- 特集 今に生かす子育ての知恵
- 「ならぬものはならぬ」を教えるのは親の義務です
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- 体験から言える子育ての知恵
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- 子どもと向き合う
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- 漢字に隠されている子育ての知恵
- 子育ては様々な手立てで一歩一歩前進する
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- よく遊びよく学ぶ子は育つ
- 「よく遊ぶ」が、子どもの生活の基本 それを大人が変えている
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- 「よく遊び、よく学ぶ」そのココロをかつての記憶から学ぶ
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- 繰り返し同じ言葉ではげますと強く育つ
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- 目を合わせて寄り添って励ます
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- 判断、決断をさせ、温かく見守ると自主的になる
- 一度、考えさせる習慣が必要
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- 「酒井式四つの原則」は、子どもたちへの応援歌
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- 食卓でこそ子どもは育つ
- 「八時就寝、家族みんなで朝ごはん」の薦め
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- 毎日の食卓だからこそ、努力する能力を育てられる
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- 手本を示しやらせてみて、褒めてやると学ぶ力が向上する
- 手本で、努力の方向を知らせ、ほめて「成長を実感」させる
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- 口で言うより手本の効果絶大
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- 秩序感は三歳までにつくられる
- 敏感期を知れば、子育てがもっと楽しくなってくる
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- 六歳までに何時間も熱中する場面をつくる
- 敏感期を取り逃がしても、楽しく熱中する体験をすれば、必ず取り返せる
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- 自由放任はなぜいけないのか
- 自由放任は、「家庭・学校・社会」という制御装置をストップさせる
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- 過保護、過干渉はなぜいけないのか
- 「小児を育つるに愛を過すべからず。」(『和俗童子訓』より)
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- やたら叱って体罰をするとなぜいけないのか
- 本当に良くなってほしいと思うのなら絶対にやらない。感情にまかせた叱責や体罰は、人格形成に大きな影響を及ぼします。
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- 日本の名著から
- 二宮尊徳
- 子どもにとっても大人にとっても、手本となる日本人、二宮金次郎
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- 細井平洲
- 善悪正邪の判断を教え、よい習慣をつくることが大切です
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- 森信三
- 躾の三原則が身に付く家庭と身に付かない家庭
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- ミニ特集 親子でできるインターネット学習
- グーグルアース、そしてTOSS子どもサイトへ
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- お子さまの「もっと勉強したい。」という意欲を伸ばす学習教材活用法
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- 子どもが夢中になって取り組む学習用サイトがある。
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- シンプルであきない「中学社会神経衰弱型ゲーム」
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- 今月の名言・格言・ことわざ (第11回)
- やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ
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- 向山編集長が語る「今月の名言・格言・ことわざ」 (第11回)
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今に生かす子育ての知恵
「ならぬものはならぬ」を教えるのは親の義務です
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
(一)
いじめが、大きな社会問題になっている。
私は、毎日のようにテレビ、新聞、雑誌の取材の申し込みをうけて、もう三週間にもなる。
NHKテレビをはじめ、あちこちに登場した。
先週は、熊本で開かれた「日本教育技術学会」で、「いじめ問題の緊急アピール」を提案した。
全国各地から集まった千名もの先生方は、真剣に聞き入っていた。
私は、日本教育技術学会の会長をしているので、基調提案をしたのである。
「いじめ」対処には、「学校にシステム」を作らねばならないのである。
「病気」に対する「病院」の対応システムを考えればいい。
病院は「病気の発見システム」がある。学校にも、「いじめの発見システム」が必要だ。
それも、医師の「触診」「問診」「検査」のように三つのレベルが必要だ。
更に「発見された病気」に対処するシステムがあるように、「いじめ」に対する対処のシステムが必要だ。
例えば「いじめの訴えがあった時は、二十四時間以内に会議を開き、具体的方針を決める」というようなことだ。
「直ちに、いじめられている子どもの家を訪れ、学校全体として君の見方であることを告げる行動をする」というような方針だ。
私は、十五年前に、学校にこのようなシステムを作った。
これがあれば、「すぐに発見して、即座に対応」ができるのである。
TOSSの教師のいる学校では、このような方向にされつつあるが、普通の学校には「何もない」のが現状なのである。
「いじめ」を親から訴えられて、そのままにしている例もめずらしくない。
その間に、「自殺」までもしてしまったのである。
(二)
さて、「いじめ」への対応、これだけではいけない。
「昔」も、いじめはあったが、これほどひどくはなかった。
やる方にも歯止めがあったし、やられる方も強かった。
どのように教えていたのだろうか。
私たちの祖先の教育をふり返ってみるのも大切だ。
子どもたちに教える時、「その理由」を言って教える。
「このようなわけで、やっちゃ駄目なのだよ」と教えるわけだ。
ところが「理屈ぬき」で「それは駄目」と教えることがある。
例えば「人殺し」だ。
「人を殺すのがなぜいけないのか」は、理屈ではない。
それは、当然駄目なのだ。
絶対にいけないのだ。
このような「タブー」の教育がある。
私も、小さい時に「理屈ぬきで駄目」と教えられたことがある。
「弱いものいじめ」は、絶対に駄目だった。
それは、「ぬすみ」より、ひどいことなのだと教えられた。
「印刷してあるもの」、例えば「本」「新聞」を、ふみつけたり、またぐことも絶対に許されなかった。
親は、いくつかの、こうした「タブー」の教育をしてきたのである。
有名なのは、江戸時代、会津藩の親の指導だ。
「ならぬものはならぬ」という教えである。
「それは、絶対に駄目だ」という教えだ。
「弱いものいじめをするな」は、かつての日本人が子どもたちに教えてきたタブーであった。
それは、理屈ぬきで教えられたのである。
「弱いものいじめ」をする人は「卑怯者」と教えられてきた。
それは、人間として、もっともいやしい行為であり、そうしたことをする人は、最低の人間であると教えてきたのである。
ましてや、自分は安全の場にいて、大勢で、弱いものをいじめる――それは人間のすることではないと、教えられていたのである。
「弱いもの」をいじめることは、普通の人間なら抵抗を覚える。
しかし、「いやな感じ」という抵抗を覚えずに、それに「喜び」を感じたり「仲間」になってしまうのは、人間の感性が、ひどく歪んでいると思える。
「弱いものいじめをしない」「弱いものいじめをするのは卑怯者のすることだ」「それは人間として決して許されないことだ」と教えるのは、親の義務だ。
かつての日本では、ほとんどの家でそのようなことを教えられていた。「生命の大切さ」「弱いものいじめをしない」「嘘をつかない」など、いくつかのことが、家で、くり返しくり返し教えられていたのである。
これは、日本だけではなく世界中の多くの国でも教えられていることだ。
人間として守らねばならない大切なこと――それを教えるのは親の大切な仕事なのである。
時代が、どのように変わろうとも、親が子どもに教えなければならないことなのである。
「親が、やるべきことをしていない」というのが、今日の「いじめ」の根本問題だ。
このような「タブー」は、乳児期、幼児期に教えられることだからだ。
「教育基本法」が、改正される見込みだ。
私は、当然だと思う。
「教育基本法」は「国家としての教育の基本方針」である。
現在は「学校教育」と「社会教育」の二本しか書かれていない。
しかし、教育は「学校教育」と「社会教育」と「家庭教育」の三つが柱だ。
五十年昔の日本には、「家庭教育」のことなど言われなくても、あったのだ。
それが、今なくなりつつある。
改正される教育基本法には、「家庭教育」の項がしっかり入っている。
私は、三度ほど、衆議院会議で、代議士の先生方に講義をした。
どの会も、五十名ほどの先生方、秘書の方が参加した。
そこで、私が一番強く言ったことが「家庭教育」の項を入れるということだったのである。
(三)
「誰も見ていなくても、お天道様が見ている」ということも、昔から教えられていることだった。
悪いことをした時に子どもは嘘をつく。
「上手に嘘をつけば、それでよい」と思ってしまうのだ。
そんな子のために、「お天道様」の様な話は、昔からされてきたのだ。
ところが、このことは、本当のことらしい。
最新医学の脳科学が明らかにした。
人間の脳に、一番古くからあるのは脳幹(ヘビの脳ともいいます)だ。
心臓を動かすなどの働きをする。
人間の意志では変えられない。
「怒り」や「攻撃」も、この古い脳が分担する。
次に、「ほ乳類の脳」がある。
これは「仲間」であることが分かる。
犬や猫は、飼い主が分かる。
でも、爬虫類のヘビやカメは飼い主は分からない。そのような脳がないからだ。「仲間」を大切にしないのは、「ほ乳類の脳」が、ちゃんとしていないということなのだ。
人間は、その上に新しい脳をもっている。
「人間らしさ」は、ここから生まれる。
弱い人を大切にするのは、人間だけが持てる感情だ。
ほ乳類の脳は「弱肉強食」なのである。
人間らしく育っていれば、当然ながら、弱いものをかばうようになるのだ。
ところで、「いじめ」である。
「いじめ」をすると、本人がごまかしても、本人の脳は、ゆるさないというのだ。
攻撃は、古い脳が担当する。
「いじめ」をすると、「自分の脳」は、それを許さず「自分の身体を攻撃する」というのだ。
「いじめ」は、自分自身もストレスにさらされ、身体を傷つける。
これが、「嘘はついてもお天道様が見ている」ということなのだと思う。
私は、脳のしくみについて話し、「いじめ」を人から見られないようにやっても、「自分の脳は知っているんだよ。だから、自分の身体を攻撃しちゃうんだ」と話して聞かせる。
これは、相当にきき目のある話なのだ。
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- 明治図書