- はじめに
- T 専門職(プロフェッション)としての教師
- 一 教育を受ける立場から教師としての立場へ
- 1 ある教師の言葉
- 2 「教師」という言葉とその類語
- 二 教師の仕事と使命
- 1 教師の仕事
- 2 学校教師の使命
- 三 教職の専門性とは
- 1 教師専門職論
- 2 教師の仕事の特質
- 3 反省的実践家としての教師
- U 教師を養成するシステム―教師になるための学び―
- 一 教員養成
- 1 教員養成とは
- 2 教師はどう養成されてきたか
- 二 教員免許制度と教員養成の現在
- 1 教員免許状の種類と効力
- 2 先生になるための学び
- 三 教員採用の仕組み
- 1 選考
- 2 教員採用試験の内容・方法
- 3 条件附採用―そして研修へ
- V 学校
- 一 学校の公共的性格
- 1 公の性質
- 2 公教育制度の誕生
- 3 教育を受ける権利
- 4 公立学校の特徴
- 二 学校像の変容
- 1 学校への信頼の揺らぎ
- 2 学校の自主性・自律性の確立と新自由主義的な教育改革
- 3 知識基盤社会の中の学校
- 三 チームとしての学校、地域とともにある学校
- 1 新しい時代に求められる資質・能力の育成を目指す「社会に開かれた教育課程」
- 2 チームとしての学校
- 3 「開かれた学校」から「地域とともにある学校」へ
- W 教師に必要な資質能力
- 一 わが国における教師論の歴史的展開
- 1 教師聖職者論(戦前・戦中の教師論)
- 2 教師労働者論(戦後の教師論)
- 3 教師専門職論(現代の教師論)
- 二 「自律した専門職」から「学び合う専門職」へ―知識社会における教師専門職論―
- 1 「自律した専門職」モデル
- 2 知識社会における教師の状況
- 3 「学び合う専門職」モデル
- 三 これからの教師に求められる資質能力
- 1 いつの時代にも求められる資質能力
- 2 これからの時代に求められる資質能力
- 3 教員育成指標
- X 教育的な関係
- 一 人間の「発達の可能性」への着眼
- 1 教育の原点
- 2 人間をどのように見るか
- 3 「主体―主体」関係
- 二 教育的な関係を創り出す
- 1 教師の「ねがい」と「ねらい」
- 2 教育活動における学び
- 三 教育実践者に見る教育的な関係
- 1 東井義雄に見る教育的な関係
- 2 斎藤喜博に見る教育的な関係
- Y 教師の仕事(一)授業
- 一 授業とは
- 1 学習指導要領
- 2 新学習指導要領
- 3 二つの授業の様式
- 4 授業の過程
- 二 授業技術
- 1 明示的な授業技術
- 2 熟練教師の特徴
- 三 教授学習過程の再考
- 1 ごまかし勉強
- 2 主体性の神話
- 3 教えることの再考
- Z 教師の仕事(二)生徒指導・学級経営
- 一 生徒指導
- 1 生徒指導の目的―自己指導能力の育成―
- 2 「機能」としての生徒指導
- 3 集団指導と個別指導
- 4 課題解決的な指導・予防的な指導・成長を促す指導
- 5 生徒指導体制
- 6 生徒指導に関する法制度
- 二 児童生徒理解
- 1 児童生徒理解の内容
- 2 生徒を理解するうえでの基本的視点
- 三 学級経営
- 1 学級の意義―集団の教育力―
- 2 学級経営の内容―学級担任の仕事―
- 3 学級集団の質的な発展
- 4 学級の組織的な仕組み
- [ 教師の仕事(三)校務分掌とマネジメント
- 一 組織の一員としての教師
- 1 組織として考え動くことの重要性
- 2 校務分掌
- 二 学校の教職員組織
- 1 教職員の職種
- 2 校長の職務
- 3 教頭の職務
- 三 学校組織マネジメント
- 1 「学校の自律性」の確立に向けた政策―学校のアカウンタビリティに対する関心―
- 2 マネジメント
- 3 目標管理(Management By Objectives)
- \ 教師文化
- 一 教師文化とは何か
- 1 教師文化の定義
- 2 教師文化の特徴
- 二 同僚性を基底に据えた協働文化の構築
- 1 協働
- 2 同僚性
- 3 ソーシャルサポート
- 4 同僚性を基底に据えた協働文化構築の方策
- 5 チーム学校
- ] 教育公務員としての教師
- 一 教員の身分
- 1 全体の奉仕者
- 2 任命権者と県費負担教職員
- 二 教育公務員の服務規程
- 1 服務とは
- 2 職務上の義務
- 3 身分上の義務
- 4 分限と懲戒
- 三 教職員の人事評価制度
- 四 教員の勤務条件
- 1 勤務条件
- 2 職員団体
- XI 学習する教師
- 一 教師の学習の重要性
- 1 教師はなぜ学習し続ける必要があるのか
- 2 研修の法的位置づけ
- 二 教師の研修の体系化
- 1 生涯学習の理念に基づく研修体系
- 2 研修機会のネットワーク化
- 3 キャリアステージに対応した研修の体系化
- 4 キャリア・アンカーの重要性
- 三 学習の質を深める
- XII 古典に学ぶ
- 一 現代に生きる先哲の思想
- 1 教師の仕事
- 2 教師への道
- 二 古典に学ぶ
- 1 ルソー(スイス、一七一二〜一七七八)
- 2 ペスタロッチ(スイス、一七四六〜一八二七)
- 3 ヘルバルト(ドイツ、一七七六〜一八四一)
- 4 フレーベル(ドイツ、一七八二〜一八五二)
- 5 デューイ(アメリカ、一八五九〜一九五二)
- 三 問われる教育の原理
- 1 教育理念の混迷
- 2 実践哲学への転換
はじめに
本書は、教育職員免許法施行規則に定められた教職専門科目「教職の意義等に関する科目」のためのテキストである。
この科目はすべての教職専門科目で最初に位置づけられている関係で、受講生の中には、教職を強く志望している人、免許状取得が卒業要件になっている人、免許状だけはとりあえず取得しておこうと考えている人、さらには、教育学には関心があるが必ずしも教師を希望しない人など、様々な人がいるだろう。本書は、このような様々な人たちが、入学後の比較的早い時期に「職業として教職を選択するとはどういうことか」を理解し、人生設計の最初の段階の意思決定を行うことを支援する目的で編集した。
教育基本法第九条は「教員」について次のように記している。
法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適性が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
ここでいう「崇高な使命」「職責」「身分」とは何だろうか。なぜ「絶えず研究と修養に励」むことが大事なのだろうか。それを理解するには、教職の基本的な性格や原理をつかむ必要がある。
本書の特徴の一つは、教職の専門職的性格にこだわっていることである。教職は、英語で「ティーチング・プロフェッション(teaching profession)」という。プロフェッションすなわち専門職に従事する者の行動原理は、公共的な価値実現に貢献するという使命感をもち、自らの専門性に自尊心と責任感をもち、その専門性に基づき自律的に行動する、というものである。「崇高な使命」も「学び続ける教師」もこの原理に由来する。
第二の特徴は、教師の「学び合う協働性」を強調している点である。様々な課題を抱えた学校現場において、「一人ひとりの教師ががんばれば学校はよくなる」という考え方は通用しなくなった。いかなる問題を解決する場合にも、同僚教師、管理職、保護者、地域の人々、行政等の間でコミュニケーションをとり、何らかの学び合う協働関係をつくることが基本となる。
第三の特徴は、わが国の教師たちがこれまで大事にしてきた「不易」を大切にしながら「流行」に向き合うというスタンスをとっていることである。
本書は教職へのガイダンス資料である。しかし、そうであっても大学のテキストである。ゆえに教師教育学や教育経営学の知見と専門用語を使用し具体的な記述を心がけている。講義者は一つひとつの授業において平易に説明すると思うが、この授業を通じて学習したことや熟考したことは、その後に受講する教職課程の学習の課題意識やそれを達成していく筋道等の基礎になるものと確信している。
/曽余田 浩史・岡東 壽隆
分類されてていい