子どもに実験計画を立てさせよう
- 2 指導上の工夫
- 3 水が蒸発していることを証明する
- 4 子どもたちは生き生き活動した
- E コース選択による「電気で動くおもちゃ」の発展学習
- 1 子どもの発想を生かして工作をしよう
- 2 指導上の工夫
- 3 工作の実際
- 4 工作の紹介
- F コース選択による発展学習 科学マジック大会を開こう
- 1 科学マジックで科学的な目を養う
- 2 科学マジック大会を開こう
- G ネタで勝負の発展学習
- 1 アイスキャンディーを作ろう
- 2 ペットボトルロケットを作ろう
- 3 ツリーウオッチングをしよう
- 4 種子の旅を見つけよう
- 5 冬芽を見つけよう
- あとがき
はじめに
昨今の理科において,発展学習は是非とも必要である。しかし,発展という言葉の解釈が曖昧で,混乱を引きおこし,考え方を難しくしている。
そこで,本書では,
(1) 文部科学省が述べる最低基準と発展学習
(2) 混沌とした発展学習論から抜け出すために
(3) 理科の学力,興味の維持を目的とした発展学習
といった発展学習指導以前に関することがらを,しっかりと学習することにした。発展学習について議論するには,最低限ふまえておかなければいけないことをまとめた。
その報告を受けて,3つのスタイルの発展学習の方法を紹介する。
・失われた? 基礎基本を呼び戻す発展学習
・学びの技術を養う発展学習
・コース選択授業における発展学習
このような理論的背景,発展学習の柱の提案が本書のコンセプトである。
実践例,教材例,ワークシートなども役立つように豊富に盛り込んだ。
しかし,教材例だけを見て,ネタのみの収集を目的とするなら,他の教材研究書に比べれば物足りなさを感じる方もいらっしゃるかもしれない。
それはそれでよく理解できるが,私たちは,上記のような理論,発展学習コンセプトを前面に打ち出し,かつそれにあった実践例を盛り込むのが役割だと考えた。
なぜなら,「混沌とした発展学習論」から,抜け出さなくてはならないのだ。
私たちは,本書執筆に当たり,たくさんの「発展学習」特集の雑誌に目を通した。あまりに考え方が乱立し,どれに賛同すべきか,信ずるべきか,そしてどれが私たちに役立つ発展学習なのか実に迷った。
つまりは,理論は打ち出しても十分なる実践検証,そして使える授業の形になっているものを見つけるのがとても困難な状況にある現在なのである。
そうした状況から,本書は抜け出すことに成功したと考えている。
その「抜け道」が前述した3つの柱である。
もちろん,単なる渋滞回避の「抜け道」ではない。現在の理科教育に必要な力を身につけさせる道として検討した。この道こそ,本書の提案である。しかし,その道はもっと他にまだまだあるはずだ。それを見つけるのが教師の役目である。本書は,そうした道を見つけるためにとりあえず歩く,つまりは調査としての道を切り開いた役割を持つ。
そして,5〜6年編の最後に
・学力問題と発展学習を考える
・私立学校に見る学力維持の現状と公立学校との比較
という章も設けた。
こうした社会的状況の認識がもっと必要だからである。
3・4年生の実践編と5・6年生の実践編の2分冊で展開した。みなさんの道探しに一役買うことを期待する。
平成15年1月 執筆者代表 /岡田 篤
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- 明治図書