生活指導 2005年11月号
いのちを学ぶ

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生活指導 2005年11月号いのちを学ぶ

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2005年10月6日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 いのちを学ぶ
いのちを学ぶ
大和久 勝
小学校実践
キレてよどんでいくB君。目が見えないA子。二人の再生の物語
豊田 健三郎
容貌障害から学ぶ
米沢 弘海
中学校実践
コロが我が家にやってきて…
安村 比娑男
分析
三氏の実践を読んで―「生きる」ことをどう「学ぶ」のか―
坂田 和子
論文
生きること・死ぬことの教育内容論
子安 潤
第2特集 管理主義・成果主義に立ち向かう
報告
学びの充実に逆行する教員評価制度
樹里 輝代
教師は教育行政の奉仕者ではない
平井 民生
子どもや父母が希望する学校は
宮代 進
意見表明をし、働き続けられる職場づくりを
桂川 萌木
論文
新たな教員統制の仕組みと改革の課題〜成果主義に立ち向かう〜
折出 健二
今月のメッセージ
若い力の胎動
高原 史朗
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・小学校 (第8回)
「学び」をどうとらえたらいいのか
宮崎 久雄
初めての人のために やさしく解説する集団づくり入門 Q&A・中学校 (第8回)
新しい学級をつくろう
小室 貴
実践の広場
私の教室
誰でも使いやすい、わかりやすい理科室に
今野 裕
すぐ使える遊び
あそびの指導は教師の力量を高める
星 徹
授業のアイデア
作文入門期の指導
飯塚 弥生
楽しいイベント
着付け教室
森田 吉城
部活動・クラブ活動の工夫
少ない生徒と部活指導
田尻 つよし
子どもの文化事情
子どもの文化は子どもがつくる
石井 幸雄
手をつなぐ―親と教師
Small is beautiful.―小規模校にこそ理想あり―
小野寺 浩之
心に残る子どもとの対話
翔太のトラブル・イライラとつきあう
新庄 哲平
私のオフタイム
伝えていきたい事
加藤 和男
案内板 集会・学習会のお知らせ
北から南から
各地の基調提案 宮崎
宮崎生研事務局
〜通常学級におけるニーズを満たすのに特別な困難を抱える子どもの指導と集団づくり〜
教育情報
NGOとの連携は教師の学び
淺川 和也
読者の声
9月号を読んで
投稿 実践記録
マイタケとかかわって
熱田 智
コメント 和夫が読む
鈴木 和夫
〜協同実践のススメ〜
全生研の窓
編集室だより
編集後記
大和久 勝

今月のメッセージ

若い力の胎動

常任委員 高原 史朗


 優香の通っている塾のプリントには、自分の名前があらかじめ印刷されている。つまりその子その子の課題にあわせて違う問題に取り組むのだ。その結果がパソコンに打ち込まれ、その子の間違いのパターンに合わせたプリントがさらに配布される。

 タイムカードがあり、帰りの時刻が遅れれば必ず何を指導していたのかを含めて電話がある。その言葉遣いは「流れるように丁寧」なのだそうだ。定期試験の朝は六時に塾に呼ばれ、重点箇所と弱点の総復習をする。夏には高原で勉強の合宿。しかもそこでは、キャンプファイヤーを楽しみ、「蛍を見る会」まである。

 一方、大和くんだ。彼は漢字が書けない。というか、筆圧が低すぎて何を書いているのかほとんど読み取れない、といった方が正しい。彼の家に立ち寄る機会があった。おばあちゃんが話し始めた内容は次のようなものであった。

「一週間前に母親が家を出ちゃったんです。それで、下の子の就学時検診があって、それに行っていないんです。私が病気なもんで…。下の子が『私、小学校行けないよー』って泣くんですよ。」

 大和にはお父さんはいない。見かねた私が小学校に連絡を取り、まだやっている遠くの小学校を探してもらってようやく検診の段取りをつけた。そこら中に物が乱雑に散らばっている中で、大和の書く、ふにゅふにゅのお手本をまねて妹が「字の練習」といいながら「やまと」と書いていた。

 階層の分化はいっそう進み、あらゆる場面で弱者が切り捨てられていくのだろうか。

 アメリカのハリケーンの被害の中心は貧困層であり、日本でも台風による死者の多くは高齢者である。社会の仕組みがそうなっていくということは、自分がその「弱者」とならないための戦いがあらゆる場面で、自己責任で繰り広げられるということである。

 とりわけ教育現場に急激に下ろされるこの「市場化と自己責任」に基づく改革の嵐は、ともすれば子どもたちのみならず、私たち自身を追い詰め、無気力な絶望に陥れかねない。


 第47回全生研埼玉大会への20代の参加者は100名を超え、この数に含まれない学生が実行委員として相当数参加していた。

 こちらが頼んだわけではないのに自分たちで仕事を見つけ、「もっと何かをやりたい」という学生たち。時間を見ながら、冷えた麦茶が常備されるように常に気を配り、炎天下で道案内を続け、書籍を出し入れし運ぶ。

 彼らに尋ねてみた。「どうしてこんなにがんばっているの?」こんな答えが返ってきた。「誰かと何かやりたかったんですよ」「みんなにいろいろほめられて何か役に立っている気がして…」「大学って自分から動かないと何もないんですよね。だから動いてみたんです」「『麦茶なんか楽しいの』って誰かに言われたんですよ。それがね、不思議に楽しいんですよ」「埼玉の合宿とかに参加すると、先生たちの話も聞けるけど、いっしょの仲間たちといろいろ話せるんですよ。最初ギクシャクするんだけどだんだんと語れるっていうか…だからこれにも参加しようかなって」

 携帯メールで集合時間を連絡しあい、ひょいと自分の友人を連れてきてしまう組織力。意外と熱かったりする「語り」。彼らは彼らなりの模索の中で、分断から連帯にたどり着こうとしているのかもしれない。彼らのその姿から私たち自身が励まされ勇気をもらった。

 この困難な情勢の中にも、着実に若い力は胎動している。

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