- まえがき
- 1章 この時代に学校管理職を務めるとは?
- 〜役が人を育てるってホント?〜
- 大量退職・大量採用・人手不足時代
- 採用氷河期を超えたら管理職試験が待っていた
- 学校が担うもの
- 管理職のやりがいとは何か
- Column 次年度で退職したいと教員に言われたら?
- 2章 学校経営と学校運営のこと
- 〜おはようから,おやすみまで〜
- 職員組織について
- 職員が急遽お休みをしたときの上手な対処法
- 職員が短期の休暇を取ったときのスマートな対処法
- 職員が長期の休暇を取ったときの温かい対処法
- 職員が退職することになったときの見送り方
- 組織力について
- 職員の時間外労働時間を短くする方法
- 組織に学校教育目標や学校経営方針を浸透させる方法
- 職員室の空気をポジティブに変えていく方法
- 校務分掌について
- 初めての分掌の任せ方
- 任せた分掌が停滞しているときの対処法
- Column パワハラ・セクハラの訴えがあったら?
- 3章 いろいろな子どものこと
- 〜管理職は全クラスの担任〜
- 指導が困難な学級について
- あやしい兆候の掴み方と,最初の対応方法
- 担任だけでなくチームで対応する方法
- 3月まで何とかもってくるための方法
- いじめの認知について
- いじめ防対法を正しく理解する方法
- 子どもからの訴えがあったときの対処法
- 保護者からの訴えがあったときの対処法
- アンケートで認知したときの対処法
- 特別な支援が必要な子どもについて
- 就学するときの情報の集め方と体制づくり
- 入学してからの実態把握と環境整備への指導・助言の仕方
- どうにもならなくなったときの助けの求め方
- Column 異動希望が出されたら?
- 4章 いろいろな職員のこと
- 〜大家族の大黒柱になる!〜
- 教員の指導力について
- 教師の指導力の上げ方
- 指導力に課題がある教員を何とかする方法
- 職員間の人間関係について
- 関係性に課題のある教員同士へのアプローチ
- 若手とベテランに距離がある場合の対応法
- 学年内の人間関係がうまくいっていないときの対処法
- Column 職員面談で何を話す?
- 5章 いろいろな保護者や地域のこと
- 〜人生いろいろ,価値観もいろいろ〜
- 保護者と学校の関係について
- 保護者の学校への期待を受けとめる方法について
- 保護者組織と学校との関係をスムーズにする方法
- 難しい保護者との折り合いをつける方法
- 地域と学校の関係について
- 地域の成熟度を測って,地域の力を把握する方法
- 地域と学校の関係を整える方法
- 地域からの苦情にさわやかに対応する方法
- あとがき
まえがき
「これからの教育は正解ではなく,最適解を出せる人を育てる」というのが,未来の教育を表す常套句です。しかし,「これから」だけでなく,今までも私たち教師は最適解をひねり出し続けてきました。それは多種多様な考えをもつ家庭で育った,様々な性格の,様々な能力の,様々な進路希望をもった子どもたちの集団を,まとめて成長させようというとてつもないミッションを,私たち教師が有史以来続けてきたからです。
「これが正解だ」という年が今までにあったでしょうか。「なんとなくうまくいった」「ギリギリ合格点かな」「異動したので,後の人にお願いすることになってしまった」というように,モヤモヤを抱えたまま次の年を迎えることも多々あったことでしょう。学級担任のときは,ある程度充実感や達成感を得て次の年を迎えられたのに,管理職になったら,それこそ様々な特徴をもった教員の,いろんな仕事の管理・監督をすることになり,まさに「隔靴掻痒」の感を何度も抱いていることと思います。
私も読者のみなさんと同じく,日々,最適解をひねり出すべく,「ああでもない」「こうでもない」と試行錯誤を繰り返しながら,1日が無事に終わることを切に願っている1人の学校管理職です。『教頭・校長のための職場問題解決事典』という大げさなタイトルを冠していますが,「これをやれば必ず解決する!」という単純な世界でないことは,みなさんもご承知のことと存じます。私自身は,とある首都圏の公立や国立の小学校,教育行政機関などを転々としてきました。教育相談と道徳教育を専門とし,目の前のできごとを心理学的にアプローチして対処してきました。
おそらく一般的な学校管理職より,いろいろな経験をさせていただいた者として,1つの物の見方を提供したいと思って本書を書きました。学校管理職の人間が本を書くのだから,もっとカッコよく,方々に気を配った,「大人の文章」を書いた方がいいのかもしれません。しかし,私自身はそのようにカッコいい文章は書けませんし,カッコいい文章はもしかすると,学校管理職の方々が本当に知りたい部分が抜け落ちてしまっているのではないか,とも思うのです。
そこで,本書は私が普段話しているような,フランクな雰囲気の筆致で書かれています。これから管理職になる方や,管理職になった方で自分の仕事の視野を広げたい方の役に立ったらいいな,と思って,週休日の多くの時間を割いて書きました。リラックスしてお読みいただけたらと思います。
昨今,都市部を中心に若い学校管理職が増えてきました。それぞれの現場で悪戦苦闘している様子が耳に入ってきます。本書がそのように若くして学校管理職になった先生たちの懐刀になったらいいな,と思います。また,現在,主幹教諭や教務主任を務めていて,これから学校管理職になる方の力になったらいいな,という思いもあります。
本書では,私自身が経験したことを通して導き出された1つの最適解を紹介しています。もちろん,みなさんの置かれた状況によっては無数の別解が存在すると思います。
本書の読み方としては,目次から興味のある項目を見つけて読んでくださっても結構ですし,最初から読んでいただいてもスーッと読めるような内容になっています。現在,問題を抱えている場合は前者の,そうではなく管理職としてのあれこれを概観したい場合には,後者の読み方をおススメします。
私自身の経験がベースになっているので,事例めいた内容については,だいぶ脚色しており,誰の何のことかがわからないようになっていることを前もってお断りさせていただきます。心理学徒の端くれとしての倫理,教育公務員としての法令順守のため,ご理解いただければ幸いです。
それでは,どうぞ最後までお付き合いください。
自分が管理職として、子供たち・教職員への配慮が足りないと改めて考えさせられました。