- 特集 親の上手な子育て・駄目な子育て
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親の上手な子育て・駄目な子育て
無償の愛をそそぎ、「ひとに迷惑をかけないこと、がまんして努力すること」を育てることが、上手な親の子育てです
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
1 子育て上手な親がいる
学校で、たくさんの子どもを担任してきました。
同じように見える子なのに、小学校一年生で、すでに大きく違っているのです。
常にすわっていられない子がいます。
順番が守れない子がいます。
すぐに大声を出す子もいます。
ほとんどの場合は、親の子育ての結果なのです。
もう三十年近くも昔ですが、東京都の教育研究所が、中学生相手に調査をしました。
知能指数が同じなのに、成績がオール5の子とオール1に近い子を調べたのです。
東京中の中学生を調べました。
知能指数が同じですから、能力は同じと考えられます。
しかし「オール5」で、学年トップクラスの子もいれば、「オール1」で学年最下位クラスの子もいるのです。
理由はいろいろありました。その中で、二つだけ共通することがありました。
「オール5」の子は、テレビ、ゲームを見る時間が少ない。一日平均一時間以下だということです。
「オール1」の子は、一日に三時間以上、中には五時間、六時間の子もいました。
「オール5」の子の家では、小さい時から「テレビを見る時間のルール」があり、親が、それを守らせていたのです。
もう一つは「お手伝い」です。
「オール5」の子は、家の中で、家族の一員として仕事がありました。
「オール1」の子は、家のことを何もしていません。
自分の子は「テレビ、ゲームの時間はどうなっているか」「ルールが決められているか」「ルールを守らせる努力をしているか」ということで、上手な子育て・駄目な子育てが分かります。
「家の手伝い」をさせているということも同じです。
これが、東京都の教育研究所が大々的に調査した結果、分かったことなのです。
親の努力は子どもに帰っていくわけです。
2 菊を作るように
子どもを教育してはならない
今から三〇〇年も昔、細井平州という学者は、教育について次のように言いました。
教育とは、菊好きな人間が菊を作るようにしてはならない。
百姓が野菜や大根を作るようにすべきなのだ。
なぜ、菊を作るようにしてはいけないのでしょう。それは、菊を育てる人というのは、自分の理想の形があって、それに合わないもの、欠点の目につくものを摘んでいってしまいます。
そして最後に二つか三つのつぼみを残し、そのうちの一つで大輪の菊を咲かせるのです。
菊作りにはすばらしい方法でしょう。でも、これを、子育てにやると、「大きなマイナス」になると、さとしているのです。
一方、農民が野菜を作るとき、欠点のあるものを捨てるなどということはありません。日陰に咲いたものも、うねで実をつけているものも、それぞれに(つまりそれぞれの条件ごとに)精いっぱい育ってほしいと、手をさしのべるわけです。
教育とは、このように一人一人の条件が違っても、(相手に合った方法で)手をさしのべることがたいせつなわけです。
親の都合で叱ってばかりいても、決して効果は上がらないものです。
不得意科目を伸ばしたいとき、子どもの力を伸ばしたいとき、どこに目をつけたらいいのか、五つのポイントを示してみます。
3 伸びていく子どもの三つの特徴
第一に、子どもに不得意科目を克服させるには、やる気をおこさせることです。
そのためには、じょうずに励ますことがいちばんたいせつです。
「ダメじゃないの、こんなことでは」
と言われれば、大人でも意気消沈してしまいます。子どもなら、なおさらです。
「ダメだ」「ダメだ」と言わずに、「こうすればだいじょうぶ」「前よりずいぶんよくなった」と励ましつづけてください。
そうすれば、子どものやる気も芽生えてくるはずです。
つまり、どこで子どもがつまずいているのかを見つけることが大事なのです。その教科がなぜ不得意なのか、原因をいっしょにさがして、そこから子どもを見てやることです。
第二にたいせつなのは、子どもをほめてやることです。
いいところを一つでも見つけて、「ここはいい」「ここがよくなった」と評価してやれば、それが子どもに自信を与え、苦手な科目を克服することにつながってくるのです。
子どもにくどくど言っても、百害あって一利なしです。逆効果にしかならないことなのです。また、注意を与える場合は、簡潔にすますことがたいせつで、かつ、効果的でもあります。
第三に、家庭での学習時間は、《学年×一〇分》が目安になります。小学三年生なら、三〇分です。
これは、宿題をする時間も含めてです。ともかく、この時間内は、たとえ机の前で多少、手遊びしていても、すわっていられるような習慣づけをすること。勉強する構えができていますから、徐々に子どもは伸びてきます。ただし、中学を受験させる場合なら、《学年×二〇分》を目安においてください。
第四に、テレビを見る時間についてですが、家庭でルールがつくられている子と、つくられていない子を調べてみますと、つくられていない子には、忘れ物が多いという傾向も認められます。
テレビを見る時間と、子どもの知的好奇心、学習態度とは関係があると思えます。テレビを見る時間をコントロールすることも考えられるとよいでしょう。
ちなみに、東京の田園調布地区での平均テレビゲーム時間は、一日に一時間半です。
第五に、伸びていく子の特徴をあげてみますと、
@なんにでも挑戦する
Aやり始めたことは、途中で投げ出さない
B最後まで、ていねいにやる
です。
この三つの特徴を持っていれば、申しぶんありませんが、どれか一つでも持っていれば、それだけで伸びていく可能性が大きいのです。子どもを励ましてやってください。
また、「うちの子は一つも持っていない」というかたは、子どもに少しずつ決断力を持たせるようになさることです。
自分で決断することができるようになれば、先にあげた特徴も徐々に身についてくると思います。
4 教育は、その時にしか
できないことがある
親子のつながり、愛情、これが最もたいせつな出発点であることは当然です。
愛情は、形で示してやることです。
一日に一回は、ぎゅと抱きしめてやることです。
「お母さん、貴方のこと大好きだよ」と言ってやります。
身体をさすってやることも大切です。
夜、寝るときに本を読んでやることも、とっても大切です。
私は、千葉大学で教えるとき「寝るとき本を読んでくれた親は、それだけで三千万円の財産をくれたのと同じだ」と話します。大学生はびっくりします。
千葉大に入学した学生の多くは、小さいとき、親から本を読んでもらっていました。
親子の信頼の上に、「やっていけないこと」を教えます。
電車にのって、靴をはいたまま窓の外を見てはいけないことなども教えます。
「あのおじちゃんが、にらんでるからね」などと、他人をダシに使ってはいけません。
小さな子には、何回も何回も、くり返し教えてやるのです。
暴力を使うなど、とんでもない子です。
小さいとき、なぐられて育った子は、学校に入ると他の子をなぐるようになります。
「がまんして努力すること」を、その次に教えるのです。「がまんする」こと、耐える力を育てるのは、親の大切な仕事です。
時間がかかります。
すぐには、できません。
しかし、時間をかけただけのことは必ずあります。
たいせつに育てられた子は、やがて自分の親や他人をたいせつにするようになるのです。子どもをなぐって育てると、いつの日か子どもに見捨てられます。
愛情をそそぐこと
人に迷惑をかけないこと
がまんしてがんばること
これは、昔から、かしこい親が実行し教えていたことなのです。
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- 明治図書