- 特集 “学力テスト”にも対応!教科書まとめ問題で学力保障
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- できない子に個別指導を行う時間を確保する学習システム
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- 「全員自力で」できるようになる原則7
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- 6年生のだからこそ「算数学習作文」
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- どの子もできる問題から解き進める
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- ミニ特集 教材選定をリードする“授業観の主張”
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巻頭論文
算数授業へのこだわり
指導方法にこだわりをもって
向山洋一
向山型算数の指導法の基本は,「教科書をリズムよくテンポよく教えること」である。
これを読むだけで,教師は「自分もできそう」と思う。私の次の文を軽く考えるのだ。
「ただし,教科書をきちんと教えられる教師は1000人に1人もいない。本音で言うと1万人に1人もいないと思っている。なぜなら,
教師は,教科書を使ってきちんと授業することを大学のときにも,教師になってからも学んでこなかった」からだ。
だから,「向山洋一教え方教室」などへ,10回ぐらいは出たことがない人は,かなりの我流なのである。自分が我流であることに早く気がついた人が,本当の向山型へ向かうのである。
向山型算数初心者講座のアンケートに,横浜の先生が次のように書いていた。
■常に教室で向山型算数をやっていると思っている自分!!
しかし,リズムとテンポの理解をまちがえてただ早口だったり,逆にもったりとした授業になっています。
本を読めば…と思っていましたが,ライブとまったくちがうと思いました。
特に,板倉先生,木村先生,赤石先生の分析の深さにうなり,メモを取る手が動きっぱなしでした。
作業指示→確認→称賛
2つができていないと思いました。
熱心に「向山型」の本を読んだのだと思う。
「リズムとテンポよく」も,気をつけていたのだと思う。しかし,「ライブ」を1回体験しただけで,間違いと気づく。「リズムよくテンポよく」を間違えて「ただ早口」にすぎなかったと分かるのである。ときに,リズムのない「もったり」とした授業になってしまったのである。
ライブで,分かったのだ。
「分かった」のと,「できる」のは違う。例えば,プロ野球の選手の捕球を見て「自分とは違う」と分かったとしても,それができるようになるには,「真剣で,まじめで,時間のかかる努力」が必要なのである。盲腸の手術を2,3回見て,「分かった。自分でもできる」という人は,いないだろう。
「リズムよくテンポよく授業する」ための入門は,「言葉を削る」ということだ。10分の1に削るのである。つまり,10分の9を捨てるのである。もちろん,「アー」とか「ウー」とか言ってはならない。1時間の授業で,そのような言葉が「1つも出ない」ようになって,やっと「リズム,テンポの初心者合格」なのである。
この先生は,もう1つよいことに気がつく。「作業指示」だけでは,いけないということだ。
「作業指示」によって「学習」をさせるのだから,「その作業」を確認することが大切だ。
もちろん,クラス1人残らずである。
そのための1つの方法として,「ノートの丸つけ」がある。「確認」して,「ほめ」なければならない。とりわけ「できない」子が「できる」ようになったとき,ほめなければならない。
だから,1人1人の学習状況が,頭に入っていなければならない。「できない」子が,「できる」ようになったときこそ,その子の成長のチャンスだ。それを見逃すなど,犯罪的とも言っていいほどのことだ。まして,そのような意識のない教師は,最低レベルの力量なのである。
「作業指示」は「発問」とセットである。
子どもに「発問」をするのだ。
しかし,「発問」だけではいけない。必ず「作業指示」が加わるのである。「作業指示がない」「作業指示が不明瞭」な授業があまりに多い。
そのようなとき,教室は乱れ,荒れるのである。子どもは,何をしていいか分からないからだ。頭の中で考えるのか,ノートに書くのか,教科書に書き込むのか,隣の人と相談するのか,できたら手を挙げるのか,まるで分からないから,ざわつくのである。
小林能和先生は次のように言う。
■ほんの小さな差が大差
『向山型算数教え方教室』の向山先生の論文だけ再読している。
今日読んだのは,No.76 2005年10月号
巻頭論文,論文審査ともに「2けたの数でわる筆算(1)」が取り上げられている。
巻頭論文のタイトルは,『向山型算数の実力は「ほんの小さなこと」と思える部分に現れる』
87÷21の筆算。
割り算の答え,商はどちらに立つか聞く場面。
あまりにも有名なこの場面。どう聞くか?
論文審査に応募された方の答えはさまざまだった。例えば,次のように。
P.6
(ア)答え「商」は,Aに立ちますか,Bに立ちますか,Aだと思う人?Bだと思う人?
(イ)答え,商は,Aに立ちますか。Bに立ちますか。Aだと思う人?Bだと思う人?
1 正しいのは(ア)か?(イ)か?それとも別の言い方か?
2 いくつが立つか考える場面。87の「7」と21の「1」を指で隠す。どのように隠すか?
3 教科書に示されているアルゴリズムは,通常「たてる」「かける」「ひく」である。向山型算数ではこれにもう1つ付け加わる。それは何か。
4 「次に何をしますか」。
「87から84を引きます」。
このように答えさせてはいけない。
どう答えさせるか。それはなぜか。
(ア)と(イ)の違いが分かるだろうか。
「Aに立ちますか」の後に,点が入るか丸が入るかの違いなのだ。
この違いを,実感をもって分かる人が,「向山型算数」について分かった人なのである。
「2」「3」「4」も,それぞれに大切なのだ。
「どれが正しいのか」「なぜなのか」が,分からなければ,向山型ではないのである。
さらに,小林先生は書いている。
■向山先生は,次のように言う。
P.57
・「大体同じ」というのは,「分かっていない」ことなのである。「正確」と「大体同じ」には,天地の差がある。
では,その差はどのくらいか?
・「正確」は「18点」(小林注20点満点中)であり,「大体同じ」は「分かっていない」のである。
かつて,法則化の追試をし始めたころ,「ここはもっとこうした方がいいと思い,原実践通りしなかったことがしばしばあった。
今,思えば,我流もいいところなのだが,当時はそれでいいと思って「俺ならもっといい実践ができる」と思い上がっていた。
当然,うまくいかない。
「俺がこれだけやっているのに何でできないんだ」と子どもを責めた。
今,思うと冷や汗が出る。
向山型を忠実に実践する。細部にこだわる。なぜそうするか考える。
ほんの小さな差が,実は大差なのだ。
「ほんの小さな差が,実は大差なのだ」と本当に分かるまでに,十数年が必要だったのである。
「自分の工夫」なぞ,腕が低いときには,何もならないことに気がつくのに,数年はかかったのである。もとより,「工夫する」ことは大切だ。しかし,「よいお手本」なら,「守,破,離」の原則の通り,「素直」にやってみることが大切なのである。
剣道,空手,書道,将棋などで言えば,「工夫する」のは,初段の腕になってからだ。TOSS授業検定で言えば,せめて「シングル」の級になってからのことである。有段者に必要なのは,「離」である。お手本を離れ,自分の世界,自分の工夫を創り上げていくことである。と言っても,それは先人の仕事の上に成り立つのだ。
ノーベル賞受賞者が,「自分は何も新しいことをしていない。すべて先人の仕事から学び,組み立てをかえただけだ」と言っているようにである。
正木先生が大切なことを書いている。
■今年2月に福島に来市された,山際先生が仰った。
算数で教科書をしまって,黒板に問題書いて,さあ解きなさいなんて…
こんな指導では駄目だ!!
できない子は,下向いて遊んでいる。
教科書を使って指導すること。
問題解決学習をして,教科書は使わないなんて…吃驚だ。
流行に飛びつかれているんだ!
こんな指導がまかり通っていて,ほんと吃驚した。まやかしに,早く目覚めること!!!
この言葉を本日の研修会で,勤務校の先生に伝えよう。
勤務校に赴任した昨年,問題解決学習一色で「めあてやまとめを何色で囲みますか」…なんて低次元の話し合いをしていた。
全国教育長会議を指導していた山際先生である。100人もいる文部省の教科調査官の統括をされていた方であり,今も中教審などの仕事をされている先生だ。「問題解決学習」は「教師の手抜き指導のようだ」という意味の感想も言われていた。
これを聞いた,指導主事先生は,びっくりされただろう。「算数の問題解決学習」は,一部の教師が,やっている,ひどい方法にすぎないのである。
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- 明治図書