- 特集 マナー・エチケット・ルールを育てる効果的支援
- 特集について
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- 提言/社会性を育てるためには
- ソーシャルスキルからライフスキルへ
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- 指導の実際
- T 基本的生活
- 《食事》食事におけるSさんへの支援の実際
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- 《排泄》職場や地域での生活において必要な排泄のエチケットを身につけることのできる支援,環境作り
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- 《衣服の着脱》家庭と連携した衣服の着脱支援
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- 《清潔》どこを磨けばきれいになるのかな?〜自ら進んで磨くための歯磨き指導〜
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- U 学校生活
- 《約束》約束を上手に使うことによって、学校生活を楽しく過ごすことができるようになったAさん
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- 《あいさつ・返事》当たり前の生活の中で身に付けよう!あいさつ力
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- 《言葉遣い》先生方とのプレゼント交流
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- 《指示》気持ちをコントロールして支持に従うことを目指した取り組み
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- 《順番》友達やものとの関わりの中から順番を意識する
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- 《余暇》見通しや期待感をもって余暇を楽しむ
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- V 地域生活
- 《交通機関》路線バス利用のスキルを獲得させるK君の指導
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- 《買い物》社会性を高めるための買い物学習
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- 《外食》外食における支援について
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- 《公共施設》学校での活動をとことんやって自信をつければ、学校外でも平気!
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- 子どもの作品
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- 構造化のアイデア (第15回)
- 主体的な活動を促す支援環境づくりC
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- 自閉症の子どもに効果的な教材・教具
- 自閉症の子どもに使っている教材・教具
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- 自閉症の子どもに効果的な授業の工夫
- 子どもの反応を見ながら授業を変える
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- 機能・般化する力を身につける指導・支援
- 不安をなくし、見通しを持った活動にするための取り組みについて
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- 社会性を身につける指導・支援
- RDIを取り入れた社会性の学習
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- 教育機器の効果的な活用
- 紙を使ったパソコン活用のスゝメ
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- こうすれば不適切行動は改善できる
- 感情コントロールができるようになったAさんの事例
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- 実践研究
- 「ハッピーランド」であそぼう
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- 何でも教育相談室
- 就労へ向けて子どもの頃から心がけること
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- わが校の自閉症教育
- 一人一人に応じた教育を目指して
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- 本の紹介
- 『自閉症児のための社会性発達支援プログラム』
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- 子どもが生き生きと活動する支援・対応のコツ (第4回)
- 生き生きした社会生活を送るために
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- コミュニケーション障害への効果的アプローチ (第4回)
- 非言語コミュニケーションの支援
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- 自立を実現する支援ツールの実際 (第4回)
- 自分から進んで確認・参照することに熟達する
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- 企業で働く人たち (第16回)
- 大分市嘱託職員として働くNさん
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- 自閉症の子どもを育てて (第16回)
- 息子の生活の幅を広げて生きたい
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- 就労を実現する自閉症教育 (第16回)
- 人とかかわることのできる子どもを育てる
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- 編集後記
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特集について
マナー・エチケット・ルールを育てる効果的支援
社会の中で生きていく一員である以上,社会生活を送る上で最低必要な社会性は,身につけなければいけないことは言うまでもありません。「自閉症は社会性の障害を持っているため,社会性がないのは仕方ない。周りの人がもっと理解して対応すべきである」という人もいます。しかし,職場の人たちの多くが「職業生活を送ることを希望するならば,障害があるなしに関係なく,例え自閉症であっても,職場が求める最低必要なマナー・エチケット・ルールは身につけているのが当たり前である。仕事ができるできない以前の問題である」と主張します。
具体的には,「食事中にうろうろしたり,人のものを欲しがったりする」「排泄で便器を汚しても平気である」「自分のものと他人のものが区別できず,人のものを勝手に使う」「体や頭髪が清潔にされていない」「周りを不快にする身だしなみである」「目上の人や上司に乱暴な言葉遣いや態度をとる」「素直に謝罪ができない」「公共交通機関の利用マナーができていない」「他人にものを投げる」「奇声を発する」などの問題が指摘されています。これらがすべて自閉症の障害によるものかというと,決してそうではありません。確かに自閉症であるために身につけることがむずかしい面はあります。しかし,こうした問題を「自閉症だから理解して欲しい」というのは少し無理があります。ある職場の人が「自閉症であることは十分理解しているが,人が人と人とのかかわりの中で生きている以上,受け入れられることとそうでないことがある。特に,人間関係の維持のために必要な基本的なマナー・エチケット・ルールに問題ある場合は受け入れられないことが多い。自閉症の人の中にも,マナー・エチケット・ルールをしっかりと身につけている人がいることを考えると,学校や家庭での取り組みの問題ではないか」と言われました。もっともなことだと思います。
この特集では,社会性の中でも特に「マナー・エチケット・ルール」に焦点を当て,どういう指導や支援をすれば地域や職場で通用する,受け入れられる力を身につけることができるのか,具体的な指導事例を中心にまとめてみました。自閉症の人たちがマナー・エチケット・ルールを自然に身につけていくことは,障害から考えてもむずかしいことです。適切な指導や支援があってはじめて身につけることができます。多くの読者が本書の指導事例を参考にして基本的な社会性を身につける取り組みを行うことで,彼らが職場や地域で存在価値を高め,生活の幅を広げることになれば,と願っています。
(上岡一世)
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- 明治図書