- 特集 素敵な一年間を過ごすための親子の準備
- 努力は段階的に重ねなければならないが、成長は百の努力を積んだ時、加速的に訪れる
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- 一年間のめあてを紙に書き机の前に貼ろう
- 生活習慣のめあて
- 親子で一緒に生活のリズムを作ろう
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- 具体的なめあてを立て、定期的に見直しを
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- 学習習慣のめあて
- 3つの手だてで命を吹き込む
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- 家庭学習の時間帯・時間・内容を話し合って決めましょう
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- コミュニケーション習慣のめあて
- 挨拶と返事はコミュニケーションの基本
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- 「あいさつができる子」に我が子を変身させよう!
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- 学習用具の準備
- 筆箱とその中味
- 筆箱を見れば、勉強ができる子かどうかがわかる
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- 学習面と生活面の土台固め
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- 教室常備袋の中味
- 教室常備袋の中味は、いつも使うもの。時々は点検して不足を補充しよう
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- 新学期は子どもの気持ちに寄り添って
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- 上履き、体操着等
- 自立を促す方向での準備
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- デザインか機能か?
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- ノートの書き方を確かめる―成績がよくなるノートの書き方
- 算数
- 「ゆったり」&「日付」&「問題番号」
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- うっとりするようなノートで成績アップ
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- 国語
- 丁寧・箇条書きがある・大切な部分は枠囲み。
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- 「何がどんなふうに」書かれているのか
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- 社会
- 成績がよくなる社会科のノート「10のチェックポイント」
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- 丁寧に最後まで使い切ること、そして資料をきちんと貼り付けていることが大切です
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- 理科
- 定型的学習記録+自由な個性の発揮=成績向上
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- 観察や実験したことを「簡潔にまとめること」で力がつく
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- 教科書の目次を一緒に見てワクワクしよう
- ぴかぴかの新しい教科書にはやる気を詰める
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- ふだんのくらしを見つめ直すヒントが目次にありますよ!
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- あきらめないで努力する子を育てる話をしよう
- 私が話した成長曲線の話
- 「成長曲線」を使って「続けること」の大切さと確かさを繰り返し話す
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- 一〇〇回(日)続けることを求めて
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- 私が話した努力のつぼの話
- エピソードとして残った「努力のつぼ」のお話
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- 原田雅彦選手とA君の努力のつぼ
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- ミニ特集 とび箱が跳べたドラマ
- 成功率九十八パーセント・向山式とび箱指導法
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- とび箱NHK放映のドラマと反響
- 「先生、時間通りです!」の裏に最高の教育技術がある
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- 成功体験が子どもを変える
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- とび箱の跳ばせ方
- とび箱は10分で跳べるようになります!
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- 家庭でもすぐにできるとび箱指導
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- 今月の名言・格言・ことわざ (第1回)
- 塵も積もれば山となる
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- 向山編集長が語る「今月の名言・格言・ことわざ」 (第1回)
- 塵も積もれば山となる
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- 〜「学習とはくり返しくり返し練習する」ことです〜
- 編集前記
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- 子どもTOSSデーのドラマ
- 大阪/冬や春にも子どもTOSSデーはないのですか?
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- 岩手/わくわくドキドキ」親子で笑顔
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- 全国各地にTOSS式子ども地域教室を!
- 「TOSS式子ども地域教室」の先駆けとしての五色百人一首大会
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- 幼児のドラマ、小1のドラマ、小2のドラマ
- 幼児/これが息子の敏感期
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- 小1/子どもをのばすコツ〜まちがいや失敗を隠さない〜
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- 小2/出会いの日の約束
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- 小3のドラマ、小4のドラマ、小5のドラマ、小6のドラマ
- 小3/一言の挨拶
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- 小4/三十秒スピーチで褒めて伸ばす
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- 小5/励まし・褒め続け・自信をつけさせる
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- 小6/一つできると、どんどんできる!
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- 礼法専門家から見た子どもたちの立ち居振る舞い
- 和装は、子どもたちの姿勢をかえる
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- つぶやきに見る子どもの成長
- つぶやきに学ぶ
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- 〜負うた子に教えられる・@家事の重要性〜
- シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
- 嬉しい言葉・嫌な言葉―母親編
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- PTA会長奮戦記
- 孫の代まで感謝されるような取り組みを
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- SOS 子ども・親が電話相談をする時
- 誘拐が心配
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- 保健室から1ページ
- 賢い子育ては、たくましい子どもを育てる
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- こんなときどうする?平山先生!
- 乱暴な子どもへの接し方/身の周りの整理が苦手
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- 人間として大切な三つのことを繰り返し繰り返し教えていきましょう
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- 藍川メソッド・音楽教育“常識”の間違い
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- 教師・読者座談会 (第13回)
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素敵な一年間を過ごすための親子の準備
努力は段階的に重ねなければならないが、成長は百の努力を積んだ時、加速的に訪れる
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
(一)
新年度が始まるにあたって、多くの教室では「自分のめあて」を持たせます。
「自分の願い」「自分の努力の目標」などを決めさせるのです。
一年間にわたる努力の方向を、自分で決めさせ、それを達成するように教師は努力するのです。
「二十五メートル泳ぎたい」「算数で百点をとりたい」など、子どもの願いはさまざまです。
ご家庭でも、こうした目標を話しあうのも大切と思えます。
その際、ご家庭でできる目標、家庭だからこそできる目標がほしいものです。
例えば、三十年ほど昔、東京都立教育研究所が全都中学生を対象に研究調査をした結果は役立ちます。
知能指数が同じであるにもかかわらず、成績が違いすぎる子を調べたのです。
片方はオール五、片方はオール一に近い子。
知能指数が同じで、どうして結果が違ってしまったのでしょうか。
事情はいろいろあって、はっきりとは分かりませんでした。
しかし、明らかに違う一つのことがありました。
オール五の子は「テレビを見る時間が一時間ぐらい」「家の手伝いをする」であったのに対して、オール一の子は「テレビを見る時間は三時間以上」「家の手伝いをしない」ということだったのです。
これを参考にして、目標が作れます。
「テレビ・ゲーム」をする時間を決めるのもいいですし、「家の手伝いをする」のを決めるのもいいでしょう。
これは、家でしかできない、子育てです。
子どもと相談して、ルールを決めます。
決めたルールは、守らせます。
「ルールを守る」ことを教えるのは、教育にとっては極めて大切です。
野球でも、サッカーでも、百人一首でも、社長でも、すべて「ルール」があってこそ成り立ちます。
ホリエモンは「ルール違反」をしたために、すべてを失ってしまったのです。
ですから、家庭での「ルール」は、いろいろな配慮があっていいと思います。
「日曜日サッカーを見たい」「オリンピックを見たい」のであれば、他の日とふりかえてくれるようにするのです。
「特別な場合は、月に一回に決める」というようにするのです。
こうしたことも「大切なルール」なのです。
子どもと決めたルールでも守らせるのは大変です。
時には「テレビをすててしまう」ようなことさえあります。
私が勤めていた田園調布地区の小学校では、そういうご両親もいました。
この「大変さ」こそ、教育なのです。
「半年ごとにルールを見直す」ということを入れれば、やりやすくなります。
これ以外では、「早く寝る」ということも大切です。
十歳までは「八時には寝る」ぐらいの目標がいいと思います。
私の教え子で、「すばらしい子」と思えた子の多くは「早く寝る」子でした。
十時以降まで起きているのは、問題外です。
学校ではぼんやりしていたり、時々キレたりする子の多くも、「おそね」をする子なのです。「忘れもの」が多いのも、「おそね」の子どもたちです。
いろいろな家庭の事情があるでしょうが、「できるだけ、早くねる」というのも、大切な目標です。
ある医師によれば、「軽度発達障害の子」でも「早ね」「おそね」で、状態が違ってくるということでした。
(二)
もう一つすすめたいのは、「努力」と「結果」の関係を話してやることです。
私は、二十年近く昔、「努力と成長曲線」を本に書きました。
自分の体験をまとめたのです。
最近になって、東大薬学部の池谷先生が、脳科学の最新研究から、私と全く同じ図を発表されました。脳科学も向山の主張の正しさを裏づけたのです。
TOSSの仲間の鳥居先生が、全国の中学校で「ニート、フリーターになる前に知っておくこと」という授業をしています。文科省の委託事業です。
これが大人気で、どの会場もテレビ局が三社ほど、新聞社が五社ほど取材に入ります。
前回大阪では、国会議員、県会議員、校長会などが参加しました。
生徒の感想文も、「聞いてよかった」「感動した」などの文がズラーっと並びます。
子ども達に次のような話をするので、私の本「教師修学十年」(明治図書)から紹介します。
*
子どもには、生れつきの差はそれほどないと考えていた。しかし、同じような能力を持ちながら、年を経るにしたがって差がついてしまう子どもの姿が不思議だった。年とともに伸びていく子どもたちは、環境がめぐまれている子に多かった。そうではない場合もあるが、それは数少なかった。
めぐまれた家庭で育った子には、持続性があった。ていねいさがあった。生れた時からの家庭教育の積み重ねがあった。
働くことに多くの時間がさかれたため、子どもに手のまわらなかった家庭の子どもたちを、ぼくは何とかしたかった。何とかしたかったが、学校での授業だけでは限界があった。自学していくという姿勢そのものを育てたかったからだ。<持続的に努力できる>というのは、長い時間をかけて習得していく能力である。ある時、思いつきで努力をしても決して持続するものではない。<持続して努力できる。事にあたれる>という能力を、ぼくはどの子にも育てたかった。
子どもたちに次の話をした。
「努力は一つ一つ積み重ねるしかない。しかし、成長は、一歩一歩目に見えるように訪れては来ない。毎日毎日努力してなお、成長しない日が続く。水泳でもそうだ。一五メートルぐらい泳げて、二五メートルに達しない日が統く。毎日泳いでも、やっぱり昨日と同じなのだ。そんな時、ついあきらめがちになる。
でも目に見える成長は訪れないけど、内では力が着実に蓄積されているのだ。何事にも初歩の域をぬけるには、百回の積み重ねが必要であり、一応の線に来るには千回の積み重ねが必要なのだ。一五メートル泳ぐことを百回すれば、必ず二五メートル泳げるようになる。将棋でもまず百局指してみることだ。和裁でも百枚縫えという教えがある。なわとびの二重まわしが連続百回できると、三重まわしができるようになる。勉強も百日、およそ三ヵ月だ。努力はAのように一つ一つ積み重ねなければならない。しかし、成長はBのように加速的に訪れるのだ。
努力して成長が目に見えない時が、一番つらいが、誰でもが通る道なのだ」。
そういう時子どもたちは、まばたきもせずに聞いていた。成長は加速的であるという話は、ほかでも聞いた。テレビで見たのだが、東北の精神科医が、治療のために患者に絵をかかせたところ、毎日毎日同じ絵をかいていたという。そして百枚目ぐらいになると、決まって大きな変化があらわれるというものであった。最初の絵が幼稚園児のものとすると、百枚以後は、高校の美術クラブの生徒にひけをとらないようなできばえであった。
学級内では、誰かが一つの壁を突破すると、他に波及するが、その精神科医も同じことを述べていた。
ぼくはこのようなことを親にもよく話した。<向山の仮脱>などと冗談で言ったりした。
「努力は段階的に重ねなければいけないが、成長は加速的に訪れる。」
「学級内の一人の成長は波及効果を持つ。」
子どもたちも、百をこえて、千に挑戦するようになった。相撲で言われる「三年先のけいこ」などの話もした。
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(グラフ1)
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- 明治図書