- まえがき
- 第T部 ぼくをわかって欲しい──に応える「この指導」
- 講座T 小児神経科医が考えたADHD/LD児の教育
- 1 ADHDとは
- 2 ADHDの主症状〜注意欠陥〜
- 3 ADHDの主症状〜多動
- 4 ADHDに併存する病気〜反抗挑戦性障害〜
- 5 薬物療法
- 6 心理療法の原則
- 7 一番最初にやるべきこと
- 8 学習を進めるには
- 9 知能検査から,個別教育計画へ
- 講座U 模擬授業
- 1 1年国語 「あるけあるけ」 /牧野 泰子
- 2 中学理科 「消化の仕組み」 /蓑輪 裕恵
- 3 6年算数 「比とその利用」 /辻岡 義介
- 4 5年社会 「わたしたちの国土」 /吉田 高志
- 5 中学数学 「方程式の利用」 /橋本 芳治
- 6 4年国語 「報告文の書き方」 /宇多 幹子
- 7 4年社会 「事件や事故からくらしを守る」 /西尾 文昭
- 8 図画工作 「ねん土体そう」 /高橋 正和
- 講座V ADHDに関するQ&A
- Q1 医療機関との連携について(保護者への勧め方)
- コラム1 学級としてのシステム作り
- Q2 問題行動への対処の仕方について
- Q3 通常学級と特殊学級について
- Q4 リタリンについて
- Q5 小学1年生で,平仮名が書けない児童について
- Q6 平仮名の点や画を上下,左右,逆に書く子について
- Q7 ADHD児への指導法
- Q8 ADHD児への対応の仕方
- Q9 その他 バークレー博士の12の原則
- 第U部 模擬授業の理解と指導のポイント38
- 第T章 ADHD,LDの理解とこの指導法でここまでできる
- 1 症状だけならばだれにも当てはまる
- 2 注意欠陥と多動の意味
- 3 注意欠陥の診断基準(DSM−W)
- 4 多動の診断基準(DSM−W)
- 5 ADHDの診断基準(DSM-W)
- 6 併存障害で問題になるのが「反抗挑戦性障害」
- 7 「反抗挑戦性障害」は環境がつくったものである
- 8 「学習障害(LD)」の定義
- 9 LDをもつ子どもを1年生の1学期に見つけられなかったら対策が手遅れになる
- 10 「だれのことかな」(1)(通知表の所見欄)から
- 11 「だれのことかな」(2)(通知表の所見欄)から
- 12 はやく,私をみつけて
- 13 薬は本人の利益のために使う。教師のためではない
- コラム2 リタリンの副作用
- 14 ジェットコースターから飛び降りた子ども
- 15 母親が家事ができない,ご飯も食べられない,ノイローゼ状態になるくらい多動な子ども
- 16 おとなしくなるためだけに薬をあげるのではない。できなかった行動ができる。よい体験をすることができるから薬をあげるのだ
- 17 一番最初にすることは,子どもから信頼と尊敬を取り戻すこと(心理療法の原則)
- 18 何よりも大切なのは学級運営(学級経営)
- 19 学級運営の実際
- 20 学級開きに何をするのか?
- 21 少しずつ,社会のルールを教える
- 22 バークレー博士が教える12の原則
- 23 ADHDの子どもの学習のポイントは「作業記憶」にある
- 24 算数指導の実際―作業記憶を理解しよう―
- 25 バークレー博士の12の原則と向山洋一氏の授業の原則十カ条
- 26 遅れているLDの評価と学校教育
- 第U章 プロの教師なら知ってほしい,できてほしい指導法
- 1 精神発達遅滞の理解が障害児教育の基本である
- 2 レディネスを無視した指導は子どもをノイローゼ状態にしてしまう
- コラム3 レディネスを無視した指導は子どもをダメにする
- 3 LDの場合は,得意なところを伸ばしてはいけない
- 4 「言葉の教室」(通級)での指導は終了したというけれど
- 5 「積み重ならない」高機能の広汎性発達障害(高機能自閉症,アスペルガー症候群)
- 6 指導の方向性が2つある
- 7 「質的な障害」のある子には,行動パターンを逐一教えることだ
- 8 「自閉症スペクトラム」では,あなたも自閉症になる?
- 9 【演習問題1】我々は,どのような手段(身体の部分)を通して,情報を手に入れていますか。書き出しなさい。
- 10 SPELLの法則が教えてくれる自閉症児への対応
- 11 スモールステップとは何か
- 12 【演習問題2】「次の詩あるいは句をデタラメでよいから読んでごらんなさい」という指示が,スモールステップな指示になっている詩,あるいは句はどちらか。根拠も書きなさい。
- 13 教師に望む3つのこと
- @ 科学的な教師であってほしい
- A 子育てのプロである教師であってほしい
- B システムを作れる教師であってほしい
まえがき
2003年8月,新潟で,教室の障害児への対応を主軸としたセミナーが開かれた。大森塾と有志による勉強会である。この時の私の講演は,大森修氏らがテープ起こしを行い,頒布された。
2003年9月には,福井で,ADHDセミナーin福井が行われた。私の講演と模擬授業批評,Q&Aの講座もテープ起こしが行われ,「ぼくをわかって」という題名の冊子として頒布された。どちらの冊子も瞬く間に売り切れた。
これらの冊子を読んだ明治図書の樋口雅子編集長が,その書籍化を勧めてくださった。それが本書である。
私が書いた文章は,難解で分かりにくいらしく,樋口雅子氏からよくご指導をいただく。ところが自分では,どこが分かりにくいのか一向に分からない。
五十嵐義勝氏(富山県立しらとり養護学校)は,私の文書の大切な部分に赤線を引く作業をした。読むたびに,異なる場所に赤線が引かれる。結局,すべての文書に赤線をひくことになってしまい,「赤線を引きながら読む」という作業を中止せざるを得なかったという。あきらかに私の文章が悪文である証拠だ。
樋口雅子氏より原稿を添削していただくと,具体的な事例を入れなさいとよく言われる。医学論文,具体的な事例の報告(症例報告)は大切であるが,事例に学び,統計学的な評価に耐えうる論文(研究報告,原著論文といわれる)がより重要であるとされる。
どうも,私は医学論文の書き方で,教育雑誌でも書き続けようとしているらしい。
このエピソードに,私は,医療現場と教育現場との間で共通した言葉のなさを感じ取る。医師は教師に,子どものことについて話し,教師もうなずく。分かっていただいたと医師は思いこむし,教師も分かったと思いこむ。しかし,それは双方の誤解でしかない。
それゆえ,いろいろトラブルが出てきた時に,なぜ教師がそんなことをしたのか医師は理解できないし,教師も医師が,なぜそんなことを今さらになって言い出すのか分からないのである。
これからの医療と教育とのお互いの土俵を理解しながら進めていく必要があるのだと痛感している。私自身,相手の土俵の理解がまだまだ足りないのだと反省している。私の初めての著書『TOSS特別支援教育の指導ML相談小事典』は私の予想を超えた反響をいただいたが,それも竹田博之氏が,医師である私の言葉を教師の立場でまとめなおしてくださったことが,何より大きいのだと改めて感じている。
この本も,一言一句,私の言葉であることに間違いはないが,会に参加してくださった教師の方々が私から引き出した著作であるとお考えいただきたい。
私は,地方都市・仙台の名もない小児神経科医でありながら,教育雑誌に連載をもち,医教連携の最先端の道を歩ませていただいている。これも向山洋一氏や大森修氏をはじめとした教師のみなさまとの出会いのおかげである。また,数時間にに及ぶテープからの書き起こしを行ってくださった大森塾事務局,ADHDセミナーin福井の事務局の皆様に,この場を借りて深く感謝申し上げたい。
/横山 浩之
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- 明治図書