- はじめに
- 第1章 生徒がみるみる変わる!下野式体育授業の鉄則30
- 鉄則1 目的と目標を明確にする
- 鉄則2 運動の特性を踏まえて学習指導をつくる
- 鉄則3 常に生徒の実態から授業を改善する
- 鉄則4 生徒の可能性を信じ抜く
- 鉄則5 自分の身は自分で守らせる
- 鉄則6 頑張らないで頑張らせる
- 鉄則7 伸びた瞬間に本気でほめる
- 鉄則8 できる子だけ伸びても意味がない
- 鉄則9 疲れる練習はできるだけ避ける
- 鉄則10 他人ではなく,過去の自分と比較させる
- 鉄則11 仲間と喜びを共有させる―ST学習@
- 鉄則12 生徒の無限の可能性を発揮させる―ST学習A
- 鉄則13 「つまずきビデオ」「示範ビデオ」を見せる―ICT活用@
- 鉄則14 ビデオを活用できる集団をつくる―ICT活用A
- 鉄則15 「ビフォービデオ」「アフタービデオ」を撮影する―ICT活用B
- 鉄則16 「ビフォーアフタービデオ」を編集する―ICT活用C
- 鉄則17 生徒たち相互のモニタリングを優先させる
- 鉄則18 研究授業こそ「生徒たち主役」の授業をする
- 鉄則19 手本(示範)を示さずに最高の技能を身につけさせる
- 鉄則20 技能の習得過程はシンプルにする
- 鉄則21 教師の妙なプライドは捨てる
- 鉄則22 教師の目標を明らかにする
- 鉄則23 依頼された授業の公開は断らない
- 鉄則24 先入観に支配されない
- 鉄則25 必ずレディネスと単元終了時のアンケートを実施する
- 鉄則26 指導と評価を一体化させる授業を行う
- 鉄則27 教育は「サービス業」だと考える
- 鉄則28 笛はむやみやたらに吹かない
- 鉄則29 勢いのある授業をつくる
- 鉄則30 上がった成果は保護者に還元する
- Column1 すべての授業を公開してみたら…
- 第2章 今すぐ使える!運動単元3点アドバイス
- 水泳
- アドバイス1 クロール
- アドバイス2 平泳ぎ
- アドバイス3 バタフライ
- 器械運動(マット運動)
- アドバイス4 後転
- アドバイス5 倒立前転
- アドバイス6 ハンドスプリング
- アドバイス7 連続技
- アドバイス8 集団演技
- 陸上競技
- アドバイス9 ハードル走
- アドバイス10 走り幅跳び
- 球技
- アドバイス11 バスケットボール(レイアップシュート)
- アドバイス12 サッカー(ボールコントロール・ドリブル)
- アドバイス13 バレーボール(パス)
- アドバイス14 バレーボール(スパイク)
- 武道
- アドバイス15 柔道(けさ固め)
- Column2 青年とともに成長を目指す―授業を実践した大学院生の感想@―
- 第3章 体育指導だけじゃない!教師力向上の心得
- 心得1 何のための教育かを明確にする
- 心得2 生徒相互の人間関係を大切にする
- 心得3 いじめ問題の捉え方を変える
- 心得4 「なぜ?」「どうやったらできる?」を大切にする
- 心得5 集団づくりは「見る」「聴く」「参加する」で決まる
- 心得6 人生は何との戦いかを考える
- 心得7 授業で成長している姿を保護者と学年教師に伝える
- 心得8 ジャンルを問わず,常に勉強し続ける
- Column3 青年とともに成長を目指す―授業を実践した大学院生の感想A―
- 第4章 やればできる!体育授業が生んだ感動ドラマ
- ドラマ1 クロール1000mを泳ぎ切る
- ドラマ2 ハードル走で驚異のタイム
- ドラマ3 日本一のタンブリング
- ドラマ4 不可能を可能にしたST学習
- ドラマ5 考え方や生き方をも変えられる体育の学習
- おわりに
はじめに
「A君は運動神経がいいからうらやましい」「私は運動神経が悪いから…」などという言葉をよく耳にしてきました。たしかに運動技能の習得に「早い」「遅い」はあるかと思います。しかし私は,「早く」運動技能を習得することが必ずしも良いとは考えていません。
日本の伝統ある木造建築を手掛ける宮大工では,器用な人よりも不器用な人を弟子に採用すると聞いたことがあります。器用な人は仕事を覚えるのも早く手がかからない反面,簡単に手を抜くようになってしまう。それに対して不器用な人は,要領が悪く仕事を覚えるのに時間がかかりますが,両者を比較してみたら,結局,不器用な人の方が大成することが多いというのです。
私は体育の授業も共通点が多いように思います。運動が得意な生徒は,運動技能を要領よく覚え短時間で習得しますが,運動が苦手な生徒は得意な生徒の2倍,3倍と時間がかかってしまいます。しかしそれだけ,より大きな感動があります。苦手な生徒が「できる」ようになった時,それはその生徒の一生の思い出として残っていき,輝く宝となるでしょう。
今回,これまで30年間の体育授業の考え方や実際の指導の仕方をまとめさせていただきました。特に力を入れたのは,「ハウツー」ではなく,「何のための教育か」「何のための体育の学習指導か」という信念の内容です。「手っ取り早く」「簡単にできる」という考え方がもてはやされる中で,生徒たちの可能性を信じて励ましを送り,できるようになるまで寄り添い続けるというのは,骨の折れる仕事かもしれませんし,非効率的かもしれませんが,体育を指導する先生方は運動が苦手な生徒の味方であってほしいと思います。
世の中には様々な苦労があると思いますが,次の時代を担う生徒たちのためにする教師の苦労ほど尊いものはないと思います。本著を手にした先生が生徒たちのために全力を尽くす姿を想像し,エールを送りたいと思います。
2018年7月 /下野 六太
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- 明治図書