家庭教育ツーウェイ 2006年9月号
学力が伸びる学習習慣

イ030

«前号へ

次号へ»

家庭教育ツーウェイ 2006年9月号学力が伸びる学習習慣

紙版価格: 848円(税込)

送料無料

電子版価格: 762円(税込)

Off: ¥86-

ポイント還元20%

ファイル形式

PDF
ジャンル:
その他教育
刊行:
2006年8月1日
対象:
幼・小
仕様:
B5判 80頁
状態:
絶版
出荷:
ダウンロード
定期購読

目次

もくじの詳細表示

特集 学力が伸びる学習習慣
すぐれた学習習慣によってこそ学力は伸びる。―習慣は親が育てる―
向山 洋一
附属小教官経験者がすすめる学習習慣
神は低部に宿り給う
大森 修
「書く」ことをすべての教科のベースにすえて
吉永 順一
親子の会話による学習習慣
前田 康裕
学習習慣は子どもの自主性と好奇心から生まれます
山本 純
家庭学習で大切な学習習慣
平田 淳
効果絶大の8つの学習習慣のドラマ
@鉛筆で書く(シャープぺンは使わない)
鉛筆を持って、しっかりと字を書いていると、脳が活性化してきます。
松崎 力
鉛筆を使えば漢字が覚えられる
松藤 司
A問題にチェック印をつける
間違った問題をやり直す時に力が付く
木村 孝康
できなかった問題だけをすればいい。
川原 奈津子
Bノートをきれいに書く
ノートまとめの力は一生の宝になる!
神谷 祐子
障害を持った子供に優しいノートの使い方
伴 一孝
Cミニ定規を使う
ミニ定規を使うとミスがどんどん減っていく
奥 清二郎
ミニ定規を使って線を引けなかったK君が図形の単元テストではじめて一〇〇点をとった
井上 好文
D漢字は指書きで覚える
指書きで脳を刺激する
森川 敦子
ほんの少しのことに気をつければ、手軽で効果絶大!
河田 孝文
Eできない時はやり方を写す
写していたら、あるとき突然、回路がつながった
赤石 賢司
写すことで、「わり算の筆算」クラス平均99点をとった
甲本 卓司
F単元名の横に小さな○を10書く
お母さんの仕事は、「褒め続ける」だけです。
椿原 正和
○十個は、ユニバーサルデザイン
太田 聡美
G毎日、机の前に座る
教育の先達と最新脳科学が教える家庭学習の効果
谷 和樹
「10分×学年」が、机の前に座る時間の目安です
石黒 修
教師の実感・この学習習慣が子どもを伸ばした
ノートに努力を残す子は例外なく伸びます
山西 浩文
筆算はやり方を唱えノートをきれいに書くことがポイント
上木 朋子
「写すのも大切なお勉強です。」
野崎 史雄
こつこつ努力することでつける力
瀧尾 恵美子
「腰骨を立てる」と賢くなる。
岡崎 昌美
ミニ特集 日本の文化を子どもに伝える
日本には日本の文化がある
向山 洋一
かるたと五色百人一首で社会性も身につく
吉田 高志
「五色百人一首」で教室と家庭がつながる
勇 眞
幼いうちにこそ、触れさせておきたい日本の文化があります。
赤木 雅美
暗唱で日本の文化に慣れ親しむ
平松 孝治郎
江戸時代の文化「歌舞伎」を取り上げる
迫田 一弘
今月の名言・格言・ことわざ (第6回)
故きを温ねて新しきを知る
岩野 節男岩野 紀子
向山編集長が語る「今月の名言・格言・ことわざ」 (第6回)
故きを温ねて新しきを知る
向山 洋一
〜昔の人は「どの子も算数ができる」ようになる百玉ソロバンを使っていた〜
編集前記
師尾 喜代子
子どもTOSSデーのドラマ
青森/どの子も集中!みんなが満足!酒井式描画法
前川 善治
茨城/「成功体験・とび箱教室」子どもも保護者も待ち望んでいた
鈴木 はるみ
全国各地にTOSS式子ども地域教室を!
地域主催で五色百人一首大会を!
吉村 恵美子
幼児のドラマ、小1のドラマ、小2のドラマ
幼児/絵が好きな息子が写生に見入っていたあのときの目
桜木 泰自
小1/小さな子どもと生き物たちの大きな学び
平田 純也
小2/先生の一言は、親の一言より重い
佐々木 智穂
小3のドラマ、小4のドラマ、小5のドラマ、小6のドラマ
小3/「怒りマークの似顔絵」が「ニコニコの似顔絵」に変身!
手塚 美和
小4/折り紙で『チマチョゴリ』
許 鍾萬
小5/地球環境は自分たちで守る!
吉田 真弓
小6/水嫌いのA君が水泳で二十五メートル完泳
宮島 真
礼法専門家から見た子どもたちの立ち居振る舞い
心も身体も健康になる和装礼法教室
細羽 朋恵
つぶやきに見る子どもの成長
つぶやきに学ぶ
水野 茂一
〜負うた子に教えられる・夫婦喧嘩〜
シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
神様から離れてしまったお母さん
水野 美保
TOSS学生奮戦記
いい先生になりたい!学生も頑張っています!
小嶋 悠紀
SOS 子ども・親が電話相談をする時
忘れものが多くて困る
波多野 ミキ
保健室から1ページ
保健室にあるモノいろいろ、返却もいろいろ
松島 裕美
こんなときどうする?平山先生!
宿題に取り組めない/落書きをやめさせたい
平山 諭赤木 雅美
子育て日本の教育「貝原益軒・細井平洲・森信三」
細井平州『嚶鳴館遺草』にみる「それぞれに大事に」の教え
谷 和樹
藍川メソッド・音楽教育“常識”の間違い
鼻濁音
藍川 由美
食育・親子で楽しく・ここがポイント
おやつのとり方を考えよう
並木 孝樹
キャリア教育のポイント
その努力を百回だけ続けてみよう。
向井 ひとみ
数字で見る子どもの姿
短期自然体験で何が変わるか
明石 要一
中学から見た基礎基本
筆箱とその中身から見えてくること
月安 裕美
教師・読者座談会 (第18回)
学校教育への要望、先生への要望
新牧 賢三郎
親子で挑戦ペーパーチャレラン
三字熟語チャレラン
伊藤 亮介
親子でたいそう
ボールで遊ぼう!!
村田 斎
親子で漢字文化ワーク (第18回)
神谷先生・辻野先生の漢字文化教室
神谷 祐子辻野 裕美
ライフスキル教育
一年生のライフスキル教育
細羽 正巳
最前線・英語教育
英会話を教えていない日本の中で
平田 淳
最前線・インターネット教育
スマートボードの活用で教室のインターネットはもっと使いやすくなる
西尾 豊
母親ネットワーク
保護者ネットHPをご活用ください!
西岡 美香
校長が語るこれからの学校教育
生き方の教育―「随処ニ主ト為ス」
吉永 順一
読者のページ
編集部ニュース
現代っ子アンケート・子どもインタビュー
朝ご飯は食べていますか?
平田 淳
TOSSインターネットランドで勉強しよう!
MOS(Mission Of Science)
寒河江 恒太鈴木 恭子

学力が伸びる学習習慣

すぐれた学習習慣によってこそ学力は伸びる。習慣は親が育てる

向山洋一

本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師

無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰

TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表


 私が学んだ高校は、毎年東大、東工大、一橋大に百名ほどが入っていた受験校だった。

 中学の時はクラストップ、学年トップの成績の人が大半だった。

 勉強ができる子ばかりが集まった高校で、教師達の「合格予測」は、確かだった。

 教師達が最も高く評価したのは「学習習慣」がしっかり身についている生徒だった。

 とりわけ「ノートがていねいできれい」なことを高く評価した。

 同級生に、社会科のノートをほめられる生徒がいた。ていねいで、きれいだ。

 頭は、さほど良いと思えなかった。

 数学の実力は、クラスで並だった。

 高校一年の時、教師はその生徒のノートをとりあげ「こういう生徒が東大に入るんだ」と予言した。

 彼より成績のいい子はいっぱいいたから、「そんなことないよな」と思っていた。

 結果は、彼は東大法学部に入り、トップクラスで卒業して、大蔵省に入省し、キャリアのトップまで登った。

 私は、教師が生徒の成長を評定する目の確かさが印象に残った。

 自分が、教師になってみて「学習習慣」の大切さを身にしみて感じている。

 学力は、「乳児期、幼児期」の親のしつけで、大半は決ってしまうのだ。

「頭の良い、悪い」は、たいして関係ない。

 そんなことより、「学習習慣」の方が、何百倍も実力をのばす。

 学習習慣の中でも、ポイントは三つである。

 第一は「やる気」だ。元気で、意欲的な子が、やはりのびていく。

 第二は「持続力」だ。「一つのことを続けている」「ねばり強い」子が伸びるのである。

 第三は「ていねいさ」だ。「ノートがきれい」は、学力が伸びる最も大切な基本だ。


 こうした習慣は、小さいときからの親のしつけによって、育てられる。

 親の「思いつき」で叱ったり、「体罰」をしたりする衝動的行為で育てられた子は、以上の三つが弱い。

 勉強のできる子は「親からぶたれたことがない」という子が多い。

「悪さ」をすれば、もちろん叱られる。

 時には、体罰もあったろう。

 しかし、体罰でも「おしり」とか「手の甲」がほとんどで、この場合、子どもは「なぐられた」とは思わない。

 子育ての上手な親は、共通してやっていることがあるのだ。

 先日、ある席で、びっくりすることを聞いた。「向山の教科書チェック」の方法と、ほとんど同じことを、若い二人の女性も親から教えられたというのだ。

 分かりやすいように「問題集」をとりあげる。五問あると仮定しよう。問題は省略する。


問題(1)

問題(2)

問題(3)

問題(4)

問題(5)


 問題をやったあと、答えあわせを必ずする。やりっぱなしは、全く意味がない。

 できたら、問題を斜線で消す。間違えたら問題の前にチェック印をつける。

 さて、問題集を一通りやったのであるが、この段階では、ほとんど実力はつかない。

「できる問題」と「できない問題」を区別しただけなのだ。

 できなかった問題は、解答を必ずノートに書いてみる。

 一冊、終った後で、二回目に入る。

「できなかった問題」だけをやる。


問題(1)

問題(2)

問題(3)

問題(4)

問題(5)


 一回目はできなかった問題ができた。明らかに実力は向上している。

 前は「五問」やったが、二回目は「三問」でよかった。

 かかった時間は、半分になった。半分の時間で、実力は向上した。

「できなかった問題」が、できるようになってこそ、実力は、向上するのである。

 二回目でも、できなかった問題がある。

 問題(3)だ。チェックが二つついた。

 三回目はこれだけをやる。


問題(1)

問題(2)

問題(3)

問題(4)

問題(5)


 問題を三回目で克服した。これで、全部の問題ができるようになった。しかも、時間は短くてよかった。

一回目……五問やった

二回目……三問やった

三回目……一問やった


 三回目は、一回目と比べて、五分の一の時間ですんだ。

 しかし、この「五分の一の時間」でこそ、実力は、急上昇するのである。

 親は子どもに、このことを身につけさせるのである。

 口で言っては駄目だ。

 少しの間、つきあってやる必要がある。

 三十五年昔、私は誰でも知っている超難関校の六年生の家庭教師をしていた。

「落第しそうなので無事附属中学に入れたい」のが、親の希望だった。

 姉と兄は、中学へ進めず、フランス、イギリスに留学していた。

 私は、その子を週に一回教えた。

 二時間のうち教えたのはわずか十分。

「学習のやり方」を教え、習慣になるのを見守っていたのである。

 残りの百十分を、私は読書していた。

 この子は、無事中学に入り、何と学年でトップになった。

 それで、私は家庭教師をやめた。その中学から二十件ほどの家庭教師の依頼があったが、すべて断わった。だから今がある。

 さて、前述した若い女性二人である。

 一人は、父親から高校受験の時、勉強のやり方を指導された。

「うすい問題集を選び、三回やりなさい」お父さんは、ある省の局長をつとめるキャリアである。「三回やる」のは、私の言ったことと原理は、同じである。この人は、難関の私立附属高に入った。

 もう一人は、夏休みになるとお母さんから指示された。

 教科書の問題を、私がやったのと同じ方法で、全部復習させるものだった。一日の分が示された。

 お母さんは、かつて最もむずかしいと言われた女子系の都立高校の出身だ。娘は同じ高校に入り、国立大学に入った。

 私も、自分の娘に同じことを教えた。

 運よく偏差値七十二という私立中学に入った。

 それぞれ、住む所が違っていても、同じ原理の学習習慣を親から教えられたのである。


 さて、本号は、プロ中のプロ教師が教室で教えている「最も大切な学習習慣」について紹介している。

 例えば、線を引くとき「ミニ定規」を使うことである。

 ミニ定規を上手に使いこなせるのに三ヶ月は必要だが、それだけで算数のテストの点が十点は上がるぐらいの力がある。

 かつて訪れたロンドンの中学校。

 最上級の成績のクラスに入ってびっくりした。

 金髪の男の子、女の子が、一人残らずミニ定規を使いこなしていたからだ。

 私が客員教授をしてる上海師範大学の附属小学校。ここの生徒の何割かはアメリカ、イギリス等に留学する。

 日本で言えば、筑波大附属小のような学校だ。

 ここでも全員がミニ定規を使っていた。

 国が違っても、プロの教師の技は同じなのである。

 TOSSの教師は当然、教室でミニ定規を使わせる。子どものためだ。

 ところが、たまに、教師にイチャモンをつけてくる母親がいる。

「ミニ定規なんか使わない方がはやく書けます」というようにだ。

 若い教師をせめるのだ。

 一人、二人のわけのわからない親のために「すぐれた学習習慣」が育てられないときがある。

 授業では、シャープペン禁止は当然だ。

 指先は脳の出張所だ。そこに力が入らないのである。

 しかもポキンと折れて、思考が中断する。プロの教師なら、絶対に鉛筆を使わせる。その方が、学力は上がるのである。

 ところがこれも、一人二人の親が文句をつけて困っている若い教師がいる。

 素人が、教室をこわしているのである。

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ