- はじめに
- 1 いつ、どのような学び方を学ばせるのか
- 小学校低学年(一〜三年)生の時期の子どもの特性
- 小学校高学年(四〜六年)生の時期の子どもの特性
- 小学校高学年とはどういう時期か
- 保護者への対応
- 2 七つの力を育てる学び方指導
- 「やる気と自信」を育てる学び方指導
- 「傾聴力」を育てる学び方指導
- 「作文力」を育てる学び方指導
- 「集中力」を育てる学び方指導
- 「スピード力」を育てる学び方指導
- 「読書力」を育てる学び方指導
- 「漢字力」を育てる学び方指導
- 3 子どもの学力を引き出すためのノート指導
- 何のためにノートをつくるのか
- 当たり前のことをやれるかやれないか
- 入門期に気を付けること
- 「振り返り」と「ノート法」
- 聞くときと書くときを分ける
- ミテウツシ病の予防
- ノートを使い分けることの意味
- ノートの書式を統一することの意味
- 4 四種類のノートと学力を伸ばすノート法
- 「授業ノート」と「ノート法」
- 「演習ノート」と「ノート法」
- 「知識ノート」と「ノート法」
- 「復習ノート」と「ノート法」
- 「ノート法」を成功に導くコツ
- おわりに
はじめに
この本は、「学び方の学ばせ方」の本です。特に、学校の先生方向けに、児童・生徒の学び方指導、ノート指導をどうすべきかを紹介しています。
現在の学校制度の中では、「台形の面積の公式は小学五年生」「二次方程式の解の求め方は中学三年生」というように、知識をいつ教えるかというスケジュール表(指導要領)はありますが、例えば「テストで間違った問題を、どう次に生かすべく定着させればよいのか」という点での「具体的な学習の仕方」の指導法は、体系化されていません。
もちろん、現場の先生方がそれぞれ困っている子にアドバイスはされていることでしょうが、我々が塾に通ってくる子たちから聞く最大公約数の声は、「学校では教えてくれない」です。これは、先生方が悪いのではなく、制度の問題です。日本中に、ものすごい数の学習塾が存在し成立しているのは、そこに陥穽があるせいで、「どう勉強すればよいかを教えてほしい」というニーズが発生しているからだともいえます。
勉強をする=ドリルなどをひたすらたくさん解くこと、ととらえている子どももたくさんいますが、もちろんこれは誤りです。学習の量はもちろん大切ですが、一番大事なのはできなかったときの対処です。「一問を大切にして、『だいたいわかった』などという逃げに走らず、やった以上絶対に理解して前に進む。わからないままにしない」という原則を見失わず、@何がわかっていないかを見極め、A今後できるようにするための教訓を引き出し、B完全に定着するまでよい期間をおいて反復する、ということです。この本では、そのための具体的な指導法をまとめてあります。
塾が学校と異なる最大の点は、生徒から「授業がわかりにくい」と言われたり、生徒の学力が伸びなかったりしたら、即、メシの食い上げになることです。日々そういう切実さの中で教えていますから、必然的に学習の仕方の指導には注目せざるを得ません。私たちの花まる学習会だけでなく、全国津々浦々の個人塾から都会の大手学習塾まで、その点のノウハウは必ずもっているはずです。
一点我々の強みをあげると、幼稚園生から中学三年生くらいまでずっと在籍する子が大勢いるということがあります。幼稚園生時代にこうだった子が、一五歳になるとこうなるんだという膨大なデータを、毎時間の「子どもの様子」としてもっています。そこでみえるのは、例えば幼稚園生だけどわり算もできるというような先行には大した価値はないということです。逆に、答えばかり求める弊害から伸び悩みにつながっているという面があります。計算ができてもよいのだけれど、大切なのは「本当に自分はわかっているか」ということにこだわる姿勢です。べき論≠ナはなく、価値観・生き方として「わかるっておもしろい」と心から信じていることです。それは、文章題ができる、思考力問題ができるといった特長となって開花していきます。
この本の前半は、そういう子に育てるための長期的スケジュールとして、どういう枠組みで子どもをとらえ、どの時期にどういうアプローチをすることが適切かということを、概論的にまとめてあります。少なくとも、低学年と高学年では指導法がまったく異なるという一点を押さえるだけでも、一年生に向かって「静かにしなさいっ!」と大声を上げる失敗には陥らなくて済むでしょう。
後半では、この本のキモともいえる「ノート法」をまとめました。「中三だから受験もあるので塾に入りました」というおっとり刀の生徒がたまにいるのですが、一四歳にもなるのに、例えば数学のノートをただ一種類しか持っていないということもよくあります。我々は少なくとも四種類を使い分けさせていますが、その意味するところや使い方などを詳しく紹介しました。
もとより、「このやり方が絶対」と言うつもりは毛頭ありません。ただ、「勉強の仕方をどう伝えればよいか」を考えていらっしゃる先生方の参考になればという思いで書きました。正しい学び方を身に付け、できることを増やしていくのは楽しい作業です。そういう「より幸せになれる方法」として、子どもたちに伝えていただければ幸いです。
二○一三年四月 /高濱 正伸
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- 明治図書