- 特集 子どもの“この事実”が旧文化の見栄・理屈を駆逐した
- 旧文化を駆逐するには,授業の腕を上げるしかない。そのための方法は,再現である
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- 陰には保護者の評価がある
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- 形式をとるか本質をとるか
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- 理屈でできるなら教師ほど楽な仕事はない
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- 1年くり下がりのひき算で平均95点
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- 聴く耳が育つから指示が掴める
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- 習熟度別学習でも生きる向山型算数
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- ミニ特集 この1年間の確かな成長を示す「子どものノート」
- 地道に,根気よく,成長を信じて
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- ノート指導で感じた腹の底からの手ごたえ
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- ノートスキルが事実をつくる
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- ゴールを示し,崩れたときは初心にかえる
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- ノートスキルと評定で子どものノートは変わる
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- ノートは変わる!5つのポイント
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- 「向山は絶対にそのようにしません」から原理原則を学ぶ
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- 巻頭論文 算数授業へのこだわり
- 向山型算数を実践する中で,教師は手ごたえを感じ,ドラマに出会い,成長していく。本当の教師の仕事を見出していく
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- 〜「なぞらない子がなぞった瞬間」〜
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
向山型算数を実践する中で教師は手ごたえを感じ,ドラマに出会い,成長していく。本当の教師の仕事を見出していく
向山型算数を学ぶさまざまな研究会が誕生している。「向山型算数 女☆DEEP研究会」もその1つだ。MLを活用した女教師の研究会である。2003 年度限定の研究会だ。
新潟の先生は,次のように報告を始める。
20 日に15 回目の研究授業をしました
(15 回…なんとも情けない数字です)。
女☆DEEP研究会に入れてもらって7か月。ようやく,できるだけ早く,できる限りの事をして100回を目指そうと, 重い重い腰を上げることができました。
これから毎月やって8年かかります。
5年生習熟度別クラスで「分数」の導入の学習です。「どんどんコース」(発展コース)26 人,「ゆっくりコース」(基礎定着コース)11 人,に分かれ,発展コースの担当をしました。
「15 回が情けない数字」ということはない。
教師の中では,圧倒的に上位の数だ。TO SSの教師が勉強熱心なのである。とりかかるのに遅いことはない。思いたったその日が実行の日だ。
「教育」は「今日行く」である。
大切なのは,「楽しくやる」ことだ。
向山洋一
「嫌だ。つらい」と思いながら努力しても効果は少ない。
「つらいけど,この感じがたまらなく良い」と思うようになって効果が上がる。
そのように思い,口に出すのだ。
おもしろいから笑うのではない。笑うからおもしろいのだ。
笑いの努力,笑顔の練習は教師の必須条件の1つだが,研究授業を楽しむのも同じだ。
協議会での様子が報告されている。
〈協議会でいただいた意見・感想〉
@去年に比べ,見違えるほど子どもたちが集中して授業を受けていた(校長)。
A定規を使ってていねいに書いていた。こういった1つ1つのことがていねいにできることが大事だ(校長)。
B誰が見ても見やすいノートを書いていて,すごいです。
Cリズムとテンポがありました。いいものを見せていただきありがとうございました。こういう授業,好きです。
すばらしい校長先生だ。こういう管理職が教師を育てていく。
世の中には,わけの分からない校長もいる。「子どもの事実」を見ることができず,校長室へ呼んで,長々とお説教をする校長もいる。
そんなとき,じっと耐えるのだ。
馬鹿な校長は今更直らない。できる限り接点を減らし,視野からはずすのだ。
私は,3年間同じ職場にいても名前さえ覚えない教師もいた。フレームカットがお互いの幸せのためだ。
ひどい校長もいるが,立派な校長もいる。
必ずチャンスはめぐってくる。
協議会の様子は,続きがある。
D早口で,これでは理解の遅い子どもたちはついていけないのではないか。
E黒板をヒントの場にすると,考えなしで写すだけの子もいて,何も定着せずに終わるのではないか。
F授業中,子ども同士の教え合いがあるといいのではないか。
G子どもの興味関心が沸くように,子どもたちの身近なものを取り入れた課題にしたほうがいい。ゆっくりコースは,ピザを分ける作業をしていて楽しそうに,また必然性をもって,授業に取り組んでいた。
H今回の授業は子どもたちが自力解決をした授業と言えるのか。
Iじっくり考える場があるといい。早く進みすぎる。
などなど……たくさんいただきました。
批判することは誰でもできる。小学生でも総理大臣を批判できるし,松井のプレーを批判できる。無責任で,根拠のない批判だ。無視するのが一番いい。向山は,反論する。
@「ついていけないと言われましたが,どの子について,どのような根拠で言われたのですか。ご説明ください」
A「もしも,子どもの事実を見ての意見ではないと言われるのなら,先生自身がそう思われる体験をお教えください」
B「何も定着せずに終わるということは,本日学習した分数の練習問題が1問もできないということですが,そう思われる根拠を示してください。『何も定着しない』とは,そういうことです」
C「何も定着しない私のクラスのテストと, きちんと定着しているであろう先生のクラスのテストを比較して研究させてください。過去5回分のお互いのクラスのテストを比較して,定着したかどうか検証しませんか」
D「子ども同士の教え合いがあると,今日と比べて何がよいのですか。具体的に教えてください。子ども同士の教え合いは,立派な学習活動であると思っていますが,本日どうしてそれが必要だったのかお教えください」
E「子どもの身近なものを取り入れた課題が興味関心を示すと言われますが,その違いを示してください。私は分数の計算は身近ではないと思っています。『隣の家の食事』は身近です。『エスキモーの食事』は遠い世界です。私には,エスキモーの食事の方が興味関心があります」
F「自力解決の定義が分かりません。学習とは教師から与えられた課題を自分が解けるようになるかどうかが基本と思います。例えば, 泳げるようになりたいという課題への自力解決は,どのように考えればいいのですか」「早
く進みすぎるというのは,先生のお考えです。しかし,子どもたちや保護者は,これがやりやすいと言います。子どもが集中していると校長先生にご評価いただきましたが,保護者の意見と同じです。私の実感でもあります。これも,私が『リズムやテンポ』を心がけているためと思います。
先生のクラスのお授業では,じっくり考える場面はどのようになるのか,ぜひ見学させてください」
G子どもの事実は必ず勝つ。それが教師の仕事だ。それまで,したたかにしなやかに頑固に。
私は研究協議会で,このように上品におだやかに,しかし論点をあいまいにせずに主張してきた。だから,批判する教師は「言ったことば」をそのまま「返球される」ので,無責任なことを言わなくなってきた。
もっとも,それは私が一応の実績があったためだろう。
無茶な場面もあった。
新卒のとき,区内の新卒教師60 名が集まっての研究授業。協議会で私や石黒は活発に発言したのだが,最後に指導主事が講評でまとめをした。私たちへの批判も含まれている。
指導主事講評で,協議会は終了してしまう。
(このまま終わらせてなるものか。)
私と石黒は手を挙げた。
「ただ今の講評に異議があります。発言させてください」
強引に割って入って意見を述べた。
そんな若いときもあった。
若いときには生意気さがあっていい。
少々痛い目をみるが,それが成長させてくれる。
ただし,自分への批判の意見をすべて無視してはならない。必ず,少しでも振り返ってみることが大切だ。
新潟の女教師の報告は,次で終わる。
授業後,録音したテープを聞きました。
はっきりと同じ発問,指示をたっぷり言ったつもりだったのに,「早い」という感想。その原因が分かりました。
1つの発問をした後,すぐ指名していました。
「何分の何ですか。○さん」
↑
間 がない。
向山先生と自分の違いの中のほんの1 点ですが,見つけることができました。
録音テープを聞き直したという。
「早い」と言われた原因の発見。指名するときの「ためた時間」がなかったことに気がつく。
すばらしい発見だ。
自分の授業テープを聞いて,このような欠点を発見した教師は,これまでの日本に数えるほどしかいない。私が知る限り5人もいない。
授業の分析とは,こういうことを言う。
この先生は,なぜ発見できたのか。
それは「向山の授業CD」を何度も聞いて向山のリズムを理解していたからである。
「向山先生とは違う」ということが分かったのだ。わずか数秒の違いなのだが,時に,ほんのコンマ以下なのだがその意味が分かったのだ。
ライブやCD,テープで学ばなければいけないのは,このためである。
本を読んでは,絶対に分からないことだ。
本を読むとき,読む人は,自分のリズムで理解してしまうのである。自分のやり方(我流)で,理解してしまうのである。
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- 明治図書