- 本書刊行のねらい
- T章 中央教育審議会答申全文
- ◆中央教育審議会答申全文
- ◯ 幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)
- これまでの経緯
- 1.教育の目的とこれまでの学習指導要領改訂
- 2.現行学習指導要領の理念
- 3.子どもたちの現状と課題
- 4.課題の背景・原因
- (1) 社会全体や家庭・地域の変化
- (2) 学習指導要領の理念を実現するための具体的な手立て
- (3) 教師が子どもたちと向き合う時間の確保や効果的・効率的な指導のための条件整備
- 5.学習指導要領改訂の基本的な考え方
- (1) 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂
- (2) 「生きる力」という理念の共有
- (3) 基礎的・基本的な知識・技能の習得
- (4) 思考力・判断力・表現力等の育成
- (5) 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
- (6) 学習意欲の向上や学習習慣の確立
- (7) 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実
- 6.教育課程の基本的な枠組み
- (1) 小・中学校の教育課程の枠組み
- (2) 高等学校の教育課程の枠組み
- (3) 学校週5日制の下での土曜日の活用
- (4) 発達の段階に応じた学校段階間の円滑な接続
- (5) 教育課程編成・実施に関する各学校の責任と現場主義の重視
- 7.教育内容に関する主な改善事項
- (1) 言語活動の充実
- (2) 理数教育の充実
- (3) 伝統や文化に関する教育の充実
- (4) 道徳教育の充実
- (5) 体験活動の充実
- (6) 小学校段階における外国語活動
- (7) 社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項
- 8.各教科・科目等の内容
- (1) 幼稚園
- (2) 小学校,中学校及び高等学校
- (3) 特別支援教育
- 9.教師が子どもたちと向き合う時間の確保などの教育条件の整備等
- (1) 教職員定数の改善
- (2) 教師が子どもたちと向き合う時間の確保のための諸方策
- (3) 効果的・効率的な指導のための諸方策
- (4) 教育行政の在り方の改善
- 10.家庭や地域との連携・協力の推進と企業や大学等に求めるもの
- (1) 家庭や地域との連携・協力の推進
- (2) 企業や大学等に求めるもの
- 別表 標準授業時数 小学校,中学校 教科・科目 高等学校
- U章 答申の提起したものをどう読み解くか
- 1 答申の読み方と改訂の特色
- 2 教育基本法,学校教育法等の改正を受けた改訂
- 3 「生きる力」の再定義 ―知識基盤社会とキーコンピテンシー―
- 4 基礎的・基本的な知識・技能の習得 ―その意義と習得方策―
- 5 思考力・判断力・表現力等の重視 ―知識・技能の活用を通じて―
- 6 教えることと学ぶこととの関係のバランス ―"二項対立"の克服―
- 7 教育課程の枠組みについて ―教科等の構成と授業時数―
- 8 教育内容に関する改善事項
- 9 各教科等の改善 ―国語,算数・数学,理科,総合的な学習の時間―
- 10 その他の改善事項
- 11 新教育課程の実施に向けて
- V章 答申読み解きのキーワード解説
- (キーワード)
- 1 学習指導要領見直しの観点
- 2 「生きる力」
- 3 知識基盤社会
- 4 人間力
- 5 学校教育法と学習指導要領との関連
- 6 学校教育法第30条第2項(第49条,第62条等)
- 7 基礎的・基本的な知識・技能の習得
- 8 重点指導事項例
- 9 思考力・判断力・表現力等の育成
- 10 「教えて考えさせる指導」
- 11 学習意欲の向上や学習習慣の確立
- 12 小学校の授業時数
- 13 中学校の授業時数
- 14 授業時数増加の意味
- 15 中学校選択教科
- 16 新たな研究開発学校制度の導入
- 17 言語活動の充実
- 18 理数教育の現実
- 19 道徳教育の充実
- 20 小学校における外国語活動の創設
- 21 教科等を横断して改善すべき事項
- 22 総合的な学習の時間の改善
- 23 教師が子どもたちと向き合う時間の確保のための諸方策
- 24 学習指導要領の基準性と"はどめ規定"
- 25 中学校における部活動の位置付け
- 26 義務教育の目標
- 27 義務教育学校
- 28 全国学力・学習状況調査
- 29 OECDのキーコンピテンシー
- 30 PISAとTIMSS
- 31 PISA 2003年調査の各評価分野の定義
本書刊行のねらい
答申にみる学習指導要領改訂の背景と特色
平成20年1月17日,中央教育審議会の答申が発表され,学習指導要領の改訂のねらいとその概要が明確にされた。本書は,答申の全文を掲げるとともに,重要ポイント及び関連する用語の解説を行い,新学習指導要領の概要を理解する手引きとしたものである。
今回の改訂の背景は次の点に求めることができる。
第一は,多方面にわたる教育改革の渦中での教育課程の改革であるという点である。とりわけ教育基本法及び学校教育法等の改正は,教育の目標や義務教育の目標の見直しにつながり,新しい学習指導要領の学力観や学習指導観の基盤となっている。また,学校評価等の学校運営の改善の取組も広く実施されており,今後は教育課程の評価と改善の充実を課題としている。
第二は,学校教育の質の向上が課題となっていることである。なかでも確かな学力を育てることは学校教育の中心的な課題であり,今回の改訂も基礎的・基本的な知識・技能の習得等の重視にみられるように,この動きを踏まえたものとなっている。
第三は,OECD・PISA にみられる国際的な学力の動向を踏まえて教育課程の改善が進められた点である。特に基礎的・基本的な知識・技能の習得とともにその活用を重視したことは,その具体的なあらわれである。平成19年度に開始された全国学力・学習状況調査においては,既に知識・技能の「活用」に関する問題が実施されており,今回の改訂とあわせて重要なポイントとなっている。
このような背景を持つ改訂であるが,今回の改訂のねらいと内容の特色はどのようにまとめることができるであろうか。改訂の特色を明確にするには,学力観,学習指導観,教育課程の枠組み等の観点から整理することが必要である。これらの観点から整理した時,改訂の特色は次の5点にまとめることができよう。
@ 「生きる力」の理念の継承と再定義
A 基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の重視
B 国語,算数・数学,理科,外国語等の教科の授業時数の増加と指導内容の充実
C 選択履修幅の拡大から基礎・基本と共通性の重視へ
D 教師の指導性と児童生徒の自発性・自主性とのバランスの回復
総じて捉えると今回の改訂は,「生きる力」の理念の充実と「確かな学力」の実質化を目指す改訂とみなすことができる。
本書の構成と活用方法
本書の構成は,T章に答申の全文を掲載し,U章は答申の重要ポイントの解説,V章は関連する用語の解説としている。U章の解説については,大部にわたる答申の読み取り方を示すとともに,改訂の特色,背景となる学校教育法等との関連,改訂の重要ポイント,今後の各学校における取組等を,11項目としてまとめた。特に「生きる力」の新たな意味,基礎的・基本的な知識・技能と思考力・判断力・表現力の関連,教育課程の枠組みの改善は,改訂の骨格をなすものであり,その趣旨を十分に理解しておくことが大切である。
V章は,答申を理解するために有益と思われる用語を31項目取りあげ,できるだけ分かりやすく解説した。
本書の活用方法としては,まず答申全体の構成を把握した上で,それぞれの項目について整理していくことが必要である。特に,学習指導要領改訂の理念となる学力観と学習指導の考え方,教育課程の枠組みと配当時数,各教科等の改訂の概要,といった点に着目して整理していくことが大切である。
また,U章は,答申のポイントをその背景も含めて解説したものであり,この部分を活用していただいても改訂の概要を把握することができる。
V章については,それぞれの用語の意味を把握し,T章,U章と併せて活用することにより,改訂の全体像の理解が深まるものと思われる。
本書が広く活用され,各学校における教育課程の編成と実施に生かされれば幸いである。
平成20年1月 解説 /工藤 文三
-
- 明治図書
- キャリア教育をはじめとした,教育現場が直面している現状を紐解くには,平成20年1月答申が大きなカギ。2012/4/10あふりか