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巻頭論文
算数授業へのこだわり
百マス計算の徹底検証を呼びかける
限定された指導法を全能の指導法に間違えてはならない
向山洋一
百マス計算を学校ぐるみでやる学校があるらしい。全校一斉にストップウオッチで測りながらやるのだそうだ。毎日である。
これは,害の方が大きい。
百マス計算は,ある限定された分野で,部分的に効果があると思えるが,しかし,それほど優れた方法ではない。C級の指導法だ。
問題解決学習は,点数にすればマイナス50点,百マス計算はプラス5点という感じだ。
ちなみに,公文式はプラス30 点,向山型算数は,プラス65 点という所だろう。
なぜなのかはいずれ述べる。
百マス計算は,岸本先生や「落ち研」の発明と思っている人が多いが,それは違う。
大阪の算数指導の研究会から生まれたものだ。
昭和38 年,今から40 年昔に,朝日新聞大阪版で「勉強力をつける」シリーズが連載された。算数は3月18 日から5月11 日までの45 回である。大阪市小学校教育研究会の算数研究会の先生方が執筆した。
指導法の工夫は多岐にわたり,納得する実践別である。
このシリーズは,「勉強力をつける」と題して,朝日新聞社から出版された。
まえがきには,特にママさん先生へとして,「なまかじりの知識があだになって,学校教育の系統や計画のじゃまをし,子どもを混乱に追いやっている」とある。
更に「これは,新薬がよく効くからといって,その乱用のためにかえって病人が増え,医者の治療を妨げているのと同じである。新薬にしろ,新しい学習指導法にしろ,使うべきところにじょうずに使ってこそ,じゅうぶんに効果を発揮するもの。やたら乱用しては,とりかえしのつかないことになってしまいます」と主張している。
まさにその通りで,「百マス計算」は今まさに乱用されつつある。
「勉強力をつける」シリーズの中で,算数ができない子への指導を45 回も書いている。
一つ一つが「できないこと」への対応だ。
つまり「何十」もの「つまづき」に,具体的に対応している。
それゆえに,「かけ算九九のできない子」への対応がある。それが「百マス計算」である。
「百マス計算」は,このように限定されて活用されていたのだ。
引用してみる。
□一口に「かけ算九九を間違える」といっても,その誤りにはさまざまの型があります。「七九62」というA君。彼に「なぜ62 になるの?」と聞くと「だって七九だから62 でしょう」と答えました。A君はまるっきり記憶ちがいをしているのです。B君は「六八42」といいます。これは唱え方のまずさから来た誤りです。彼は「六八」を「ろくはち」と唱えて来たためについ「六七(ろくしち)42」と混同して「六八42」と覚えこんでしまったのです。「六八」は「ろくは」でなければなりません。そのほか特定の段,例えば7の段や8の段に弱いこどももいます。「六二12」「六三18」……と,はじめから順にいわないと「六八48」の出てこないこどももいます。□
教師なら分かると思う。この主張は優れた実力ある教師の注意深い分析だ。こうしたつまづきを指導した後に,練習方法を増すのである。
A図
B図
C図
4.7.9.8.3.5.7.7.6.8
□かけ算九九は,一応の理解ができたら,あとは一にも二にも練習です。いまの算数は,たしかにこどもたちの理解と納得の上に立って学ぶのですが,それだけに練習では,徹底してこどもの力を鍛えねばなりません。九九はとくにそうです。家庭でしていただける効果的な練習法を申し上げましょう。
@ A図のようにます目を入れた紙に,上と左横の数字を,毎日順序をかえて書き,あいたます目に答えを全部入れさせる。
A B図のようなカードを作って,できたものから区別していく。
B C図のように,細長い紙に2から9までの数字を適当に書込んで,隣同士の数の九九の答えをいわせる。これには,誤りやすい4や7や8を多く書込む。□
「勉強力をつける」では,「かけ算九九」の分野に限定していた。しかも,つまづきを鋭くとらえ,指導して,その後の練習としたのである。百マス計算は使用目的が限定されていた。これなら効果はある。
ちなみに,向山型では「かけ算九九表」を持たせる。「わり算指導」の時に,「九九を言えない子」は,落ちこぼれるからだ。
「かけ算九九表」を見ながら勉強した子も,半年,一年後には「九九」が言えるようになる。
百マスは体力主義,向山型は子どもの成長に自然によりそう。向山型の方が優しい。
岸本先生は,これに「時間測定」を加えた。
陰山先生は,この指導法の中から,「有名国立大学に合格した」として,脚光をあびている。小学校の指導で有名大学に入ったという。
しかし「有名国立大学に合格したのは,陰山学級ではなく,隣のクラスの子だ」という証言がある。複雑だ。
「陰山学級ではなく,同学年の子」だというわけだ。「私の学年から」とも書いてある。
しかし,これはサギだ。広く知られているのは,「陰山学級の子」ということであり,TVで何度も放送され,訂正されてない。
小学校教師である私は,このエピソードに強い異和感を持っている。
「自分のクラスから,一流有名中学に一度に11 人合格した」(向山のことです)というのなら,6年担任の力も少しは,あっただろう。
しかし「中学,高校」の6年間を経て,「大学」に入った子を,「あれは,小学校で私が教えたためだ」と思う人はいない。
そんな不遜な考えをする教師に私は会ったことがない。陰山先生が初めてで,そこに異和感を覚える。
例えば,小学校の教師なら,「これまでの同学年の子の中で,一流国立大学に入った子がいる」というなら,ほとんどの教師があてはまる。20 年間も小学校で教えていて,「同学年の子が一流国立大学に入った」ことなど,東京の教師なら大半が経験している。私など,クラスから東大,京大はもとより,ハーバード,マサチューセッツ工科大学,ソウル大学,ソルボンヌ大学,早大,慶大,一橋,東工大など山ほどあげられる。一年生の実践記録の始業式に登場する青木君は東工大,今村君は慶応,加藤君も東工大へ入った。
でも,そんなことを小学校の教師は口にしない。
「クラスの子」だった子が,「一流大学」に入っても,自分のせいではないからだ。例え「自分のクラスの子」だったとしても,それは「本人の努力」「中学,高校の先生方のお力」と思い,小学校教師の自分の力は「ちょっぴりあったかな」と思うくらいだからだ。それが,教師の普通の考え方だと思う。
ましてや「小学校時代の同学年の子が,一流国立大学に入った」ことなど,自分の手柄にする小学校教師は,全くいない。
陰山先生の教師としての人格に,どこか理解しがたいことがある。
そういえば,陰山先生は,最後の教え子を6年生で卒業させるにあたって,自分のクラスの子だけに,自分のサイン入りの証書をプレゼントしたときく。
本当なら,信じられない行為だ。
隣のクラスの先生は,さぞ困ったことだろう。自分のクラスの子に,何と説明したらいいのか,困惑したことと思う。
公立学校の教師は,「学校」の名のもとに教え子を預かっている。
自分のクラスだけ良いというのは,新卒教師で無知ならいざしらず,校長先生に栄転していく人がやることではない。
百マス計算を詰めてやると,害が出る。一つは,勉強のできる子だ。当然ながら,あきてしまうからだ。タイム測定も,最初は面白いが,いつまでも,ひきつけることはできない。知的でないからだ。
もう一つは,できない子にも害がでる。百マス計算では,できない子ができるようにならない。
百マス計算を発明した40年前の大阪の先生方のような「できない子」へのきめ細かい指導が必要だ。
百マス計算を詰めてやると,「勉強のできる子」と「できない子」からの反発,離反が出てくる。陰山学級にも,当然あったはずだ。
しかし,著書の中には,そのようなことが出てこない。「かくしてる」と,私は推定する。
もし,「反発」があり,「上手に解決」したなら,本の中に出てくるはずだからだ。
以上のようなことを私は考えているが,間違いかもしれない。
そこで「徹底検証,百マス計算で,できない子を救えるか」という原稿をいずれ募集する。「教室ツーウェイ」「向山型算数」「授業研究」「現代教育科学」の共同企画である。
何度でも,疑いがはれるまで特集する。
これは,学問,研究に絶対必要なことだ。
法則化追試も,「現代教育科学」「授業研究」「教室ツーウェイ」で,批判の研究者半分がライターになるという構成で特集した。
雑誌「教育」も特集を組んだ。
学問,研究の世界では,このような「徹底検証」は,当然のことである。
だからこそ,真理は守られるのである。
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- 明治図書