- 特集 「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24
- 発刊のことば
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- 論説/今こそチャレンジ! 単元を貫く言語活動を位置付けた国語科の授業づくり
- 1 国語科における言語活動の充実とは
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- 2 なぜ「単元を貫く言語活動」を位置付けるのか
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- 3 単元を貫く言語活動をどう開発するか
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- 4 単元を貫く言語活動を位置付けた指導過程の構想
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- 5 第二次の改革を進める
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- 6 単元を貫く言語活動と密接な関連をもたせた「本時」のポイント
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- 7 単元を貫く言語活動と評価の改善
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- 事例活用のポイント
- 24の事例を通して見えてくること
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- 【実践事例】単元を貫く言語活動 1年
- 事例1 「いろいろなふね」
- 大すきなのりもののことをせつめいしよう〜教科書教材文を活用した「のりものずかん」作り〜
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- 事例2 「おとうとねずみチロ」「くんちゃんのはじめてのがっこう」他
- じぶんのすきな本をみつけて、本のこばこで「だいすき」をしょうかいしよう
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- 事例3 「ゆうだち」『おはなしぽっちり』シリーズ
- 6ねんせいにおはなしプレゼント! この『おはなしぽっちり』をえらんだわけは……
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- 事例4 「むかしばなしがいっぱい」
- きいてよんでむかしばなしをたのしもう〜「おはなしかばん」をおきにいりでいっぱいにしよう〜
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- 【実践事例】単元を貫く言語活動 2年
- 事例5 「ビーバーの大工事」「動物の一生(図鑑)」他
- 自分の選んだ動物のすごいところを、友だちに伝えるために、動物の本を読み、クイズを作成し、友だちと互いに教え合おう
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- 事例6 「ビーバーの大工事」
- 動物のひみつをせつ明しよう〜教科書教材文を活用した「動物のひみつ紙しばい」作り〜
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- 事例7 「お手紙」
- お話のお気に入りのところをペープサートでしょうかいしよう
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- 事例8 「ないた赤おに」「お話びじゅつかんを作ろう」
- 本のたからばこを作って友だちにしょうかいしよう
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- 【実践事例】単元を貫く言語活動 3年
- 事例9 「かるた」、実際のかるた他
- かるたのうらがわ、教えます。読めばすっきり! 遊べば好き好き! 中央小かるた館へようこそ〜様々なテキストから、自分に必要な情報を得る〜
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- 事例10 「もうどう犬の訓練」
- はたらく犬の訓練のことがよく分かるようにせつ明しよう〜教科書教材文を活用した「しょうかい文」作り〜
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- 事例11 「のらねこ」「『読書けいじ板』を作ろう」
- 本の紹介ボックスを使って、気に入った主人公の物語を紹介しよう
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- 事例12 「三年とうげ」
- 移り変わりをキャッチ! 民話びょう風を作ってしょうかいし合おう!
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- 【実践事例】単元を貫く言語活動 4年
- 事例13 「仕事リーフレットを作ろう」
- クラブリーフレットを作ってよさを伝え合おう〜クラブ活動の説明文を書こう〜
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- 事例14 「ウナギのなぞを追って」
- 科学読み物を要約し、「発見」「おどろき」をリーフレットでしょうかいしよう
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- 事例15 「ごんぎつね」「手ぶくろを買いに」「きつねの窓」「きつね三吉」「きつねの電話ボックス」
- 全校のみんなに伝えます わたしだけの「コンシーン」〜心に残った場面をスポットカードでしょうかいしよう―豊かなかかわり合いの中で、確かな言語能力を習得する単元構成の在り方―
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- 事例16 「ごんぎつね」
- リーフレットを作って、読んで考えたことを伝え合おう
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- 【実践事例】単元を貫く言語活動 5年
- 事例17 「グラフや表を引用して書こう」
- くらしを見つめて意見文を書こう―理由をうらづける資料を用いて―
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- 事例18 「森林のおくりもの」他
- 森林のひみつを調べ、友だちのニーズに合った本をおすすめしよう
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- 事例19 「千年の釘にいどむ」他、伝記・自伝・ノンフィクションなど
- 自分を“前進”させるこの言葉 探して選ぶ名言集作り
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- 事例20 「わらぐつの中の神様」「春先のひょう」「今夜はお祭り」他、杉みき子作品
- 5年生が読みたくなるように、杉みき子さんの作品の魅力をショーウインドウでしょうかいします〜おすすめの登場人物の人がら、場面、表現の仕方〜豊かなかかわり合いのなかで、確かな言語能力を習得する単元構成の在り方
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- 【実践事例】単元を貫く言語活動 6年
- 事例21 「『鳥獣戯画』を読む」「この絵、わたしはこう見る」
- 筆者の「ものの見方」を活用して絵画コメンテーターになろう
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- 事例22 「森へ」、星野道夫作品、 星野道夫について書かれた本
- 本や写真集から伝わる星野さんの考えや思いとは 読書座談会で語り合おう
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- 事例23 「ヒロシマのうた」他
- 戦争と人間の生き方をえがいた本を読み広げ、強く心を動かされた物語を推薦しよう
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- 事例24 人物グッとカードを作ろう「伊能忠敬」
- 伝記を読んで自分が考えたことを交流し合い、人物グッとカードを作る
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- 単元を貫く言語活動とは? 水戸部調査官とQAで読み解く
- Q:単元を貫くものは何か?/A:目的を明確にした言語活動がポイントです
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- Q:個別のプランが必要か/A:言語活動で、見えにくかった個人差が浮き彫りになります
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- Q:朗読表現の技能と物語解釈/A:朗読のもつ特徴を生かした指導を工夫しましょう
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- Q:二領域にまたがる単元を貫く言語活動のあり方とは?/A:それぞれのねらいがより効果的に実現できるようにしましょう
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- Q:物語文の読み取りで新聞づくりを言語活動として取り上げる際の留意点について/A:新聞紙面と、付けたい「読む能力」を一致させましょう
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- Q:付けたい力の設定と言語活動・教材文の取り上げ方/A:言語活動の種類や特徴を吟味しましょう
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- Q:初発の感想〜段落ごとの読解という流れを乗り越えるには…/A:ストーリー展開全体を見渡す手立てを工夫しましょう
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- 執筆者一覧
- 奥付
発刊のことば 子どもたちにとって必要な力を見据えた授業改革を
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官/水戸部 修治
1 今、そしてこれからの社会で求められる力とは
今、小学校で学んでいる子どもたちが羽ばたいていく、二〇年後・三〇年後の社会はどのような状況であろうか。現在既に、高度情報化が進む極めて変化の激しい状況となっていることを考えると、一層多様化・複雑化が進展し、これまで取ってきた対策を当てはめるだけでは対応が難しい状況になってくることが予想される。また、誰も正解を持ち合わせていない、未知の課題に直面することも多くなるだろう。いやむしろ、そうした予測を超えて、現在では想像もつかない社会になっている可能性が大きいのではないだろうか。
では、そうした社会を生き抜くにはどのような力が必要となるだろう。
今、世界各国でそうした検討がなされている。例えばOECDではキーコンピテンシーが、ATC21S等のプロジェクトでは21世紀型スキルが提唱されている。それは我が国の教育の理念である「生きる力」を育むこととも軌を一にするものである。
これらに共通して言えるのは、これまで以上に創造的で、協働的で、課題解決的な能力が求められるという認識である。
すなわち、これからの社会を生きる力は、単に与えられた知識を理解し、効率よく再生する力にとどまるものではなく、自ら対象に働きかけて課題を見いだし、その解決に向けて主体的に思考し、判断する能力であり、そのために自らの考えを表現したり、他との協働によって最適解を求めたりする能力であるという方向性が、各国の共通認識となっているのである。
2 変革の時を迎えた国語科
こうした社会の変化を踏まえて、国語科の授業もまた、大きな変革の時を迎えている。
「単元を貫く言語活動」を位置付けた国語科の授業づくりは、前項のような状況の変化を見据え、これからの子どもたちに必要な国語の能力を育成するための手立てとして、学習指導要領・国語の枠組を踏まえて提案しているものである。それは端的に言えば、子ども自らが目的を明確にして、言葉の力を身に付けるための、課題解決の過程を構築することである。
既にこの理念は全国の多くの関係各位の理解と協力の下、大きく進展してきた。しかし、授業は単なるマニュアルに沿った手順の遂行ではなく、指導のねらいや子どもの実態等を踏まえつつ、状況判断を連続的に行っていく極めて複雑かつクリエイティブな行為である。それゆえ取り組みが進めば進むほど課題もあらわになってくる。
3 本書の特徴
現時点でのそうした課題として、例えば次のようなものが挙げられる。
○付けたい力にふさわしい言語活動を選ぶことが難しい。
○単元構想のイメージはつかめてきたが、本時の発問や指示など、指導のポイントが分からない。
○特に読むことの単元の、教科書を読む段階ではやはり場面ごと・段落ごとに読み取らせるだけになってしまう。
本書はそうした課題に対応すべく編んだものである。とりわけ、具体的な実践事例を知りたいという数多くの声に応えるべく、平成二四年度に全国各地で展開された、「単元を貫く言語活動」を位置付けた国語科授業の公開研究会から授業を集積し、具体的展開を示す形を取った。
本書に採録した事例を御提供いただいたのは次の各校である(事例掲載順)。
○福岡県大牟田市立銀水小学校
○熊本県宇城市立松橋小学校
○神奈川県横浜市立並木中央小学校
○岩手県盛岡市立月が丘小学校
○埼玉県飯能市立飯能第一小学校
○静岡県富士宮市立北山小学校
○福岡県北九州市立折尾西小学校
○神奈川県横浜市立大鳥小学校
各校におかれては、学校を挙げて国語科の授業改善に挑み、その大きな成果をここに御提供いただいたことに、改めて感謝と敬意を示したい。
4 今こそ更なる授業改善へ
全国各地の研究校の研究推進の過程を見ると、それは決して平坦な道のりではないことが分かる。とりわけ、「活動だけで力が付くのか」「『楽しい』『大好き』といったふわふわしたもので本当に大丈夫なのか」「もっと言葉にこだわってしっかり読み取らせねばならないのではないか」「これまでに行ってきた指導方法を否定するのか」といった不安や葛藤は、どの学校でもあったはずである。
しかし「しっかり読み取らせる」指導は、どのクラスにもいる「しんどい子」にとって本当に読む力を付けてきたのだろうか。教材文を読み取る知識だけを教え込む指導は、日常の読書に親しんだり、各教科等の調べ学習で多様な資料を探して読んで考えをまとめたりする際に機能してきたのだろうか。
教育における「不易」とは、従来の指導方法を無反省に踏襲することではない。我々の先達が、目の前の子どもたちに言葉の力を付けるために、常にこれまでの指導の在り方を見直し、今日よりも明日へ、半歩でも一歩でも前進しようとしてこられたように、我々もまた、授業改善の歩みを進める必要がある。そのことこそが不易の教育行為なのではないか。
直面する課題を乗り越え「単元を貫く言語活動」を位置付けた授業づくりを進めてきた学校の、一番の研究推進の原動力は、子どもの変容である。単に与えられた型通りに話したり書いたり、与えられた文章の与えられた場面や段落を読み取らされたりするのでなく、子ども自身が主体的に思考・判断しながら楽しんで言葉の学びに取り組むようになった。そういう声が、チャレンジを続ける全国の数多くの学校・教室から聞こえてくるようになった。
本書がそうした授業改善に挑もうとする多くの関係各位の参考となるよう願うものである。
最後になるが、本書は、明治図書、樋口雅子氏の大きなお力添えによって刊行に至ったものである。ここに心より感謝申し上げる次第である。
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- 明治図書