向山型算数教え方教室 2004年7月号
向山型でする「教科書・ノートチェック」の基準

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向山型算数教え方教室 2004年7月号向山型でする「教科書・ノートチェック」の基準

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2004年6月15日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 向山型でする「教科書・ノートチェック」の基準
向山実践を探る「教科書・ノートチェック」本家の方法
教科書チェックは,子どもに実力をつける大変優れたシステムである
勇 和代
向山型で行う「教科書・ノートチェック」成功の秘訣
教科書チェックをさせれば,確実に平均点が上がる!!
勇 和代
「全員」が「必ず」チェックを入れられるまで根気よく確認する
馬場 慶典
我流克服7つのポイント
柿崎 厚子
泣き虫Aさんが算数を大好きになった!
八巻 修
教科書・ノートチェック,やるとやらないとでは大違い!
有村 紅穂子
できなかった問題ができるようになった!そこに意味がある
二瓶 祐子
ミニ特集 授業の基本を鍛える−視線・表情・立ち位置−
憧れをもって教師修業している若い教師は伸びる
井上 好文
サークルに参加し,声が震え,足が震える経験を積めば,道が開ける
星野 裕二
鍛える方法は,地道な作業しかない
有村 春彦
板書した子どもが発表するときの教師の目線
小倉 郁美
模擬授業から授業の基本を身につける
若林 克彦
教師の「視線」を鍛えるには,この3つの場しかない!
國本 直嗣
グラビア
大きな流れを毎日,毎日やらせるから,心に残っていくのです
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
3問目チェックの奥深さ
小倉 郁美
論文ランキング
4月号
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
新進脳科学研究者(東大)池谷裕二氏の著作は,向山型算数の「なぜ,そのシステムがよいのか」を解明
向山 洋一
学年別7月教材こう授業する
1年
ひきざん(1)
柴田 泰士
たしざん(2)
木佐貫 あかね
2年
100より大きい数
荒谷 卓朗
たし算かな ひき算かな
小倉 敬
3年
ぼうグラフと表
楠 康司
時間と長さ
宮本 重幸
4年
面積
池町 徹也
折れ線グラフ
山川 直樹
5年
いろいろな四角形
和歌 千明
計算の見積もり
奥原 淳子
6年
比べ方を考えよう
玉川 徹
平均とその利用
戸村 隆之
向山型算数に挑戦/論文審査 (第56回)
小学校1年生最初のテストをつくる力量
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第58回)
巻き戻しスモールステップサイト(下)
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第58回)
自己否定のできる教師だけが立てる境地
小林 幸雄
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第27回)
向山型算数で管理職も変わる
笠原 三義
向山型算数WEBサロン (第52回)
出会いの授業で漫然とノートスキルを使わない
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第52回)
シンプルにストレートに大切なことから授業に入る
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第16回)
問題解決学習が引き起こした悲しく,切ない授業参観
松崎 力
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
百玉そろばん操作の速さにもコツがある(上)
藤野 美紀
シンプルな形で提示する
竹田 博之
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第58回)
低学年
御子神 由美子
中学年
西田 裕之
高学年
大前 暁政
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
傲慢で研究不足だからこそ出た不満
楢原 八恵美
「視線」は授業者のレーダーである
山西 浩文
向山型算数セミナー
向山型算数教え方「向山氏が東京会場に参加される」
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
子どものノートがガラッと変わった
永山 祐
大嫌いから大好きへ
坂上 潤子
私,勉強できるようになったかも
三浦 宏和
目指す道が開けた!
宇野 友美
私を救ってくれた赤鉛筆
塩谷 直大
子どもの声が変わった!
水谷 かおり
「全然分からん!」からの出発
堀田 和秀
向山型算数キーワード
説明ゼロ秒
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
一貫したノート指導で「学力UP」!
平良 優
読者のページ
「幸せ・ニコニコ・好き」向山型がもたらす実感
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第58回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

新進脳科学研究者(東大)池谷裕二氏の著作は,向山型算数の「なぜ,そのシステムがよいのか」を解明してくれる

向山洋一


 『最新脳科学が教える 高校生の勉強法』池谷裕二著(東進ブックス)は,教師なら何度でも,何十度でも読むべき本である。

 そこには,最新の脳科学によって導き出された「学習の原理」が,次々と示されている。

 最新の脳科学が示す「学習の原理」は,向山型算数の学習方法と驚くほど一致している。

 ということは,「算数の問題解決学習」は,最新の脳科学から見れば,まるでデタラメの学習方法ということになる。

 「学習とは何か」それは古来言われてきた言葉通りである。

 「学習とは繰り返しである」

 これが,古来から言われてきた経験法則であり,最新の脳科学が証明したことなのである。

 大切なのは,「それ以外の方法はない」ということなのだ。

 「学習」とは「繰り返し」であり,「それ以外にはない」ということなのだ。

 向山型算数と「算数の問題解決学習」ではどちらが,「学習は繰り返しである」という原則に忠実なのか。

 教科書(テキスト)指導において,どちらが「繰り返し」の原則を使っているのか。

 練習問題の学習で,どちらが「繰り返し」の原則を使っているのか。

 「スキル学習」において,どちらが「繰り返し」の学習をしているのか。

 単元導入からテストに至るまでの単元構造で,どちらが「繰り返しの原則」を活用しているのか。

 向山型算数では,導入の例示問題,練習問題,まとめ問題,スキル問題,テスト問題のすべてにわたって,注意深く計画された「繰り返しの原則」が使われている。

 さらには,「ノート指導」においても,「できない子への赤鉛筆指導」においても,「繰り返しの原則」が貫かれている。

 そればかりではない。

 「わり算の筆算の指導」「答えの発表のしかた」に至るまで,「繰り返しの原則」は貫かれている。

 だから,どの子も「優秀な学習指導」を受けることになり,クラス平均が90点を実現するのである。

 だから,勉強ができない子でも,できるようになり,テストで5点,10点を取っていた子が,90点,100点を取るようになるのである。

 算数の問題解決学習では,テストで5点,10点だった子が,90点,100点を取るようになった例はない。

 私が,何年も「証拠を示して,例をあげてほしい」と呼びかけているのに,今でも一例も示せないでいる。

 逆に,「算数の問題解決学習」で,「算数が嫌いになった子」は,いっぱいいる。「算数が分からなくなった子」もいっぱいいる。

 あまりのひどさに,保護者が訴え出ているところも,全国で生まれている。

 算数の問題解決学習は,なぜだめなのか,「学習は繰り返しである」という古来言われてきた経験則と,最新の脳科学の知見をまったく無視し,それとは正反対の授業をしているからである。

 算数の問題解決学習は,日本中に「算数嫌いの子」をつくり,「算数が分からない子」を大量生産し,軽度知的障害のある子を何万人,何十万人とスポイルしてきた。

 その罪,その犯罪性は,日本教育史の中で特筆すべきひどさになっている。

 校長,指導主事,附属小教官など,算数の問題解決学習を「力づく」「権力づく」で推進している一部教師の罪は,今後とも明らかにして裁いていかねばならない。

 算数の問題解決学習によって苦しみ,悲鳴を上げている子どもたちを,TOSSの教師は1日も忘れてはならない。

 人間は,さまざまな情報を入力する。一瞬で消えゆく情報がほとんどであるが,数秒間の短期記憶に回される情報もある。

 繰り返される情報の中で,大切なもの,印象に残るものが,長期記憶に回される。

 学習とは,長期記憶をふやしていく営みだ。

 しかし,やっと覚えた記憶も,すぐに忘れてしまう。

 忘れてしまったら,どうしたらいいのか。

 その解決方法は1つしかないと,池谷氏は言う。

 要するに忘れてしまったことは,いちいち気にすることなく,また必要になったときにもう一度覚え直せばよいのです,そうして覚えても,やはりまた忘れてしまったら,それでもヘコタレずにまた覚え直しましょう。そんな具合に,何度もなんども繰り返し覚え直しているうちに,脳はその知識を記憶に留めるようになるでしょう。

 しかし,そうして苦労して覚えてもまた忘れてしまったら,どうしたらよいでしょうか。何度も努力して,やっと覚えたのに……。

 答えは同じです。やはりまた覚え直せばよいのです。こればかりは仕方がないのです。人間の脳は,できるだけ多くのことを忘れるように設計されているのですから。

 つまり成績がよい人とは,忘れても忘れてもめげずに,海馬に繰り返し繰り返し情報を送り続けている努力家にほかならないのです。

 人間は,忘れるのである。誰でも同じなのだ。勉強ができる人は「忘れても忘れても覚え直した人」なのである。

 脳科学者が,このように言い切るのだ。

 子どもたちに,繰り返し話してあげたいことである。

 でも,「繰り返す」と言っても「よいやり方」と「効果の少ないやり方」がある。

 根性主義の毎日同じことの繰り返しは,「無駄だ」と,池谷先生は言う。

 教師として,私たちが,体験していることである。

 脳のニューロンは,覚えるときネットワークをつくる。ところが,脳の細胞は2階建てになっていて,2階がネットワークを担当するらしいのだ。1階は,「やる気」を担当する。

 「やる気」が出るように,「繰り返す」と効果が大きく,「やる気」を「なくす」ようにやると逆効果になってしまう。

 百マス計算を毎日やった人は,子どもの「もう,嫌だ」「やる気がしない」という場面に直面したと思う。ストップウォッチで,競争させても,「投げやりの子」が出てしまうのだ。

 向山型算数では,「変化のある繰り返し」を大切にする。テンポよくリズムよくやると子どもは「やる気満々」になる。

 向山型算数では,「小さなステップ」ごとにほめ続ける。ほめ言葉のオンパレードである。

 これも,子どもを「やる気」にさせる。「向山型算数」をして,「子どものことを,いっぱいほめるようになった」という教師は,たくさんいる。

 分からない子に,「赤鉛筆」で薄く書いてやることも「やる気」にする。

 「やる気の出る方法」で,「変化のある繰り返し」をすることは,脳科学の主張と同じなのだ。

 また,「忘れるスピード」も,どの人もほぼ同じなのだと,脳科学は主張する。

 4時間後には,半分忘れている。

 1日たつと,7割忘れている。

 2日たつと,8割以上忘れている。

 だから,学習は,習ったことを「そのときに復習」するのがいいのである。

 次の日に,「変化のある繰り返し」をすればいいのだ。1週間後に「総学習」をすればいいのだ。2週間後に「単元まとめ」で復習すればいいのだ。1か月後の「テスト」も大切である。

 4回ほど復習するのが効果的と言う。

 池谷先生は,「逆に,これ以上復習をたくさんする必要はありません」と言っている。

 ごく少数の例外はあるが,私もそう思う。

 この復習のステップは,教科書とあかねこ計算スキルとS社ワークを使った,「向山型算数」のシステムそのものなのである。

 教師の何十年,何百年にわたる経験は,すぐれたシステムをつくり出していたのである。それを最新の脳科学が証明してくれた。追記:1)東大の若手脳科学者,池谷裕二先生に,金沢のTOSSの先生が,拙著『教師修業十年』を研究地アメリカに送った。

 私が,本誌6月号(P.7)に書いた内容に付箋をつけてである。

 池谷先生から,「20年以上も昔に,私の主張とまったく同じことを書かれていた教師の方がいらして,驚きました」というメールが届いたそうである。向山の主張は,最新の脳科学の学習理論と同じであったのだ。

2)池谷先生に,夏のTOSSセミナーでのご講演をお願いしたのだが,「現在アメリカで研究中であり,うかがうのは困難です」という,ていねいなご返事があった。

 いつか,ぜひ,TOSSのセミナーにお出かけいただきたいと思っている。

3)池谷先生の著書は,教師の必読書である。

何度も,何十度も読んでください。

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