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今月のメッセージ
ひとりの子どもの課題は仲間・親・教師を育てる
常任委員 志賀 廣夫
一 私は、特効薬をもっていない
転入してきた二年生の妙子の体が、登校を拒否し出した。
青白い表情で目にいっぱい涙をためて「気分がわるいので…」と、訴えてきた。見せてくれた連絡帳には、「朝から気分がわるいと言っています。妙子が我慢できなくなったら家に連絡ください。」と、書いてあった。次の日は、体の中から込み上げて来る吐気を口元でハンカチを使って押さえていた。到底、我慢などできる状態ではなかった。そこで、養護教諭と相談して保護者に連絡をした。慌てて来た母親と保健室の横にある教育相談室で妙子の様子を話し合った。
・転入した次の日から、気分がわるい、気持ちわるいと訴えるようになった。
・それを聞き入れ、休ませると妙子は永久に学校にいけなくなると思え、無理して登校させた。
そう話す妙子の母親と、今、一番悩み苦しんでいるのは妙子であることを確認した。そして、
・仲間のいない妙子さんは孤独の中で体を崩しながらも頑張っている。
・これ以上「頑張れ頑張れ。」と言わないで見守りましょう。
・家に帰ったら、今、気にしている学校のことを聞かないで自分から話すまで待ちましょう。
と、協力をお願いした。そして、「一週間指導させてください。」「もし、妙子さんに前向きな変化がなければまた、相談させてください。」と、お願いした。妙子の母親は目に涙をいっぱい溜めて、聞いてくれた。しかし、私は、妙子を楽しい気持ちで登校させる特効薬はもちあわせていなかった。
二 仲間に話そう、みんなに相談しよう
学年の先生に、妙子のことを話してみた。すると、「先生の大きな声で萎縮しているんだよ。」と、私の心がギュッと痛くなるような指摘もあれば、「友達が欲しいよと要求しているんだよ。」と、教えてくれた仲間もいた。そんな仲間の声を聞くなかで、二つの方針をたてた。
・状況に過剰反応する妙子が入りやすい柔軟な学級文化を創造していく。
・妙子を必要とする学級生活を組織的につくりだす。
そして、妙子の苦しみを遠くから見ていることしかできない、この学級の課題もみえてきた。まず、班長会に相談してみた。班長たちは「あの子、全然しゃべらないから話しにくい」「聞いても、すぐに泣くからいやだ」と、語ってくれた。子どもとして、妙子と仲良くなりたいと行動しているけど、うまくいっていないこともわかってきた。
三 妙子の課題は、この学級の課題だ
『班長会からのお願い』として、妙子と握手をしようという取り組みが始まった。
休み時間、それに賛成してくれた子どもたちの列が、妙子の席の前にできた。妙子もそうだが、なかなか握手ができない子どもには班長たちが、腕を支えてあげていた。
二日目には、子どもたち全員が握手の取り組みに参加してくれた。それに気をよくした班長会は、『妙子さんといっしょに学校をたんけんしよう』と、探検隊員を募集した。そして、「あしたは六年生のほうまで探検するけど参加してね」と、妙子と約束をしながら、次の日の活動をつくりだしていった。
四 明るい母親の手紙
地道な取り組みを続けていくうちに「妙子が家で学校のことを楽しそうに話します。」と言う連絡をもらった。この取り組みはこれで終わった訳ではない。しかし、子どもひとりの課題は、親・教師を育て、学級の子どもたちを生き生きさせる活動をつくりだした。
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