- まえがき
- 第1章 統率を維持して,学級経営を成功に導け!
- 第1節 まず,いじめの構造を破壊する
- 第2節 授業で逆転現象を起こす
- 第3節 学級を統率するとはどのようなことか
- 第4節 学級の統率・こうすれば成功する
- 第5節 給食システムを確立して統率力を発揮せよ!
- 第2章 基礎学力を保障する向山型国語の授業
- 第1節 国語科授業は,向山型指導を組み合わせよう
- 第2節 向山式要約指導法は,いつでも誰でも追試可能だ!
- 第3節 一字読解指導システム
- 第4節 向山式主題指導システムを活用しよう
- 第5節 向山型問題づくりシステム
- 第6節 向山氏の授業を参観して目から鱗が落ちた微細技術ベスト3
- 第3章 社会科授業成功の秘訣はこれだ!
- 第1節 「調べ学習」でつける「学習技能」指導のポイント
- 第2節 表現の基本スキルと指導のポイント 基本的な発表から指名なし発表まで
- 第3節 調べ活動―これを止めるとよくなるトップ3
- 第4節 岩倉使節団で大久保利通が見たものは,何だったのか
- 第5節 百科事典の授業
- 第4章 基礎学力対策―向山型算数で武装せよ!
- 第1節 向山型算数で授業びらき!
- 第2節 向山型算数は正確に実践する
- 第3節 向山型算数チェックリストで我流を排せ
- 第4節 向山型算数と自分流算数を比較して分析する
- 第5節 クラス平均点が低い単元の指導を顧みる
- 第6節 タイルでは,子どもは「できる」ようにならない!
- 第5章 向山実践の原理原則で貫く理科授業
- 第1節 向山型理科で21世紀の授業が変わる!
- 第2節 「向山型自由試行」とは
- 第3節 「向山型自由試行」の魅力
- 第4節 初めての「自由試行」の授業を成功に導く秘訣
- 第5節 「変化のあるくり返し」で授業する
- 第6章 体育指導には原理原則がある!
- 第1節 体育授業の「年間指導システム」
- 第2節 バスケットボールの学習システム
- 第3節 みんなで楽しむ組体操
- 第7章 総合的な学習はこう指導する
- 第1節 活動中心の学習から確かな学力づくりへ
- 第2節 「食と福祉学習」をリンクさせる総合的な学習
- 第3節 楽しいネタで創る総合的な学習
- 第4節 目の不自由な方の学習
- あとがき
まえがき
1
私の師匠は,向山洋一氏(TOSS代表)である。
私が,向山師匠から継承したい「志」は,
(1) 子どもの可能性を引き出すこと。
(2) 教師修業システムを創り上げること。
の2点である。
本書「向山実践の原理原則を究める 2」は,その私の「志」を具現化したものである。
志を同じくする先生方のお役に立てればとの思いで執筆した。
私が,向山洋一実践と出会ったのは,新卒2年目であった。
新卒の年,向山実践と出会う前の私は,「子どもができないのは,子どものせいである。」と考えていた。このような考えでは,学級が崩壊寸前だったことは言うまでもない。当時,「学級崩壊」という言葉も概念も無かったので,さほど問題にもされなかったが,悲惨な状態だった。担任している6年生から反抗された。時には,腹痛で車から降りられないこともあった。実に恥ずかしい次第であるが,事実である。
そんな私を救ってくれたのは,
子どもができないのは,教師の責任である。
という向山氏の言葉であった。この言葉は,私にとって,極めて強烈なカルチャーショックであった。
私は,向山氏の著作物を貪るように読みまくった。当時,やはり私と同じような体験の持ち主も多く,「イッキ読み!」という言葉が流行語になったくらいである。
向山実践を学ぶとどこもかしこも,自分流の我流のやり方とは全く違っていた。
しかも,「何とか真似できた!」と思った瞬間に,目指す向山実践は,はるか彼方に悠然とそびえ立っているのである。
特に,「向山洋一年齢別実践集」を手にした時には,同年齢の我が実践の不甲斐なさに立ち上がれなくなったこともたびたびあった。
私は,今こそ初心に返り,着実に向山実践の原理原則を追究し続け,少しでも子どもの可能性を引き出す実践を積みたいと考えている。
本書は,我流の指導に行き詰っている方,学級経営がうまくいかないと悩んでいる方,今よりもっともっと授業の腕を上げたいと考えている方のお役に立てると確信している。
本書に執筆したことはすべてノンフィクションである。私が実践に何度も潜らせ,効果のあるものばかりを厳選して収録した。しかも,私の我流ではなく,向山氏からご教授いただいたことを,原理原則として抽出し,かつ応用した実践例である。
それでは,向山洋一実践の原点はどこにあるのだろうか。
えてして,教師は,勉強できる子,素直な子を好む傾向にあるのではないかと思う。そのような子どもが多いクラスを担任すると,授業はスムーズに進む。教師が思いもよらなかったような発展的な意見も出て,自分の腕が上がったような錯覚さえ覚えるだろう。
しかし,教室には様々な子どもがいる。
気むずかしい子,すぐにカッとなる子,ソワソワして落ち着きの無い子,反抗的な子,家庭的に恵まれていない子,勉強ができない子,ADHDやLDの傾向がある教室の障害児,不登校ぎみの子,やんちゃ坊主……。
こうした子を教師は避ける傾向にある。露骨に,「あの子は苦手。」などと嘯く教師もいる。
向山氏は,
向山実践は,できない子から出発している。現場は,教育学の宝庫だ。
といわれる。
今,目の前にいる子,しかも「できない子」と確実に視線を合わせてみよう。そして,その子が「できないこと」が「できるようになる」ために,教師はいったい何をしたら良いのかを分析・検討しようではないか。
2
11年前に師匠からいただいた,向山洋一教育実践原理原則研究会の仕事も私の教師人生を変革することになった。
それまでの私は,自分のことしか考えていなかった。
しかし,ある時,私は,「向山洋一教育実践原理原則研究会に入って救われました。仲間に恵まれ,授業にも自信がつきました。」という青年教師に会った。私は,何も分からず,向山洋一実践の分析・検討をする研究会を立ち上げたのだが,「ああ,自分のやってきたことが,人の役に立っていたのだなあ。」と感慨深かった。
「学び続ける教師だけが,子どもの前に立てる。」これは,「授業の原理原則トークライン」創刊号(1993年10月)の向山洋一語録である。
向山洋一教育実践原理原則研究会は,1993年10月に発足し今年で11年目を迎えた。その間,私たちは,「教師が学ぶ」ということを一貫して求め続けてきた。
しかも,向山洋一教育実践の中から授業の原理原則を抽出し,実践の場で検証し,その原理原則を広く活用するという方法を通してである。授業の腕を上げるには,極めて効率の高い方法である。
私たちは,法則化運動で,多くの技術・方法を学んだ。これに,原理原則研究会の研究成果である「授業の原理原則」を加えることができたのである。これは,日本の教育史にとっても,画期的と言える。
目下,研究会の機関誌「授業の原理原則トークライン」は,56号まで発刊している。研究成果発表の場である「向山洋一教育実践原理原則シリーズ」(明治図書)は,17巻まで発刊中であり,「基礎学力を保障する向山式学習システム小学1年〜6年」(明治図書)も大好評発刊中である。
また,北海道から沖縄まで全国に事務局があり,事務局ごとに研究対象を設定し,常時活動をしている。現在,会員数は,2000名に近づきつつある。
本書は,こうした私の研究活動の中から生まれた。
学級経営と国語・社会・算数・理科の各教科における,指導の原理原則を具体的な実践例をもとにご紹介している。
これらは,向山洋一氏や多くの諸先輩方からいただいた指導の中から抽出したエキスである。これらの原理原則で,一人でも多くの子どもの可能性を引き出していただきたいと心から願っている。
/岡田 健治
-
- 明治図書