- 1 教材のちょっとしたアレンジで算数の授業が10倍おもしろくなる!
- 1 学力の要素と課題
- 2 算数のおもしろさを実感できる,教材アレンジ
- 3 教材を変化させる,25のちょっとしたアレンジの手法
- 4 算数の学力向上に向けた学校全体の取組
- 2 算数教材かんたんアレンジ 25の手法と34の事例
- 1 「カードの活用」+「隠す」(1年/いくつといくつ)
- 2 「問題づくり」+「誤答利用」(1年/たし算)
- 3 「□の使用」+「増加」(1年/たし算)
- 4 「カードの活用」+「隠す」(1年/ひき算)
- 5 「混在」(1年/ひき算)
- 6 「カードの活用」+「同時展開」(1年/大きなかず)
- 7 「カードの活用」+「問題づくり」(2年/1000までの数)
- 8 「オープンエンド」+「隠す」(2年/たし算とひき算)
- 9 「易は難に」(2年/たし算とひき算)
- 10 「増加」(2年/たし算とひき算)
- 11 「カードの活用」+「条件変更」(2年/たし算とひき算)
- 12 「制限」+「拡張」+「図の活用」(2年/かけ算)
- 13 「カードの活用」+「条件変更」(3年/たし算とひき算)
- 14 「条件変更」+「条件変更」+「条件変更」(3年/たし算とひき算)
- 15 「カードの活用」+「増加」(3年/かけ算の筆算)
- 16 「カードの活用」+「増加」+「増加」(3年/かけ算の筆算)
- 17 「カードの活用」+「拡張」(3年/あまりのあるわり算)
- 18 「既習の利用」+「操作の式化」(4年/わり算)
- 19 「問題づくり」(4年/計算の順序)
- 20 「条件変更」(4年/整数のたし算・ひき算)
- 21 「難は易に」+「同時展開」(4年/展開図)
- 22 「難は易に」+「増加」(4年/展開図)
- 23 「既習の利用」+「特殊な場合」+「共通点探し」+「一般化」(5年/三角形と四角形の角)
- 24 「点の移動」+「多様な解き方」(5年/四角形の角)
- 25 「□の使用」+「グラフの活用」(5年/小数のわり算)
- 26 「拡張」(5年/倍数)
- 27 「□の使用」(5年/分数のひき算)
- 28 「混在」+「点の移動」(5年/図形の面積)
- 29 「増加」+「表の活用」(6年/対称な図形)
- 30 「□の使用」+「表の活用」+「図の活用」+「一般化」(6年/起こり得る場合)
- 31 「増加」(6年/比)
- 32 「点の移動」(6年/縮図や拡大図)
- 33 「カードの活用」+「オープンエンド」(6年/算数のまとめ)
- 34 「限定」+「拡張」+「一般化」(6年/算数のまとめ)
はじめに
算数の学力向上が学校課題の1つであるという小学校は少なくないと思います。学力向上を考えるときに,まず学力の要素を確認し,それぞれの要素に対する児童の実態を把握することが極めて重要なことと考えます。
学力の要素は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学習意欲」の3つであることが法規に規定されています。また,国際調査の結果をみると,日本の子どもたちの最も危惧すべき学力は「学習意欲」であると言えます。この弱点の克服は簡単にできることではありませんが,算数の授業を大きく左右するのが教材であることを考えると,日常的に教材ともっと向き合うことが大切だと考えます。
私は,長年学校現場で「教材が変われば授業は変わる」ことを念頭に,授業改善に努めてきました。しかし,その教材を何もないところから開発するのは至難の業です。そこで本書では,見慣れた教材を魅力的な教材に変化(時には激変)させる25のちょっとしたアレンジの手法(工夫)と,その手法を用いた34の具体例を紹介しました。どの事例も,見慣れた教材をBefore,アレンジした教材をAfterとすることで,わかりやすく示しています。
これまでに私が読んだ教材開発の書物には,すばらしい教材が掲載されていました。それらの教材を知るたびに,こんな教材をつくりたいと思ったものです。しかしながら,どうすればこんな教材をつくることができるのかを示した書物に出会うことはほとんどありませんでした。そこで本書では,教材をアレンジする手法に焦点を当てました。25種類のアレンジの手法は,料理に例えれば,隠し味のようなものかもしれません。
公立や国立の学校に勤務していた22年間,私が授業準備で最も時間を割いたのは教材開発です。「オープンエンドアプローチ」や「条件変更」のことを若いころ知り,自分なりに新たな教材をつくってきました。また,当時は6社から発行されていた教科書に載っている教材も参考にしながら,教材開発に力を注ぎました。
指導主事として務めてきた4年間,算数授業や数学授業を数百回も参観する機会をいただきました。工夫された教材が載っている指導案を読むと,「早く授業を参観したい。子どもたちはどのように学習するのだろう」と待ちきれない気持ちになったものです。
3年間の任期付で大学に勤務した際は,教育学部や大学院の学生の教育実習前の指導案を読み,個別指導や実習参観をしたりしました。もう少し教材を工夫すれば,違う展開になっただろうと思う授業もありました。
平成20年から上越教育大学教職大学院に勤務し,担当している講義の中で,見慣れた教材(Before)とちょっとしたアレンジの手法,その手法によって変化した教材(After)を何種類か提示しました。その後,演習として大学院の院生さん(現職教員や大学を卒業して入学してきた学生)が実際にアレンジする時間を設けました。院生さんは算数の教科書や中学校数学の教科書の中からBeforeの教材を探し,ちょっとした工夫でアレンジして新たな教材(After)を作成しました。見事に大改造した院生さんも多数いました。また,現職教員の院生さんには,本書の原稿を読み,読み難い部分の指摘などもいただきました。ご協力いただいた院生さんに感謝申し上げます。
本書を算数の教材に関心のある先生方や教員を目指す学生さんなどにお読みいただき,算数教材の開発やアレンジの一助になれば幸いです。
最後になりましたが,本書の姉妹本ともいえる『中学校数学科授業を変える教材開発&アレンジの工夫38』に引き続き,企画・出版に際して明治図書の矢口郁雄氏,校正では大内奈々子氏に大変お世話になりました。小学校1年から中学校3年までの9年間を見通して,学力向上に向けた教材について深く考える機会をいただきました。厚く御礼申し上げます。
2014年3月 /松沢 要一
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- 明治図書
- 様々な教科書問題でもちょっと見方を変えてアレンジすることで、子どもたちにとっては間違えるような魅力的なものになることを実感できる一冊です。いつも手元に置いておきたい本です。2020/6/560代・小学校管理職