- 特集 公開授業の焦点“向山型学力づくり”のワザ
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- 脳科学から検証できる向山型算数のすぐれた指導法
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- 変化のある繰り返しは、脳科学の研究結果と一致する
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- 全員参加「時間調整」6つのワザ
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- 教科書を教えるというこの授業のパターンはすごくいい
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- ミニ特集 役に立つ「授業記録」の書き方3か条
- 自分の授業をテープにとって正確に再現する
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- 巻頭論文 算数授業へのこだわり
- 向山型算数の必需品
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
向山型算数の必需品
向山洋一
(1)
向山型算数は,「一まとまりのシステム」である。
決められた授業時間の中だけで,宿題も出さず,特別指導もせず,残り勉強もせずに教科書だけを使っての指導で,絶大な効果を上げる。
教科書指導は,3つの部分から成り立つ。
(1)例題の指導
(2)例題と似た問題(類題)の指導
(3)練習問題の指導
教科書の指導計画で「1時間」とある部分を,正味30~35分くらいで指導するのである。
向山は,教科書進度「1.5時間分」くらいを正味30~35分くらいで指導していた。
算数の授業が「5分早く終わる」など,しょっちゅうあった。同学年の筧田先生が,証言している通りである。もちろん,「10秒といえども授業がのびた」ことは,4年間で一度もなかった。
4年間で教えた子は,およそ540名。3学期,授業終了の日,「向山先生の算数の授業」について感想を書いてもらった。400字詰原稿用紙で1人,2,3枚である。この作文は校長先生にだけ,見てもらった。
「嫌いな算数が好きになった」「算数ができるようになった」「算数のある日が楽しみだった」と書いた子は,540名中539名である。
この作文は,今も大切に保管してある。
「1時間で,予定進度の1.5倍のスピード」は,子どもたちに合っていたのである。
「教科書」を上手に使うことが,向山型算数の絶対条件だが,他にも必需品がある。
「あかねこ計算スキル」と「TOSSノート」である。この2つの教材・教具は,「向山型算数」のために,向山が創り出したものである。
「あってもなくてもいい」のではなく,絶対の必需品である。
学校によっては,「使えない」ところもあろうが,「自分のクラスは使わせてほしい」という根性も必要だ。
ヨーロッパでは,クラス毎に教科書が違うところは,いくらでもある。
日本では,教科書は同じものを使うよう法律で定められているが,「ノート」「教材」は,担任に任されている。子どもにとって,もっともよい教材・教具を,担任が選べばいいのである。
(2)
必需品ではないが,あった方がいい教材・教具がある。
「百玉そろばん」と「スマートボード」と「S社市販ワークテスト」である。
これらは,「向山型算数」のさらなる進化のために,向山が復活させたり,選択したり,創り出したものである。
この効果は,やった人ならお分かりだろう。
最近,各地で「スマートボードの研修」をTOSS教師が依頼されている。
参加した教師は,初めて見る「スマートボード」の授業に,ビックリして目が点になるという。
「スマートボード型」の電子黒板はいくつかあるが,英国教育省が定めた「教具としての条件」をクリアしているのは,世界中でスマートボード1社である。
これは,カナダで発明された。日本では,TOSS,内田洋行,など3社(団体)が総代理店である。
ちなみに,イギリスで学校への普及は3万5千台。日本は4千台である。
スマートボードを使って,TOSSランドを活用しての授業が,これからの最先端の授業になっていくだろう。
(3)
「あかねこ計算スキル」が使えずに,他のドリルで工夫した先生の報告がある。
先生は,がんばったのだが,しょせん「思想」「組み立て」「配慮」「工夫」が違う教材では,代用にならないのである。
○スキルのようには使えない
鹿児島 内永加奈子
教材選定の時に「あかねこ計算スキルがいい」と主張した。「先生ってスキルが好きなんだね」で片付けられてしまった。
「問題と答えが対応しているし,低位の子どもでもやり方が書いているから分かりやすいんですよ」と反論した。しかし,返ってきた答えは「高学年なんだから,対応していなくても大丈夫だよ。子ども達の適応能力でカバーできるから」であった。
更に「授業で使うなら,教材研究で何とかできるよ。先生,若いんだし」と言われてしまった。
私以外の先生が「宿題に使いたいから繰り返し使えるものがいいな」の一言で計算ドリルを採用することとなった。採用できなかった後は,ものすごく悔しかった。
いくら悔しがってもいても,計算スキルを今からとれるわけではない。しかも,算数の授業は毎日のようにやってくる。
そこで,計算ドリルをスキルのように使うことにした。
「計算を速く解きたいっていう人は,ステップ2のところまで。ゆっくりじっくり解きたい人はステップ1まで。どちらも同じ100点です」
ドリルがステップ1,2と分けられていた。そこで,2問コース,5問コースのように分けてみた。挙手でコースの確認をした後,解かせていった。
答えを読み上げるのも後ろのほうから読んでいった。
子ども達は,100点を取れたからか楽しそうにドリルに取り組んでいた。
しかし,次第に変化が表れてきた。
「ドリルをします」と言うと「えー!」の声があがるのだ。
スキルを使っていた学年では,「スキルをします」というと「やったあ」の声だったのに。
なぜ,子ども達のやる気がなくなっていったのか考えてみた。
原因1 問題の文字が小さい
小さなスペースに20問も詰め込んであるのだから仕方がない。一挙に20問解かせることはなかったが,視覚的に圧迫感があり,やる気をそいでいるようだった。
原因2 空白の時間が生まれてしまう
ドリルは,全体的に見て5問ごとに区切ってある。速く計算できる子どもは,10問なんてあっという間に解いていく。しかし,計算が苦手な子が5問解くというのは,時間がかかる。ヒントもないのだから,余計に時間がかかるのだ。
スキルのように2分ぐらいの短い時間で区切ってしまうと,低位の子ども達は,絶対に5問解き終わることはない。
これでは,算数の時間の度に「お前はできない」と言われているのと同じである。少し長めの5分くらいの時間をとると,途端に騒がしくなってしまった。
子ども達が「えー」の声をあげる。私も,だんだんドリルをすることが億劫になってしまった。私が億劫になってしまった原因が他にもある。ドリルの解答は細かく,どこを見ているか分からない
ドリルの答えは,ただの数の羅列である。
問題を読み,答えのページをめくる。すると,ドリルの何番をやっていたのかわからなくなってしまった。
テンポよく答えが出せないと,途端にだらけたムードになった。
また,大人の私でも,どこを見ているか分からなくなるのだから,低位の子ども達はなおさらわからないはずだ。毎時間使えない
スキルのように基本型と対応しているわけではない。まとめて問題が書いてある。そうなると,毎時間ドリルというわけにもいかなくなってしまう。ドリルをやる日とやらない日が出てくるわけだ。
「スキル」には,「できない子どももできるようになる」「達成感を味わわせる」様々な手立てが具体化されている。しかし,ドリルにはない。ドリルをスキルのようには使えないのだ。
〈向山〉これが,内永先生の実感である。ドリルをスキルのように使うのは無理なのである。
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