生活指導 2005年9月号
荒れる学校

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生活指導 2005年9月号荒れる学校

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2005年8月3日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 荒れる学校
荒れる学校
大和久 勝
小学校実践
暴力、癒し、そしてつながりへ〜高雄たちに寄り添った日々
伊藤 均
中学校実践
親の見廻り隊は今日も行く
大島 冴子
「荒れる学校」へのチャレンジ
中沢 照夫
分析
枠組みを作り直すこと
本田 広行
論文
「荒れる学校」を捉える視点
高橋 英児
第2特集 総合学習の創造
小学校実践
学びは学びの始まり
星野 航大
学び続けるために
原田 真知子
中学校実践
自分らでつくる「実験を含む」1時間の理科の授業
遠藤 洋一
今月のメッセージ
子供の生きづらさと出会い、出会い直す
佐伯 隆
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・小学校 (第6回)
行事をどう実践に生かすか
北嶋 節子
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・中学校 (第6回)
合唱コンクールを越える
本田 広行
実践の広場
私の教室
広がれ友だちの輪、趣味のはば?
山本 幸一
すぐ使える遊び
風船ルーレット・新聞ホッケー
喜屋武 幸
授業のアイデア
中2選択社会「新聞を読もう」に取り組んで
橋本 尚典
楽しいイベント
目標に向かって一致団結!
阿部 徹
学校は今
「人事考課制度」がやってくる!
春日野 乙女
通信・ノートの工夫
卒業生通信「元気ですか」は元気のもとです
長田 俊光
手をつなぐ
手をつなぎ、楽しい学校つくろうよ!
山本 耕司
今子どもたちは
「力関係」の世界からの脱出
東稔 治義
私のオフタイム
私のオフタイムってなんだろう
角岡 正
案内板 集会・学習会のお知らせ
学級づくりをすすめる
55のアイデアと55のメッセージ
大和久 勝
教育情報
学童保育実践の課題―岡山の現状をふまえて
住野 好久
読書案内
『気になる子ども気になる保護者』(楠 凡之著)
鈴木 和夫
読者の声
7月号を読んで
長編実践記録 (第3回)
学級崩壊後の子どもたち
柏木 修
全生研の窓
編集室だより
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

子どもの生きづらさと出会い、出会い直す

埼生研 佐伯  隆


一 子どもたちと保護者との出会い

 しつこく注意を受けると「うるせえ!」と、大声を出す悟は、四月の視力検査で右眼の視力が全くないことがわかる。「幼稚園の頃、母親から首を絞められた。その時に、目の管が切れて視力が落ちてきた」「その母親は、二年の頃、階段から落ちて頭を打って入院したが、間もなく亡くなった」「二年の妹は隣町の施設へ預けている」と、父親は私に玄関で立ったまま、話してくれた。

 仲間を求め、いつも立ち歩き、トラブルを起こす祐樹は、今年になって苗字が変わった。これで三回目だという。赤ちゃんが生まれると言うことで、家庭訪問を断ってきた。「俺んちは父ちゃんが三人いて、誰がおれの父ちゃんかわからない」とも言う。

 バスケットで、ボールが当たったといって、思いっきり相手にボールを投げつけた無表情の美晴の家では、年老いた祖父母が私を待っていた。「美晴が二年生の時、学校から帰ってきて、私たちが家にきているのを喜んでいました。そして父親が帰ってきて、話しがあると兄と美晴を前に座らせて、離婚したことを話しました。その時の美晴の泣き叫んでいた顔としばらくの放心状態の顔は、今でも忘れられません」「この年になって、二人の孫の養育をするなんて」と、堰を切ったように話しをしてくれた。

 特別教室の廊下や階段で、遊び相手を求め、鬼ごっこに興じていて、いつも叱られている康弘の母親から、相談したいことがあると連絡帳が届く。会って話しを聞くと「低学年の時に、授業参観などで落ち着きがなく、家庭でも集中力がないので、大学病院で検査を受けたら、注意欠陥が強い『ADHD』だと言われて、今薬を飲んでいます」「去年の担任に話したら、他にも手のかかる子がたくさんいて、目立ちませんよと言われた。」「いじめられているって、あの子が去年の三学期にぽつんと言ったんですよ。先生に言わないでくれって。解決しないまま終わったんですよ」と話す。康弘には0歳の妹早紀がいる。二年前に父親が出て行った時の早紀のはしゃぎようは、みんなから「うるさい!」と怒鳴られるほど。中二の兄は、小学校でいじめに会い、不登校を繰り返し、解決がつかないまま卒業した。中学でも二年間学校へ行かず、最近になって、隣の市にあるフリースクールに通うようになったと言う。「学校の先生方には、不満はありません。結局、友達に恵まれなかったんです」と康弘の母親は淡々と話す。学校にたまに来た時は、帰りの会で黙って翌朝の自習を黒板に書いていた有紀は、もう二週間学校へこない。家庭訪問も断られた。借金とりが夜遅くまで大声で玄関のドアを叩いてるそうだと前担任に聞く。家庭が福祉や教育行政からも、地域からも孤立している。

二 子どもの生きづらさに思いを寄せて

 今年担任した五年生の子どもたちの現実である。子どもたちは生きづらさを身体いっぱいに受け止めて生きている。悟は亡くなった母親から、「身体的虐待」を受けていた。祐樹の誰が自分の本当の父親かわからない心も想像しがたい。母親がある日突然いなくなったことを知らされた美晴の衝撃は大きい。康弘の場合も、「いじめ」を受けていたというが、その傷はどんなものなのか。早紀のはしゃぎようは、苦しい生活現実を少しでも忘れるためか。有紀の幼い心に、社会の現実の重さがのしかかる。

 今、学校は階層分化をさらに推し進め、「棲み分け」の世界に甘んじながら生きることを教えるのか、それとも「異質な子どもたち」が出会い、出会い直しをしながら、平和と共生社会を創造するために、共同して生きていく子どもの発達を保障するのか、鋭く問われている。

 生きづらさを、暴言や暴力で、そして投げやりな態度で表現していた彼らは、仲間とつながる言葉をようやく獲得し始めた。さらに、子どもたちどうしが、そして保護者と出会い直し、保護者がつながる実践の二学期(後期)が、スタートする。

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