ちがうからこそ豊かに学びあえる
特別支援教育からインクルーシヴ教育へ

ちがうからこそ豊かに学びあえる特別支援教育からインクルーシヴ教育へ

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排除されてきた子どもたちを受け入れ、共に学び育ちあう。

障害児教育の世界的な流れとなりつつある「インクルーシヴ教育」とは,「障害児」が排除されることなく,「健常児」と共に学びあい,育ちあう教育である。特別支援教育の問題点を指摘し,実践と理論からインクルーシヴ教育の構築をめざす。


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ISBN:
4-18-618215-9
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
3刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

はじめに
T インクルージョンをめざす教育
1 インクルーシヴ教育とは
(1) 「インクルージョン」とは
(2) 障害のある子どもの教育の歴史的展開
(3) 日本における障害児教育の現状
(4) 特別支援教育からインクルーシヴ教育へ
(5) インクルーシヴ教育の実践を創造する
2 地域の学校で「共に学ぶ」教育の意義と今後の課題
(1) 「共に学ぶ」教育の意義
(2) 「共に学ぶ」教育の今後の課題
(3) 「特別なニーズ教育の保障を含めた共生論」の提唱
(4) 自尊の感情を育む教育
U インクルーシヴ教育の実践
1 一緒に生きて,共に育ち合う
(1) 出会いの日の出来事
(2) 友だちと一緒に過ごす
(3) 周りを見ながら行動する
(4) 友だちに信頼を寄せる
(5) 周りの子どもたちが変わっていく
(6) みんなと一緒にいて
(7) 「家での生活も見直さなくては」
(8) 共に育ち合う子どもたち
(9) 一緒に楽しさを味わいながら
2 「今を生きる」喜びをこの子たちとともに 〜「障害」児学級担任として〜
(1) 「まどか,おおきくなったら……」
@ しんいちさんとのカルタ取り
A まどかさんの「うるさい!」
B 九九を覚えるまどかさん
C 家庭訪問の威力
D まどかさんの着替え
E 国語の時間・その1
F 国語の時間・その2
G 「無理だと思っていた」という言葉に少し腹が立ったお母さん
(2) さいごまで,さいごまで
@ 「早くかたづけないと,お茶,飲ませないよ」とよしこさん
A 「さゆり,れんらくちょう,書く!」
B 私の失敗
C 私がゆったりとした気持ちになると,彼女は動き出す
D 「さいごまで,さいごまで」
E 本読みができる
F 「なぞの数」物語・その1
G 「なぞの数」物語・その2
H 確かな学習は生活を高める
3 問題が起こるって,すばらしい
(1) 集中校方式
(2) 5年生1学期
(3) 事件・鼻水の呪い
(4) みんなと「ちがう」から
(5) 6年生
(6) 進路
(7) ひろみさんの変容
4 インクルーシヴ教育への期待
(1) 共生教育の底に流れているもの
(2) 6つの提言
(3) 今を生きることを大切にして
おわりに

はじめに

 現在,障害児教育は大きな転換期にある。日本では,文部科学省が障害児教育を「特殊教育」から「特別支援教育」へと大きくシフトさせつつある。世界では,ユネスコがリードして,障害児教育はインクルージョンの考え方に立ったインクルーシヴ教育の方向に向かっている。

 このようなときに,私たちは,障害児教育を含む日本の教育を全体的・根本的に問い直すために実践と理論の一例としてここに本書を提起したいと考える。本書においても私たちは,障害児のみを対象とする教育から,障害児も一人の子どもとして大事にする教育,しかもその一人ひとりの子どもが,それぞれがちがうからこそ豊かに学びあえる共育を構想している。

 日本の学校教育の現場では,古い特殊教育制度の下でも,障害のある子どもも1人の大事な子どもとして尊重し,子ども同士の育ちあいに期待と希望をもち,地道に取り組まれた実践も少なからず存在した。そのような実践はたまに教職員組合の研究集会などで報告されることがあった。また,知られないところで密かに実践されてきた。このような実践は,「共に育つ教育」「共生教育」「共生共学」と呼ばれてきた。

 しかし,まだこのような共生共学の実践は少ない。また,そのような共生共学の実践を展開するには困難が多い。日本の教育制度が今なお共生共学を認めていないからである。

 それでも今,少し教育現場の様子が変わりつつある。それは,これまでのような障害の種類と程度で学ぶ場を分けてきた固い特殊教育制度が,一見やわらかに見える特別支援教育体制に変わろうとしているからである。そこでは子どもの特別なニーズに応じた教育へと転換しようとしている。

 しかし,私たちはこの特別支援教育に満足できない。子どものニーズを誰が判断するのか,また,障害のある子とない子が育ちあう教育をめざしているのか,という点で共生共学とは異なるからである。特別支援教育はまだ共生共学に至る前の段階であると考えていい。

 本書はこのような現状のなかで,これまでに地道に取り組まれてきた教育実践とそれにかかわる理論とを,「インクルーションをめざす教育=インクルーシヴ教育」の実践と理論の一つとして提案し,これからの実践を創造していくたたき台として提起したい。

 第1章1節では,堀がインクルーシヴ教育についてその意義と問題点,障害児教育の歴史とインクルーシヴ教育への提案を行った。2節では西村愛さんが,これまでの「共に学ぶ」教育の意義と問題点を指摘した上で,今後の課題を明確にして特別なニーズ教育の保障を含めた共生論を提案している。

 第U章1節では,中田省己さんが普通学級での1年間の実践を報告している。2節では,障害児学級担任の中村工さんが,普通学級への入り込むの実践を報告している。3節は,普通学級担任の松森俊尚さんが,交流として障害のある子どもを受け入れている実践報告である。4章では,徳田茂さんが親の立場から共生教育への期待について書いている。

 本書の執筆者は全員が実践者と言っていい。実践をしているか自分のフィールドをもって活動している。だからきれい事に流されず,現実を直視して,自分の実践の記録と思いを書いている。本書が厳しい教育現場を前にしながらも,自分の実践に取り組もうとしている実践者に少しでも参考になる点があればありがたいと願って本書を編んだ。


  2004年7月   編著者 /堀 智晴

著者紹介

堀 智晴(ほり ともはる)著書を検索»

1947年三重県四日市市生まれ

大阪市立大学大学院生活科学研究科教員(学術博士)

専門分野:インクルーシヴ教育,人権保育・教育

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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