向山型算数教え方教室 2004年11月号
「文章題」よく分かる指導はここが違う

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向山型算数教え方教室 2004年11月号「文章題」よく分かる指導はここが違う

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ジャンル:
算数・数学
刊行:
2004年10月7日
対象:
小学校
仕様:
B5判 92頁
状態:
絶版
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目次

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特集 「文章題」よく分かる指導はここが違う
線分図を使えば、第3のキーワード「タスキガケ」で文章題が解ける
赤石 賢司
分割・細分化・線分図・急所・詰めで指導する
馬場 慶典
「先生は次に何を聞くと思いますか」
根本 直樹
スッキリ分かる「読ませ方」のポイント
河原木 孝浩
子どもも支持する昔の教科書から、宝をどっさりいただく
正木 恵子
1年生1学期の指導
小松 裕明
「あれども見えず」を浮き彫りにする
八巻 修
ミニ特集 教材研究力がUPするITの戦略的活用術
論文審査MLで、授業の腕を磨く
本間 尚子
サイト作成で教材の組み立て方を学ぶ
渡辺 佳起
ML研究で情報(悩み)を発信せよ
大関 貴之
深い教材研究のきっかけをつかむIT活用
豊田 亮平
フラッシュを使ったサイトをオフラインで見る裏技
大堀 真
ML研究は、参加してこそ意義がある!
朝長 唯
グラビア
教師は自分の言った言葉に責任をもつ
村田 斎
若葉印教師のための向山型算数基礎基本イラスト事典
百マス計算の悲劇
小倉 郁美
向山型算数キーワード
誤答の論理
木村 重夫
巻頭論文 算数授業へのこだわり
すぐれた教材を貫く思想だからできない子ができるようになる
向山 洋一
学年別11月教材こう授業する
1年
ひきざん(2)
宇野 友美
たしざん(2)
赤木 雅美
2年
かけざん(2)
斉藤 維人
かけ算(1)
菅 咲子
3年
かけ算のひっ算(1)
佐埜 健
かけ算の筆算(1)
桑原 泰樹
4年
わり算の筆算(1)
望月 健
前田 あかね
5年
平行四辺形と三角形の面積
佐藤 志保
図形の面積
堀場 弘喜
6年
比の利用
篠崎 弘敬
変わり方を調べよう
菊地 亨
向山型算数に挑戦/論文審査 (第60回)
まず体積の定義を!次に教え方を!
向山 洋一
向山型算数実力急増講座 (第62回)
挿絵や写真はサラリと工夫して扱う
木村 重夫
向山型算数の原理原則と応用 (第62回)
「繰り返しの原則」で授業中に習熟を図る
中井 良徳
向山型算数と出会ってTT授業・少人数授業が変わる (第31回)
「言葉を削る」ことから始まった私の教師修業
飯田 尚子
向山型算数WEBサロン (第56回)
向山氏の論文審査に触発されて、「倍の計算」の系統を、教材研究する
赤石 賢司
中学校からの発信!「向山型数学」実践講座 (第56回)
困ったときには『向山型中学数学教え方事典』がある
井上 好文
「親と子の証言!」向山型算数は公文を超える! (第20回)
やんちゃ君たちが口ずさむ楽しい算数
松崎 力
〈教室の障害児と向山型算数〉特に気になる『あの子』への向山型アプローチ
忘れてもいいのだよ。ノートを見て思い出せば!!
松田 修一
中学校美術でも役立つ「向山型算数の原理・原則」
石川 清子
もう一つの向山型算数 難問良問1問選択システム (第62回)
低学年
田辺 浩司
中学年
前島 哲治
高学年
福澤 真太郎
ライブ体験で味わう“実力づくりへの道”向山弟子の介入を受けて
「向山型算数」の授業は楽しい!
横崎 邦子
自分の「超我流さ」に気づく
春山 和順
向山型算数セミナー
指導の難しい教材でも向山型算数でこう料理できるセミナー
板倉 弘幸
腹の底からの実感!向山型算数を知る前と後
教師の最高の喜び
川口 智子
「分かった」A君がつぶやいた
早川 広幸
あかねこ計算スキルでなくちゃ
田中 芳明
子どもも私も楽しくなければ授業じゃない!
武田 朋子
子どもも変わる。親も変わる
梅沢 貴史
神様からのプレゼント
今井 美与子
子どもと保護者の声が正しさの証明
中村 智治
論文ランキング
8月号
木村 重夫
実物ノートと指導のポイント
1年生のノート指導 お手本を示してていねいさを身につけさせる
佐藤 郁子
読者のページ
パワーアップして夢に一歩前進
編集後記
木村 重夫赤石 賢司
TOSS最新情報
赤石 賢司
向山型算数に挑戦/指定教材 (第62回)

巻頭論文

算数授業へのこだわり

すぐれた教材を貫く思想だからできない子ができるようになる

向山洋一


 鹿児島の西田先生が「かけ算」の間違いの指導について,報告を書いている。

 あかねこ計算スキルの指導法の思想は,ずっと昔から向山実践の中にあったということである。

計算スキルの底に流れる思想を初めて知った西田裕之(熊本県出水市立米ノ津小学校)

◆『「向山型算数」以前の向山の算数』(明治図書)を読んで,はっとした。左のような間違いを取り上げた時の文章である。左の間違いは,8+6=14のくり上がりを1カ所間違えただけで,×をつけられてしまった例である。ここで向山氏は言っている。

 問題なのは,解答欄だ。答の欄に小さい字で答えが並び,答(3648)と書いてある。

 つまりこれだと,大体の教師は○か×をつけるしかないのだ。

〈向山〉

 あかねこ計算スキルが小学校学校教材になるまで,「ドリル」類の教材の解答欄には,「答のみ」が書いてあった。

 「答のみ」で○×をつけるのである。

 勉強ができる子,中位の子は,「間違えた所」をやり直せるであろう。

 しかし,「勉強のできない子」は,×をつけて終わりである。

 ×の下に「正答」のみを記入する。

 これでは,「どこがどのように間違えたのか」「どのようにすればいいのか」が分からない。

 つまり,勉強ができない子には,直しようがないのである。

 私は「あかねこ計算スキル」には,「途中の計算も入れる」ことを主張した。

 すると「答のページ」が多くなり,コストもかかることになる。出版社は難色を示したが,「10円,20円高くても,心ある教師は必ず理解してくれる」と主張し,受け入れられた。

 西田先生のレポートは続く。

◆向山氏は続けてこう述べている。

 こういう間違いは実に多い。この子は,「かけ算ができない」のではなく「たし算を間違えた」のだ。

 でも,答案に×をつけられたら,この子は「かけ算ができなかった」と思うだろう。こういう間違いが続けば「かけ算が苦手だ」ということになろう。

 「筆算をしても,足し算を間違えてしまうんですよ」「商を立てても,かけ算やひき算で間違えてしまうんですよ」このような声を聞いたことはないだろうか。私は何度もある。子どもの間違いを取り上げた教員同士の話題

だが,多くの教師はここで止まってしまう。あるいは,放課後などの個別指導である。

 向山氏のすごいところは,こういう子どもの事実を,具体的に授業時間での指導に持っていくところだ。しかも,できる子どももできない子どもも一生懸命取り組む形で。

 私は,大切な場面では,間違えた子の一つ一つの数字に○をつける。

 この一文を読んで,あっと思った。さらに次の文。

 計算全部を示したプリントを配ることもある。子どもに一つ一つ○をつけさせるためだ。

  48 正解    48 答案

 ×76       ×76 

 288       AGG

336       BBE  

3648      B5CG

           ×

 ここまで来て,いろいろなことがリンクして頭に浮かんだ。特に,

 向山氏は「限定」して教えるということである。「計算の間違っている部分を探す」ということに限定して授業を組み立てるのである。私は,まだまだ思いつき程度であるが,向山氏が次のような授業をしたと予想した。

 この計算はね,ほとんどあっているんだけど,一カ所だけ間違えているところがある。一つ一つ○をつけていって,確かめてご覧なさい。

 もう一つ,向山型算数では「答が分かると安心して子どもが考えられる」という考え方がある。「計算全部を示したプリントを配る」ということは,つまり答えが全部書いてあるということだ。これだったら,計算が苦手な子どもでも一生懸命考えるだろう。答えが書いてあるから安心してできるのだ。向山型算数のエキスは,このようなところからも抽出できる。

 さて,次の文章である。

 しかし,残念ながら,これまでの計算ドリルなどにこのようなものはない。新しく作るほかはない。

 衝撃だった。こうやって向山氏は本当に作ってしまったのである。

〈向山〉

 私は旧来の「ドリル」では,「勉強ができない子」にはまったくダメだと思い,計算スキルを作り上げた。

 西田先生は続ける。

◆あかねこ計算スキルに向山氏の思想を感じる。数字を書く場所が一つ一つ区切られていることは,大変優れたシステムである。

 「商を立てるところがわからなかったのか」

 「商は立てられたが,その後のかけ算を間違えたのか」

 「かけ算はできたのだが,その後の写す作業でミスをしたのか」

 「写すところまではできたが,その後の引き算で間違えたのか」

 このように,わり算ができないという一つの事実をとっても,それは細かな要素に分けられるのである。それを自分で発見できるようにしたのが「計算スキル」なのだ。

 私はこれまでどのような指導をしてきただろう。「□一つ一つに丸をつけていくのですよ。」と口先だけで言ってこなかっただろうか。これでは技術の空回りである。

 自分の悪い癖で,「趣意説明を忘れ,指示だけを出してしまう」ことがある。これを繰り返していくと,子どもの動きが鈍くなってくる。心から納得しないまま,指示だけ出されたら,どんな人間でもいやな気持ちになるであろう。やはり,趣意説明は大事である。

 私は,

 計算スキルの丸つけの趣意説明を必ずやろうと心に誓った。それ以上に,「出す指示全てに趣意説明を入れよう」とも思った。

 TOSSで学んだ明確な指示の出し方は,趣意説明をすることで初めて生きてくるのだと思った。計算スキルの底に流れる思想を学ぶことで,このようなことに気付くことができた。

〈向山〉

 すぐれた教材は,すぐれた思想に支えられている。

 「できない子をできるようにさせよう」「子どもの事実を大切にしよう」という思想である。

 そして,「すぐれた技術・方法がシステム化されている」のだ。

 それが,ユースウェアである。

 すぐれた教材を正しく使ってこそ,効果は絶大となる。

 さて,9月下旬,「向山洋一全集第5期」が発刊された。

 『学力向上のTOSS算数ワーク』全13冊である。小学校1〜6年までだ。

 セシール通信教育用教材として,向山が検討し,TOSS教師の総力で作ったものだ。

 向山は,かつて自分が責任者として作った「進研ゼミ小学校講座」の教材を抜くことを目標とした。当然,日本一の教材だ。

 セシールが通信教育から撤退したため,版権がTOSS中央事務局に移ったのである。

 かつて実践した教科書対応教材を,ほぼ3分の1に圧縮整理したのが,今回の全集である。

 江部編集長,樋口編集長をはじめ担当の編集者が「これはすごい」と激賞した教材である。すぐれたレベルの教材である。

 ぜひ,東京教育技術研究所に注文していただきたい。収益は,TOSSランド,五色百人一首大会の資金として使われる。

 TOSSランドを無料で公開するための莫大な費用は,こうして作られているのである。

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