- 第1章 新任指導主事の心得
- 1 指導主事になろうと決意したときの気持ちを忘れない
- 2 先生と指導主事の違いを自覚する
- 3 教育法規に強くなる
- 4 プライドと謙虚さを兼ね備える
- 5 与えられた持ち場でベストを尽くす
- 6 健康管理をおろそかにしない
- 第2章 新任指導主事の実務の心得
- 7 社会人としてのマナーを再点検する
- 8 自信がないからこそ電話は大きな声で話す
- 9 「聞くは一時の恥」と心得て,躊躇せず尋ねる
- 10 重要な文書をいつでも参照できるようにする
- 11 メモノートをつくり,記憶より記録を頼る
- 12 効率的に最新の教育情報をインプットする
- 13 多種多様な資料を効率的に整理する
- 14 反映までを1セットとして反省を行う
- 15 状況に応じて言葉を選ぶ
- 16 緻密さとスピード,どちらを求められている場面か見極める
- 17 常に自分の思いをもち,イエスマンにならない
- 18 「間違いはある」という意識で決裁書に目を通す
- 19 資料はA4サイズ1枚にまとめる
- 20 あいさつ文作成を通して勉強する
- 21 ホウレンソウをマスターする
- 22 公文書は読み手の立場でつくる
- 23 Q&Aファイルをつくる
- 第3章 行政の仕事の心得
- 24 仕事の情報とプロセスを共有する
- 25 不在時にも仕事を動かす
- 26 予算に強くなる
- 27 他部署や関係団体に自ら足を運ぶ
- 28 縁を大切にして,独自のネットワークを築く
- 29 指導主事は理念を,人事主事は情をもつ
- 30 苦情対応は真摯に耳を傾け,共感を示す
- 31 仕事のプライオリティを見極める
- 32 教育委員会への問い合わせや要望は,常に住民の立場で対応する
- 33 先に汗をかく意識をもつ
- 34 「4つの目」をもつ
- 35 法令は遵守しつつ柔軟な思考を働かせる
- 36 常に根拠をもって仕事をする
- 第4章 学校現場との信頼関係構築の心得
- 37 教育長代理という認識で学校訪問指導を行う
- 38 学校訪問指導では校長を支援し,校長に学ぶ
- 39 学校訪問指導は自身の学びの場と捉える
- 40 指導助言のために教養を深め,自分の言葉で熱く語る
- 41 学校現場を軸に判断する
- 42 校長が教職員に説明できないことを依頼しない
- 43 校長の依頼には誠実に対応する
- 第5章 関係機関との連携の心得
- 44 校長会には周到な準備で臨む
- 45 マスコミ対応は慎重の上にも慎重を期する
- 46 議会対応は是々非々で行う
- 47 首長部局との予算折衝では成果を数値で示す工夫をする
- 48 各種団体には誠意をもって対応する
- 第6章 日々の業務の心得
- 49 目配り,気配り,心配りを忘れない
- 50 発言内容には細心の注意を払う
- 51 苦情対応はまず傾聴する
- 52 酒に飲まれない
- 53 危機管理は,未然防止と危機対応の二軸で万全を期する
- 54 将来取り組みたいことを探し,蓄え,温めておく
- 55 大変な仕事だからこそプラス思考で取り組む
はじめに
現場で教員をしていても,教育委員会のことはよくわかりません。
偉い人がいて教職員や学校を管理しているところ?
指導主事は研究会等で指導助言をする教育に精通した人?
教育委員会は教職員の任命権者ですし,学校の設置者ですからよくわかりませんでは困るのですが,学校現場ではそんなことを考えている余裕はありません。授業や学級経営,生徒指導や部活動の指導等々,日々目の前の子どもたちのために奔走し,一方で学校の特色化や教育課程の編成等,学校運営のためにも尽力しています。
そんなある日,管理職から「指導主事になってはどうか」と話があります。これまで考えたことのなかった教育委員会。どんなところかよくわからないものの,いろいろと悩んだ末に挑戦してみようと決心します。
4月1日,辞令を受け,今日から指導主事。「さあがんばろう」と思ったものの,最初は何をどうしたらよいかわかりません。担当の仕事についてファイルに目を通すも,起案だの決裁だの,予算がどうで規則がこうで…,そもそも何の話をしているのか言葉もわかりません。
学校現場ではそれなりに仕事はできると思っていたものの,教育委員会は勝手が違います。現場では有能で,周囲から嘱望されている人でも,指導主事になったとたん右往左往。何をどうしたらよいかわかりません。
指導主事は専門的教育職員? いやいやどこが専門的なのか,一気に自信がなくなってしまいます。
このような思いは,どの指導主事も経験してきたことです。あなたの上司も通ってきた道です。最初から指導主事の仕事ができる人はいません。しかし,右も左もわからなかった新米指導主事も,やがて一人前の指導主事になり,主任指導主事,係長となっていくのです。
本書では,指導主事が仕事を進めるうえで大切にしたいことをできるだけ具体的に紹介しています。また,単に指導主事の仕事だけでなく,将来学校管理職として仕事をするときのために,指導主事時代に学んでおくべきことも記しました。
ここに記したことは,筆者自身が16年間教育行政に身を置く中で上司や先輩から教えていただいたことです。
時代は変わり,令和の時代になりました。働き方改革も進められています。平成の時代の指導主事の仕事の仕方はもう古いのかもしれませんが,筆者が上司や先輩から学んできた仕事術は決して色あせることはないと思っており,次代につなぐバトンとして書かせていただきました。
今,管理職や指導主事を志す方が減っています。
現代は変化の激しい時代,先の読めないVUCA(Volatility:変動性,Uncertainty:不確実性,Complexity:複雑性,Ambiguity:曖昧性)の時代です。価値観は多様化し,絶対解が見いだせないことも多くなりました。
教育課題が山積する中,アカウンタビリティやコンプライアンスを求められ,管理職や教育委員会の責任は重大で,指導主事の魅力も見えにくくなっています。しかし,教育課題が山積しているからこそ,やりがいも大きいのです。
筆者も指導主事をはじめ,教育委員会では苦労しました。自信がなくなることも多々ありました。しかし,指導主事時代の苦労は必ず将来大きな力となります。本書が指導主事の職務遂行の一助となれば幸いです。
2024年2月 /竹内 弘明
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- 明治図書
- 初めて指導主事になる際の確かな道標になりました。本書の中身の理解のうえに、自分らしさを積み上げていけばいいと思いました。2024/8/30げんちゃん