向山型算数教え方教室 2004年2月号
子どもの“この事実”が旧文化の見栄・理屈を駆逐した

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向山型算数教え方教室 2004年2月号子どもの“この事実”が旧文化の見栄・理屈を駆逐した

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2004年1月15日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 子どもの“この事実”が旧文化の見栄・理屈を駆逐した
旧文化を駆逐するには,授業の腕を上げるしかない。そのための方法は,再現である
甲本 卓司
陰には保護者の評価がある
水野 正司
形式をとるか本質をとるか
猿渡 功
理屈でできるなら教師ほど楽な仕事はない
根本 直樹
1年くり下がりのひき算で平均95点
岡 惠子
聴く耳が育つから指示が掴める
正木 恵子
習熟度別学習でも生きる向山型算数
小路 健太郎
ミニ特集 この1年間の確かな成長を示す「子どものノート」
地道に,根気よく,成長を信じて
木村 重夫
ノート指導で感じた腹の底からの手ごたえ
横山 利恵
ノートスキルが事実をつくる
細川 晃
ゴールを示し,崩れたときは初心にかえる
川原 雅樹
ノートスキルと評定で子どものノートは変わる
小倉 郁美
ノートは変わる!5つのポイント
吉田 真弓
グラビア
「向山は絶対にそのようにしません」から原理原則を学ぶ
村田 斎
向山型算数キーワード
待ちません
木村 重夫
論文ランキング
11月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
向山型算数を実践する中で,教師は手ごたえを感じ,ドラマに出会い,成長していく。本当の教師の仕事を見出していく
向山 洋一
学年別2月教材こう授業する
1年
おおいほう すくないほう
刀祢 敬則
おおいほう すくないほう
渡部 博子
2年
三角形と四角形
瀬川 恵子
10000までの数
安達 覚
3年
かけ算の筆算(2)
熊谷 博樹
重さ
徳永 智久
4年
分数
牛田 美和子
分数
三宅 孝明
5年
割合を使って
三浦 広志
百分率とグラフ
堀部 陽子
6年
算数と生活
田口 広治
6年のまとめ
松本 俊樹
向山型算数に挑戦/論文審査 (第51回)
「よけいなことば」を削る。それには哲学が必要だ
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第53回)
赤鉛筆指導の我流を排す(下)
木村 重夫
〜「なぞらない子がなぞった瞬間」〜
向山型算数の原理原則と応用 (第53回)
TTの先生が「鳥肌がたった」と言った。事実を生んだのは「九九カードとミニ百玉そろばん」である
尾崎 文雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第22回)
子どもの事実が語る向山型算数の力
秋田 泰宏
向山型算数WEBサロン (第47回)
教科書の問題とサイト画面とが一致すると視線の移動がスムーズになる
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第47回)
形式に流れた瞬間に「向山型」ではなくなってしまう
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第11回)
一番できないと言われ続けた子が満点を取った日
松崎 力
『教え方大事典』を活用した算数授業体験
低学年/定義【同じ数ずつ】の意識化
脇 規洋
中学年/直角が2つ入った三角形?
高橋 恵一郎
高学年/知的興奮!調べてびっくり1m3
榎本 寛之
中学/「これって,もしかして一次関数?」〜マッチ棒連続形問題〜
越智 鈴穂
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第53回)
低学年
門 貴幸
中学年
河田 真介
高学年
石丸 真一
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
授業の基礎基本ができていない上滑りの授業
有村 春彦
授業者の悩みを指摘するコメント
八和田 清秀
向山型算数セミナー
2月熊本セミナーで向山型算数1年間の実績評価をします
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
泣き顔から笑顔へ
鈴木 真
A君がはじめて70点取った
吉田 晴美
具体的な手だては向山型で
伊藤 壮一
子どもの顔が明るくなった!
三浦 景子
やんちゃ坊主を変えた向山型算数!
平山 勇輔
向山型算数に出会えてよかった!
水野 彰子
やり方が分かった!簡単じゃん
戸村 隆之
自由投稿フリーページ
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
「向山型ノート指導」第1時
渡邉 康子
読者のページ
向山型算数を着実に広める努力
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
向山型算数に挑戦/指定教材 (第53回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

向山型算数を実践する中で教師は手ごたえを感じ,ドラマに出会い,成長していく。本当の教師の仕事を見出していく


 向山型算数を学ぶさまざまな研究会が誕生している。「向山型算数 女☆DEEP研究会」もその1つだ。MLを活用した女教師の研究会である。2003 年度限定の研究会だ。

 新潟の先生は,次のように報告を始める。

 20 日に15 回目の研究授業をしました

(15 回…なんとも情けない数字です)。

 女☆DEEP研究会に入れてもらって7か月。ようやく,できるだけ早く,できる限りの事をして100回を目指そうと, 重い重い腰を上げることができました。

 これから毎月やって8年かかります。

 5年生習熟度別クラスで「分数」の導入の学習です。「どんどんコース」(発展コース)26 人,「ゆっくりコース」(基礎定着コース)11 人,に分かれ,発展コースの担当をしました。

 「15 回が情けない数字」ということはない。

 教師の中では,圧倒的に上位の数だ。TO SSの教師が勉強熱心なのである。とりかかるのに遅いことはない。思いたったその日が実行の日だ。

 「教育」は「今日行く」である。

 大切なのは,「楽しくやる」ことだ。

向山洋一

 「嫌だ。つらい」と思いながら努力しても効果は少ない。

 「つらいけど,この感じがたまらなく良い」と思うようになって効果が上がる。

 そのように思い,口に出すのだ。

 おもしろいから笑うのではない。笑うからおもしろいのだ。

 笑いの努力,笑顔の練習は教師の必須条件の1つだが,研究授業を楽しむのも同じだ。

 協議会での様子が報告されている。

〈協議会でいただいた意見・感想〉

 @去年に比べ,見違えるほど子どもたちが集中して授業を受けていた(校長)。

 A定規を使ってていねいに書いていた。こういった1つ1つのことがていねいにできることが大事だ(校長)。

 B誰が見ても見やすいノートを書いていて,すごいです。

 Cリズムとテンポがありました。いいものを見せていただきありがとうございました。こういう授業,好きです。

 すばらしい校長先生だ。こういう管理職が教師を育てていく。

 世の中には,わけの分からない校長もいる。「子どもの事実」を見ることができず,校長室へ呼んで,長々とお説教をする校長もいる。

 そんなとき,じっと耐えるのだ。

 馬鹿な校長は今更直らない。できる限り接点を減らし,視野からはずすのだ。

 私は,3年間同じ職場にいても名前さえ覚えない教師もいた。フレームカットがお互いの幸せのためだ。

 ひどい校長もいるが,立派な校長もいる。

 必ずチャンスはめぐってくる。

 協議会の様子は,続きがある。

 D早口で,これでは理解の遅い子どもたちはついていけないのではないか。

 E黒板をヒントの場にすると,考えなしで写すだけの子もいて,何も定着せずに終わるのではないか。

 F授業中,子ども同士の教え合いがあるといいのではないか。

 G子どもの興味関心が沸くように,子どもたちの身近なものを取り入れた課題にしたほうがいい。ゆっくりコースは,ピザを分ける作業をしていて楽しそうに,また必然性をもって,授業に取り組んでいた。

 H今回の授業は子どもたちが自力解決をした授業と言えるのか。

 Iじっくり考える場があるといい。早く進みすぎる。

 などなど……たくさんいただきました。

 批判することは誰でもできる。小学生でも総理大臣を批判できるし,松井のプレーを批判できる。無責任で,根拠のない批判だ。無視するのが一番いい。向山は,反論する。

@「ついていけないと言われましたが,どの子について,どのような根拠で言われたのですか。ご説明ください」

A「もしも,子どもの事実を見ての意見ではないと言われるのなら,先生自身がそう思われる体験をお教えください」

B「何も定着せずに終わるということは,本日学習した分数の練習問題が1問もできないということですが,そう思われる根拠を示してください。『何も定着しない』とは,そういうことです」

C「何も定着しない私のクラスのテストと, きちんと定着しているであろう先生のクラスのテストを比較して研究させてください。過去5回分のお互いのクラスのテストを比較して,定着したかどうか検証しませんか」

D「子ども同士の教え合いがあると,今日と比べて何がよいのですか。具体的に教えてください。子ども同士の教え合いは,立派な学習活動であると思っていますが,本日どうしてそれが必要だったのかお教えください」

E「子どもの身近なものを取り入れた課題が興味関心を示すと言われますが,その違いを示してください。私は分数の計算は身近ではないと思っています。『隣の家の食事』は身近です。『エスキモーの食事』は遠い世界です。私には,エスキモーの食事の方が興味関心があります」

F「自力解決の定義が分かりません。学習とは教師から与えられた課題を自分が解けるようになるかどうかが基本と思います。例えば, 泳げるようになりたいという課題への自力解決は,どのように考えればいいのですか」「早

く進みすぎるというのは,先生のお考えです。しかし,子どもたちや保護者は,これがやりやすいと言います。子どもが集中していると校長先生にご評価いただきましたが,保護者の意見と同じです。私の実感でもあります。これも,私が『リズムやテンポ』を心がけているためと思います。

 先生のクラスのお授業では,じっくり考える場面はどのようになるのか,ぜひ見学させてください」

G子どもの事実は必ず勝つ。それが教師の仕事だ。それまで,したたかにしなやかに頑固に。

 私は研究協議会で,このように上品におだやかに,しかし論点をあいまいにせずに主張してきた。だから,批判する教師は「言ったことば」をそのまま「返球される」ので,無責任なことを言わなくなってきた。

 もっとも,それは私が一応の実績があったためだろう。

 無茶な場面もあった。

 新卒のとき,区内の新卒教師60 名が集まっての研究授業。協議会で私や石黒は活発に発言したのだが,最後に指導主事が講評でまとめをした。私たちへの批判も含まれている。

 指導主事講評で,協議会は終了してしまう。

 (このまま終わらせてなるものか。)

 私と石黒は手を挙げた。

 「ただ今の講評に異議があります。発言させてください」

 強引に割って入って意見を述べた。

 そんな若いときもあった。

 若いときには生意気さがあっていい。

 少々痛い目をみるが,それが成長させてくれる。

 ただし,自分への批判の意見をすべて無視してはならない。必ず,少しでも振り返ってみることが大切だ。

 新潟の女教師の報告は,次で終わる。

 授業後,録音したテープを聞きました。

 はっきりと同じ発問,指示をたっぷり言ったつもりだったのに,「早い」という感想。その原因が分かりました。

 1つの発問をした後,すぐ指名していました。

 「何分の何ですか。○さん」

        ↑

        間 がない。

 向山先生と自分の違いの中のほんの1 点ですが,見つけることができました。

 録音テープを聞き直したという。

 「早い」と言われた原因の発見。指名するときの「ためた時間」がなかったことに気がつく。

 すばらしい発見だ。

 自分の授業テープを聞いて,このような欠点を発見した教師は,これまでの日本に数えるほどしかいない。私が知る限り5人もいない。

 授業の分析とは,こういうことを言う。

 この先生は,なぜ発見できたのか。

 それは「向山の授業CD」を何度も聞いて向山のリズムを理解していたからである。

 「向山先生とは違う」ということが分かったのだ。わずか数秒の違いなのだが,時に,ほんのコンマ以下なのだがその意味が分かったのだ。

 ライブやCD,テープで学ばなければいけないのは,このためである。

 本を読んでは,絶対に分からないことだ。

 本を読むとき,読む人は,自分のリズムで理解してしまうのである。自分のやり方(我流)で,理解してしまうのである。


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