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巻頭論文
算数授業へのこだわり
三度くり返して法則性を習得する。
帰納法は,学習方法の基本である。
向山 洋一
問題解決学習という算数の学習方法がある。附属小学校算数部,算数担当指導主事,算数研究部の担当校長が推進している。
もっとも,日本は広いから「問題解決学習では学力がつかない」と主張している指導主事,校長,附属小教官もけっこういる。
教室の事実を見れば,「問題解決学習では力はつかない」ということは,明白な事実だからである。
それどころか,「算数嫌い」が激増し,「できない子」が増加するという。
向山型算数研究会には,「問題解決学習」から多数の教師が脱出してくる。
若い教師が多いが,中堅・ヴェテランもかなりいる。
十年間,問題解決学習の市事務局をしてたという人もいれば,毎年問題解決学習の公開発表をしてきた学校の研究主任をしていたという人もいる。指導主事もいれば,校長もいる。校長の方が,変化がはやい。
校長はやはり,「子どもの事実」をよく見ているからである。
それにくらべると附属小教官は質が下がる。事実を見ないで,理念を押し通すからである。
どうして,多数の教師が「問題解決学習」から逃げ出すのか。
それは努力しても努力しても,腹の底までズシーンとくる手ごたえがないからである。
算数ができない子が,できるようにならないからである。
問題解決学習では,「子どもができないという学級の問題」を解決できないのである。
心ある教師にとっては,問題解決学習は問題不解決学習である。時には,学級騒乱を招く「問題拡大学習」である。
これが何年も素直に問題解決学習をやってきた教師の実感なのである。
向山型算数では,テストで5点10点をとっていた子が,90点100点をとるようになる。
こんな実践報告は,これまでの日本の教育界になかった。
奇蹟のようなドラマが生まれている。
親から,涙ながらの感謝の便りが届いている。子どもは,とびあがって喜んでいる。
一人や二人のことではない。
日本中で,山のように生まれている事実だ。
問題解決学習を止めて,向山型算数に変えただけで生まれたドラマである。
さぞかし,多くの時間を使っていると思うけど,逆だ。
問題解決学習は授業時間が延びる。しかし向山型算数では,授業終了のチャイムで時間通りに終われる。
問題解決学習は,宿題をどっさり出す。向山型算数は,宿題を出さない。
問題解決学習は,教科書が終わらず,計算練習帳も終わらない。向山型算数は,余裕をもって教科書を終了,計算スキルも終了する。
もちろん,授業時間だけでである。
問題解決学習は,個別学習をする。向山型算数は,いわゆる個別学習はしない。
問題解決学習は,教具づくりに時間をかける。毎日毎日プリントづくりなどに追われる。
向山型算数は,そんな時間は使わない。教科書をよく検討するだけである。
向山型算数をやると,時間に大巾なゆとりが生まれ,しかも平均点は上がり,子どもに喜ばれ,親に感謝されるのである。
『向山型算数教え方教室』誌も,算数雑誌で日本一だ。「赤ねこ計算スキル」も,またたくまに,学校用教材の主流になった。『こんな先生に教わると駄目になる』(PHP)はじめ,向山型算数の本は,みんなベストセラーである。問題解決学習は「子どもの事実」を大切にして,これまでの反省をしないと,誰も見向きもしなくなる。
日本の算数教育が向山型だけでいいはずがないから,問題解決の人にも「子どもの事実」を大切にした実践を作ってもらいたいと思う。
私たちの悪口をいくら言っても,自分達の実践のひどさの免罪符にはならないのである。
向山型算数は,基本的には教科書通りに教える授業方法である。
但し,教科書通りに教えられる教師は1000人に1人もいない。
みんな我流のデタラメ指導法だ。
そもそも,教師は,大学時代も,教師になっても,「教科書の教え方」という基本を習ったことがないのだ。
だから,みんな自己流。テンポもリズムもないグチャグチャな指導法だ。
我流をすててもらうのが向山型算数指導法の出発点である。
「いきなり授業に入る」ことや「30秒以上の説明はしない」ことや,「時間内で終了する」ことなどの基本をまず守ってもらう。
問題解決学習の授業は,必ずといっていいほど,授業時間が延びる。
授業時間が延びるのは,授業が下手な証拠である。
授業は45分以内という条件のもとで成立する。45分が連続していくのだ。
その前提を意識してこそ,リズムやテンポやクライマックスが分ってくる。
ダラダラ,ズルズルやる授業は,駄目に決まっているのである。
いかなるプロも,時間は意識する。しかも秒単位である。
問題解決学習は,素人の授業をやっているわけである。
私は32年間教師をやって,およそ32000時間の授業をした。その中で,1分間の授業の延長をしたのは10回もない。
それも,駆け出し時代だけである。
算数のT・Tをやった4年間,授業の延長は1度もない。多くは5分ぐらい前に終了である。
一緒に授業した先生方が,証言してくれている。それほど,授業時間の延長はしなかったのである。
だからこそ,リズムとテンポが生まれたのだ。問題解決学習の教師は,向山型算数を知るとびっくりする。若い教師は,あとで,そっときて,「くわしく教えて下さい」と言う。
ヴェテランは,文句をつける。
「テストの点がよくなっても,本当の学力はついてない」「教科書なぞ教えると,問題を解決する力がつかない」
よく聞くことばだ。
問題解決学習の教師は,本当に「問題」とか「問題解決」について学んだことがあるのか疑問だ。
教養の程度があまりにも低い。
「問題解決」といえば,Q.C運動が有名だ。
Q.Cには,問題の分析方法から解決方法までの方法論がある。
この方法論によって,日本は世界の先進国になったし,世界一のものづくり国になった。
問題解決の一つの手法,「フィッシュボーン」について,問題解決学習の人に話しても,全く知らないのだ。何も読んでない。
私のビデオは,20年近く前,安井電子出版で作られたが,同社は慶応大学のQ.Cの第一人者石川先生のビデオをシリーズで作っていた。
つまり,石川シリーズ,向山シリーズが並んでいた。向山は20年も昔から,「問題解決」の第一線の方法を学んでいたのである。
一つの問題,状況を考えて,すぐに問題が解決するなどということはない。
昔,円形のテレビスイッチがしばしばこわれた。日本中のテレビの研究者,何百人という技工が集まって解決策を考えた。
「スピーカー」と「スイッチ」の間をできるだけ離せばよい――という解決策は出た。
しかし,誰一人,それはなぜなのか説明がつかなかったのである。
問題を解決する有力な方法に,同じことを三度くり返して,帰納する方法がある。
三度も,同じようなことをしてみれば,法則性がつかめるというわけである。
新聞の記事が「見出し,リード,本文」と三度くり返されるのもこれに近い。
算数の教科書も,「例示問題」「例示問題そっくりの演習問題」「少し変化した練習問題」の三段階で作られている。
三つのステップを学習すれば,無理なく習得できるという方法である。これは,これまでの人類の知恵だ。
一ヶ所ですべて教えるのではなく,点・点・点をつないだ線の上で理解させるという考えである。
問題解決学習は一時間中一つの問題をこねくりまわして,考える力をつけさせるという。
これが,唯一の指導法とうそぶく。
それは,人類の知恵を無視したデタラメな指導法だ。問題解決学習の指導は,その一つ一つは不自然であり,従って醜悪であり,効果がないのである。
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- 明治図書