家庭教育ツーウェイ 2007年2月号
今に生かす子育ての知恵

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家庭教育ツーウェイ 2007年2月号今に生かす子育ての知恵

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ジャンル:
その他教育
刊行:
2007年1月4日
対象:
幼・小
仕様:
B5判 80頁
状態:
絶版
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目次

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特集 今に生かす子育ての知恵
「ならぬものはならぬ」を教えるのは親の義務です
向山 洋一
体験から言える子育ての知恵
人を先に、私を後に
吉永 順一
子どもと向き合う
大森 修
挨拶のできる子に育てる
舘野 健三
漢字に隠されている子育ての知恵
子育ては様々な手立てで一歩一歩前進する
神谷 祐子
よく遊びよく学ぶ子は育つ
「よく遊ぶ」が、子どもの生活の基本 それを大人が変えている
甲本 卓司
「よく遊び、よく学ぶ」そのココロをかつての記憶から学ぶ
飯田 清美
繰り返し同じ言葉ではげますと強く育つ
「大丈夫、できるよ。」とプラス思考で励ます
勇 和代
目を合わせて寄り添って励ます
桜木 泰自
判断、決断をさせ、温かく見守ると自主的になる
一度、考えさせる習慣が必要
石川 裕美
「酒井式四つの原則」は、子どもたちへの応援歌
山川 直樹
食卓でこそ子どもは育つ
「八時就寝、家族みんなで朝ごはん」の薦め
槇田 健
毎日の食卓だからこそ、努力する能力を育てられる
齋藤 一子
手本を示しやらせてみて、褒めてやると学ぶ力が向上する
手本で、努力の方向を知らせ、ほめて「成長を実感」させる
鈴木 恭子
口で言うより手本の効果絶大
小森 栄治
秩序感は三歳までにつくられる
敏感期を知れば、子育てがもっと楽しくなってくる
松崎 力
六歳までに何時間も熱中する場面をつくる
敏感期を取り逃がしても、楽しく熱中する体験をすれば、必ず取り返せる
松崎 力
自由放任はなぜいけないのか
自由放任は、「家庭・学校・社会」という制御装置をストップさせる
伴 一孝
過保護、過干渉はなぜいけないのか
「小児を育つるに愛を過すべからず。」(『和俗童子訓』より)
谷 和樹
やたら叱って体罰をするとなぜいけないのか
本当に良くなってほしいと思うのなら絶対にやらない。感情にまかせた叱責や体罰は、人格形成に大きな影響を及ぼします。
関根 朋子
日本の名著から
二宮尊徳
子どもにとっても大人にとっても、手本となる日本人、二宮金次郎
森川 敦子
細井平洲
善悪正邪の判断を教え、よい習慣をつくることが大切です
平松 孝治郎
森信三
躾の三原則が身に付く家庭と身に付かない家庭
椿原 正和
ミニ特集 親子でできるインターネット学習
グーグルアース、そしてTOSS子どもサイトへ
向山 洋一
お子さまの「もっと勉強したい。」という意欲を伸ばす学習教材活用法
藤井 達也
子どもが夢中になって取り組む学習用サイトがある。
寒河江 恒太
シンプルであきない「中学社会神経衰弱型ゲーム」
坂井 ふき子
今月の名言・格言・ことわざ (第11回)
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ
岩野 節男岩野 紀子
向山編集長が語る「今月の名言・格言・ことわざ」 (第11回)
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ
向山 洋一
〜東アジアはお手本文化の社会です〜
編集前記
師尾 喜代子
子どもTOSSデーのドラマ
高知/高知県で初めての子どもTOSSデー大好評!
藤ア 富実子
東京/大好評「午前も午後も、参加したい!」
遠藤 真理子
全国各地にTOSS式子ども地域教室を!
「お母さん!子ども地域教室を開きませんか?」
寺田 真紀子
幼児のドラマ、小1のドラマ、小2のドラマ
幼児/子どもを引きつけ、数の理解を助ける教具「百玉そろばん」
藤井 優作
小1/『話す・聞くスキル』、『暗唱・直写スキル』で、楽しく暗唱、字も自然に上達。
間宮 多恵
小2/音読すらすら、テストも満点!
真鍋 陽子
小3のドラマ、小4のドラマ、小5のドラマ、小6のドラマ
小3/子どもTOSSデーにきょうだいで参加
田代 勝巳
小4/緊張した五色百人一首を盛り上げる
三好 保雄
小5/小さな成功体験の連続で、A君が変わった!
石井 研也
小6/長縄でクラスのまとまりをつくる
橋本 幸康
礼法専門家から見た子どもたちの立ち居振る舞い
正座・言葉・食事の場面から
松島 正弘
つぶやきに見る子どもの成長
つぶやきに学ぶ
水野 茂一
〜負うた子に教えられる・絆意識〜
シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
家で勉強がしたくなる演出―その1:雰囲気
水野 美保
TOSS学生奮戦記
TOSS家庭教師で起こった素晴らしいドラマ
小嶋 悠紀
SOS 子ども・親が電話相談をする時
悪いことばかりする娘A
波多野 ミキ
保健室から1ページ
一〇〇〇名の学会を裏で支えた「おもてなし」の心は保健室から生まれた。
松島 裕美
こんなときどうする?平山先生!
お友達とうまくいかせるためのサポート方法は?/宿題を嫌がる子の対策は?
平山 諭赤木 雅美
子育て日本の教育「貝原益軒・細井平洲・森信三」
いじめに負けない子育てを
石黒 修
藍川メソッド・音楽教育“常識”の間違い
首ふって合唱
藍川 由美
食育・親子で楽しく・ここがポイント
残飯から見えてくる様々な問題をどのようにするか
並木 孝樹
キャリア教育のポイント
「人を助ける仕事」について考えてみよう
櫛引 丈志
数字で見る子どもの姿
日本の母親は孤立している?
明石 要一
中学から見た基礎基本
うっとりするぐらいていねいにノートが書けること
厚 美佐
教師・読者座談会 (第24回)
母親だけの座談会をしました
TOSS母親サークル
親子で挑戦ペーパーチャレラン
ローマ字ハニカムチャレラン
伊藤 亮介
親子でたいそう
ミニゲームで楽しもう!!
村田 斎
親子で漢字文化ワーク (第23回)
神谷先生・辻野先生の漢字文化教室
神谷 祐子辻野 裕美
ライフスキル教育
いじめに負けない子を育てるライフスキルの授業
細羽 正巳
最前線・英語教育
思わず声に出る英会話授業 楽しみながら話したくなる英会話へ
頓所 陽子
最前線・インターネット教育
インターネットの利用は、目的を持って
中野 慎也
母親ネットワーク
TOSSだけがいじめを解決できる
西岡 美香
校長が語るこれからの学校教育
四十四q完歩に挑戦「清風ウォーク」実施
槇田 健
読者のページ
編集部ニュース
現代っ子アンケート・子どもインタビュー
子どもたちは、困ったときに誰に相談するか?
平田 淳
TOSSインターネットランドで勉強しよう!
英会話を楽しもう
寒河江 恒太鈴木 恭子

今に生かす子育ての知恵

「ならぬものはならぬ」を教えるのは親の義務です

向山洋一

本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師

無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰

TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表


 (一)

 いじめが、大きな社会問題になっている。

 私は、毎日のようにテレビ、新聞、雑誌の取材の申し込みをうけて、もう三週間にもなる。

 NHKテレビをはじめ、あちこちに登場した。

 先週は、熊本で開かれた「日本教育技術学会」で、「いじめ問題の緊急アピール」を提案した。

 全国各地から集まった千名もの先生方は、真剣に聞き入っていた。

 私は、日本教育技術学会の会長をしているので、基調提案をしたのである。

 「いじめ」対処には、「学校にシステム」を作らねばならないのである。

 「病気」に対する「病院」の対応システムを考えればいい。

 病院は「病気の発見システム」がある。学校にも、「いじめの発見システム」が必要だ。

 それも、医師の「触診」「問診」「検査」のように三つのレベルが必要だ。

 更に「発見された病気」に対処するシステムがあるように、「いじめ」に対する対処のシステムが必要だ。

 例えば「いじめの訴えがあった時は、二十四時間以内に会議を開き、具体的方針を決める」というようなことだ。

 「直ちに、いじめられている子どもの家を訪れ、学校全体として君の見方であることを告げる行動をする」というような方針だ。

 私は、十五年前に、学校にこのようなシステムを作った。

 これがあれば、「すぐに発見して、即座に対応」ができるのである。

 TOSSの教師のいる学校では、このような方向にされつつあるが、普通の学校には「何もない」のが現状なのである。

 「いじめ」を親から訴えられて、そのままにしている例もめずらしくない。

 その間に、「自殺」までもしてしまったのである。

 (二)

 さて、「いじめ」への対応、これだけではいけない。

 「昔」も、いじめはあったが、これほどひどくはなかった。

 やる方にも歯止めがあったし、やられる方も強かった。

 どのように教えていたのだろうか。

 私たちの祖先の教育をふり返ってみるのも大切だ。


 子どもたちに教える時、「その理由」を言って教える。

 「このようなわけで、やっちゃ駄目なのだよ」と教えるわけだ。

 ところが「理屈ぬき」で「それは駄目」と教えることがある。

 例えば「人殺し」だ。

 「人を殺すのがなぜいけないのか」は、理屈ではない。

 それは、当然駄目なのだ。

 絶対にいけないのだ。

 このような「タブー」の教育がある。

 私も、小さい時に「理屈ぬきで駄目」と教えられたことがある。

 「弱いものいじめ」は、絶対に駄目だった。

 それは、「ぬすみ」より、ひどいことなのだと教えられた。

 「印刷してあるもの」、例えば「本」「新聞」を、ふみつけたり、またぐことも絶対に許されなかった。

 親は、いくつかの、こうした「タブー」の教育をしてきたのである。

 有名なのは、江戸時代、会津藩の親の指導だ。

 「ならぬものはならぬ」という教えである。

 「それは、絶対に駄目だ」という教えだ。


 「弱いものいじめをするな」は、かつての日本人が子どもたちに教えてきたタブーであった。

 それは、理屈ぬきで教えられたのである。

 「弱いものいじめ」をする人は「卑怯者」と教えられてきた。

 それは、人間として、もっともいやしい行為であり、そうしたことをする人は、最低の人間であると教えてきたのである。

 ましてや、自分は安全の場にいて、大勢で、弱いものをいじめる――それは人間のすることではないと、教えられていたのである。

 「弱いもの」をいじめることは、普通の人間なら抵抗を覚える。

 しかし、「いやな感じ」という抵抗を覚えずに、それに「喜び」を感じたり「仲間」になってしまうのは、人間の感性が、ひどく歪んでいると思える。

 「弱いものいじめをしない」「弱いものいじめをするのは卑怯者のすることだ」「それは人間として決して許されないことだ」と教えるのは、親の義務だ。

 かつての日本では、ほとんどの家でそのようなことを教えられていた。「生命の大切さ」「弱いものいじめをしない」「嘘をつかない」など、いくつかのことが、家で、くり返しくり返し教えられていたのである。

 これは、日本だけではなく世界中の多くの国でも教えられていることだ。

 人間として守らねばならない大切なこと――それを教えるのは親の大切な仕事なのである。

 時代が、どのように変わろうとも、親が子どもに教えなければならないことなのである。

 「親が、やるべきことをしていない」というのが、今日の「いじめ」の根本問題だ。

 このような「タブー」は、乳児期、幼児期に教えられることだからだ。


 「教育基本法」が、改正される見込みだ。

 私は、当然だと思う。

 「教育基本法」は「国家としての教育の基本方針」である。

 現在は「学校教育」と「社会教育」の二本しか書かれていない。

 しかし、教育は「学校教育」と「社会教育」と「家庭教育」の三つが柱だ。

 五十年昔の日本には、「家庭教育」のことなど言われなくても、あったのだ。

 それが、今なくなりつつある。

 改正される教育基本法には、「家庭教育」の項がしっかり入っている。

 私は、三度ほど、衆議院会議で、代議士の先生方に講義をした。

 どの会も、五十名ほどの先生方、秘書の方が参加した。

 そこで、私が一番強く言ったことが「家庭教育」の項を入れるということだったのである。

 (三)

 「誰も見ていなくても、お天道様が見ている」ということも、昔から教えられていることだった。

 悪いことをした時に子どもは嘘をつく。

 「上手に嘘をつけば、それでよい」と思ってしまうのだ。

 そんな子のために、「お天道様」の様な話は、昔からされてきたのだ。

 ところが、このことは、本当のことらしい。

 最新医学の脳科学が明らかにした。

 人間の脳に、一番古くからあるのは脳幹(ヘビの脳ともいいます)だ。

 心臓を動かすなどの働きをする。

 人間の意志では変えられない。

 「怒り」や「攻撃」も、この古い脳が分担する。

 次に、「ほ乳類の脳」がある。

 これは「仲間」であることが分かる。

 犬や猫は、飼い主が分かる。

 でも、爬虫類のヘビやカメは飼い主は分からない。そのような脳がないからだ。「仲間」を大切にしないのは、「ほ乳類の脳」が、ちゃんとしていないということなのだ。

 人間は、その上に新しい脳をもっている。

 「人間らしさ」は、ここから生まれる。

 弱い人を大切にするのは、人間だけが持てる感情だ。

 ほ乳類の脳は「弱肉強食」なのである。

 人間らしく育っていれば、当然ながら、弱いものをかばうようになるのだ。


 ところで、「いじめ」である。

 「いじめ」をすると、本人がごまかしても、本人の脳は、ゆるさないというのだ。

 攻撃は、古い脳が担当する。

 「いじめ」をすると、「自分の脳」は、それを許さず「自分の身体を攻撃する」というのだ。

 「いじめ」は、自分自身もストレスにさらされ、身体を傷つける。

 これが、「嘘はついてもお天道様が見ている」ということなのだと思う。

 私は、脳のしくみについて話し、「いじめ」を人から見られないようにやっても、「自分の脳は知っているんだよ。だから、自分の身体を攻撃しちゃうんだ」と話して聞かせる。

 これは、相当にきき目のある話なのだ。

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