- 特集 発達障害児のいる学級:3日間の準備ノート
- 3日間で児童・生徒の実態の何を確認するか
- 広汎性発達障害児に黄金の3日間で行う6つの確認
- /
- 記録から行動特性を把握し,出会いの日を思い描く
- /
- 引き継ぎがない状態から黄金の3日間で行った実態調査
- /
- 全体のシステムを作りつつDSM―Wの観点を10に絞って有効な指導の手を探る
- /
- 初対面の数秒でチェックしておきたい5つのポイント
- /
- 行動面と学習面で実態を確認し,情報を共有化する
- /
- 視点をもって,子どもを見続ける
- /
- 集中力が続かない原因は何か
- /
- 教科内で準備を整えた上で,全体の学習規律を確立することが優先
- /
- 3日間でどのようなメッセージを伝えるか
- 呼ばれたら必ずほめられる
- /
- 教室は間違いをするところ・間違いを許すところ・間違いを直すところであることを伝える
- /
- ブレない担任の姿勢と新たな生活環境作り
- /
- 明るさと明確な方向を伝え,力強くほめる。そして,生きていく勇気・気力をぶっつける
- /
- 1年間を決定づける春休み,そして黄金の3日間の動き
- /
- もろくも崩れた黄金の3日間の戦略
- /
- トラブルが起きたときメッセージが伝わった
- /
- 学校は,伸びていこうと力を尽くす人のためにある
- /
- 入学式までにできること=出会いをアレンジして親子を受け入れる
- /
- 3日間で何をほめるか
- ほめる事実を探し出す,「問い」によって作り出す
- /
- 「できる」の前に「やった」をほめよ!
- /
- ほめることで「信頼」「安心感」を作り「授業のしつけ」をする
- /
- 場面を用意しタイミング良くほめる
- /
- シャワーのようにほめる
- /
- ほめる場面を準備しほめる。そして,この先生は自分を認めてくれる先生だと感じさせる
- /
- 情報収集で得意分野を見つけ,ほめる
- /
- 入学式からほめるシステムを作る
- /
- 事実を作り出して,その事実をほめる
- /
- ミニ特集 給食・そうじ・席替えのポイント
- 給食のポイント
- 給食のポイントは,あくまでも平等にということだ
- /
- 事前に確認して,教えて,毎日ほめる
- /
- 明確な仕事のシステムと「詰めない」指導
- /
- おかわりシステム…これだけは教師が仕切る
- /
- 関わりを通して,その生徒の特性が理解できるようにする
- /
- そうじのポイント
- パニック状態に陥らせない3つのポイント
- /
- 全体のシステムをつくり,個別に対応する
- /
- 役割と期間を固定する 見通しを持たせる ほめる
- /
- 1人1役で行い,そうじ場所やそうじ道具を1人ずつに分担していく
- /
- システムを作り,仕方を教えた上でさらにできることがある
- /
- 席替えのポイント
- 明るく自然に席を替えてしまう
- /
- 子どもの席を決めるのは教師である
- /
- “一番前の中央席”で学習できるようになるまでの支援
- /
- 教師が意図的に席替えするシステムで,支援しやすい席を決める
- /
- 学習環境を整えるために,意図的に席は決める
- /
- グラビア
- 第2回 新生TOSS特別支援セミナー ほか
- /
- イラストで学ぶ特別支援教育のキーワード (第3回)
- 構造化
- /・
- 向山一門が見た向山先生の特別支援教育の思想 (第3回)
- /
- 教育の新課題と特別支援教育
- ペーパーチャレランのものすごい研究報告
- /
- 巻頭言
- モンテッソーリ教育の理念を授業に生かす
- /
- 特別支援教育で学校は変わる (第3回)
- 新生TOSS特別支援教育はやっぱりすごい!
- /
- 伴一孝の特別支援教育だより (第3回)
- 「体育」の授業から見えてくる
- /
- 大森修の一刀両断 教育再生にもの申す (第3回)
- 特別支援教育現場で浮上していない「半分」がある
- /
- 吉田教務主任からみた特別支援教育 (第4回)
- 模擬授業の研修システムを構築する
- /
- 保護者と教師の連携で作る特別支援教育 (第4回)
- 学校は頼るところではなく活用するところ
- /
- 理解ある保護者に出会った時こそ特別支援システムのモデルを作り上げる
- /
- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第8回)
- 向山型指導は就職に直結している!@
- /
- LD/ADHD・ASの子を伸ばす指導のポイント (第11回)
- 発達障害児との“出会い”に,教師は何をすべきか? 基礎編
- /
- ママがする自閉症児の家庭療育HACプログラム (第3回)
- 「共同注意」をつくる
- /
- 教師のための応用行動分析入門 (第3回)
- とび箱実践とフープとびなわ実践
- /
- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- やんちゃくんに理科の実験をさせるときの原則
- /・
- 特別支援学校・特別支援学級コーナー
- コーナー担当
- /
- 特別支援学校の実践
- /
- 特別支援学級の実践
- /
- 論文ランキング
- 特集 「あなたの指示では伝わらない」が大好評!翔和学園の実践に大きな反響!
- /
- 読者のページ
- /
- 編集後記
- /・
- TOSS特別支援教育イベント情報
- /
- 酒井式描画法で授業する!
- 西洋の家の描き方。積み木のように描けば完成!『魔法使いの町』
- /
巻頭言
モンテッソーリ教育の理念を授業に生かす
大阪府大阪市立島屋小学校 神谷祐子
1 教育の可能性
1月12日,第2回新生TOSS特別支援教育セミナーが大阪で行われた。そこには,日本でのモンテッソーリ教育の第一人者,相良敦子氏が特別講師として招かれていた。
向山氏が相良氏の『幼児期には2度チャンスがある』(講談社)という著書を持っていた。その付箋の多さにびっくりした。向山氏は,「この本は最低10回読み返しなさい」と言っていた。それほど,価値ある本である。
私も再度,家の本箱にあったこの本を読み返してみた。特に好きなのは,次の部分だ。「マリア・モンテッソーリが発見したことは,どんなにひどい状態に逸脱して発育した子どもでも『変わる』ことのできる事実と,そのプロセス,変わることを可能にする教育的環境や援助技術でした」(前掲書より)
以前の特別支援教育では,「臨界期」や「手遅れ」という言葉が多く飛び交っていた。もちろん,教育効果が高く期待される時期に最善を尽くすことが一番いいだろう。しかし,自分自身が出会った時期が遅かった目の前の子どもに対して,全て,その子たちのできていないことを「臨界期」で片づけてしまう風潮に虚しさを感じていたのだ。「それじゃあ,私は目の前の子どもに対して何をすればいいわけ?」
高学年になると,目の前の子どもたちの問題行動に対して事後処理のみに追われ,前担任への不満と自分の運の悪さを嘆くばかりの事例。それでは親や教師は,何を頼りにその不運な子どもに教育すればいいのか。
その解決の糸口が,翔和学園の実践であり,それを支えてきた向山型指導法であった。その向山氏が一番何度も繰り返し読んでいる教育書が,相良敦子氏のものであるという。相良氏が提案しているのは,主として幼児教育だけれど,その根本的な理念は教育全般に通じるものである。
2 授業を通して
私は今までに幸いにも小学校1年生から中学校3年生まで,義務教育の全ての学年の担任をすることができた。もちろん,年齢や地域が全く違っている子どもたちなので,画一的には言えない。しかし,全ての学年に共通して言えることがある。それは,「子どもは担任の影響をきわめて大きく受ける」ということだ。そして,特に「授業を通して,子どもたちの可能性を大きく広げることができる」ということだ。
授業は,ただその教科の知識を教えるだけの時間ではない。子どもたちは集団生活や社会規範など,さまざまなことを学んでいく。
それを実感できたのが,私が3年生を担任したときに撮影したビデオであった。図工の時間である。明らかにADHDだと思われた子どもが2人,映っていた。
彼らはトラブルメーカーであった。3年生の当初は,クラスの友達といつも何らかのトラブルを起こしていた。うまく言葉で自分の思いを表現できないから,つい暴言を吐いたり暴力をふるったりして,周りの子どもたちとの溝を深めていたのだ。
しかし,彼らはほんのちょっぴり反応がにぶかったり,行動が遅かったりするだけの子たちであった。私は当時,すでに相良敦子氏の著書を読んでいたので,彼らへの対応に迷いはなかった。
やってみせ,手順を示し,させてみて,じっくり待って,やろうとした意欲やほんの少しでもできたことをどんどんほめる。その繰り返しであった。彼らの思いも,じっくりと時間をかけながら引き出し,少しずつ彼らの表現力も鍛えていった。
そのビデオは2学期の初めのものであった。2人は学級の動きの中で,しっかりと自分たちのすべきことを行っている。そして,2人とも授業にはたいへん集中して取り組んでいた。その中の1人A君は,チャイムが鳴り授業が終わるとよく「わー,楽しかった!」と叫ぶ子であった。
そのA君は,何においても不器用で,なかなか他の子のレベルには到達していなかった。それでも,いつも「わー,楽しかった」と言ってくれていた。1学期当初,トラブルメーカーだった子が,2学期には確実にムードメーカーになっていた。
3 授業力を鍛える
現在の勤務校にも特別支援を要する児童がたくさんいる。そして,いつもさまざまなトラブルを引き起こしている。その状況を毎日見ている中で,うちの校長は「やはり授業力が決め手だ」と主張している。そして,私を中心にして,校内での授業力向上プロジェクトチームを組みたいという構想を抱いているようだ。
もちろん,そんな研修をスタートさせたところで,すぐに効果が出るものでもない。しかし,もし校内研修における模擬授業方式が広まったら,確実に日本の教育界全体が変化してくることだろう。
私たちTOSSのメンバーは,日頃から模擬授業文化で鍛えている。それで一番よくわかるのは,下手な授業を受けている子どもの辛さや一生懸命やろうとしているのにできない子どもの悲しさ,それを指摘され注意される子どもの悔しさである。
それが実感できるだけでも,大きな進歩である。「あー,子どもってこんな中でがんばっているんだ」と思うと,子どもへの愛しさが増してくるし,自分の授業をちょっとでも良くしようとする意欲にもつながる。
子どもが授業に集中し,どれだけできていない子でも,「あー,授業が楽しかった!」と思える教室を全国に作りたい。
-
- 明治図書