向山型算数教え方教室 2003年6月号
平均90点は「説明しない・教えない」から達成できる

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向山型算数教え方教室 2003年6月号平均90点は「説明しない・教えない」から達成できる

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2003年5月
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 平均90点は「説明しない・教えない」から達成できる
「やりなさい」と「では始め」。例題はその布石である
水野 正司
「線の指導」が苦手な子を変える
八巻 修
3年・九九の苦手な子もスイスイできるわり算指導法
寺田 真紀子
単元を通してぶれない基本型をつくる
大関 貴之
指導項目を逆算して散りばめる
松井 靖国
説明なし指導のポイントはこれだ!!
國師 洋之
個別指導で説明しても,学級平均90点は突破しない
山口 正仁
ミニ特集 ADHD・LD児に効果があるのは「この指導」だ!
目の動き,動作から彼の授業参加度を確かめて一歩手前で,手をうつ
大場 寿子
挑戦したくなるものを与える
小松 裕明
やはり授業の原則十ヶ条だ!!
永山 祐
キーワードは「わかりやすさ」と「あたたかさ」
池田 美智代
補助計算をリズム読みで徹底させる
鈴木 はるみ
「なぞる」が学習を保障する
星原 一宏
グラビア
「介入授業で20秒もてばりっぱです」
村田 斎
向山型算数キーワード
TOSS子ども用百玉そろばん
木村 重夫
論文ランキング
3月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
百マス計算の徹底検証を呼びかける 限定された指導法を全能の指導法に間違えてはならない
向山 洋一
学年別6月教材こう授業する
1年
のこりはいくつ ちがいはいくつ
宍戸 威之
ひきざん(1) のこりはいくつ
松尾 能志
2年
100をこえる数
足立 勝彦
たし算とひき算のひっ算(1)
飛田 政彦
3年
水のかさ
尾形 はじめ
水のかさをはろう
太田 健二
4年
分数
新村 勲
わり算のしかたを考えよう
藤野 美紀
5年
小数のかけ算・わり算
小路 健太郎
四角形を作ろう
福谷 崇
6年
比べ方を考えよう
加藤 延啓
比べ方を考えよう
富樫 慎也
向山型算数に挑戦/論文審査 (第43回)
扱わない方がいい場合もある。
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第45回)
繰り上がりの数を2回足してしまう子どうするか
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第45回)
向山型算数こそがADHD児の力を伸ばすことができる
白石 周二
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第14回)
向山型算数でグレーゾーンの子は自分に自信を持つ!
乙津 優子
向山型算数WEBサロン (第39回)
子どもたちを安定させてから算数的活動を取り入れる
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第39回)
例や例題の前に練習問題がある場合にはどうするか
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第3回)
子どもが選ぶ好きな教科第1位は「向山型算数」
松崎 力
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
低学年/『計算練習を楽しく知的に!』
高橋 一行
中学年/計算のきまりは楽しく学ぶ
細井 俊久
高学年/子ども熱中!算数おもしろ問題
山口 浩彦
中学/展開図は一面ずつ確認する
佐々木 章子
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第45回)
低学年
豊田 亮平
中学年
桜井 健一
高学年
小田 昌宏
衝撃のライブ体験「向山洋一の介入模擬授業」を受けて
痛感!システムでわかる向山型算数
岡ア 昌美
学び多き,10秒間の模擬授業!
瀧口 泰広
向山型算数セミナー
算数セミナーでサークル結成の呼びかけをする
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
向山型算数でリベンジ!
五十嵐 いつ子
教師修業の大切さを実感!!
堀 達也
算数大嫌いがスキル大好きに
杉木 利之
向山型算数が生徒を変えた
河野 栄太
自信につながる向山型算数
□□□□□
自己満足→自己変革→子供の笑顔
三浦 一心
「千里の道も一歩から」
邊見 貞子
自由投稿フリーページ
木村 重夫元村恵利子
実物ノートと指導のポイント
どの子にもわかる基本形でノートをつくる
有村 紅穂子
読者のページ
学び続ける教師が生み出す感動の事実
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第45回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

百マス計算の徹底検証を呼びかける

限定された指導法を全能の指導法に間違えてはならない

向山洋一


 百マス計算を学校ぐるみでやる学校があるらしい。全校一斉にストップウオッチで測りながらやるのだそうだ。毎日である。

 これは,害の方が大きい。

 百マス計算は,ある限定された分野で,部分的に効果があると思えるが,しかし,それほど優れた方法ではない。C級の指導法だ。

 問題解決学習は,点数にすればマイナス50点,百マス計算はプラス5点という感じだ。

 ちなみに,公文式はプラス30 点,向山型算数は,プラス65 点という所だろう。

 なぜなのかはいずれ述べる。

 百マス計算は,岸本先生や「落ち研」の発明と思っている人が多いが,それは違う。

 大阪の算数指導の研究会から生まれたものだ。

 昭和38 年,今から40 年昔に,朝日新聞大阪版で「勉強力をつける」シリーズが連載された。算数は3月18 日から5月11 日までの45 回である。大阪市小学校教育研究会の算数研究会の先生方が執筆した。

 指導法の工夫は多岐にわたり,納得する実践別である。

 このシリーズは,「勉強力をつける」と題して,朝日新聞社から出版された。

 まえがきには,特にママさん先生へとして,「なまかじりの知識があだになって,学校教育の系統や計画のじゃまをし,子どもを混乱に追いやっている」とある。

 更に「これは,新薬がよく効くからといって,その乱用のためにかえって病人が増え,医者の治療を妨げているのと同じである。新薬にしろ,新しい学習指導法にしろ,使うべきところにじょうずに使ってこそ,じゅうぶんに効果を発揮するもの。やたら乱用しては,とりかえしのつかないことになってしまいます」と主張している。

 まさにその通りで,「百マス計算」は今まさに乱用されつつある。

「勉強力をつける」シリーズの中で,算数ができない子への指導を45 回も書いている。

 一つ一つが「できないこと」への対応だ。

 つまり「何十」もの「つまづき」に,具体的に対応している。

 それゆえに,「かけ算九九のできない子」への対応がある。それが「百マス計算」である。

「百マス計算」は,このように限定されて活用されていたのだ。

 引用してみる。

□一口に「かけ算九九を間違える」といっても,その誤りにはさまざまの型があります。「七九62」というA君。彼に「なぜ62 になるの?」と聞くと「だって七九だから62 でしょう」と答えました。A君はまるっきり記憶ちがいをしているのです。B君は「六八42」といいます。これは唱え方のまずさから来た誤りです。彼は「六八」を「ろくはち」と唱えて来たためについ「六七(ろくしち)42」と混同して「六八42」と覚えこんでしまったのです。「六八」は「ろくは」でなければなりません。そのほか特定の段,例えば7の段や8の段に弱いこどももいます。「六二12」「六三18」……と,はじめから順にいわないと「六八48」の出てこないこどももいます。□

 教師なら分かると思う。この主張は優れた実力ある教師の注意深い分析だ。こうしたつまづきを指導した後に,練習方法を増すのである。

A図

B図

C図

4.7.9.8.3.5.7.7.6.8

□かけ算九九は,一応の理解ができたら,あとは一にも二にも練習です。いまの算数は,たしかにこどもたちの理解と納得の上に立って学ぶのですが,それだけに練習では,徹底してこどもの力を鍛えねばなりません。九九はとくにそうです。家庭でしていただける効果的な練習法を申し上げましょう。

@ A図のようにます目を入れた紙に,上と左横の数字を,毎日順序をかえて書き,あいたます目に答えを全部入れさせる。

A B図のようなカードを作って,できたものから区別していく。

B C図のように,細長い紙に2から9までの数字を適当に書込んで,隣同士の数の九九の答えをいわせる。これには,誤りやすい4や7や8を多く書込む。□

 「勉強力をつける」では,「かけ算九九」の分野に限定していた。しかも,つまづきを鋭くとらえ,指導して,その後の練習としたのである。百マス計算は使用目的が限定されていた。これなら効果はある。

 ちなみに,向山型では「かけ算九九表」を持たせる。「わり算指導」の時に,「九九を言えない子」は,落ちこぼれるからだ。

 「かけ算九九表」を見ながら勉強した子も,半年,一年後には「九九」が言えるようになる。

 百マスは体力主義,向山型は子どもの成長に自然によりそう。向山型の方が優しい。

 岸本先生は,これに「時間測定」を加えた。

 陰山先生は,この指導法の中から,「有名国立大学に合格した」として,脚光をあびている。小学校の指導で有名大学に入ったという。

 しかし「有名国立大学に合格したのは,陰山学級ではなく,隣のクラスの子だ」という証言がある。複雑だ。

 「陰山学級ではなく,同学年の子」だというわけだ。「私の学年から」とも書いてある。

 しかし,これはサギだ。広く知られているのは,「陰山学級の子」ということであり,TVで何度も放送され,訂正されてない。

 小学校教師である私は,このエピソードに強い異和感を持っている。


 「自分のクラスから,一流有名中学に一度に11 人合格した」(向山のことです)というのなら,6年担任の力も少しは,あっただろう。

 しかし「中学,高校」の6年間を経て,「大学」に入った子を,「あれは,小学校で私が教えたためだ」と思う人はいない。

 そんな不遜な考えをする教師に私は会ったことがない。陰山先生が初めてで,そこに異和感を覚える。

 例えば,小学校の教師なら,「これまでの同学年の子の中で,一流国立大学に入った子がいる」というなら,ほとんどの教師があてはまる。20 年間も小学校で教えていて,「同学年の子が一流国立大学に入った」ことなど,東京の教師なら大半が経験している。私など,クラスから東大,京大はもとより,ハーバード,マサチューセッツ工科大学,ソウル大学,ソルボンヌ大学,早大,慶大,一橋,東工大など山ほどあげられる。一年生の実践記録の始業式に登場する青木君は東工大,今村君は慶応,加藤君も東工大へ入った。

 でも,そんなことを小学校の教師は口にしない。

 「クラスの子」だった子が,「一流大学」に入っても,自分のせいではないからだ。例え「自分のクラスの子」だったとしても,それは「本人の努力」「中学,高校の先生方のお力」と思い,小学校教師の自分の力は「ちょっぴりあったかな」と思うくらいだからだ。それが,教師の普通の考え方だと思う。

 ましてや「小学校時代の同学年の子が,一流国立大学に入った」ことなど,自分の手柄にする小学校教師は,全くいない。

 陰山先生の教師としての人格に,どこか理解しがたいことがある。

 そういえば,陰山先生は,最後の教え子を6年生で卒業させるにあたって,自分のクラスの子だけに,自分のサイン入りの証書をプレゼントしたときく。

 本当なら,信じられない行為だ。

 隣のクラスの先生は,さぞ困ったことだろう。自分のクラスの子に,何と説明したらいいのか,困惑したことと思う。

 公立学校の教師は,「学校」の名のもとに教え子を預かっている。

 自分のクラスだけ良いというのは,新卒教師で無知ならいざしらず,校長先生に栄転していく人がやることではない。

 百マス計算を詰めてやると,害が出る。一つは,勉強のできる子だ。当然ながら,あきてしまうからだ。タイム測定も,最初は面白いが,いつまでも,ひきつけることはできない。知的でないからだ。

 もう一つは,できない子にも害がでる。百マス計算では,できない子ができるようにならない。

 百マス計算を発明した40年前の大阪の先生方のような「できない子」へのきめ細かい指導が必要だ。

 百マス計算を詰めてやると,「勉強のできる子」と「できない子」からの反発,離反が出てくる。陰山学級にも,当然あったはずだ。

 しかし,著書の中には,そのようなことが出てこない。「かくしてる」と,私は推定する。

 もし,「反発」があり,「上手に解決」したなら,本の中に出てくるはずだからだ。

 以上のようなことを私は考えているが,間違いかもしれない。

 そこで「徹底検証,百マス計算で,できない子を救えるか」という原稿をいずれ募集する。「教室ツーウェイ」「向山型算数」「授業研究」「現代教育科学」の共同企画である。

 何度でも,疑いがはれるまで特集する。

 これは,学問,研究に絶対必要なことだ。

 法則化追試も,「現代教育科学」「授業研究」「教室ツーウェイ」で,批判の研究者半分がライターになるという構成で特集した。

 雑誌「教育」も特集を組んだ。

 学問,研究の世界では,このような「徹底検証」は,当然のことである。

 だからこそ,真理は守られるのである。


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