- 特集 子どもの夢―なりたいものへの実現戦略
- 「自分でもやればできる」自信をつける
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- 子どもの頃の夢を実現していくために大切なこと
- 夢は持ち続けること
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- かっこいい大人を目指して夢を語ろう
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- 「最初の夢」を大切に
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- まずは「健康」と「想像力」から
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- 実現戦略1 夢・希望を掲げる
- ワクワクする夢を脳に刻み込もう!
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- ボランティアの体験が夢につながる
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- 実現戦略2 小さなステップをのりこえていく
- 成功する人はあいさつ・返事ができる。少しだけ声が大きい。
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- ステップは親も一緒にやってあげることでのりこえさせる
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- 実現戦略3 たくさんの小さな成功を経験する
- 「俺できないからやらない」からの出発。向山型算数でY君は変わった。
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- 鶏口となるも、牛後となるなかれ
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- スポーツ指導・スポーツ体験―教師が辿った道
- その夢は、目標か目的か?
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- 夢は、実現する
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- コーチの方が何十倍も面白い
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- 自分の願いを実現していった教え子
- そして、事件は起こった
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- 病気を克服した時、役に立つ人になりたいと決意
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- どうぞ、ありがとう
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- 子どもの願いの裏に、親の応援がある
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- 好きな教科を思いっきり勉強すること
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- 夢実現途中「熱く生きる」
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- 夢をかなえたピグマリオン効果・夢をつぶす否定の言葉
- ピグマリオン効果を生む具体的な言葉を使おう
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- 叱る、怒る、怒鳴るよりも、ほめて伸ばす技術!
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- しあわせのコツ
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- ミニ特集 あの子が満点をとれた漢字指導
- 「正しい教え方」なら、ほとんどの子は、99%の子は、漢字テストで満点をとれるようになります
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- 「宿題」で力がつくならば教師は不要です
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- 保護者とも協力してなしとげた満点
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- まちがえた漢字だけ再テストするシステム
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- 「ゆび書き」や「空書き」などの練習方法は、効果抜群
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- 百点を取ることが当たり前になってしまったAさん
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- 指書きの徹底と夕飯前の空書き二つ
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- イラストで見る家庭教育のポイント
- 人とくらべるのはよそう
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- 家庭教育のポイント
- 「昨日の自分」と「今日の自分」を比べてやり、よくなったことをほめよう
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- 編集前記
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- つぶやきに見る子どもの成長
- 母親離れ
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- PTA会長奮戦記
- 全員参加のPTA組織を目指して
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- 園長が語る子育ての極意
- 母親の生き方(子育て)に学ぶ
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- 校長が語る子育ての極意
- あいさつは心のとびら 自分から元気よく
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- 医師 私の子育て日記
- 子育ては手間暇かかる熟成醸造
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- 医師 普通の家庭教育の大切さ
- 伸ばすべき能力
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- ボランティアの心を育てる
- 自分から進んでお手伝いをする子を育てる
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- 年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
- 年少/毎日頑張っています!
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- 年中/友だちの力
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- 年長/酒井式描画法と子どもたち
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- 子どもがピンチの時のとっておきの親の話
- だれにでも活躍のチャンスはある!
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- 衝撃のドラマ 算数が大の苦手の子が満点をとった
- 指導を変えれば、できるようになる!
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- 本筋の心の教育
- とっておきの「ありがとう」
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- 小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
- 小1/一年生から身につけさせたい一生の宝物
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- 小2/誕生会を開いてあげる
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- 小3/筋金入りの片付けが遅い子どもが激変する教師の対応
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- 佐藤昌彦の紙工作教室
- かみなりくんとへびくん
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- 子ども調査が示す家庭教育のポイント
- 子どもの「なぜ」にこたえよう
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- SOS 子ども・親が電話相談をする時
- 勉強しなくて困っている
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- 親子で覚える名文・詩文
- ねんねんころりよおころりよ
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- 親子で挑戦ペーパーチャレラン
- しりとりチャレラン
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- インターネット・TOSSランドの活用
- 春休みはこれでバッチリ!「かぞえるんぞう」&たくさんの学習ゲームで
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- 習い始めの漢字・輪郭漢字
- 漢字を習う最適時期は、三、四歳である
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- 1年担任の証言・幼児期に何を教えることが大切か
- 我慢することを教える
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- ありがとうが言える子に
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- 父母の教え、子の人生のモデルとなる
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- コンクール入賞続出の酒井式描画法 (第12回)
- 親と子で造るたのしい絵本
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- お稽古、習わせる時の心得
- お稽古を通して、子どもに何を育てたいか
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- すぐれた教材教具の選び方
- 『イラスト作文スキル』の効果とこれからの英会話教材
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- 家庭教育の基本
- 本の選び方
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- これからの小学校教育
- 総合的な学習を検証する
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子どもの夢―なりたいものへの 実現戦略
「自分でもやればできる」自信をつける
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
夢を持つことは、充実した人生をすごす上で、最も大切なことです。
アメリカは、ナポレオン・ヒル、マーフィーをはじめ、有名な「成功哲学」を持っていますが、どの「成功哲学」も、出発点は「夢を持つ」ということなのです。
もちろん、その夢が実現しないこともあります。
私は小さい時「弁護士」と「国鉄勤務」が夢でした。「弁護士は自由業だから日本中を旅行できる。国鉄勤務になっても、日本中を旅行できる」と思っていたのです。
この夢は実現しませんでしたが、教師となり、全国すべての都道府県を講演してまわることになりました。
形はかわりましたが、夢は実現しました。
私の弟は、小学校入学前、敷地に隣のもりちゃんとデパートを建てて、いろんなおもちゃを売るのが夢でした。仲よしの友だちと、楽しい仕事をしたかったのでしょう。
この夢も入学とともに消え、現在、日本で一番古い小学校の校長をしています。東京駅近く、日本橋にある阪本小学校です。
二人とも、子どもの時の夢はかないませんでしたが、「夢」は、生き方に「あこがれ」「豊かさ」を与えてくれました。
「志あれば、事を為す」ということは、東洋でも『漢書』の中にも書かれていることなのです。どのような夢でも、大切に大切にしてあげることが必要です。
夢の次は、実行力です。
子どもの中には、だんだんひっこみ思案になり、新しいことをやることを嫌うようになることがあります。
自信がないためです。
そんな時、親が「失敗したっていいんだよ」と、何度も言ってやれば、やるようになるものです。
失敗をいくつも、いくつも重ねて、心が強くなり、「やる気」が生まれてくるのです。
そばに「安心できる親がいる」からこそ、失敗することにも挑戦するわけです。
こうした強さを身につけてきた子が、実行力もあるのです。
もちろん「いつも失敗」ばかりしていては、自信をなくします。
学校に入ってきて、自信をなくす子は「大切なことができない」時です。
鉄棒ができない。なわとびができない。泳げない。――こうしたことが自信を失わせます。でも、ほとんどの場合、授業の中で身につけていきます。
ところが、授業の中でも身につけられない場合があります。
「漢字ができない」「計算ができない」
この二つの場合は、かなり心配です。
自分のすべてに対して、自信をなくしてしまうからです。何もかも、投げやりになってしまうのです。
「漢字と計算」は、教師が上手に教えればほとんどの子が満点近くとれるものです。
クラス平均九十点以上は、TOSSの教師では当たり前です。それは「プロの教え方」を身につけているからです。
「プロの教え方」を身につけるために、休日のたびに遠くのセミナーに出かけ、旅費、宿泊費で莫大なお金を使っているのです。もちろん、自分のお金です。
月に何回かは、同じ志の教師とサークルをやって「教え方」を研究しています。
「プロの教え方」は、本を読んでも身につきません。本代に五十万円使っても無理です。ライブで学び、サークルで研究する必要があるのです。今までに百万、二百万のお金を使って「教え方」を学んだ教師だけが「プロの教え方」を身につけていきます。
そういう教師なら「算数テストが五点、
十点だった子」を「学校の授業時間」だけで満点近くとらせることも可能です。
「五点、十点の子が満点をとる」という実践は、これまでの日本にありませんでした。本にもありません。研究会で報告もされていません。
それだけ困難なことでした。
「算数五点、十点の子に満点をとらせる」のは、奇跡だったのです。
これをTOSSの教師は、全国各地で、何十も何百も何千も作り出しました。
子どもの笑顔。母親からの涙の感謝を、いっぱいいただきました。
苦手な「漢字、計算」で満点をとると、その子は大きく変化します。
自信がみなぎってきます。
積極的になってきます。
その子一人が変わるだけではありません。クラスのみんなが影響をうけます。
「あの子ができるようになった。自分だってやればできる」と思うようになるのです。
自分だって、やればできる
この自信を持たせることこそ、「夢の実現」に、最も大切なことなのです。
TOSSの教師はまだまだ少ないのです。「漢字、計算が苦手」という子は、いっぱいいます。それが、小学校時代続き、中学校でうけとる教師もいます。
中学でできるようになるのは相当困難です。でも不可能ではありません。日本の南端の中学校、友美先生の実践です。
*
一 小学校担任からのひきつぎ
「国語がかなり苦手です。特に漢字は大嫌いと本人も言っておりまして、私も個別指導や漢字帳の課題を課してみるのですが、本人がまるでやる気がなく……」
昨年度三月末の、小学校との連絡会でT君のことを、担任の先生がこう言った。国語科の私としては、聞き捨てならないことだ。よく聞いていると、漢字の練習は授業中で毎時間扱っているわけではなく、家での宿題にすることが多いらしい。全く苦手な子どもが宿題で漢字練習をやれるわけがない。好きになれるわけがないのだ。
(向山)漢字を宿題にしているクラスは、学力が低い。授業でこそ、責任をもって、教えるべきなのだ。特に、勉強のできない子の害が大きい。
二 T君に『あかねこ漢字スキル』をやらせたい
少しでも、できた喜びを味わってほしい。
四月から、一年生を担任することになったときすぐに、気になっていたT君を見つけた。小柄で、なんともかわいらしいまだあどけない表情の生徒だった。
私の学年だけだが、今年度、私の学校では初めて副教材として『あかねこ漢字スキル』を取り入れることができた。
あらためてその素晴らしさに感激した。
本やセミナーで学んだように、指書き、なぞり書き、写し書きの順で練習させていく。一年生なので始めが肝心。この四月の指導が残り三年間を左右すると思うと最初から厳しく指導した。正しくできていない場合はやり直させる。
「一ミリもずれないように丁寧に書くのですよ」
という指示で、生徒たちにじっくり取り組ませることができた。もちろんT君も少し恥ずかしそうに声を出しながら指書きをし、丁寧になぞり書きをしていた。
(向山)T君は、はじめて「授業」の中で漢字の練習を始めた。はじめはスキルのうすい印刷をなぞることだった。
三 けなげなT君に応えたい
T君はしっかり練習し、間違い直しのテストを必ず受けにきた。
「合格。がんばったね。この調子だときっと力がついてくるよ」と励ますとはにかみながら笑って、頷いた。
しかし、一学期、私はT君に、漢字テスト平均35点という力しかつけることができなかった。しかし、こんな私の授業にもT君は次のように感想を寄せてくれた。
国語は、図書の時間があって楽しかった。漢字をもっとがんばらなくてはいけない。
(向山)一学期、T君はまじめに練習した。しかし、漢字テストは三十五点だった。少しだけ向上しただけだった。でも「国語は楽しい」「漢字をがんばる」というようになっていた。
中学校友美先生の一学期の成果だ。
四 そして、ついに……!
二学期は個人練習のとき、さりげなくT君の近くを机間巡視して、筆順を間違っているときや、なぞり書きがずれているところはやり直させた。とても丁寧に取り組んでいるときは、黙って赤鉛筆で花丸をした。そんなことを繰り返して、T君は少しずつ点数を伸ばし始めた。以下が彼の二学期の点数の変遷である。
1回目20点→2回目30点→3回目10点→4回目80点→5回目90点→6回目70点
そしてついに、7回目のテストでT君は100点をとったのだ。
初めて100点をとって、彼は誇らしげにその答案を前に持ってきた。
「T君、やったね! すごい!」とほめると彼は満足気に微笑んだ。
以下、7回目以降の彼のテストの変遷である。
7回目100点→8回目100点→9回目80点→10回目100点→11回目90点
彼の変化を見て私は、向山先生の成長曲線を思い出した。彼はあきらめないで、腐らないでよく頑張っていた。それが実を結んだのだ。
(向山)二学期。夏休みの空白があって、
二十点、三十点、十点と続いた。
しかし、その次に八十点と飛躍した。
高得点が続き、二学期の七回目、ついに百点をとったのだ。
小学校の担任から「筋金入りの国語嫌い」と言われた子を、中学校の教師は百点をとらせたのである。それも授業時間だけを使ってである。
こうした成功体験が「自信」をつけ、「やる気」をおこさせていくのである。
「育て方」「教え方」は、子どもの一生を左右するほど大切なことなのである。
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- 明治図書