- 特集 親が教える“我が子の勉強のしかた”
- 我が子の教え方に、大切な四つの原則があります
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- 小学校入学前/勉強のしつけのポイント
- 入学前のひらがな指導は、生活に結びつけて
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- 四十五分間座っていられるだけでいいです
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- 国語・算数の勉強のしかた
- 毎日、手間をかけずに続けられる学習を
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- 国語は「本を読む」「漢字を練習する」、算数は「10の分解をスムーズにできる」「位取りをチェックする」のがコツ
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- 勉強する習慣をつける方法
- 机に着く習慣は、読書力や創造力を育てる
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- 中学年のこの時期に、ぜひ勉強の習慣化を
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- 「勉強が分からない」と言われたとき
- プレ思春期には、「え?」と思わせるくらいの対応を
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- 説明をせず、正しいやり方を写させましょう
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- 受験勉強の大切なポイント
- 本人のヤル気と実力把握が最優先で、次が勉強法である
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- 受験成功のための4か条
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- 国語の勉強のしかた
- 丸10個の音読指導法、指書きだけの漢字指導でOK
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- 「漢字」と「音読」が基本中の基本!
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- 小学生では重視したい音読練習
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- 算数の勉強のしかた
- 百玉そろばんで数の基礎を学び、ゆったり・ていねいノートで実力アップ!
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- 教科書を使いノートがきれいに書ければ算数ができるようになる
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- 教科書問題をやり切り、問題チェックをさせる
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- 社会科が好きな子へ育てる
- 学習に役立つ情報の多くは、お父さんやお母さんの話から得ています
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- 褒めるから好きになる好きだから、家族の楽しみになる
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- 理科が好きな子へ育てる
- 感動させて理科好きにしましょう
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- 親子で楽しい自然体験を!
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- パソコンどのくらいの子が使えているか
- 親が関わりながら正しい操作を教えることが大切です。
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- 使いこなせる生徒はパソコンに触れる機会が多い生徒
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- 英会話どのくらいの子が習っているか
- 国際社会の時代がやってきます。
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- 本格的にスタート!小学校英会話
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- 私は我が子にこのように教えた
- 「お母さんといっしょ」が楽しいのです
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- 間違えた問題だけを何回もやり直しさせた
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- ポイントを短くズバリと教える
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- ミニ特集 テレビ・ゲームのやりすぎの害-クラスの実態調査から
- テレビの害の調査報告
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- 「ルールはあるか、それは機能しているかどうか」が分かれ道
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- 家庭のルールをつくり、そのルールを機能させることが大切です。
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- 驚くほど重なった向山の仮説5
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- テレビゲームのやりすぎは、人生そのものに影響する
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- イラストで見る家庭教育のポイント (第24回)
- テスト
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- 家庭教育のポイント (第24回)
- テストは「やり直すこと」が大切
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- 編集前記
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- PTA会長奮戦記
- 楽しみながら交流を深められる釜小縁日広場
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- つぶやきに見る子どもの成長
- つぶやきに学ぶ
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- ~生活の音声文章化(二歳児)~
- 校長が語る子育ての極意
- 子どもにやらせて、やらせて見守る
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- 校長が語る「基礎学力の保証」
- 算数の基礎基本―教科書をていねいに教える―
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- 礼法専門家から見た子どもたちの立ち居振る舞い
- 正しい姿勢が生活の基本
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- 家庭でできる食育のポイント
- ジャンクフードから果物へ
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- 医師 私の子育て日記
- 自分の子どもは、自分で育てましょう
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- 塾から見た基礎学力
- よき敗者たれ
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- 教師・読者座談会 (第12回)
- 母親サークルで勉強中。
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- 最新最大の子ども調査
- 子どもをフリーターにしないしつけ
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- 年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
- 年少/お兄さんになったよ
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- 年中/子どもを生んで育てて知ったこと
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- 年長/娘と一緒に通学路を歩く
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- 小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
- 小1/一年生を担任して
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- 小2/一年間の成果を披露「2年1組物語」
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- 小3/目の不自由な人のことを考えよう
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- 古今東西人類の知恵「子育て語録」
- 「習慣は第二の天性なり」
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- 心に残る名作・名詩―父を思う・母を思う―
- 「命をいただきます」
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- とっておきの話・親子でお話ぬりえ
- どうせやるなら
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- SOS 子ども・親が電話相談をする時
- 疲れてやる気がないが
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- 保健室から1ページ
- トイレを見れば、子どもの生活の落ち着き度がわかります。
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- こんなときどうする?平山先生!
- 保護者が勉強すればするほど、先生を育てることになります。
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- 親子で挑戦ペーパーチャレラン
- 手→口→心チャレラン
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- 衝撃のドラマ・算数が大の苦手の子が満点をとった
- A君を救った向山型算数
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- 本筋の心の教育
- 大人のあいさつが「心の教育」につながる
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- 親子で漢字文化ワーク (第12回)
- 神谷先生・辻野先生の漢字文化教室
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- 親子でイラスト作文 (第12回)
- つるのおんがえし
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- 酒井式描画法・感想画
- 水仙月の四日
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- 1000年続く教材・いろは歌
- 江戸時代の教育
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- 1000年続くかけ算九九
- 九九は筆算へのシルクロードに
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- 「おもてなしの心」を教えてくれるお姑さん
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親が教える“我が子の勉強のしかた”
我が子の教え方に、大切な4つの原則があります
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
子どもはちゃんと教えられたことはできますが、ちゃんと教えられないことはできません。
その差は、ものすごく大きいのです。
教師が「こんなことできないの。何度も教えたでしょう」と叱っても、ちゃんと教えられなければ、できないのです。
親が「こんなの分らないの。常識じゃない」と、どなっても、ちゃんと教えられなければ、できないのです。
「ちゃんと教えられ」れば、子どもはできますが、「ちゃんと、教えられ」なければ、できないのです。
「できない」責任は「子ども」にはありません。
「ちゃんと教えられ」なかった、教師と親に責任があります。
例えば、昔インドで発見された、狼に育てられた子ども二人。
カマラとアマラは「二本の足で歩く」ことができませんでした。
親から教えられていなかったからです。
育ての親の狼は、四本の足で歩き、走りました。だから、人間の子のカマラとアマラも、育ての親と同じように、四本足で歩き、走るようになったのです。
人間なら、ほとんどの人ができる「コップで水を飲む」ということも、カマラ、アマラはできませんでした。
教えられていなかったからです。
人間の手で保護された、カマラ、アマラに「コップで水を飲む」ことを教えました。
その日のうちに、できたでしょうか。全くできませんでした。
次の日も教えました。できたでしょうか。できませんでした。
毎日毎日、くり返しくり返し教えました。できたでしょうか。できませんでした。
叱ったり、どなったりしたら、できたでしょうか。かえって反発しました。
途方もない時間をかけ、「くり返しくり返し」根気よく教え、少しでも前進したら喜び、ほめたたえ、やっとできるようになったのです。
子どもの教育の基本は、この例がよく示しています。
原理は、同じことなのです。
日本教育技術学会は、毎年春に「中学校入学時学力調査」をしています。
中学校の先生方が、入学してきた新入生の学力調査をしているのです。TOSSの中学校の先生方も協力しています。
学力調査を担任がすると不正が起こりがちです。前もって特訓したり、ひどい時は、同じ問題を前もって教えてしまうのです。これまでにも、何十回も新聞等で報じられた通りです。
その点、中学校の入学の時の学力調査は、不正が生れません。
学力調査の結果は、旧六年生のクラス毎に集計されます。六年生の時の教え方と学力がどう関係したかを見るためです。
この結果、重要なことが、次々と明らかになりました。
算数の学力は「教科書をきちんと教えていたクラス」が、高いレベルを示しました。
反対に、プリント学習に熱心なクラスで教科書をきちんと教えてないクラスは、学力は低かったのです。
今年度は、社会科の調査をしました。
その中で、注目すべき結果がありました。
白地図で、県を四つ示しました。
分りやすい「青森県」「鹿児島県」「高知県」などです。下に県名を書いておきました。あてはまる県名を選ぶのです。
問題は四つの県、下には六つの県の名前が書いてありました。
平均点は九十点です。
これは、どのクラスも九十点ということではありません。
良いクラスもあれば、悪いクラスもあるのです。
社会科地理の県名を選択する問題は、どうだったでしょうか。
良いクラスの平均点は、九十八点でした。どのクラスも、ほとんどの子が百点だったのです。
悪いクラスは、平均点は四十九点でした。驚くべき差です。
この違いは、何だったのでしょうか。
良いクラスは「きちんと教えていた」のです。悪いクラスは「教えていなかった」のです。なぜ、教えなかったのでしょうか。それは「地名など必要ない」と教師が思い込み、全く授業でやってこなかったのです。
一方、いいクラスでは「地名あて」の楽しいゲームなどをやり、教科書に出てきた地名は地図帳でさがさせ、赤鉛筆で丸をつけるなどの学習をしてきたのです。
教えないと「できない」のです。責任は、教師や親にあります。子どもに責任は、ありません。
では「きちんと教える」ということは、どういうことでしょうか。
これには、原則があります。
人類の長い長い経験に裏うちされた原則です。
この原則は、国が違っても、人種が違っても、習慣が違っても同じです。
原則の正しさを、最近の脳科学は、見事に説明しています。
日本の一万人余のTOSSの教師の二十年に及ぶ熱心な「授業研究」も、その正しさを証明しています。
原則の一。教える時は、ポイントをしぼって、シンプルに教える。
長い説明は、分らないのです。
泳げない子に、身体の浮く意味や、クロールの動きの意味などを説明してから教えますか。そんな馬鹿なことはしません。
何のことか、分らないからです。
しかし、教室で長々と説明する教師は、山ほどいます。教室で教師が熱心に説明すればするほど分らなくなります。
一分以上は長いのです。TOSSでは、三十秒でも、長いと言っています。
英会話の時、外国人から長々と話されると分りますか? よく分るのは「ワン、フレーズ」です。「スタン・ダップ」ならよく分ります。
原則の二。くり返すことです。
私が高校生の時、外国人と話をして、一番多く使ったのは「プリーズ、ワンスモア」でした。
「くり返す」ことは、とても大切です。
一度で分らなくても、二度、三度なら分るのです。
また「脳は、すぐ忘れる」のです。
誰でも、ほぼ同じスピードで忘れます。
一日たつと半分以上忘れてしまいます。
ですから「くり返し、くり返し」教えることが大切です。
原則の三。教えるときは「楽しさ」が必要です。それは、脳細胞の根幹の部分を「やる気」にさせるからです。
「いやだ、いやだ」と思いながらやっても、効果はほとんどありません。
ですから、「どなられ」たり「叱ら」れたりしながら勉強するのは、最悪です。
逆に「ほめられ」ながらやる学習は、最高なのです。
原則の四。良質なお手本が必要です。
「まなぶ」とは「まねる」からきています。
学習するとは、まねをするということなのです。
「朱にまじわれば赤くなる」ということわざがあるように、「悪い手本」があると、悪くなっていきます。
「良い手本」の代表は、教科書です。
これは、何十年の年月をかけ、多くの教育者が作り出したものです。
昔から伝わる文化財も良いお手本です。
いろは歌、五十音図は、千年も続く教材です。
百人一首も古い文化財です。
「論語」などの漢文にも、すぐれたものが多いです。
日本初のノーベル賞学者、湯川博士は、小学入学前、「漢文の丸暗記」の学習を続けたといいます。
以上をまとめます。
すぐれた指導法とは次のことです。
「良質なお手本」を「シンプル」に「くり返しくり返し」「ほめながら」教えるということです。
小学校入学前には大切なことがあります。
幼児の時に、身につけておく「学習への態度」なのです。
「片づける」というのは大切なことです。
「はさみ、のり、はし」などの道具を使うことは大切なことです。
挨拶をする、順番を守るなどのルールを守ることは大切なことです。
こうしたことを、身につけていないと、入学の時から大変なことになります。
また「大好きなことを三十分も一時間も二時間も熱中したという体験」も大切です。
テレビゲームなどではなく、「自分が動作をする」ことの熱中です。
これが「学習への集中」「続けてやる」ことへとつながります。
一年に一度でも、二度でも、そんな場面が見られたら、赤飯をたくほど喜ばしいことなのです。
こうした幼児期の大切さは、百年以上も昔に、イタリアで初めて女医になり、教育者になったモンテッソリーが発見したことなのです。
向山洋一
本誌編集長
日本教育技術学会会長
千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の
教育情報サイト、インターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
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